今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

ほぼ放置状態のブログでしたが70万アクセス突破、うれしいやら、申し訳ないやらで。

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今回は新作「パンズ・ラビリンス」を川崎チネチッタ9で観てきました。国外の評価も高い作品の割りに公開劇場が少なくて、シネコンで上映してくれるのはありがたい限り。

スペイン内戦の時代、フランコ独裁政権に対して、まだ山岳部のゲリラが政府軍に抵抗をしていました。オフェリア(イバナ・バケロ)は、政府軍の大尉と結婚した母と一緒に駐屯地に連れてこられます。母親は臨月で、体力的にかなり弱っていました。駐屯地の近くには迷宮があり、ある夜、そこに入ると、下へ降りる階段があり、さらに下に進むとそこには、パンの牧神がいて、彼の言うには「彼女を魔法の国の姫君で、人間の世界に勝ってに上ったのだが眩しい光に記憶を失っている、これから、オフィリアが3うの試練を全部クリアできれば、魔法の国は迎えられる」というのです。そこで、彼女は3つの試練に挑戦することになり、まず木の下の棲む大かえるから金の鍵を持ってくることでした。地上では、政府軍とゲリラの血生臭い戦闘が続くなか、果たしてオフェリアは3つの試練を達成することができるのでしょうか。

アカデミー賞の撮影賞、美術賞、メイクアップ賞を受賞し、他の映画祭でも多くの賞を受賞したスペイン映画です。「ミミック」「ヘル・ボーイ」などのハリウッド映画も手がけている、ギレルモ・デル・トロが監督した、ある種のファンタジーの一編です。

スペインの政府軍とゲリラの抗争はかなりリアルに描かれまして、大尉の残忍さがかなりリアルに描かれていて、素直な甘いファンタジーではありません。こんなゲリラとの戦闘の只中に放り込まれてしまうオフェリアはかなり不幸な子。ところが、迷宮に誘われるままに地下に降りると、そこにはパン(牧神)がいて、彼女にその素性と3つの試練の説明を受けます。そこで、第一の試練として、木の根っこにいる大かえるをやっつけること。実際、木の下に潜り込んでみれば、どろどろだし、変な虫はいるし、試練をクリアしたものの、彼女は泥だらけになって家に帰ってきます。どうやら、ファンタジーの世界と現実の世界は地続きなようです。

さらに、次の試練に臨むのに、母親の体調が悪くて、遅れてしまうと、パンの牧神が彼女の寝室にまでやってきて、彼女をせかすのです。最初は迷宮の奥にいただけのパンの牧神が彼女のプライベートの場所に入ってくるのです、そして、奇怪な生物のいる部屋から黄金の剣をもってくることになんとか成功しますが、その時連れの妖精を2体失って、課題は果たされなかっとことになってしまいます。そして、母親はお産で死亡し、息子はなんとか無事に産まれてきます。一方では、ゲリラと政府軍が戦闘になり、一人生きていた若者は大尉の拷問を受け、医師に死を望み注射を受けます。この医師と女中頭のメルセデスはゲリラと通じていて、食料や薬品を渡してきたのです。素性が大尉に知られた医師は射殺されますし、メルセデスも大尉に捕らわれてしまいます。


この先は結末に触れるのでご注意ください。


メルセデスは逃走して、ゲリラたちと合流し、政府軍に対して攻撃をかけます。オフェリアは最後の試練として、自分の弟、つまり赤ん坊を迷宮まで連れて来いと言われ、その指示にしたがいます。パンの牧神は、最期の試練として無垢なるもの血、つまり赤ん坊の血を要求するのです。それを拒むオフェリアを追ってきた大尉が彼女に発砲します。現世の彼女は死に、一方、地下の奥深いところにある魔法の国では、姫が戻ってきたことを祝います。

リアルな現実のシーンをつないでいくと、夢見がちな女の子が、内戦の犠牲になって、死ななくてもいい命を政府軍の大尉の銃弾が奪ったのです。その、少女の理不尽な死について、誰かがそれじゃあまりにかわいそうと思って、実は彼女は死んだのではなくて、魔法の国へいったんだよ、というベッドサイドストーリーをつむぎ出したという印象が残りました。血生臭い時代の少女の死に対する供養としてこんな話を語り伝えたような気がするのです。勿論監督自身が書いた脚本なんですが、その描き方は、内戦当時に命を落とした子供たちへの鎮魂歌のように思えたのです。魔法の国が死ぬ間際にオフェリアの夢だなんて考えてたくはないけれど、この物語自体は彼女の死からさかのぼって作られたように思えます。いわゆる、民話の世界ですね。

ハビエル・ナバレテの音楽は悲しげな子守唄のメインテーマで映画のカラーを決めてしまいます。ギレルモ・ナバロのキャメラは、迷宮の中で暗いシーンを月明かりのように見せて、美しい絵を作りだしました。

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そうですね。私も似たような解釈をしました。戦争によって犠牲になった子ども達への鎮魂歌ともとれますよね。
非常にせつない中にも反戦とその犠牲になった子どもを少しでも救いたいという気持ちが伝わってくるストーリーで、ファンタジーとした意味がわかるように思いました。TBありがとうございました♪

2007/10/28(日) 午前 10:07 choro 返信する

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Choroさん、コメント&TBありがとうございました。この映画を純粋にファンタジーにとるのは、残酷な描写もあって躊躇するのですが、辛い現実にかろうじて割り込んだファンタジーととらえた場合。納得できるものがあります。死んだ子供はお星様になりました、といった昔話に通じるものがあったと思います。

2007/10/28(日) 午後 6:44 [ einhorn2233 ] 返信する

確かに前作「デビルズバックボーン」でも戦争で命を落とした子供の哀しさが描かれていました。
監督はそうした多くの子供たちに対し、特別な思いを抱いているのかもしれませんね。
幼い少女の過酷な人生、そして哀しい結末。それでも少女が一瞬の安らぎを感じることができたことに涙が溢れました。TBさせてくださいね。

2007/10/29(月) 午前 2:48 pu-ko 返信する

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pu-koさん、コメント&TBありがとうございました。「デビルズ・バックボーン」でも、戦争の犠牲になった子供への鎮魂の思いがこめられたいたのですね。ハリウッドでは娯楽映画を作っているときは娯楽職人みたいなんですが、自国で作るときは思い入れがあるようですね。

2007/10/29(月) 午後 8:09 [ einhorn2233 ] 返信する

オープニングを改めて考えてみると、どちらの世界が彼女の世界なのかが解りますね。“戦争で亡くなった子ども達の鎮魂歌”的作品と言うのは同感です。悲しい物語でした。TBお返しさせていただきます。

2007/10/31(水) 午前 1:58 Jumble-Mari 返信する

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Mariさん、コメント&TBありがとうございます。厳しい現実の世界と魔法の国と二つのどちらが彼女の世界か、それは物語を語る場所や語る人によって変わってくるような気がします。確かに悲しいお話でしたね。あの赤ん坊が無事に成長できますように。

2007/10/31(水) 午後 3:09 [ einhorn2233 ] 返信する

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こんにちは。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
映画「パンズ・ラビリンス」はすばらしい映画でしたね。
私もブログでとりあげました。
よかったら、寄ってみてください。
http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611

2007/11/10(土) 午後 5:45 [ kemukemu ] 返信する

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kemukemuさん、コメントありがとうございました。これは物悲しいお話という印象で、ヒロインが夢の国で、再生したというよりも。そういうふうに信じたい気持ちを描いているように見えました。

2007/11/10(土) 午後 9:36 [ einhorn2233 ] 返信する

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einさまのレヴュー読み逃げしてしまいました。久々に画の力を感じた映画でした。とにかく映像が美しかったと思います。ただあまりにも少女が無防備に視線に曝されすぎだな,と,そこがちょっと気になってしまいました。
ファンタジーと現実と,どちらがリアルな世界だったのか,観る人それぞれに解釈が出来そうです。そして正直に言えば一番興味深い人物はビダルでした。怖いけど。あの拷問絶対嫌だけど。
上映館数少ないですよね。確かに一般受けは難しそうですけど,もうちょっと力入れてください配給会社さん,という感じでした。
わたしもTBさせてください。

2007/11/11(日) 午後 3:34 [ wxrfd775 ] 返信する

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wxrfd775さん、コメント&TBありがとうございます。ファンタジーの世界も結構気色悪くて、リアルと言えばリアルな世界でした。それにしても評価が高いわりに上映されている劇場が少ないですねー。川崎のシネコンで大画面で観られた私はラッキーかも。

2007/11/11(日) 午後 10:13 [ einhorn2233 ] 返信する

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最初はシネギャラで観ました。
今回は清水映画祭で上映されていたので、いい環境で観直すことができました。それが要因の一つだとは思いますが、傑作だと思いました。
皆さんの記事の解釈が、人それぞれで面白いですね。
民話という切り口も、大変興味深いです。
遅くにすみませんが、TBさせていただきます。

2008/4/23(水) 午後 9:46 出木杉のびた 返信する

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のびたさん、コメント&TBありがとうございました。この映画はファンタジーと銘打ったわりには、気色悪く作ってある分、余計目に色々な解釈を呼ぶ映画になったと思います。そして、その延長で、物語に何かを託すということを考える一助になったのではないかしら。人の書く物語、その書き手の想いを映画から感じることは少ないですから。

2008/4/23(水) 午後 9:53 [ einhorn2233 ] 返信する

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TBありがとうございました^^!ラストは非常に複雑な気持ちになりましたが、あのラストだからこそ余計に心に残ったという感があります。重みがありました。私もTBさせて下さい^^!

2008/7/15(火) 午前 0:32 [ hiro-mtb ] 返信する

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hiromtb2007さん、コメント&TBありがとうございます。この映画のラストの解釈はある程度観客にゆだねられていますので、結末は自分で想像して、その結果次第で、いい映画だったり不快な映画だったりしちゃうんですよね。この映画の好き嫌いは観る人の考え方によって分かれそうです。

2008/7/15(火) 午後 8:31 [ einhorn2233 ] 返信する

なるほど、そうですね。あまりにも辛い現実からファンタジーの世界へと、子供たちへの鎮魂歌という表現ぴったりですね。
ラストのオフェリアの微笑みに涙が止まらなくなってしまいました。
こちらからもトラバさせてくださいね♪

2009/6/9(火) 午後 10:20 じゅり 返信する

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じゅりさん、コメント&TBありがとうございます。悪夢のようなイメージだけど、ファンタジーという作りでしたけど、監督の主眼は、土着的ファンタジーをどう見せるのかというところにあったようです。「本当は残酷なグリム童話」を思い出しました。

2009/6/10(水) 午後 10:02 [ einhorn2233 ] 返信する

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