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2012年ももう終わりということで、例年のごとくベストテンを作ってみました。今年は劇場に足を運んだ回数が少なかったとは言え、映画鑑賞としては豊作だったようで、多くの作品がベストテンからこぼれてしまいました。選択の基準は、映画の印象が強い順です。観終わって「ふーん」という印象しか残らない映画はベストテンからははずれてしまいます。 第1位 「別離」 2010年の私のベストワン映画だった「彼女が消えた浜辺」のアスカー・ファルハディの脚本・監督による一編は、ある一家に起こった事件を様々な視点から描いていて大変に見応えがありました。そのクールな視点はサスペンスタッチでもあり、その中から垣間見える、善意、憎しみ、面子といった人間の感情が非常にリアルに描かれていて、共感もできちゃうという見事なドラマに仕上がっていたので、これが1位です。何よりもまずドラマに引き込まれてしまう面白さが決め手となりました。 第2位 「恋と愛の測り方」 これまたイラン出身のマッシー・タジェディンが脚本・監督を担当した、ある夫婦の夜から朝までを描いたドラマです。お互いが別の異性と一夜を過ごすことになり、その葛藤からの選択そして結末まで、ドラマとして大変面白くできていました。ものすごいドラマチックではなく、感情の揺らぎのようなものを捉えたセンスがすごく好き。映画館へ足を運ぶのはこういう映画が観たいから、ということで、第2位にしちゃいます。 第3位 「善き人」 普通の大学教授がいつの間にかナチスの幹部にさせられちゃっていたという、ある意味ホラーな一編。人間、良い行いをしているつもりでいても、いつの間にか抜き差しならない状態になっちゃっていることがあるというのを、リアルに見せてくれていて、ヘビーだけど見応え十分。ヴィゴー・モーテンセンをはじめとする演技陣の好演もあって、他人事とは思わせないところが見事。 第4位 「無言歌」 中国の現代史の中で、文化大革命の影に隠れたもうひとつの黒歴史を描いた力作です。こういう歴史の暗部にスポットライトがあたったということもすごいことだと思うのですが、極限状況における人間の尊厳と悲しみをきちんと描いているところが見事でした。とにかく、観たインパクトでは、今年一番ではないかしら。 第5位 「ヤングアダルト」 今年観たコメディの中で一番笑えたのがこの映画。30過ぎの自意識過剰ヒロインの暴走っぷりがおかしくて、そのリアルビッチぶりが見事でした。シャーリーズ・セロンのいけしゃあしゃあのヒロインは、最優秀主演女優賞。(キティちゃんが助演女優賞かな)とにかく面白い映画でした。 第6位 「ルルドの泉で」 ルルドの泉で起こった奇跡の物語から見えてくるのは、信仰への希望と妥協、そして善意と信念。さまざまな人間の持つ感情を描くことで、信仰とは何なんだろうと考えさせてくれる映画でした。不信心な私にも、神様を信じるってこういうことなのかなって思わせてくれるすごい映画でした。 第7位 「ドラゴンタトゥーの女」 横溝正史タッチの因縁ミステリーに、探偵側のドラゴンタトゥーの女のドラマを加えて、エンタメ度の高い映画に仕上がっていました。2012年に観た映画の中で、エンタテイメントとして一番面白かったのがこれです。デヴィッド・フィンチャー監督の骨太演出が2時間48分を退屈させません。 第8位 「死刑弁護人」 麻原彰晃や林真須美の弁護士として、良くも悪くもその名を知られる安田好弘弁護士を追ったドキュメンタリーです。現代社会、そして公正さと正義を考えさせられる映画として、多くの人に見て欲しいと思いました。映画として突っ込み不足と思わせる部分もありますし、安田弁護士に共感できない部分もありましたが、それでも観る価値のある映画です。 第9位 「ドリーム・ハウス」 超自然ホラーかと思わせておいて、意外な方向に展開するサスペンススリラーの一編。小品ではあるのですが、ジム・シェリダンの行き届いた演出、ダニエル・クレイグ以下演技陣の好演もあって、映画としての満足度が高かったです。クライマックスで一瞬だけ超自然ホラー展開するところが圧巻でした。 第10位 「少年と自転車」 親にネグレクトされた少年がある女性との出会いによって、未来が変わっていくというお話。ダルデンヌ兄弟のリアルだけど暖かい演出が、希望と癒しを与えてくれる映画でした。淡々と見せているけれど、でも後味がすごく暖かいってのは、やはり演出のうまさなのだと思いまして、10位にランキングです。 上記のベスト以外では、ドラマとしての見応えという意味で、「オレンジと太陽」「最強のふたり」などが印象に残りました。また、正統派バカコメディとしての「ジョニー・イングリッシュ 偽りの報酬」も楽しい一編でした。もう一本バカ映画として「エクスペンダブルズ2」も挙げておきます。 また、例年の、ベストテンには入らなかったけど、どっか気になるピンポイントベスト5を以下に挙げます。 第1位 「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」の最後の演説 サッシャ・バロン・コーエン扮する中東の独裁者がアメリカで迷子になるという、お下劣ネタと風刺ネタ満載のコメディなんですが、クライマックスで「独裁政治のどこが悪い」という演説が圧巻でした。「独裁政治下なら、国民の1%が90%の富を独占できる、報道も一族独裁で自由にできるし、福祉や教育予算を減らすことができ、理由をでっちあげて戦争を始めることができる」と今のアメリカの現状をあげつらうのですよ。ここまで言うかと思うのですが、日本では絶対できない風刺ギャグだよなあって感心。ただの下品コメディではありません。 第2位 「ルート・アイリッシュ」の戦争はビジネスだ。 ケン・ローチ監督の「ルート・アイリッシュ」は、傭兵ビジネスを扱った戦争サスペンス映画でした。民間軍事会社の傭兵たちは、治外法権を持ち、イラク市民の生活を蹂躙しても罪に問われることはありません。会社の目的は、イラク市民の保護でもなく民主化でもなく、お金をもうけることです。国際化、自由化はとうとう戦争そのものをビジネスとし始めました。そこには倫理とか理性よりも利益が優先されてしまうのです。恐ろしい現代の仕組みをつきつけてくる映画として、この映画の存在価値があると思いました。 第3位 「テイク・ディス・ワルツ」のミシェル・ウィリアムス 2012年の女優陣では「ドリーム・ハウス」のレイチェル・ワイス、「ペント・ハウス」のティア・レオーニ、「人生はビギナーズ」のメラニー・ロラン、「ブライズ・メイズ」のローズ・バーン、「ブラック&ホワイト」のリース・ウィザースプーン、「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」のアンナ・ファリス、「君への誓い」のレイチェル・マクアダムス、「だれもがクジラを愛している」のドリュー・バリモア、「崖っぷちの男」のエリザベス・バンクスなどが印象的でしたが、等身大のヒロインをリアルに演じたミシェル・ウィリアムスが特に光っていたように思います。マリリン・モンローの時とは別人のようなもの憂げな人妻ぶりが見事でした。 第4位 「バトルシップ」の意外に面白い視点 世間の評判はバカSFみたいに言われていますけど、これが結構面白い構成になっているのですよ。エイリアンは他国から武装してやってきた調査団で、地球人は原住民。エイリアンは敵意のない者には攻撃してこないけど、攻撃に対してはすごい武器で反撃してきて、地球人はゲリラ戦を挑むしかなくなります。これって、エイリアンがアメリカ軍で、地球人がイラクやアフガニスタンという構図になるのですよ。エイリアンが傷ついて地球人に捕らえられた仲間を助けるシーンとかもあって、エイリアン側が決してバカでも非道でもないってところがよく考えられていました。 第5位 「ピラミッド 5000年の嘘」の木曜スペシャル度 ピラミッドに色々な秘密の数字が隠されているというところから始まって、ラストにはなぜか未来の警告になっちゃうという大ハッタリの強引な展開。若い人には目新しいかもしれないけれど、40歳以上には、昔懐かしい木曜スペシャルの世界です。今は未来の心配というとお金のことばかりになっちゃうのですが、昔は人類の滅亡とか大災害とかを心配していました。そういう大らかな時代を思い出させてくれた映画でした。 そんなわけで、来年もまたよろしくお願いいたします。
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情けないことに7位と9位しか観てません(>_<)
私も『最強のふたり』がなぜか次点的になってしまいました!
『別離』や『善き人』など来年見ていきたいです。
今年はお付き合いいただきありがとうございました!<(_ _)>
また来年も引き続きよろしくお願いいたします!
2012/12/31(月) 午後 10:45
あ、やばい。『別離』と『少年と自転車』観るの忘れてる(T-T)
『ルルド〜』も合わせ、新年の鑑賞にいたします。
『恋と愛の測り方』は記事にしなかったけど私も好き。まさに感情の揺らぎでしたね。
『バトルシップ』の視点も気付かないままに記事スルーしちゃってました。
今年もeinhornさんには沢山の映画の視点を教えていただきました。
ありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
別宅のDVD篇ベスト記事もいっしょにTBさせてくださいね。
2012/12/31(月) 午後 11:46
もくれんさん、コメント&TBありがとうございます。「別離」はオススメですので、機会があればご覧になってください。「最強のふたり」がベストテンからはずれちゃいましたけど、その他にも「おとなのけんか」ですとか「顔のないスパイ」といった面白い映画も圏外になってしまいました。今年もまたよろしくお付き合いお願いします。
2013/1/1(火) 午後 4:22 [ einhorn2233 ]
おめでとうございます(^^♪
本年もよろしくお願いします(^^♪
えぇぇ〜全く未見のものばかりで圧倒されてしましました。でも、「バトルシップ」を!いただき なんとも嬉しいと申しますか。もぉそれだけで(^^♪
2013/1/1(火) 午後 4:31
pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。「恋と愛の測り方」はもっと評判になっていい映画だと思ってたのですが、師匠もお好きとわかってうれしい限りです。師匠には昨年もお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。
2013/1/1(火) 午後 5:09 [ einhorn2233 ]
たんたんさん、コメント&TBありがとうございます。「バトルシップ」はバカ映画みたいな扱いしかされてなくて納得できなくて。これ、結構いいところついてますよね。昨年はお世話になりましたが、今年もよろしくお付き合いお願いします。
2013/1/1(火) 午後 5:26 [ einhorn2233 ]
あけましておめでとうございます^^今年もよろしくお願いします^^!「バトルシップ」・・・入ってますか・・・。もうレンタルもされてるんですが、現状スルーしてました(苦笑)。いずれ見てみようかという気になりました^^
2013/1/3(木) 午後 11:25 [ hiro-mtb ]
私、わりとたくさん観ているつもりでしたが、上記15作のうち、観たのは6本だけでした。
ほんとに映画って、たくさん上映されているんですね。気になるの、ずいぶんと見逃しています。
今年もよろしくお願いいたします。
2013/1/4(金) 午前 10:21 [ 鉄砲弥八 ]
別離が1位なんですね。
優柔不断な私は順位が付けられないんですよね〜。
ドリーム・ハウスが入っているのがうれしいです(^^)
2013/1/4(金) 午前 10:25
hiro-mtbさん、コメントありがとうございます。「バトルシップ」は主人公のバカキャラの部分も楽しめますのでオススメです。本年もよろしくお願いいたします。
2013/1/4(金) 午後 9:30 [ einhorn2233 ]
弥八さん、コメントありがとうございます。ホント色々な映画が上映されているので、観るときはどれを選ぶか困ること多いです。その一方でシネコンのラインナップがつまらないんですよね。川崎の駅周辺に3つもシネコンもあるのにやってる映画がほとんど同じってのは、観る方にとってはつまらないんですよ。また、今年もいろいろな映画に出会えるとありがたいです。本年もよろしくお願いいたします。
2013/1/4(金) 午後 9:34 [ einhorn2233 ]
なぎさん、コメントありがとうございます。「別離」はごらんになった方の評価が高いようで色々な方のベストに挙がっています。「ドリーム・ハウス」は期待以上の映画でした。娯楽映画として大変よくできていると思います。こういう映画にコンスタントに出会えるとうれしいのですが。
本年もよろしくお願いします。
2013/1/4(金) 午後 9:37 [ einhorn2233 ]
新作映画をたくさんご覧になってるんですね。
感心します。
私なんか、ただの一本も、観てませんものね。あはは(汗)。
2013/1/8(火) 午後 4:49 [ ふじまる ]
ふじまるさん、ご訪問ありがとうございます。映画はできるだけ映画館で観るようにしてますので、新作が多くなってしまいます。昔のように名画座がたくさんあった時代ですともっと色々な映画が観られたと思うのですが、近所に格安な映画を観る場所がなくて、シネコン中心の鑑賞になってしまいます。
2013/1/10(木) 午後 8:14 [ einhorn2233 ]
ベスト10のうち、たった4本しか観てません。(>_<)
einhornさんのご推薦とあらば、片っ端から観なくてはいけませんね〜^^;
ご紹介ありがとうございます。
しかし「別離」が1位というのも渋いですね。これは辛い映画でしたが、サスペンスとしてもよくできてましたよね。
2013/1/12(土) 午後 11:20
Choroさん、コメントありがとうございます。こういうベストテン記事で、その映画に興味を持っていただけると大変うれしく思います。基本、映画は好き好きで観るものだと思っていますし、好みは十人十色ですので、お眼鏡にかなうかどうかわかりませんけど、お気が向いたらお試しのほどを。「別離」はいい映画でしたよね。これは視たときからベストだと思っていましたが、こういうのを観たいんだよっていうツボを突いてくる映画でした。
2013/1/14(月) 午後 6:58 [ einhorn2233 ]
少年と自転車は僕も鑑賞してベストに入れてます!
その他は未見なのでチェックしてみたいと思います♪
TBお願いします!
2013/4/5(金) 午前 11:26
かずさん、コメント&TBありがとうございます。「少年と自転車」はドラマチックなようで静かな展開と暖かい余韻が印象的でした。でも、人に勧める言葉がなかなか見つからない不思議な映画でもありました。
2013/4/6(土) 午後 9:50 [ einhorn2233 ]