今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

やっと書き込み再開します。本年もよろしくお願いいたします。

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新作の「300」を静岡有楽座で観てきました。静岡の洋画ロードショー館としては、一番の老舗になるのではないでしょうか。地下の劇場ですが、382席のキャパにやや傾斜のある場内は天井も高くて広い空間になっています。スクリーンも大きくて見易い映画館になっています。デジタル音響もドルビーデジタルとDTSの両方を装備しているのですが、ドルビーデジタルでの上映が多いようです。

その昔、ギリシアのスパルタ王レオダニス(ジェラルド・バトラー)の元にペルシア帝国の使者がやってきます。東方の大帝国がギリシアの小国に対して要求したのは「土と水」。それはペルシアへの服従を意味していました。それに対して、レオダニスは使者を殺し、300の兵を集めて自らペルシアを迎え撃つべく立ち上がります。それに他の国も兵を出してきますが、スパルタの精鋭の兵士ほどの戦力にはなりません。海岸線の狭い山道に壁を築いて、100万と言われるペルシア軍を待ち伏せします。地の利もあって、スパルタ軍はペルシア軍に多大な犠牲を払わせますが、ペルシア王クセルクセス(ロドリゴ・サントロ)は数にものを言わせて、スパルタ軍に迫ってきます。一方、王妃ゴルゴは議会に援軍を出すように働きかけようとしたのですが....。

スパルタ教育でおなじみのスパルタ国では、子供の頃から戦士になるための厳しい教育がされていたようです。その試練に生き残ったものがスパルタの戦士として独り立ちできる、だから、スパルタの戦士はムチャクチャ強かったんですって。そんな戦士を抱えるスパルタ国にペルシア帝国が属国になれと言ってきたとき、国王レオダニスは無謀(なのかな、やっぱり)にもそれを蹴ってしまいます。海から続々とやってくるペルシア軍に対して、レオダニスは応戦しようと司祭に託宣をもらおうとしますが、ご託宣によると、今戦争してはダメと言われちゃいます。司祭もペルシアに買収されていたのですが、ともかく正規の戦争はできない、しかし、放っておけばペルシア軍はどんどん上陸してくる。そこで300人の精鋭部隊を率いて海岸線に向かいます。海と山に挟まれた部分なら、大軍を相手にしても互角に戦えるという読みがありましたから、とにかくそこにペルシア軍をとどめようというのです。

もとは、フランク・ミラーのグラフィックノベル(絵物語? 読む紙芝居みたいなものか?)が原作だそうで、映画も映像が絵巻物風というか、リアルではありません。チャンバラシーンにスローモーションやコマ落としを使ったりしているのも、劇画タッチと言えます。かなり、血しぶきやら手足が飛ぶ映画なんですが、リアルとは一線を引いた絵作りのせいか、生理的な嫌悪感につながらないのはうまいと思いました。さらに、畸形のいわゆるフリークの皆さんが戦いに登場してくると、歴史絵巻というよりは、「ロード・オブ・ザ・リング」の世界とかぶってきます。サイとか象が登場してくるのですが、これも動物というよりはファンタジーのモンスターみたいな見せ方になっていますので、「ロード・オブ・ザ・リング」のバイオレンス版のような趣があります。

ザック・スナイダーの演出は絵物語をそのままスクリーンに焼き付けたところがあって、せっかくのジェラルド・バトラーも生身の人間感がなくて、演技しているのかどうかもわからないもったいない使われ方になってしまいました。それは、他の戦士にも同様に言えることで、敵役のロドリゴ・サントロもせっかくの儲け役を演じ損ねたように見えてしまいました。そんな中で、王妃を演じたレナ・ヘディーが整った美形でない分、生身の人間を感じさせてキャラクターにも奥行きがあったように思います。また、唯一感情の葛藤を見せたのも彼女でした。

全編に渡って戦闘シーンばかりで、それ以上のドラマを感じることができなかったのですが、その中で、この300人の勇士の物語を語り伝えることが重要であるというのが面白いと思いました。ペルシア王は、レオダニスに脅しをかけるとき「全ての歴史家の目をくりぬき舌を切り取り、スパルタやレオダニスの言葉を使ったものを死刑にし、お前たちの事をなかったものとしてやる」ということを言います。それに対しレオダニスは、決戦の前に、自分の部下の一人を、自分たちの戦いぶりを語り伝えるためにスパルタへ送り返すのです。そして、ラストでは、300人の勇士の物語はギリシア全土まで行き渡り、それに奮い立つスパルタ軍がペルシア軍を迎え撃つことになります。物語を語り伝えることの重要性をレオダニスもクセルクセスも知っていたのです。自分が死んだ後も物語が永遠であることが死をも恐れない原動力の一つになっているのが興味深いと思いました。

また、もう一つ、息子を戦闘で失った隊長が、息子に「お前は最高の戦士だ」と伝えていなかったことを後悔するというシーンがあります。ここでも、言葉が伝わるかどうかが重要だという世界が描かれているのです。人間は言葉の動物だということがこういう映画で強調されているのはなかなか面白いところです。

最後は絶体絶命でも戦いに臨むという特攻をかけるようなものなのですが、ウェットな部分がなく、戦うことに迷いがなく、戦うこと自体が目的になっているので、後味は悪くありません。こういう戦い大好きな連中がいる一方で、政治をやる人間がいるから、国は滅びずにまとまっていくことができるのですが、この映画では、政治側の人間は賄賂に左右される人間として良く描かれていません。まあ、劇画よりもっとデフォルメされた絵物語だからこそ成り立つ世界なんだなあって納得してしまいました。グラフィック・ノベルなる独特の世界だからこそ成り立つ物語というべきでしょう。その設定を忠実にかつフルに活用したザック・スナイダーの演出は評価されるべきでしょう。ただし、映画としての奥行きというか潤いに欠けているように感じてしまったのは、原作の世界にあまりにも寄りすぎた結果かもしれません。

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「人間は言葉の動物」・・・なるほどな〜と読ませていただきました。「バベル」ではありませんが、なかなか自分の思いを人に伝えるのは難しいですよね。でも黙っていては絶対に伝わらないわけで確かにあの隊長の言葉は我々に問いかけているのかもしれません。
劇画やゲームの世界みたいな映画でしたね〜映像は斬新で美しくも感じましたが、ちょっとストーリーに深みがなかったのが私にはもの足りなさを感じさせました。TBありがとうございます♪

2007/6/10(日) 午前 8:28 choro

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Choroさん、コメントありがとうございます。確かにストーリーに深みが足りない物足りなさは私も感じました。まあ、そこに期待するのではなく、原作に忠実な(?)ビジュアルを楽しむ映画なのでしょうね、きっと。

2007/6/10(日) 午後 4:45 [ einhorn2233 ]

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はじめまして、私は、Tシャツも着ないで、裸で走り回る男たちの戦いが、延々と2時間以上続くストーリーにいい加減、飽きてしまいました。予告編とか、短い時間、観ている分には、ビジュアル面は、すばらしいと思います。

2007/6/11(月) 午前 6:51 ■Doobie■

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Doobieさん、コメントありがとうございます。この映画はビジュアルが売り物ですが、それだけ観てると確かに退屈するかもしれませんね。とはいえ、ビジュアルのすばらしさは認めざるを得ないところです。私からもTBさせてください。

2007/6/11(月) 午後 5:53 [ einhorn2233 ]

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歴史的に観ると、この300人がいて時間稼ぎをしたからこそ、侵略を防ぐことができたんですよね。
だから、この強いスパルタ軍団!!見方を変えると私的にはすごく面白い歴史ドラマでした。映像も斬新で。TBありがとうございました。お返ししますね。

2007/6/13(水) 午後 10:27 にげら

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にげらさん、コメントありがとうございます。300人で時間を稼いで侵略を防いだということでは、単に伝説を作るだけでなく、実際に役に立った(表現変かな)という視点には言われてなるほどの納得です。

2007/6/14(木) 午後 5:19 [ einhorn2233 ]

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私はこの撮影の仕方と映像効果とカット割とコマの流れが好きです(苦笑^^;!私もTBさせて下さい^^!

2007/6/18(月) 午前 0:06 [ hiro-mtb ]

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hiromtb2007さん、コメント&TBありがとうございます。確かに独特のカット割にスローモーションやコマ落としの挿入など、音楽のないMTVみたいなところがありました。コスチュームプレイのチャンバラでそういう技術を使ったのは斬新だと言えますよね。

2007/6/18(月) 午後 4:49 [ einhorn2233 ]

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