今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

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今回は、TOHOシネマズ日劇1で新作の「ブラック・スワン」を観てきました。デジタル上映なんですが、右手背後から音が聞こえてきたり、どういう音響システムになっているのか、気になってしまいました。

バレエ団の今度の演目は新振付による「白鳥の湖」です。これまでのプリマ、ベス(ウィノナ・ライダー)は引退となり、演出のルロワ(ヴァンサン・カッセル)はオーディションの結果、白鳥の女王役にニナ(ナタリー・ポートマン)を指名します。可憐な白鳥の踊り手としてニナは申し分ないのですが、邪悪な黒鳥を演じるには、まだ彼女には力不足なところがあり、彼女もそれを認識していました。同じくプリマ候補だったリリー(ミラ・ニクス)の方が奔放で官能的な黒鳥にはふさわしかったのです。ニナの母親(バーバラ・ハーシー)は昔ダンサーだったのですが、プリマにはなれませんでした。その分、ニナに期待をかけていたのですが、今回の抜擢を心から喜んでいるようにも見えません。それでも、このチャンスをモノにしようと頑張るベスですが、そのプレッシャーからか、彼女は幻覚を見るようになります。代役にリリーが選ばれたことで、ますます追い詰められていくニナ。それでも、初日の舞台は幕を開けます。果たして、彼女は無事に、白鳥と黒鳥の両方を踊りきることができるのでしょうか。

「ファウンテン 永遠に続く愛」「レスラー」などのダーレン・アロノフスキー監督の作品です。オスカーの作品賞、監督賞などにノミネートされ、ナタリー・ポートマンが主演女優賞を取りました。撮影のマシュー・リバティーク、音楽のクリント・マンセルは、アロノフスキー映画の常連です。評判がよかったので、どんな映画なのかなと期待してスクリーンに臨みました。なるほど、前半はバレエの映画になっていたのですが、後半は、アロノフスキーの「π」を思わせる、悪夢のイメージのつるべ打ちとなり、ホラー映画のような味わいとなります。私は、バレエの事、特にバレエの芸術性についての知識は全くありませんので、以下の文章は、バレエのことを全く知らない人間が書いたということを念押しさせていただきます。

ヒロインのニナは、どことなくはかなげな美少女がそのまま年を取ったという感じの女性です。プリマであるベスの持ち物を盗んで持っていることで、何とかプリマに近づこうとするあたりは、かわいげがあると思うか、いけずなヤツと思うか、判断が分かれるところです。バレエの技術的には満点なんですが、その端正すぎるところが、黒鳥を演じきれないというのは、何となくわかるような気がします。でも、化粧を濃くして、演出家を説得しようとするのですから、野心はあるみたいです。自分の背中を無意識に傷つけちゃう癖があるのは、精神的に弱そうな感じです。こういう女性がバレエの世界でリアルに存在するのかどうかが見当がつかないので、ヒロインが普遍的なキャラなのか、ちょっと変わり者なのかが気になりました。後半に向かって、だんだん彼女が壊れて行くのは、バレエという世界の魔力からなのか、ニナというヒロインの持つ狂気によるものなのかが判断つかなかったからです。私は単純に、このニナという特殊なヒロインの、特殊な物語として、この映画を観ました。どこか自信のないヒロインが、なりたい自分になれないストレスから、自分を解放する幻覚を見る物語とでも申しましょうか。

アロノフスキーの演出は、リアルな生活感のあった「レスラー」とは異なり、異世界の住人のようなリナを寄りのカットを中心に描いていきます。不思議な呼吸音やノイズを使った音響効果や、鏡を多用したり、影をたくさん残した絵作りによって、尋常でない世界が展開していきます。寄りのカットが多いのは、ポートマンの踊りの粗を出さないことにも貢献しているとはいえ、画面の外にあるものを意図的に見せないようにして、観客の不安を煽っているようにも見えます。これは、ホラー映画で使われる演出でして、この映画の全体的なトーンはやはりホラーなのだと思います。そして、いたぶられるヒロインとしてのポートマンの演技は素晴らしかったです。これで、オスカー取っちゃったってのはすごいと思うのですが、線の細いヒロインが、幻覚と現実の狭間でジタバタするあたりは見事でした。明らかに非現実とわかるカットを入れることで、もう彼女のあっちの世界に行っちゃってることがわかるのですが、それでも、彼女を完全な狂気として描かないで、最後までヒロインとして盛り上げたのもよかったです。また、出番が少ないながら、強烈な印象を残すウィノナ・ライダーも見事でした。「レスラー」のミッキー・ロークと同様、彼女の復活にも期待したいところです。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



舞台は幕を開き、まずヒロインは純粋な白鳥を無事の踊り終えます。そして、黒鳥への衣装替えのために控え室に戻ると、そこにはリリーが自分の衣装を着て待ち構えてました。彼女に、プリマの座を奪われると逆上したニナは、鏡の破片でリリーを刺してしまいます。すると、彼女の体に黒い羽根が生えてきます。そのまま舞台へ向かったニナは、黒鳥を見事に踊りきります。そして、さらに衣装替えのために控え室に戻ると、リリーの死体は消えてます。ドアがノックされ、開いてみれば、そこには死んだはずのリリーがいて、彼女の黒鳥に賞賛の言葉を伝えます。鏡の前に立つニナ、気付いてみれば、彼女の腹には血がにじんでいます。リリーを刺したのは幻覚で、実は自分を傷つけていたのです。その傷口から鏡の破片を取り出し、そのまま舞台に向かうニナ。そして、フィナーレを踊りきり、絶賛の拍手の中、彼女の傷口は広がり、そのまま意識が遠のいていくのでした。

自傷行為という伏線がラストで、自爆という形で結実する展開はうまいと思いました。ニナの見る幻覚の中にも、ベスの自傷行為を入れてますしね。相手を殺したつもりが、実は自分を殺していたというのも、実はホラーの定番の中にあるパターンです。母親とニナの親支配型、共依存という関係は「キャリー」のパターンを踏襲したものと言えますし、リリーと一緒に家に帰ってきたとき、実はリリーが存在しないというのは、ブラピ主演の某映画を思い出させます。他にも、自分の姿を見かけるドッペルゲンガーですとか、鏡の中の像と本人の動きがずれるなど、ホラー映画の様々な手法が盛り込まれていまして、アロノフスキーは、バレエよりも、そういう気色悪いものの羅列をしたかったのかなって気がします。「π」も数学の話よりは気色悪い方メインの話でしたし、バレエという設定は、ホラー的趣向を乗せるための舞台だったようにも思えてきます。そもそも、バレエの良し悪しを伝える意図は感じませんでしたし。(これは、前述の通り、私がバレエ素人だからでもありますが)

でも、ホラーとしてもこの映画、面白かったです。薄幸なヒロインがだんだんと恐怖の中で狂っていくというお話は、ナタリー・ポートマン演じたことでもお値打ちが出ました。そんな中で、リリーを演じたミラ・ニクスの健康的なかわいさがいい意味で際立ちました。

閉じる コメント(17)

ナタリーとミラ・ニクスの対比も良かったですよね。
バレエの世界と言いより、一人の女性のドラマとして楽しめました。
TBお返しさせてくださいね☆

2011/5/29(日) 午後 9:49 なぎ

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なぎさん、コメント&TBありがとうございます。一人の弱い女性が壊れていく様を、ホラーの仕掛けで見せているという感じでした。そのホラー映画としても面白くできていたように思います。線の細いヒロインをいたぶりまくるってのは、SM風でもありますが。

2011/5/29(日) 午後 10:45 [ einhorn2233 ]

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私もあの呼吸音はとても気になっていました。
舞台に立つ時って自分の鼓動とか呼吸とかってすごく大きく感じるんですよね
で、世界に自分ひとりだけみたいな錯覚を覚える。
とくに自信のないときはそうなんです。
あ 私も(ジャパニーズトラディショナル)ダンサーのはしくれなんで・・・
その舞台に立つ人間の生理というかリアルをよくわかってるなぁ と思いました。
トラバいただいていきます (ヒツジ)

2011/5/29(日) 午後 11:37 ひつこじ

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物語は確かにバレエを題材にしなくても作れるものですよね。
einhornさんのバレエを抜きにして感じたことを書かれた記事、鋭くてさすがです。
↑の方も書かれていますが、舞台に立つ時って呼吸を感じたり、心臓の音が聴こえたり、普通でない精神状態になるものなんですよね〜その辺の描写も見事でしたね。
痛い映画でしたが、面白かったです。
私もTBさせてくださいませ♪

2011/5/30(月) 午後 5:37 choro

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ひつこじさん、コメント&TBありがとうございます。あの呼吸音はヒロインのものだったのでしょうか。何だかため息のような不思議な音だったので、ヒロインのではないような気がしてました。悪魔のささやきみたいに聞こえてしまったのですが、緊張してるときって、あんな風になるのですね。

2011/5/30(月) 午後 8:39 [ einhorn2233 ]

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Choroさん、コメント&TBありがとうございます。確かに痛い映画でしたが、どっちかというといたぶってる映画って感じもしました。監督の視線がヒロインを痛めつけてるって感じでしょうか、特にベスの扱いは、ヒロインをいたぶるために監督が仕掛けたような気がして。ともあれ、面白くできてました。

2011/5/30(月) 午後 8:42 [ einhorn2233 ]

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アメブロから更新しますね。

2011/6/1(水) 午後 10:39 mossan

現実と妄想の境があいまいになってきましたが、そういう意味を考えながら観るのも面白い作品でした。
ナタリーの完璧な美しさ、脆さはニナにぴったりでよかったですね。
ホラー的にも楽しめました。TBさせてくださいね。

2011/6/3(金) 午後 3:37 pu-ko

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pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。最後のバレエも観客席からのカットがなかったですから、うまくいったというのも彼女の妄想だったかもしれませんよね。バレエは観客席から見て一番美しく見えるように作られているのに、そういうカットが一切なかったですから、ヒロインを美しく見せようとする意図もなかったような。

2011/6/4(土) 午後 8:38 [ einhorn2233 ]

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たしかに「キャリー」の趣がありましたねぇ(^_^.)あのお母さんは確かカンバックのパイパー・ローリーさん、そうですねぇ、女優さんの存在そのものがホラーだったりして(^_^.)ポチッです(^^♪

2011/6/5(日) 午前 8:27 たんたん

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たんたんさん、コメント&TBありがとうございます。あのお母さんあってのあの娘って感じでしたね。どっか、中途半端なポジションに娘を置いておくことで、彼女を逃がさないようにしようってのが怖かったです。細かいところに過去のホラー映画の要素がたくさん入っていて、そっちの方で楽しんでしまいました。

2011/6/5(日) 午後 9:31 [ einhorn2233 ]

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ちょっとバタバタしていて遅くなりましたが・・・
この作品、バレエ通のひとは、激怒モノだったみたいです。あんな弱い性格ではとてもプリマにはなれないのが現実だそうで、リアルではなかったみたいです。言われてみればそうですよね。だからホラーとして楽しんだのは正解だと思います。

2011/6/9(木) 午前 0:48 オネム

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オネムさん、コメント&TBありがとうございます。バレエを知っている方には、噴飯モノのお話だったようですね。まあ、そこは映画の魔法と思って割り切れる分、バレエ素人の方が楽しめる映画なのかもしれません。私は、ホラー映画が割りと好きなので、この映画のホラー趣味全開の趣向の方に目が行ってしまいました。

2011/6/9(木) 午後 7:19 [ einhorn2233 ]

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TBありがとうございました^^!仰る通り「キャリー」してましたね(苦笑^^;省略法の多様と場面転換で現実と幻覚の距離を観客に認知させない点も、アザトい・・・と思わなければかなり楽しめますし♪^^☆v劇場で観て大正解でした☆^^♪v私もTBさせて下さい^^!

2011/7/2(土) 午前 0:01 [ hiro-mtb ]

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hiro-mtbさん、コメント&TBありがとうございます。確かに現実と幻覚の境界は曖昧でしたね。ラストだって、最後まで踊りきったのかどうか怪しいものですもの。そのアヤしげな雰囲気を楽しむ映画かもしれません。

2011/7/2(土) 午後 10:10 [ einhorn2233 ]

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凄いの一言でした!
迫力も、演技も全てに圧倒されたという感じです。
これは今年通して記憶に残る作品になるな〜。
TBがなぜだかできないので、またトライします!

2011/7/31(日) 午前 10:59 かず

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かずさん、コメントありがとうございます。確かに観ている方を圧倒するパワーがありましたね。大筋を語るとただの変な映画なんですが、そこにすごさを盛りましたってところが監督の腕なのでしょうね。

2011/7/31(日) 午後 2:09 [ einhorn2233 ]

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