ずっと噴水が好きだった

明治、大正、昭和。公園、街角、博覧会。戦前日本の噴水事情を気ままに探索中。なんだかんだで続いてます。ビバ噴水!

共進会の噴水

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 第一会場の舞鶴城公園(甲府城)に作られたのは「舞鶴の噴水」。現在「自由広場」と呼ばれている辺り、外堀にかかる遊亀橋を渡り、共進会の正門をくぐった目の前に噴水池は設けられた。岩上の鶴は「高さ九尺鉄筋コンクリート製の鶴雄雌二羽」(『甲府勧業共進会事務報告』)で、「雄鶴嘴端より噴水を作る」というデザインであった。岩の周囲からも霧のように噴水させ、さらに夜間のライトアップを図り、「青白の電燈を互に照対して」場内に美観を添えたという。
 
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「第一会場墳水」(『甲府勧業共進会記念写真帖』1918年)

 
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「第一会場正面」(同上)
 
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「第一会場の一部」(同上)
 
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「舞鶴公園ノ一部ト第一会場」図(『甲府勧業共進会事務報告』)
 
 ところで、遊亀橋を渡った先には現在、金属製の鶴の像が台座の上で羽を広げている。コンクリート製だった1918年の鶴とは明らかに別物だ。足元の石碑には「舞鶴の噴水の再現移置について」とある。碑文によれば、くちばしから金属管を覗かせたこの鶴もかつて噴水として作られた像で、「謝恩碑の東側の池にありました舞鶴の噴水」を再現したものだという。つまり、舞鶴城公園には、(1)甲府勧業共進会の「舞鶴の噴水」、(2)謝恩碑の建つ高台にあった「舞鶴の噴水」、(3)その噴水を戦後再現した「舞鶴の噴水」という三代の「舞鶴の噴水」が存在したことになる。
 
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遊亀橋のたもとの鶴像(2012年12月23日筆者撮影)
 
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「舞鶴の噴水再現移置について」碑(2012年12月23日筆者撮影)
 
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現在の謝恩碑(2012年12月23日筆者撮影)
 
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「舞鶴城公園」絵葉書
 
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1935(昭和10)年の年賀状
 
 さて、石碑は表だけではなく裏を探れは調査の鉄則である。しかし、石碑が鶴の台座と植栽にぴったりと寄せて設置されているため、全く裏が見えない。必死で植栽をかき分け、石碑の裏にスマートフォンを差し込んで写真を撮ってみたり、どうにかこうにかしたおかけでうまいこと「昭和六十年六月八日」という日付が読み取れた。さっそく甲府駅前の山梨県立図書館で『山梨日日新聞』のマイクロフィルムを借り出し、石碑の日付を調べてみるとすぐに記事が見つかった。
 
 「42年ぶり ツル羽ばたく/舞鶴公園でブロンズ像除幕」―。日付は新生舞鶴の噴水の除幕式が行われた日であった。甲府市婦人連合会が旗振り役となり、在京県人会連合会やライオンズクラブからの募金も得て自由広場に舞鶴の噴水は再現されたという(『山梨日日新聞』1985年6月9日付)。この噴水は近年まで残っていたが、1990(平成2)年からの舞鶴城公園整備事業の一環として撤去されたようだ。
 
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写真(山梨県『平成20年度公共事業等事後評価調書』より)
 1918(大正7)年10月5日、市制施行30年を記念した勧業共進会が甲府で開催された。市内四カ所の会場のうち、第一会場の舞鶴城公園(甲府城)と第四会場である太田町公園(遊亀公園)の二カ所に噴水が設けられた。

 「市勧業共進会の記念として太田町公園に永久的噴水を設置すべく…該噴水は池中に水面約十尺の巌石を据付け自然の瀧を擬して噴水せしむるに在りと又舞鶴城公園内にも共進会期間中舞鶴の噴水を設置する予定にて…」(『山梨日日新聞』1918年9月11日付、「噴水設置工事」)

 太田町公園の噴水は「富士山麓より運び来れる熔岩を十数尺の高さに積上げ其上には鉄製の亀を据噴水する仕掛」(『山梨日日新聞』1918年10月5日付)となっていたという。後日刊行された『甲府勧業共進会事務報告』(1919年)によれば、鉄製ではなくコンクリート製となっているが、いずれにせよ、亀を据え付けたのはおそらく舞鶴城公園に設けた「舞鶴の噴水」と対置する意図があったのだろう(公園の名前自体、この共進会に合わせて太田町公園を遊亀公園に改名したらしい)。「永久的噴水」として企画されたこの噴水は現在も遊亀公園の一画に保存されている。

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「遊亀公園内第四会場」図(『甲府勧業共進会事務報告』)


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現在の遊亀公園の案内図(2012年12月23日撮影)

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会場図と同じ方向から撮影した現在の噴水

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「遊亀公園」絵葉書


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同上拡大
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 明治40年(1907)、関西・九州の各県を中心に20の府県が参加し、「第二回関西九州府県連合水産共進会」が長崎市で開かれた。噴水は正門を抜けた先に広がる中庭の中央にあった。2万5千点に及ぶ水産物・水産加工品を集めた「水産」をテーマとする共進会らしく、噴水は「蛤」をモチーフとしている(「蛤、巌上に横はりて潮水を吐けるの状をセメントにて模造し…」)。絵葉書からの確認は難しいが、噴水の両側に設けられた池は、それぞれ関西と九州をかたどった形をしていたらしい。

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