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命の授業 『告白』

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なぜ人を殺してはいけないのですか?
自分が殺されるのが嫌だからですか? そう教えられてきたからですか? 宗教で決められているからですか?
では、少し質問を変えましょう。
命って何ですか?

『告白』は告白で始まり、告白でつながり、告白で終わる。
告白・・・そこには真実と嘘が紙一重に潜んでいる自己本位の世界。そもそも人間の言葉ほど信じられないものはない。ほら、今あなたが読んでいる文章だって・・・全部ウソかもしれないよ。
な〜んてね!



「娘は、このクラスの生徒に殺されたんです」
森口先生(松たか子)の「命の授業」が幕を開けた。

人を殺してはいけません。なぜか? なぜだと思いますか?

幼い頃から母親に過剰な期待を押し付けられて、やれば出来ると言い続けられた。しかし、母親は本当の自分を受け止めてくれず、ただ甘やかすだけだった。 誰からも認められず、誰の目にも止められず、自分の存在が何なのかが分からなくなっていた? そうですか、それはつらかったですね。
では、つらかったら人を殺してもいいのですか?

自分は母に捨てられた? 周りの人間たちは幼稚すぎて話し相手にもならなかった? とにかく母に振り向いてもらいたかった。その為なら何を犠牲にしても構わなかった? そうですか、それは気の毒でしたね。何とも不幸な生い立ちでしたね。
では、不幸な生い立ちならば人を殺してもいいのですか?

命がけで守ろう、愛し抜こうと思った我が子が自分の不注意で亡くなってしまった。まさか自分の子供が殺されるなんて、思いもしなかった。自分たちが犯した罪の重さに気付いていない彼らが憎い。彼らの悪意に気付けなかった自分が憎い。
では、憎かったら人を殺してもいいのですか? 

いいえ、殺してはいけません。

あなた方は、自分自身でその事に気付かなければいけません。
なぜ、人を殺してはいけないのか。
そして、人を殺したら何がどうなってしまうのか。
私はあなた方を赦しません。殺してやりたい、でも殺しません。
これが私の「復讐」です。



『告白』を映画化すると聞いたとき、監督が中島哲也だというのには、驚いたというよりは適任だと思った。ご存知『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』などで知られる映画監督だ。『下妻』『松子』『パコ』を見る限り、ポップでシュールな作風の映画作家だと思われがちだが、実は違う。中島監督は人間のおかしさと悲しさを描いてきた映画作家なのだ。あの大胆で派手な仕掛けは、役者の演技を魅力的にし、物語をより伝えやすくするためのギミックにすぎない。実際、『下妻』以前の彼の作品を観てみるとよく分かる。彼はその時に応じて、観客により伝わりやすい形で映画を提示する映画作家なのだ。
人間のおかしさと悲しさを描いてきたスペシャリスト、中島哲也が『告白』を監督するのである。このダークでシリアスな物語を、中島監督ならより良い形で映画として完成させることが出来るはずだと思った。無論、『告白』は全三作にあったユーモアやカラフルさを徹底的に排除し、人間の「負」の部分をこれでもかとむき出しにし、観客に提示した。


物語は「告白」によって構成されている。まず、森口先生(松たか子)の告白。次に女子生徒の北原美月(橋本愛)の告白、続いて少年Bの母親(木村佳乃)、少年Bの告白が始まる。そして少年Aの告白へとつながり、最後はある「対決」へと展開していくのだ。原作ではそれぞれの「告白」が口語体で記されていくのだが、最初の森口先生のエピソード以外は、正直に言えば小説としては完成していない。描ききれていないのだ。口語体で話されていること以外、そこで何が起きているのかが分からない。欲を言えば、最初の森口先生の告白だって、生徒たちが静かに話を聞いているのか、それともざわざわとざわめいているのか、そういうことは分からない。
映画版はそこを見事に脚色してみせた。スローモーションの多用、鳴り止まない音楽、時より挿入される印象的なイメージカット。原作では描ききれなかった部分、映画で提示されたそれは、「告白」に戸惑い狂っていく人々の姿だった。映画が原作を超えた。最も適した形で伝える、さすがは中島監督だと思う。
ただし、自分は原作を否定していない。作者の湊かなえさんの情熱が伝わるからだ。事実ラストの衝撃は認めるし、何よりこれを書いた勇気に脱帽したい。原作も是非読んでいただきたいです。

映画ならではのアプローチとして、音楽面にもこだわりようが見られます。レディオヘッドとAKB48が同じ作品中で流れるなんて・・・で、見事に『告白』の世界を表現する材料になっています。特にレディオヘッドの「Last Flowers」が劇中で二回流れますが、そのタイミングに注目してほしい。これをエンディングに流さないのがまた良い。


で、松たか子がすごい。
この映画はキャスト全員が素晴らしい名演技を魅せるのだけど、いやいや、やっぱり松たか子がすごい。怖い。
彼女の発する言葉ひとつひとつが、胸に突き刺さる。感情を押し殺せば押し殺すほど、その影で激しく燃える炎のような情念が、観客の全身に伝わってくる。ものすごい表現力を持った女優だと思う。
感情を押し殺し、ひたすら復讐の道を歩むその姿は、人間というよりはモンスターだ。
しかしながら、森口先生は決してモンスターではない。しっかりと「人間」なのである。
それを提示するのが、森口先生が泣き崩れるシーンだ。人は悪人になろうとしても、そう簡単になれるものではない。そこには苦しみもあるし、孤独もあるのだ。
森口先生の中でもずっと苦しみが続いていた。もちろん、復讐に燃えて狂気に満ちた時期もあったはずだ。でも本当は、彼女は真っ当な人生を娘と送るはずだった。そこから計画を立てて、たった一人でそれを実行していく彼女は、とてつもなく孤独な人なのである。
あの泣き崩れるシーンは、女優松たか子が天下をとってしまった迫真の名演だろう。

松たか子に注目しがちですが、『告白』における木村佳乃の演技は狂っていて素晴らしかったです。いかにも漫画的な人物だけれど、この人が演じたらものすごく怖くなってるし、ちゃんと人間味がある。叫んだり、泣いたり、腰抜かしたり、やっぱり木村佳乃もすごい。
で、岡田将生演じるウェルテルのような役がいることで『告白』のバランスが保たれていることを忘れてはいけない。彼は唯一の善人だからね。


森口先生に、無表情で淡々と「あなたを一生赦しません」なんて言われたら、もう生気を無くす。ああ、もう無理だ、敵いっこないと諦める。
いっそ死んでしまおうと思う。でも、森口先生は「死=逃げること」を許さない。
「死んでつぐなえ」という言葉があるが、死は時に解放を意味することもある。どんなに罪深きことをしても、死んでしまったらそれで終わりで、罰を受ける苦しみからも逃れることが出来るのである。
だから、森口先生は犯人たちを殺さないのだ。彼らが死んでしまったら、それは森口先生の「復讐」ではなくなるのだ。決して解放はしない。永遠の狂気の世界へと彼らを放り込むのである。
そう、そこで森口先生は彼らの大切な人たちに焦点を合わせる。大切な存在が奪われる絶望、悲しみ、その地獄を味わせるために。



そして、森口先生は「死」ではない方法で彼らを解放する。
ある一言で・・・




「な〜んてね!」




この言葉を放った森口先生の本心とは何だったのか?


自分がやり遂げた復讐の馬鹿馬鹿しさに対する自嘲か?

それとも、大切な存在を失った事でやっと罪の深さを実感した少年Aに対する解放宣言か?

自分は後者だと思います。それが、この「告白」に関わった人々たちを狂気の世界から解放し、全ての呪縛を解く言葉だから。復讐が終わる。地獄の道は終わる。それでみんなが救われる。命の重さを知った(かもしれない)犯人たちも、そして、森口先生自身も。
この言葉は原作にはない。原作は唐突に終わり、後味が悪く幕を閉じる。中島監督はそこに「救い」を加えた。これが見事な脚色で、ゆえに映画化の素晴らしさを増加させた。
「な〜んてね!」それは森口先生がしっかっりと「人間」だったことを意味し、同時に彼女が命がけで行った「命の授業」の終わりを意味する。

「後味が悪い」「共感できない」「絶望的」という意見をよく聞くのですが、自分はそうは思いませんでした。
むしろ、これは「希望」の映画だったと思います。



逆周り時計や逆再生されるシャボン玉など、壊れていくものが元に戻っていく映像は非常に美しい。
そう感じられる人間が、果たしてどれほどいるのでしょか?
破壊されていく方がいい。壊れているものを見る方がいい。
そういう感覚と、自らの大事なものをぶち壊す人の感覚は似ていると思いました。



人を殺してはいけません。なぜか? なぜだと思いますか?

― それは、あなたの大切な人を殺すことと同じだからです。







な〜んてね!

閉じる コメント(23)

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告白 GH字幕

俺はHKさんの晩酌の酒に俺の血を混ぜてしまいました。
3ヵ月後にはGH字幕検査で陽性反応がでるかも・・・
な〜んてね

2010/6/15(火) 午前 10:30 GH字幕

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松たか子の株はあがりましたね。
「命」我が子を殺された、泣きじゃくるシーンは
唯一の感情をむきだしにしたシーンですね、でもすぐ立ち上がる
ところが又いい。
我が子を殺されたら私も松たか子になるかも

な〜んてね

2010/6/16(水) 午前 0:07 [ はに ]

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じっくりと読ませていただきましたよ。
いや〜映画に対しての造詣の深さを感じる記事ですね〜
しかしこういう映画が日本で生まれたってのに誇りを感じますね。
すごい作品でした。
TBお返しさせてください〜

2010/6/16(水) 午後 7:43 SHIGE

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私は後味が悪かったのですが、確かに希望とも言えますね。
でもいずれにしても”映画として”素晴らしい出来だと思います。
そうですね。どうしても松さんばかりに目がいってしまいますが
木村佳乃さんの壊れゆくママもうまかった〜
TBさせてくださいね。

2010/6/18(金) 午前 0:54 car*ou*he*ak

これは、観たいですね〜
邦画で、久々に観たいと思った作品です〜
公開中に観に行けるかな。。。

2010/6/19(土) 午後 0:22 ゴルバチョフ剛

<GH字幕さんへ>
ヤクザよりこっちのほうが怖いような気が・・・(笑)
ウェルテルのような教師がいたら、ブン殴るか喰う!
これぞ、食人族殺人事件!(な〜んてね)

おっと、こんな訳の分からないことを言うのはやめます(笑)
牛乳は何が入っていようが、体に良いので飲みましょう!
カルシウム!カルシウム!

2010/6/20(日) 午前 1:29 映画大好き人間

<HKさんへ>
字幕さんについて映画化したら、映画史上に残る超変態作が出来上がりそう!(笑)
でも、そんな映画のように、また日本の映画史に残る仕事をしたと思います、中島監督。
原作から映画への脚色、もう見事。
そうそう、その違いを分かっていない人にこそ、HKさんのレビューを読ませたいのですよ!

で、ご友人さんのレビュー、読ませていただきました。
ほんと、自分のような悪文より、はるかに素晴らしい洞察でした。さすがはHKさんフレンド!
細かい点までよく見ていらっしゃいますね。今後も覗かせていただきまーす!

2010/6/20(日) 午前 1:36 映画大好き人間

<恋さんへ>
この映画自体が「命の授業」だったのだと思います。
今こそ、こういう映画を観てもらいたい。
そして、こういう映画の誕生を、素直に喜びたいです。

で、サントラおすすめですよ!
ちょいとタラちゃんぽいし。
いろんな意味で気分がおかしくなりますが(笑)

2010/6/20(日) 午前 1:39 映画大好き人間

<GH字幕さんへ>
衝撃的な告白ありがとうございます(笑)
でも、それはこの上なく嬉しいことではありませんか!
何てたって、最強の変態になれるんだもん!
是非、オイラも!

な〜んてね!
3ヵ月後が楽しみだー(笑)

2010/6/20(日) 午前 1:41 映画大好き人間

<はにさんへ>
はにさんは松たか子はあまり好きではなかったんですよね。
それゆえに、今回でかなり株が上がったのではないでしょうか?
自分は昔から大好きですー
あのシーン、松たか子一世一代の名演と言っても過言ではないですね。


はにさんは優作のように探偵になっちゃえ!



な〜んてね!(笑)

2010/6/20(日) 午前 1:45 映画大好き人間

<SHIGEさんへ>
長文・悪文で申し訳ありません。
こういう映画が日本で誕生したことは、本当に素晴らしいことですし、何より皆さん、心打たれるものを感じられたのではないでしょうか?
中島監督は、邦画史に名前を残し続けますね〜 今後も期待!
次回作はポップ?それともシリアス?(笑)
TBどーもです♪

2010/6/20(日) 午前 1:48 映画大好き人間

<カルさんへ>
いろいろな感じ方があると思います。少なくとも自分は「希望」のあるお話だったと思いました。
でも、気分は「ドヨーン…」となりますね(笑)
「殺人や暴力を好感的に描いている」という評論家がいたのですが、映画をちゃんと「観れていない」ですね。だってそんな描写はしてないもん!
木村佳乃は『おろち』もそうでしたが、こういう漫画的な役が上手いなぁ〜
助演女優賞ですな!(笑)
TBどーもです♪

2010/6/20(日) 午前 1:57 映画大好き人間

<ブーキーさんへ>
絶対に観に行った方がいい!!
と思いますよ(笑)
邦画もやっぱり面白いですね〜『アウトレイジ』もそうだし。
是非、ご覧になってくださいね〜!

2010/6/20(日) 午前 1:59 映画大好き人間

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これは、ホント良かったです〜
どっぷり世界に浸っちゃいましたよ〜
映像も音楽も印象的でした。
そして、森口先生。
なんでかなー泣けたです〜
TBさせてくださいね〜♪

2010/6/28(月) 午前 1:44 ろこたん

<ろこたんへ>
落ち込む人は「どよーん」と落ち込んじゃうみたいですけど、
自分はとても感動したざんす。
で、ろこたんも後者ですね。

中島監督の脚色力に脱帽です。アカデミー賞、獲るでしょ!
松たか子、あの感情を押し殺した表情がめちゃくちゃ怖い。
腹の中は煮えくり返ってるくせに・・・コワイコワイ
お、この泣き虫〜!





な〜んてね(笑)
TBどーもです♪

2010/6/28(月) 午後 5:29 映画大好き人間

そうなのよ
原作読んでるときから木村さんに興味がわいてね
よかったわ〜映画も。
TBしますねー
な〜んてね
あ、ほんとにTBします〜

2011/2/15(火) 午後 5:55 [ 翔syow ]

<翔さんへ>
あの親バカぶりが最高でしたよね(笑)
過保護な母親ね・・・別にいいじゃない。
翔さんも?(笑)
で、これは映画観る前でも観た後でもいいから
是非原作も読んでほしいですよね〜
うんうん、ちゃんとTBされてるよ〜(笑)
TBありがとうございます〜

2011/2/16(水) 午後 11:49 映画大好き人間

『告白』を書いた原作者も、映画にした監督も凄いと思ったけど、
その解釈をこんな風に形に出来る映画大好き人間さん、心から尊敬します。
記事読ませていただいて、涙ぼろぼろですよ。
原作しっかり手元にあるので、しっかり読みますね。
TBさせてください。 傑作ポチリ☆

2011/3/6(日) 午前 4:49 pu-ko

<pu-koさんへ>
ああー・・・こちらも返事遅くなって本当にすみませんでした!
いえいえ、尊敬だなんて・・・ただの変態ですから^^;
自分が思ったことを書いたまでです。
『告白』に対して「テーマが衝撃だ」「衝撃の問題作だ」とか、
そういう騒がれ方は本当に嫌なんですよね。
むしろ、人間が人間を「赦す」ことって一体どういうことなんだろう?
ということを描いた作品だと思っています。
どんなに憎んでいても、最後には「赦す」道を選ぶ、それが人間なのかもしれないなぁ、と。
松たか子が途中で言う「バカバカしい」という台詞と「な〜んてね」という台詞がそれを物語っていると感じています。

とにかく、僕の方こそ心から尊敬しているpu-koさんがそう言ってくれて本当に嬉しいです。
こういうお言葉をいただいたときに「書いてよかった」「ブログやっていてよかった」って感じるんです^^
こちらこそ、ポチまでしていただいてありがとうございました!

2011/5/11(水) 午後 10:46 映画大好き人間

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この作品見て気持ち悪くなったのって
あたしくらいなのかな〜

TBおねがいします

2011/6/29(水) 午後 1:27 る〜

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