今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

やっと書き込み再開します。本年もよろしくお願いいたします。

全体表示

[ リスト ]

今回は新作の「マイレージ、マイライフ」を川崎チネチッタ5で観てきました。シネシャンテで公開される映画が、同時期に川崎のシネコンで観られるってのはありがたいです。やはり、銀座まで出ないと観られない映画ってどうしても敷居が高くなっちゃいますもの。

ライアン(ジョージ・クルーニー)は、会社に変わってリストラ宣告するという請負死刑執行人。不景気なご時世からか、仕事はいっぱいで、アメリカ中を飛び回っています。年の300日も出張していて、マイレージもたまり放題で、ホテルとかのカードも一杯、出張ビジネルの上得意。偶然出会った同じ出張族の女性アレックス(ヴェラ・ファーミガ)と意気投合してベッドイン、それからも出張スケジュールの隙間で会おうってことになります。一方、ライアンの会社では、リストラ宣告をネットでやろうって話が持ち上がり、その提案者である若いナタリー(アナ・ケンドリック)が、研修という名目で、ライアンの出張に同行することになります。人生についての講演までやっているライアンですが、未だに独身で恋人もおらず、自分の人生に自信満々だった筈なのですが、アレックスとの出会い、妹の結婚が契機となって、何かが変わり始めるのでした。

「サンキュー・スモーキング」「JUNOジュノ」で面白い切り口の映画を見せてくれたジェイソン・ライトマン監督が、リストラ宣告人の出張族を主人公に、人それぞれに生き方についての違いについて見せてくれました。ジョージ・クルーニーが演じる主人公は、会社の代理人として、クビの宣告をするのが仕事。それなりの実績と自信を持っていまして、マイルがたまるのがうれしかったりする男。こういう仕事が会社レベルで成立するってのがアメリカらしいと思うのですが、クビを切られる方のガックリ度とか思うことは日本と大して変わらないです。「何十年もこの会社で仕事してきたのに」「この会社にはオレが必要だ」などなど、なるほど思うところは変わらないんだなあって。でも、その一方で、会社側は人情のかけらもないなあって実感。別の会社の人間を呼んで、クビの宣告をするってのはドライなもんです。

でも仕事にはプライドを持っているライアンは、ネットで画面越しにクビ宣告するというやり方にはものすごく反発します。まあ、その裏には、出張がなくなり、自分の生活パターンが変わっちゃうってことが大きいようです。そりゃそうだ、生活まるごと経費にできて、さらにマイルのおかげでセレブ扱いされてるんですから。日本で言うところの社用族ですが、不景気になれば合理化推進で、交際費が削られる、アフター5の接待や人間関係で仕事を円滑に進めてきたベテランからすれば、そこは合理化するポイントじゃないだろうっていう気持ち。そう考えると、日本人でも理解しやすい設定だと言えます。確かにクビ切り宣告人という仕事は、他人を失意のどん底に追い詰めることでお金を稼ぐわけですから、リストラされる人に対しての敬意を表するのは必要なこと、それをネットの画面越しにやるなんてひどい。そう考えるライアンの気持ちは理解できます。

会ったこともない人間の人生を修羅場にかえちゃうことなのに、それをネット越しにやろうと言い出したのは、現場を知らない大学出のおねえちゃんナタリーだというのは、ありそうな話です。そんな若い娘を、出張に同行させますが、実際にクビを宣告された人たちの様子を見て、落ち込むナタリー。それをずっとやってきたライアンからすれば、だからこそ、その場にいて、リストラされた者の気持ちを落ち着かせ、ショックを和らげるのが仕事のうちなんだと認識しています。そして、これは小娘のナタリーには荷が重い仕事だということも、知っている。でも、世間の流れに逆らうことができないから、きっとネット首切りが始まるんだろうなあって予感も持っているのです。時の流れに耳を塞いでいるわけではないのです。

でも、ライアンの関心事は、遊びであったはずのアレックスの存在でした。アレックスにとっても、ライアンにとっても、後腐れのない関係だった筈なのに、これまでの生き方の中で欠けていたものを彼女のうちに見出すようになります。と、書くと、かっこいいのですが、要はマジ惚れしちゃったのです。それまで、家庭を持つなんて考えたこともなかったライアンですが、出張がなくなるという生活パターンの変化と、妹の結婚から、やっぱり人生の伴侶を欲しくなったみたいです。それまでは、人生のバックパックは軽くしておくべきとか言って、、出張のノウハウを人生のノウハウのごとく講演してきたライアンなのですが、そんな人生では物足りなくなってきます。でも、結婚しないことを突っ込まれると「結局、人生は一人だ。両親も最後は介護施設だった。」と強がります。でも、それも一理あるわけでして、必ずしもどちらが正しいと決め付けることはできないです。どっちにも長所短所ありますもの。絶対的な優劣があるのなら、みんな悩んだりしませんもの。ただ、ライアンの場合、アレックスを妹の結婚式に連れていくことで、自分とアレックスの未来のイメージが頭をよぎってしまったようで、それまでの身軽でお気軽な人生観が揺らいでしまうのです。でも、やっぱり恋愛をあまりしてこなかった男の子が、女の子に恋してしまった図なんですよね。ジョージ・クルーニーが演じることで、そこにペーソスが出ました。自信満々キャラが揺らいでいく感じのちょっと情けないところが意外性があって面白かったです。

「現代を生きるあなたに、ほんの少しの提案と希望をくれる人間ドラマ」というのが宣伝文句なんですが、そういう癒し系の物語を期待すると肩透かしをくらうことになります。苦い結末を人情コメディとして楽しむ映画のように思うのですが、若い人とか、この映画から希望をもらえるのかしら。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



ナタリーの研修も終わり、彼女の提案したネットによるクビ切り宣告システムは本格的に動き出します。ライアンとしては面白くないけど、それも時代の流れとあきらめるものの仕事にも気を張ることができません。しかし、研修中にナタリーがクビ宣告した女性が自殺したことで、ナタリーは会社をやめてしまい、ネットクビ宣告システムは取りやめとなり、ライアンの出張生活は再開します。そこはOKだったんですが、アレックス恋しさが募った彼は、仕事ほっぽり出して、彼女の自宅まで訪ねて行っちゃいます。でも、そこには、彼女の子供とダンナがいたのです。呆然となるライアンですが、その痛い失恋を乗り越えつつ、またマイレージを貯める機上の人となるのでした。おしまい。

結局、映画の頭に戻っちゃうわけなんですが、冒頭の自信満々のライアンと比べると、結末での彼はどこか不安で根無し草みたいに見えちゃうのが面白いところです。ラスト近くにリストラされた人々が「家族がいることによって立ち直れた」というインタビューのシーンが挿入されるので、余計目にライアンの孤独が浮き上がるという構成になっています。でも、そう簡単には人間変われない、一時的な感情に流されて無様な失恋劇を演じてしまったのですが、それで大きく価値観が変わったようには見えません。でも、仕事を失うことと愛を失うことの二つを経験したことで、何か変わっているかもしれないねっていう予感で映画は終わります。人生は、思うようには運ばない、だから色々なことに立ち向かったり受け入れたりしなきゃいけない、そんな時に、頼れる誰か、思いやれる誰かがいるっていいよねって気分になる映画でした。ただ、ライアンが会社の金でマイレージ貯めてセレブ気分ってのは、サラリーマンの私からすれば、典型的な社用族で、あまり共感できませんでした。会社をやめた後、人生の晩年でみじめになるぞって思ったのですが、それは意地の悪い見方なのかな。

演技陣ががんばっていまして、ヴェラ・ファーミガとアナ・ケンドリックは、主人公の人生に影響を及ぼすキャラをリアリティのある演技で演じきりました。

閉じる コメント(16)

ラストはほろ苦いけど、ライアン自身、人生に必要なものは何かに気づいた訳なので、時間はかかっても幸せな人生にたどり着けるんじゃないかな、と希望を持って観ました。
クルーニーは内面の誠実さが窺えるライアンを素敵に演じていたと思います。
TBさせてくださいね。

2010/3/23(火) 午前 10:06 pu-ko 返信する

顔アイコン

pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。私には、かっこよく生きてきた主人公が、本気で女に惚れたら、すごくかっこ悪くなっちゃったというお話に見えました。他人の前で人生に講釈垂れるほどの人じゃないでしょう、アンタかっこつけすぎ、って思えてしまったのです。一方で、人生に必要なものは人それぞれで、若い時と晩年で必要なものも変わってくる、だから、ライアンみたいな生き方だって、あっていいと思うのですが、だからってそれでエラそうにするなよって気がして。

2010/3/23(火) 午後 6:57 [ einhorn2233 ] 返信する

あは、若い人、これみて希望もらえるかしら?のとこは私も思います^^;人生はおもうようにはいかないけど、人のつながりを少し考える機会があって変化がみえたね〜でした。かっこいいんだか情けないんだかの役はハマってました。TBお返ししますね

2010/3/23(火) 午後 11:08 LAGUNA 返信する

顔アイコン

らぐなさん、コメント&TBありがとうございます。ジョージ・クルーニーが演じてるから、一見カッコよく見えるんですが、人生のバックパックを軽くして、なんてえらそうな事言ってるくせに、恋に落ちたら、そんなのどっかへ行っちゃうのが、かなりマヌケ。最初からそんなカッコつけなきゃいいのにって思うのは、ブサイクなオヤジの嫉妬かしら。

2010/3/24(水) 午後 8:27 [ einhorn2233 ] 返信する

ジョージは相変わらずチャーミングで素敵でした(*^^*)
ユーモアあり、スマートで軽快なのに・・・鋭いインパクトを残す深い余韻に満ちた作品でした。
トラバお願いします!

2010/3/29(月) 午後 9:35 くるみ 返信する

顔アイコン

くるみさん、コメント&TBありがとうございます。ジョージ・クルーニーってホントに女性にもてるんですねえ。オヤジの私からすればいけすかない野郎なのに。
むしろ、アレックスの方が生き方としてはカッコいいと思えるのですが、女性からの賛同は得にくいだろうなあ。

2010/3/30(火) 午後 9:26 [ einhorn2233 ] 返信する

アバター

いろいろなライフスタイルがあるけれど、やっぱり人は一人では生きられませんものね。
ホロ苦さのあるラストの先にライアンの自分らしい温かな人生が待っているような気がしたのですが甘いですか?(笑)
遅くなってすみません。TBさせてくださいね♪

2010/3/31(水) 午後 8:27 choro 返信する

顔アイコン

Choroさん、コメント&TBありがとうございます。ラストで主人公は生き方を変えるのかどうかは明らかになっていないように思えます。もとの生活パターンに戻った彼が、そのパターンを変えるのか?さー、どーでしょーねーって思っちゃうのは、やはり冒頭の主人公の鼻持ちならないキザ男ぶりに反感感じちゃったからでしょうね。女性からすればいい男なんだろうけど、大人の情事からストーカーにまでなっちゃうのは、かっこ悪いのでは?やっぱり、それとも、いい男は、何やってもいい男なのかなあ。

2010/4/1(木) 午前 0:05 [ einhorn2233 ] 返信する

顔アイコン

ほんと、ほんと!
この映画で私の好きな場面は最後なんですよ。
リストラされた人たちは、みんな家族がいてまだ救いがある。
しかし、やっと人とのつながりに目覚めた?彼には仕事しかない。
でも、まぁ、またやっていくか。とペーソスを感じるあたり。
コメディでもありました。
TBお返しさせていただきますね。

2010/4/7(水) 午前 11:52 iruka 返信する

顔アイコン

irukaさん、コメント&TBありがとうございます。あのラストはひねったおかしさを感じさせました。結局、元の生活パターンに戻ってみれば、ライアンってやっぱりどこか気取ってて上から目線のナレーションですものね。高いプライドは揺らがないところをみると、懲りてないのかもって思わせるところありました。深読みした方が面白いコメディってのはよくできてるのかも。

2010/4/7(水) 午後 8:12 [ einhorn2233 ] 返信する

顔アイコン

ライアンは良い意味でアナログ思考で、人との関わりを避けているようで本当はその大切さを知っている人なんですよね。
それがすごく深くて良かったです。
TBさせてください。

2010/6/4(金) 午前 10:30 かず 返信する

顔アイコン

かずさん、コメント&TBありがとうございます。ライアンは確かに人の心を知っているんですが、でも、一方で人との関わりは苦手。その知ってるようでわかってない加減がドラマに奥行きを与えていたように思います。

2010/6/8(火) 午後 7:10 [ einhorn2233 ] 返信する

ドライでビターなお話ですけど、いつの世も変らぬ人の心の寂しさ、みたいなものがちゃんと描いてありましたね。
演出はなかなか新鮮で、軽妙な語り口のようにみせていたところが逆によかったかも。
トラバさせて下さいませ〜♪

2010/9/17(金) 午後 10:49 恋 返信する

顔アイコン

恋さん、コメント&TBありがとうございます。確かに主人公って気取っても寂しい人でしたね。でも、寂しいくせに変にカッコつけてるのが、私のようなサビしいオヤジには、なんだかえらそうな奴だと思えてしまいました。演出の軽妙さは、面白うてやがて悲しきの味わいでした。

2010/9/17(金) 午後 11:55 [ einhorn2233 ] 返信する

バッグパックひとつの人生も、身軽でいいかも、なんてちょっと思ったりしつつも、やっぱりそれじゃ寂しすぎるか、なんて思い直しました(^^ゞ
はっきりした結論が出てないけど、なんとなく変わるかもしれない、と思ったりしました。
TBさせてくださいね☆

2010/11/23(火) 午後 11:28 なぎ 返信する

顔アイコン

なぎさん、コメント&TBありがとうございます。身軽でいても、色々なものを引きずっても、長所短所があるわけですから、どこかでうまく割り切ることが必要なのではないかと思いましたです。確かに変わるかもしれないと思わせるラストでしたね。私のようなオヤジには、変われたらいいなあって余韻が残りました。

2010/11/24(水) 午後 8:48 [ einhorn2233 ] 返信する

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

開く トラックバック(9)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事