今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

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今回はTOHOシネマズシャンテ2で「愛する人」を観てきました。この映画館はフラットなつくりで、前に座高ハイな人が座ると画面が欠けちゃうという、全席指定には不向きな映画館。自分が、中肉中背(やや肥満)で場所を取らない人間でよかったなあって、ちょっと自画自賛。デブだけど。

14歳で妊娠した娘を養子に出したカレン(アネット・ベニング)は母親との二人暮らし。母親との関係も今イチでした、、家政婦ソフィア(エルピディア・カリーロ)や彼女に好意を持っている職場のパコ(ジミー・スミッツ)との関係もうまくいってません。一方、カレンが母親であることを知らないエリザベス(ナオミ・ワッツ)は優秀な弁護士で、新しく入社した先の上司ポール(サミュエル・L・ジャクソン)といい仲になってしまいます。一方で、彼女は隣家のダンナとも関係を持ってしまう性に奔放なタイプのようです。さらに、登場するのが子供ができなくて養子縁組を希望しているルーシー(ケリー・ワシントン)夫妻。妊娠中の実母と面談し、養子縁組はまとまりかけていました。そんな、カレン、エリザベス、ルーシーに人生の転機が訪れるのでした。

「美しい人」「パッセンジャーズ」などで知られるロドリゴ・ガルシアの脚本によるヒューマンドラマで、ガルシア自身がメガホンを取っています。原題は「Mother and Child」。親と子の絆をテーマにしたお話なんです。カレン、エリザベス、ルーシーという3人の女性のドラマが並行して描かれていきます。そこで見えてくるのは、親と子の絆、いや、もっと具体的な血のつながりへのこだわりでした。カレンは14歳の時産んだ娘を里子に出し、今はどうしているのかは知りません。でも、彼女は娘への手紙を書き続けていました。エリザベスは孤独な人生から築き上げた実力主義の女性、キャリア志向と性に奔放というのは、彼女の中では自然に同居しています。ルーシーは、ダンナとの間に子供ができないので、養子が欲しくて仕方がありません。そんな3人のドラマは前半は接点がありません。

カレンは自分の母親との関係がぎくしゃくしていました。家政婦の親子の方に母親が心を開いていることにショックを受けるのですが、確かに常に防御の姿勢を取ってしまうカレンはとっつきにくいタイプです。職場で、彼女の好意を持ってくれるパコに対しても不必要につらく当たってしまいます。どこか不幸そうに見えるカレンですが、家政婦の娘やパコが彼女の心を少しずつ溶かしていきます。前半の彼女は、いわゆる怖いオバサンでして、あまりお近づきにはなりたくないタイプ。孤立しちゃうだろうなあと思わせるキャラなんですが、家政婦の娘やパコが彼女の心を開いてくれる、すごく運がいい人。ここが映画のマジックなんでしょうけど、こういうオバサンが実際にいたら、誰からも相手にされないのが現実でしょう。そして、パコと結婚し、パコの口ぞえもあって、自分の娘を捜そうと思い立ちます。

一方のエリザベスは避妊をしていたのに、予想外に妊娠しちゃいます。父親が誰かもわからない子をお腹に抱えて、彼女は仕事をやめ、ポールの前から姿を消します。堕胎しちゃうのかと思いきや、どうやら産んで育てる気のようです。そんな彼女も生き別れた母親が気になり始めます。自分の写真と手紙を、養子縁組してくれた教会へと送るのでした。

ルーシーは、養子の実母の承認を得る必要がありました。今は、実母が養母を選ぶようなスタイルになっているようです。この実母がちょっと変わってるというか、正直言って子供みたいなタイプ。でも、ルーシーとしては何とか自分の子供が欲しいと思っています。ところが、ダンナが養子縁組に難癖をつけるようになっちゃって、怒ったルーシーは自分一人で子供を育てると決心。

三者三様のドラマから見えてくるのは、みんな、会ったことのない母や娘との関係にこだわっているということ。父親なんて立場ないんだなあってしみじみしちゃうのですが、これが母と息子だったら、どうなっちゃうのかなって興味が出ました。この映画は、基本的に女性の立場で物語が作られていまして、男性は絆に対してすごく淡白です。自分の体からへその緒を引きずって出てくる子供に対して持つ感情は、男性のそれとは生理的に違うんだろうなとは思わせるのですが、オヤジの身では、その違いの部分を感じ取れないのが残念。注意しておきたいのは、3人とも結構面倒くさいキャラクターであるということ。感情移入するには、ちょっと距離を置いてしまうところがミソでして、ドラマ全体を客観的に一つの流れとして捕らえることができる作りになっています。私のようなオヤジ目線からしますと、親子の間にこういうこだわりがあるんだなあっていう発見がありました。血は水よりも濃いってのは、その通りだとは思うのですが、私としては「氏より育ち」だという気持ちが強いです。ひょっとして、「育ち」にあたる身近な人間との関係が希薄だと、「血」のつながりの方に思いが行ってしまうのかしら。そう考えると、この映画の3人はあまり幸せではないのかも。その幸せでない人生の中に救いが見えてくるドラマと言うこともできましょう。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



エリザベスが送った手紙は、教会の手違いで埋もれてしまいます。そして、産気づいた彼女は女の子を出産、しかし、自然分娩にこだわっていたこともあったのか、エリザベス自身は亡くなってしまうのでした。ほぼ、同じ頃、ルーシーが養子縁組する予定の子供が無事に生まれてきます。しかし、実母の気が変わっちゃったせいで、養子の話はおじゃん。落胆するルーシーに、シスターは、エリザベスの遺児を養子にしないかと提案し、ルーシーはその申し出を受け入れます。その1年後、エリザベスの手紙が発見され、クリスは、娘の手紙と写真を見ることになります。クリスは、自分の孫に会いたいと申し出ると、ルーシーはそれを承諾、実はほんの数軒先のご近所さん。ルーシーは、娘の実祖母を暖かく受け入れ楽しい時間を過ごします。めでたしめでたし。

ラストは一応のハッピーエンドとなります。ルーシーとクリスはこれから幸せな人生を送っていくだろうという予感を見せて映画は終わります。一方で、エリザベスとクリスの母親は、幸せを実感できないまま人生を終えてしまうので、人それぞれ、幸せも不幸も様々だねってことになります。そんな色々な人生の中の母と子供の関係にスポットを当てたドラマとして、なかなか面白かったです。邦題の「愛する人」ってのは、大雑把すぎて、配給会社のやる気のなさを感じてしまうのですが、この映画の中身をうまく言い表したタイトルってのは難しそうです。

演技陣では、アネット・ベニングのリアルおばさんぶりが印象的でした。元は美人なんだけど、気難しい分不細工に見えちゃうヒロインぶりを見事に演じています。ナオミ・ワッツは、キャリア志向だけどどこか心を閉ざしている女性を熱演しています。主人公の3人は、どこか、欠けたところのキャラクターとして生身の息遣いを感じさせることに成功しています。一方で、ジミー・スミッツやサミュエル・L・ジャクソンといった男性陣は、いい人というレベルに収まっていて、それ以上の存在感を出さない脇役に徹しているのがいいと思いました。

閉じる コメント(12)

男性にはピンと来ない映画かもしれませんね。
私は、ナオミ・ワッツ演じたエリザベスは、最後は幸せだったと思いました。
彼女がサミュエルから離れたのは、自分のお腹の子供がどちらの子供か判らなかったから。
産んで初めて、サミュエルの子供だった事を知って、彼女は愛する人の子供を産んだことに幸せを感じた。私はそう思いたかったです。
とは言え、その子供に責任を持てないことは哀しいことで、運命は巡る的な寂しさも感じるところです。
物語のテーマはおそらく「母性」。それを基準に考えるととても感動できる作品でした。
遅くなりましたがTBさせてくださいね。

2011/1/26(水) 午前 1:57 pu-ko

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pu-koさん、コメント&TBありがとうございました。確かにエリザベスは子供の父親が気がかりだったのでしょうね。「母性」の部分はオヤジには理解できないところがありますので、感動までには至りませんでした。3人の中ではカレンが一番興味深かったですね。同年代ってこともありますし、母親をみとったのにあんなふうになっちゃうのは気の毒だなって気がして。

2011/1/26(水) 午後 9:19 [ einhorn2233 ]

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einhornさんの記事、とても興味深く読ませていただきました。(^^ゞ
これは確かに男性と女性ではいろいろと感じることが違う映画だと思いますが、男性はある意味冷静な目で客観的に観れるので(笑)なかなか鋭いところを突いたレビューだな〜と思います。(^^)
理解できないんじゃなくて、冷静な分析なのでは?(笑)
先日実際にアメリカで正式な養子ではなく誘拐された子が成人になって自分で実の両親を探し当て、養母が逮捕されるという事件がありましたよね。そのニュースを観て私はちょっと複雑な気持ちもしました。やはり犯罪がらみだから氏より育ちとは言えないのでしょうが、複雑ですよね〜
この映画は3人の女性のそれぞれの子どもや親に対する気持ちがよく伝わってきて、せつなさはあるけれど、面白い映画だったと思います。
遅くなってすみません。TBさせてくださいね♪

2011/1/27(木) 午後 5:15 choro

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Choroさん、コメント&TBありがとうございます。確かにこの映画、男性としては、ちょっと引いた視点から見てしまいます。だって、母親の気持ちなんてわからないですもの。アメリカの事件は、子供にとっても気の毒な話ですね。氏より育ちの「育ち」の部分が信頼できないものになっちゃったわけですからね。普通に生き別れたのなら、まだ子供にとっても養母は母親でいられるでしょうからね。

2011/1/30(日) 午後 6:00 [ einhorn2233 ]

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そうですね。男性と女性では考え方が違ってきますよね。
私はこのラストが大好き。
多分確信がもてなかったのでしょうが、ああ・あの人の子で良かった・・と。薄れていく意識が白で表現されていて、見事でした。
そうそうアネット・ベニングのリアルおばさんぶりがうまい。
TBさせてくださいね。

2011/2/8(火) 午後 8:37 car*ou*he*ak

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cartoucheさん、コメント&TBありがとうございます。女性の方の記事を拝見すると、発見が多い映画です。男性目線と女性目線の違いを実感しますです。シングルの私には、子供を産むってことが女性にとってどういう意味を持つのかって、想像しきれないのです。エリザベスの気持ちはやはり読みきれませんですもの。

2011/2/8(火) 午後 10:06 [ einhorn2233 ]

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女性がたくさん出てきて、どの人もたくましかった。
女性の強さを再認識させてくれる作品でした。
TBさせてください!

2011/4/6(水) 午後 10:39 かず

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かずさん、コメント&TBありがとうございます。女性は強い、男性は弱いとも言えますし、言い方次第では、女性はきつい、男性はやさしいとも言えるのかなって気がします。男性目線だと、「そこまで気を張って生きてくのはしんどかろうに」って思っちゃうのですが。

2011/5/2(月) 午後 5:56 [ einhorn2233 ]

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アネット・ベニングの演技にだけは感銘を受けましたが、作品としては、くどくて、ありえないような展開を無理やり作り出していて、感動のピークを迎えさせてくれないエンディングでした。私は、こういう流れは嫌いです。人工的すぎるのです。せっかく途中まで良かったのに、自然分娩にこだわる理由も納得いくものではないし(なにより、命を大切にしたいはずなのに、危険を冒すなんてこと女の監督ならさせないと思います)、そのせいで主要キャストをわざわざ会えなくするなんて、人の人生を狂わせる人の手(神の手ではなく)を観たようで、本当にがっかりでした。TBこちらもお返しさせてください。

2011/5/27(金) 午後 10:53 オネム

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オネムさん、コメント&TBありがとうございます。この映画の展開には納得できなかったようですね。確かにこの展開は、エンタテイメントとしては逸脱しているように思います。血のつながりへのこだわりと同様、自然分娩へのこだわりも、私には理解の範疇外でした。

2011/5/28(土) 午後 9:23 [ einhorn2233 ]

女性には、子供を産む機能が備わっていて、それを大切にしたいと改めて思いました。男性が闘うことであるなら、女性は愛することが本能なのかな。と。 アネットの気むずかしいおばさんぶりはうまかったですね〜。
私は原題よりも、邦題の「愛する人」というタイトルが気に入りました☆
TBありがとうございます。お返しさせてくださいね^^

2011/6/24(金) 午後 0:56 けいとき

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keitokeyさん、コメント&TBありがとうございます。男性の本能は闘うことですか。私なんか、闘いなんて大キライ、そういうのは逃げ回っちゃいますから、愛する方がいいかも。アネット・ベニングのおばさんぶりは、母親のせいで適齢期を逃した女性のリアリティにあふれていたように思います。

2011/6/25(土) 午後 9:40 [ einhorn2233 ]

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