今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

やっと書き込み再開します。本年もよろしくお願いいたします。

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今回は夏休みで、伊勢神宮へ旅行しまして、そこで立ち寄った伊勢進富座の別館で、東京での公開を終えている「キッズ・オール・ライト」を観て来ました。住宅街の中に2スクリーンを持つ小さな映画館ながら、ラインナップの充実振りがすごいと感心。私が鑑賞した別館も48席の割りに、スクリーンサイズもそこそこあり、天井が高くゆったりした鑑賞空間を作り出しています。スクリーン前にスピーカー2台がむき出しに置いてあり、デジタル音響ではないのですが、まずシネコンでは上映しない作品を選んだ番組づくりが素晴らしく、近所にこういう映画館がある伊勢の人はうらやましいなあってつくづく思いましたです。

18歳の娘ジョニ(ミア・ワシコウスカ)と15歳のレイザー(ジョシュ・ハッチャーソン)は両親との4人暮らし。といっても、ママが二人、ニック(アネット・ベニング)とジュールス(ジュリアン・ムーア)のカップルがそれぞれ一人ずつ精子バンクから種を得て、子供を産んだのでした。ジョニは両親に内緒で、自分の本当の父親を探し出そうとします。当人が拒否しなければ、意外と簡単に情報を教えてくれるらしく、ジョニとレイザーの生物学的な父親は、レストランオーナーのポール(マーク・ラファロ)という割とまとも、というよりはちょっといい男。変なおっさんが父親でなくて一安心のジョニとレイザーですが、それ以上にだんだんとポールになついてしまうのですよ、この姉弟。そして、ニックとジュールスにも、ポールを紹介しちゃいます。それまでは、普通とは違う形をとりながらも、なんとなくうまくまとまってきた4人だったのですが、ポールの出現によって、その関係に微妙な力がかかり始めます。父親のようなポールになついた子供たちは、ニックやジュールスに距離をとるようになり、ジュールスはポールに男を感じるようになり、家長であったはずのニックはその地位を脅かされ始めてしまうのです。果たして、一家とポールの落ち着く先はいかに?

リサ・チョロデンコの監督作品で、チョロデンコがスチュアート・ブラムバーグと共同で脚本を書いています。ゴールデン・グローブ賞を受賞したとか、アカデミー賞4部門ノミネートなど、プログラムを読むとあちらこちらの映画祭で受賞やノミネートをされている映画です。まあ、そういうことは映画を観た後にプログラムを読んで知ったので、映画に臨んだときは、いわゆるアメリカのホームドラマの変化球なのかなという印象でした。「リトル・ミス・サンシャイン」とか「イカとクジラ」の類なのかなと思っていたのですが、斜に構えたり、笑いに走ったりしないマジメな映画だったのがまた意外でした。主演二人はコメディ部門の女優としてノミネートされているので、一応はコメディになるのかもしれませんが、実際のところは、そこそこうまく行ってた家族にささやかな波風が立つというお話でした。ただ、その家族が子持ちのレズカップルってところが今風な設定です。そして、家庭の中に起こるゴタゴタもその設定が原因になっているもので、普通の家庭ではあまり発生しないパターンのものです。そこが目新しいと言えば言えなくもないのですが、登場人物それぞれの心の動きは、うんうんわかるよね、そういう感じというものなので、奇をてらったドラマになっていません。そこが、脚本のうまさだと思うのですが、設定の面白さの方で過大評価されちゃってんじゃないのみたいなところが、ちょっと気になりました。

ニックは女医さんとして一家の家計を支えています。ジュールスはいわゆる主婦なんですが、ガーデニングの仕事をしたくて仕方がありません。ジョニは大学に進学して寮に入るので、もうすぐ家からいなくなります。レイザーは悪い友人との関係をニックたちにゲイではないかと勘違いされちゃいます。まあ、そんな平凡な風景の中に、ポールというこれまでとは異質の「男」が一家の中に介入してくるので、話がややこしくなっちゃいます。ポールは、子供たちにとってある意味、理想の父親のように見えます。そして、ポールは自分の家の庭づくりをジュールスに依頼します。彼女にとっては、初仕事のうれしい話です。ところが、さらにポールとジュールスが関係を持ってしまいます。一家の中で起きた不倫事件というわけです。ニックは、ポールの家で、二人の情事の証拠を見つけて逆上、でも、ジュールスはポールに走るつもりは毛頭なく、魔が差した過ちだったとニックに謝罪します。そのことをしったジョニも大ショック、理想の父親がただの不潔なオヤジになってしまったのですから。ジョニのところに弁解しにきたポールに、ニックは「家族は自分で作るものなのよ」と言ってドアを閉ざしてしまいます。

マーク・ラファロがポールというキャラを非常に丁寧に演じて、ドラマに深みを与えています。いわゆるいい男で、愛人もいるんだけど、その愛人には「人生の本当の伴侶を見つけたい」という理由で別れ話を持ち出します。レストランへの情熱もあるけど、何かが足りない、それをジュールスに求めているようにも見えるのですが、彼ら一家を崩壊に追い込む根性まではない、調子いいようで、どこか不細工ないい男という感じでしょうか。もともと実直なキャラを演じることの多いラファロだけに、今回のいい男なんだけど、根っこがないキャラは意外性もありました。

アネット・ベニングは相変わらず強い、というか強がる女性を好演していまして、勝気なキャラがうまくはまる人だなあと感心。一方のジュリアン・ムーアは対照的な弱めキャラを達者にこなしていまして、そのバランスの良さが一家のまとまりを感じさせ、それが異人種(表現不適切かな)であるポールによってかき乱されてしまうという構図がうまく表現されていました。ラスト近くの小さなエピソードにこんなのがありました。4人でジョニの寮に荷物を運んでやるのですが、一人で荷解きをするからとみんなを部屋を追い出したジョニが、不安になって外に出てみると、3人ともちゃんとそこにいて「何言ってんの、車を動かしてただけよ」ということで、ジョニはほっとするのですが、こういうちょっとした気持ちの積み重ねで家族ってのはつながってるんだよなあってのがよくわかる、心に残るエピソードになっていました。この母親二人の子供二人の家族に起こった、種親の出現と不倫騒動は、実はどの家族にだって似たようなことは起こりえます。この映画では、その事件を、普通の家族で起こったささやかな波風のように描いているところに味わいがあります。ただ、普通の家族に普通の事件が起きる映画では、魅力が今イチということで、レズカップルの2人の子供という設定をとったのかなって気もしました。

原題は「Kids are all right」というもので、子供たちは大丈夫くらいの意味になるのでしょうか。大人たちがゴタゴタしている割には、子供たちは意外と平気でちゃんと成長していくんだなというお話になっています。大上段に振りかぶったところがなく、誰かを責めることもなく、かと言ってひいき目に見ることもしないで、淡々と描いているところが面白い映画でした。そんな、フラットな視点を持った映画だけど、ちゃんとコミカルな味わいでテンポよく展開するあたりにチョロデンコ監督の娯楽映画監督としての腕前を感じました。しんみりするシーンはないけれど、家庭内の危機とかいざこざ、そして和解がきちんと描かれているのが、心地よい後味を残します。

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これはキャストが皆ピッタリでよかったですね〜
ゲイカップルの話という特殊な設定ながら、内容は普通の家庭でもあるような話というのが共感を得たのかもしれませんね。
クールな子ども達も面白いし、精子提供者で独身というポールというキャラもインパクトがありました。(^^ゞ
ところで伊勢神宮に行かれたんですね。私も春に行ってきたばかりです。夏は参道が涼しくていいですよね〜♪
私もTBさせてくださいね。

2011/8/26(金) 午後 10:05 choro

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Choroさん、コメント&TBありがとうございます。普通っぽい家庭のドラマ展開するところがよかったです。伊勢神宮は、丁度雨の日だったせいか、暑くて死にそうでした。そこで、内宮外宮をさらりと流して、映画館へ行っちゃいました。え、こんなところに?と思うようなところに、2スクリーンの小さな映画館があるんですが、中もいい感じでした。次に伊勢神宮行く機会あったら、また行ってみたい映画館です。

2011/8/26(金) 午後 10:45 [ einhorn2233 ]

監督さん自身もゲイと聞いてます。
気負いも斜に構えたところもなく、ゲイのカップルのいざこざをみつめてるのは、そういう背景もあるのかもしれません。
こういう形の夫婦もいるんだなと知れたことも良かったし、心地よさの残る素敵な作品でした。
TBさせてくださいね。

2011/8/28(日) 午前 5:04 pu-ko

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設定は奇抜なのに描いているのは普遍的なことで
そのバランスがうまかったと思います。
あ・ほんと。そうですね。
子供たちは振り回されずに案外平気っていう感じでした。
TBさせてくださいね。

2011/8/28(日) 午後 6:35 car*ou*he*ak

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pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。この監督さん、ゲイなんですか。だからこそ、ゲイカップルをナチュラルな形で描けたのかもしれませんね。普通の家庭で起こるイザコザをいざゲイカップルで描こうとしたら、意外と普通にまとまっちゃったって感じでしょうか。でも、それがいい後味になってるところは買いです。

2011/8/28(日) 午後 9:23 [ einhorn2233 ]

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Cartoucheさん、コメント&TBありがとうございます。外から見れば奇抜な設定も、当人たちにとっては普通のこと。子供たちもそれをよく理解しているから、変に屈折してないのがよかったです。自分たちは他人と違うとか、特別だとか思い始めるとろくなことにならないですものね。

2011/8/28(日) 午後 9:26 [ einhorn2233 ]

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ジュールズの立場っていうのが、心理的には、一番穏やかでなかったのではないかと思いますね。しかし、レズビアンでも、男性にあれほど簡単によろめくのがちょっと解せなかったりしました。。。
あれなら、ストレートで生きていけたんじゃないかなとか、関係のないところで、ちょい、引っかかってしまいました。
TBこちらからもお願いいたします。

2011/8/28(日) 午後 9:30 オネム

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オネムさん、コメント&TBありがとうございます。実際のところゲイって異性を毛嫌いしているわけではないと思うのですが、その辺のところはくわしくありません。でも、この映画ではありがちなヨロメキとして描いてましたね。でも、きっと相性はニックが一番なのでしょう。

2011/8/28(日) 午後 10:36 [ einhorn2233 ]

私も伊勢の人がうらやましい(*^。^*) すてきな環境で心地いい映画、最高ですね♪ コミカルさもありましたが、ラストはホロリとしました。バランスが絶妙だったな〜と思います。
TBありがとです☆お返しさせてくださいね…!

2011/10/6(木) 午後 10:23 けいとき

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keitokeyさん、コメント&TBありがとうございます。伊勢市から一駅のところにある映画館はこじんまりとしてすごくいい感じでした。私の観た回は、あまりお客さん入ってなかったですけど、頑張って欲しいなって思います。映画は、ひねった設定をまろやかにまとめてましたね。

2011/10/8(土) 午前 1:11 [ einhorn2233 ]

そうですね〜。突飛な設定なのに後味は良かったですね。
とくに子供たちはたくましかった(^^ゞ
TBお返しさせてくださいね☆

2011/12/31(土) 午後 8:42 なぎ

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なぎさん、コメント&TBありがとうございます。設定は普通じゃないのに、そこに普通のホームドラマの葛藤を持ち込んだところが面白いと思いました。その細やかなドラマ捌きが穏やかな後味につながったのだと思います。

2012/1/1(日) 午前 1:07 [ einhorn2233 ]

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コメディとシリアスのバランスが良かったですね。
おっしゃるとおり、ちょっと特殊な家族だけど、実は普通と同じなんだよって作りが好感が持てます。
キャストもまた良かったですね。
こちらもTBさせてくださいね。

2012/4/22(日) 午前 11:02 木蓮

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もくれんさん、コメント&TBありがとうございます。結局、普通の家庭だから、普通に子供も育つ。だから「キッズ・オール・ライト」なんだなっていう映画でした。エピソードの見せ方をレズカップルとしてきちんと見せつつ、それでも家族の関係は普通のそれと同じだというあたりに、作者の見識を感じさせました。

2012/4/22(日) 午後 5:10 [ einhorn2233 ]

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