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映画監督というのは、普通は「オイラの映画を観て楽しんでね!」と観客に微笑むものだ。
しかし、ウィリアム・フリードキンは違う。
「俺の映画を観て死ね!」と45口径のマグナムを片手に観客に叫んでいるようだ。
悪魔が作った悪魔の映画・・・それはホラー映画史に残る善と悪の壮絶なドラマを生んだ。
『エクソシスト』(74年/ウィリアム・フリードキン) 


わたしはメリン神父(マックス・フォン・シドー)。
イラクの遺跡発掘の調査をしているとき、悪霊パズズの像を発見した。
10年前、パズズは少年の身体に憑依し、わたしは奴と死闘を繰り広げたのだ。
なんだか嫌な予感がする・・・
再び奴と戦うような、そんな気がしてならない・・・

おれはカラス神父(ジェイソン・ミラー)。
神父もやっているけど、精神科医もやってるよ。
母ちゃんが認知症になり死んじゃったんだけど、
もしかして、おれに責任があるのかもしれない・・・
はぁ・・・もうこの仕事辞めたい。
でも、おれは戦わなくてはならないようだ。
あの娘を、悪魔の手から救わないといけない。

わたしはクリス(エレン・バースティン)。女優ですの。
もう耐えられない・・・わたしの娘があんな風になってしまうなんて・・・
恐ろしい・・・あんなに優しくていい子の娘が、あんな言葉を発するなんて・・・
しかも、今日なんてわたしの目の前で首を360度回転させたわ!
・・・もうあの娘は「あの娘」じゃない。
助けて、お願い。

イエス・キリスト・ファックユー!
オレ様は悪魔のパズズ様だ!ぐはははは!
カス人間共を地獄に落とし入れるために、オレ様は今宵も頑張るのだ!
今回のターゲットはリーガン(リンダ・ブレア)とかいう娘だぞ。ぐひひ、たっぷりいたぶらせてもらおうか〜
カラスとかいう神父もやって来たが、ゲロ浴びせてやったよ!ぐははは!
・・・ん?な、なに!あのメリン神父もやって来るだと!ふふ、10年ぶりじゃねえか・・・
よっしゃ、勝負してやる!ぶっ殺すぜ!
かかってこい、エクソシストども!


1971年に小説『エクソシスト』を発表するまで、原作者ウィリアム・ピーター・ブラッティは悪魔崇拝(サタニズム)やホラーというジャンルとは無縁の人物だった。ブラッティは俳優兼コメディ作家として活躍していたのだ。
そんな彼の生涯を変えたのは、たった一枚の新聞記事だった。

1949年8月24日。当時、大学生だったブラッティは『ワシントン・ポスト』に掲載されていた「司祭、悪魔の手から少年を救い出す!」という記事に言い知れぬ衝撃を受けた。
それによると、メリーランド州のマウントレーニヤで14歳になるジョン・キフマンという少年が突如錯乱状態に陥ってしまったのだ。病院に一ヶ月間収容されるも容態は全く回復せず、ついに両親はカトリックに助けを求め、最後の手段として「悪魔祓い(エクソシズム)」を受けさせることにした。以後二ヶ月間の死闘の末、司祭は悪魔を祓うことに成功し、少年は無事に完治したという。
悪魔祓い前後においては、本やテーブル、そして少年自身が浮遊するというポルターガイスト現象が多発し、ときには少年の肌に得体の知れない文字が浮き出てくることもあったらしい。
この記事を読んで二十年後、ブラッティはまるで悪魔に憑りつかれたかのように調査を始め、悪魔祓いの儀式を担当した司祭を突き止めることに成功する。
司祭の名はウィリアム・F・ボウダン。当時三十代だった彼は儀式におけるショックのため、儀式後には白髪になってしまったという。
ブラッティは彼から壮絶な死闘の日々を記した日記を見せてもらった。
「ここにあることは全て事実です」司祭は誓った。
そんな取材をもとに書き上げられた小説こそが『エクソシスト』なのだ。


映画化を決定したワーナーは当初、監督には『黄昏』を監督したマーク・ライデルを予定していたが、急遽、『フレンチ・コネクション』でアカデミー賞に輝いたウィリアム・フリードキンに依頼することにした。
ドキュメンタリータッチで緊張感ある演出が出来るフリードキンだが、この選択が後に地獄の現場を招くことになる。
リーガンの母親役にはワーナー側がシャリー・マクレーンやジェーン・フォンダ、オードリー・ヘップバーン(!)という面々を候補に挙げたが、フリードキンは彼女たちを断固拒否した。
フリードキンが推したのは『ラスト・ショー』(71年)で注目していたエレン・バースティンだった。
理由は「他の女よりおっかないから」

しかし、配役を自分の好みで決めていたフリードキンでさえ、安易に越えられない壁があった。
リーガン役である。
物書きのベテランであるブラッティが書き上げた第一稿を読んだフリードキンは「こんなものじゃ、やってられねえ!」とブラッティの目の前で原稿を叩き捨てた。
「もっと強烈な脚本を書いてこい!」そうフリードキンに言われてブラッティが改稿した脚本は、凄まじい描写で埋め尽くされてしまった。
リーガン役は過激な台詞は序の口、人前で放尿したり、十字架を血まみれの性器に刺したり、股間を母親の顔に押し付けたりする。
そんな役をトラウマと考えずに平然とこなせる、そして両親が承諾してくれる少女・・・
いるはずがなかった。
リーガン役のオーディション開始前、「もしものときは25歳の小人女にやらせるぞ」と呟いていたフリードキンの目の前に14歳のリンダ・ブレアが現れた。
彼女は過激な台詞も何の苦も無く語ってみせた。
「映画の神が俺に最高の贈り物をくれたぜぇ!」
映画の神というより、悪魔はいつもこの男の味方だったようだ。


フリードキンは死闘が繰り広げられるリーガンの寝室のセットをニューヨークの音響スタジオに組んだ。
彼はセットの室温をいつでも常温0度にしていた。
撮影時は真夏だったが、セット内では防寒着なしでは動けないほどの寒さに包まれていた。
メリン神父役のマックス・フォン・シドーはあまりの寒さに顔面が凍り付いてしまい、口が開かなくなってしまったという。そんな極寒の中に、薄着で耐えているリンダ・ブレアを閉じ込め続けた。
「おそろしい寒さで吐く息までが凍りつくようにしたい。それが悪魔のパワーだ!
現場のフリードキンは常に笑顔だったという。

リンダ・ブレアはベッド上で跳ね上がるシーンで身体に付けたハーネスが食い込み、激痛の中で演技を続けなくてはならなかった。
もちろん、フリードキンは実際の痛みに耐えている少女を見つめながら、この上なく満足していた。
また、リーガンが十字架を性器に突き刺す場面で、それを止めに入る母親役のバースティンが娘に殴り倒される。
フリードキンは迫力のない彼女の倒れ方に嫌気がさしていた。
そこでフリードキンはピアノ線でバースティンを思いっきり引っ張ることにした。
「死ぬ気であの女を引き倒せ」
何も知らないバースティンは猛烈な勢いで転倒し、背骨を強打して骨格が歪んでしまったのだった。
あの時の苦痛に歪む絶叫は本物であり、フリードキンはそれを本編で使用した。

撮影が進むとフリードキンは現場に拳銃やショットガンを持ち込むようになった。
彼はそれを演じる俳優たちのすぐそばで予告なしに発砲し始めたのである。
カラス神父役のジェイソン・ミラーは「一度至近距離から発射されたんで、頼むからそれだけはやめてくれ、他のことなら何でも我慢するから」とフリードキンに抗議し、フリードキンは「わかった、もうやらない」と約束した。
翌日、カラス神父がリーガンのテープを自室で再生していると、ふいに電話が鳴り驚いて振り返るシーンで、ミラーは三十センチほど離れた背後からショットガンをぶっ放された。
「怒りで気が狂いそうで、頭が変になった」とミラーは述べている。
このように、画面から伝わる異様な緊張感は、フリードキンの銃がいつ自分の人生に幕を下ろすか分からないというスタッフと俳優たちの恐怖そのものだったのだ。

『エクソシスト』の悪魔祓いは、実際の悪魔祓いを忠実に再現しているという。フリードキンは儀式の簡略化は絶対にしなかった。
そのため、実際の司祭を現場に呼んで撮影に協力させている。悪魔祓いのディティールは、この司祭が指示を出してくれた。
フリードキンはラストシーンで司祭を登場させることにした。エキストラではなく、演技者として。
ラストシーン、階段から身を投げ出したカラス神父に懺悔を問うシーンを司祭が演じるのだが、なぜか何度もNGが出た。
素人で温厚な司祭に対して、フリードキンは15回以上のNGを出し、夕方から朝の三時まで撮影を続けた。
「何回目だと思っているんですか?」フリードキンが弱りきった司祭に声をかけた。
「わたしはベストを尽くしているつもりですが、いつまで経ってもあなたのOKがもらえない。もう何度も同じことを繰り返していますが、これが事実でしょう」と司祭が訴えた。
「俺のことを信じてもらえますかね?」フリードキンが訊ねた。
当然、司祭は「ええ、信じていますよ」と答えた。
すると、フリードキンは司祭の横顔を張り飛ばし、その足でディレクターズチェアに戻った。
そして呆然と一言、「スタート」
遺体の上で十字を切る司祭の手が震え、今にも泣き出しそうな表情をするが、それにはこんな経緯が存在したのだった。
フリードキンは完全に狂っていた。悪魔は彼に憑りついていたのである。


フリードキンは単なる恐怖映画を撮ったつもりは全くなかった。
彼は今世紀に残る善と悪の壮絶な死闘を圧倒的なパワーで観客に見せつけてノックアウトさせようとしたのだ。
観客に楽しんでもらいたいなんて考えず「おれの映画を観て死ね!席で冷たくなれ!」と挑んできている。
観客を楽しませるのではない。観客を殺しにかかっているのだ。
こういうことは、監督として重要なことだと思う。
たとえば、ボクサーは相手に殴りかかるときに「よし、ここで観客を楽しませよう」とは考えていない。
それと同じで、恐怖映画を撮る監督も観客を殺しにかかるべきなのだ。
フリードキンはそのために、現場で一番の狂人になってみせた。
周りのスタッフたちに「この人は映画のためなら人を殺してしまうかもしれない」という緊張感を与えた。
そして、それが映画本編にそのまま焼きついたのだ。

ウィリアム・フリードキン、彼こそ真の映画監督だと心から思う。
いや、彼こそ映画監督という悪魔なのだと・・・


※参考文献 『エクソシスト』『映画懐かし地獄70'S』
      『バトル・オブ・エクソシスト─悪夢の25年間』『バチカン・エクソシスト』


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そうそう!『フレンチコネクション』では
素顔は温厚なジーン・ハックマンがこの基地外監督に
泣かされたっていうし『エクソシスト』の現場では
エレン・バースティンやジェイソン・ミラーが
憔悴しきっている表情が画面から伺えるのも
全部この基地外の仕業なんだよね!基地外バンザ・・・とは言わねぇ
でも変態ばんざい!『クルージング』は字幕で作るぞ!Fuck You!

2010/8/13(金) 午前 2:10 GH字幕 返信する

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すごい・・・こんな話がこの映画にあったなんて。
実は怖くて一度も観てないんですが、なんだか観たくなりました。

2010/8/13(金) 午前 9:21 ろこたん 返信する

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「エクソシスト」最高の作品ですよね。
いろいろまつわる話は聞いてました。
ここでまた 新たに 感動しちゃいました^^
もう1度…観てみよう〜何度も見たのに きっと楽しめるね♪ ポチ

2010/8/13(金) 午前 9:44 ころころ 返信する

ウィリアム・フリードキン=GH字幕説が流れています!
気をつけて
あ、もう遅かった

リンダ・ブレアの声を吹替えたばあさんも
生卵ヤマほど飲まされたりして
オエオエと死ぬ思いさせられたんだよね
要するに一番怖いのは・・・

お休み〜

2010/8/13(金) 午後 10:40 [ HK ] 返信する

乗り移ったんでしょうかねえ。。
実際ローマで、悪魔祓いをするんだそうですけど、
この話を聞いて、監督も憑依されちゃったんだろうなあ。。と思うほかありません。あの息の白いのは、そういう理由だったのですね〜

2010/8/14(土) 午前 8:00 恋 返信する

格闘技でも全盛期のミルコ・クロコップや山本KIDあたりには、対戦相手を殺す気なんじゃないかという魅力があったもんな〜今や、そういうのまったく感じないけど・・・
映画監督でも同じなんだろうね。恐怖映画だと特に。

2010/8/14(土) 午前 11:37 HERO-K 返信する

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ウィリアム・フリードキン=GH字幕(※1)説が流れています!

俺はHKさんの映画(※2)は作らないよ。残念だな。

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(※1)キアヌ・リーブス似の変態ブロガー。
最近はロジャー・コーマンに傾倒しているらしい・・・・
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(※2)『真夜中のパーティ』(1970)THE BOYS IN THE BAND
フリードキンの出世作。NYのオカマたちの映画だ。

2010/8/14(土) 午後 11:57 GH字幕 返信する

がっつりしっかり読ませていただきました〜
撮影秘話にそんなことがあったなんて知りませんでした。
こうなるとやっぱり憑かれたとしか言いようがないかもねぇ。
そして傑作である事には違いないですね〜

2010/8/15(日) 午前 0:16 じゅり 返信する

ありゃ、コメント残したつもりだったのに途中だったかな。
しかしフリードキン監督恐ろしいですね〜w
役者のみなさん、撮影終了時には監督のこと殺したくなったかもですね(>v<)
みんなの恐怖の表情等、意識しながらぜひ観直してみたいです。

2010/8/15(日) 午前 9:42 pu-ko 返信する

こんな撮影秘話があったなんて知りませんでしたっ!!!
もう一度、いや何回目か分かりませんが再度観たくなりました!!

2010/8/19(木) 午後 7:56 kaorun 返信する

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