|
2013年は思うほど映画館へ足を運べなかったので、ベストテンとか作れるのかなとも思っていたのですが、並べてみると、いい映画がたくさんあって、豊作だったのかなって気がしてきました。基本は好きな映画をあげ、後、扱っている題材に学ぶところが多い映画も入れています。 第1位 「ある海辺の詩人」 イタリアの猟師町、出稼ぎ中国人女店員と、詩人と呼ばれる初老の漁師の、心の触れあいを描いた一編です。恋愛じゃないけど、もっと深い何かを感じさせる関係が、ラストで意外な形で情感が湧き上がります。穏やかな人間関係のつつましい感じとか、全体を包む空気が何だか好き。とにかく、心に響く映画だったので、これが1位。アンドレア・セグレ監督の他の作品も観たくなりました。 第2位 「偽りなき者」 幼女の気まぐれな一言で、保育園の先生がイタズラしたと思われちゃって、コミュニティから排斥されちゃうという、リアルなスリラー。冤罪がいつの間にか事実になっちゃうプロセスの怖さは他人事ではありません。日本でも起こりうるお話だけに、気をつけなくちゃと思わせる映画でした。映画としても大変見応えのあるものになっています。 第3位 「ハンナ・アーレント」 ユダヤ人虐殺の元締めと言われていたナチスのアイヒマン、逮捕されて裁判にかけてみたら、鬼でも悪魔でもない、ただの田舎の小役人でした。そのことを記事にして世界中からバッシングされた女性ハンナの物語。あまり、お近づきになりたくないタイプのヒロインなんですが、言ってることには説得力があり、それを敷衍すれば、偏見や悪意がなくても人間は残虐な行動を取れるのだという耳の痛い話にたどりつくのです。戦争や虐殺を繰り返さないためには、その人間の弱さをあるものとして受け入れて、抑止する必要があるという映画でした。 第4位 「最愛の大地」 アンジェリーナ・ジョリーが脚本、監督した入魂の戦争ドラマ。ボスニア紛争を舞台に、レイプ、殺戮をリアルに描き、並行して立場が相反する男女の恋愛を重厚に描いた作品です。戦争ドラマにお決まりの「愛は克つ」ではなく「愛は負ける」物語ではあるのに、画面に引き込まれてしまうあたりに、映画の力を感じました。ヘビーな内容の映画ではあるのですが、ドラマとして大変面白くできているので、ベストテン入りです。 第5位 「ゼロ・グラビティ」 宇宙空間を体験できる映像の素晴らしさ、精緻な音響など見所多く、さらに閉塞空間からのサバイバルドラマとして、最後には感動までさせてくれる映画の逸品でした。ストーリーはすごくシンプルなのに、主演のサンドラ・ブロックの熱演もあって、ドラマとしての満足度が大変高かったです。 第6位 「熱波」 今年のラブストーリーは、ミステリータッチの「セイフ・ヘイブン」なんかが好きだったのですが、ケッタイな発端から、ドロドロなお話を不思議な語り口で見せてくれた「熱波」が一番印象に残りました。モノクロの映像や背景音をシャットアウトした音響設計などの仕掛けがうまく作用して、不思議な味わいの恋愛映画になっていました。こういう見せ方もあるんだなあっていう発見もありましたし。 第7位 「東ベルリンから来た女」 ハードボイルドなサスペンス映画として一番面白かったのがこれ。東西冷戦の時代、西側へ亡命しようとする女医さんを主人公にしたサスペンスもの。冷戦の緊張感のリアルな描写から、ラストの苦いカタルシスまで、一気に見せる面白さ。印象的な風景描写、ヒロインの凛としたかっこよさなど見所も一杯詰まっていて、映画としての満足度が高い逸品でした。 第8位「マーサ、あるいはマーシー・メイ」 今年はホラーやスリラーの類はほとんど観られていなかったのですが、佳作「ファインド・アウト」「ザ・コール」などに比べて怖さが際立っていたのがこれ。カルト集団に取り込まれた少女が、そこから抜け出せない様子を不気味に描写していました。集団から逃げ帰った後も、そこであったことを他人に話せない少女が孤立してしまい、結局心を許せる人間が教団にしかいないとわかってくるあたりの怖さは格別でした。 第9位「故郷よ」 チェルノブイリ事故で、自分の故郷が立ち入り禁止区域になってしまった人々の心のありようを詩的に描いた一品です。誰もが持っている故郷への想いが、この異常な環境で、より鮮明に浮き彫りになるところに見応えがありました。故郷を不自然な形で奪われた人々の切なさが胸を打つ映画でした。 第10位「パシフィック・リム」 怪獣映画ファンである私へのごほうびみたいな映画でしたけど、ディティールだけでなく、ちゃんとドラマとしても面白いってところが点数高い映画でした。怪獣モノやSFアニメの定番を、骨太ドラマの中に丁寧に織り込んでいった脚本と演出が見事で、原点を知らなくても、十分楽しめる内容でして、素直に盛り上がれちゃうところがお気に入りです。 「パシフィック・リム」が10位になっちゃってるってことからしても、今年の映画は豊作だったように思います。ドラマとして大変面白かった「ペーパーボーイ 真夏の引力」、「フライト」や「鑑定士 顔のない依頼人」、娯楽映画としてのサービス精神があっぱれだった「ホワイトハウス・ダウン」、変化球のようで実はまっとうなコメディだった「ted テッド」、個人的には好きにはなれないけど、その作りのうまさは見事だった「ゼロ・ダーク・サーティ」や「キャプテン・フィリップス」、よくわからないけれど、何だかそそられる「コズモポリス」などがベストからこぼれてしまいました。 次に、映画としてはベストテンからこぼれてしまったけど、ここがよかったというピンポイントベスト5を挙げます。 第1位「きっと、うまくいく」の有無を言わせぬエンタテイメント これはベストテンに入れてもおかしくない映画だったのですが、3時間をベタな泣き笑いで引っ張って、しかもドラマとしての満腹感もたっぷりという娯楽映画のごちそうでした。ミステリー要素あり社会派のネタあり、とにかく色々と盛り込んで観客を楽しませようとする姿勢があっぱれな一品でした。各地で単館公開されてロングランされたってことはそれだけ観客の支持を得たということでしょう。こういうベタな人情話の映画で、劇場にお客が集まったということはもっと注目されていいと思いました。 第2位「ゼロ・ダーク・サーティ」のサスペンス演出 主人公の見せ方が好きになれなくて、ベストテンには入れなかったのですが、それでも、ビンラディンを探し出して襲撃するまでの展開はドキドキハラハラの連続で、ある種の知的興奮もあり、エンタテイメントとしてもお見事でした。テロリスト逮捕のためという名目で、アメリカがムチャやってるのですが、でも面白いのですよ、これが。 第3位「鑑定士 顔のない依頼人」の音楽のサラウンド効果 映画としても面白いミステリーだったのですが、この映画の中で、主人公が女性の肖像画に囲まれて恍惚となるシーンで、エンニオ・モリコーネの音楽が、観客を取り囲むように流れるのが大変効果的でした。臨場感を出すために劇場の左右後方のスピーカーから音を出すのはよくあるのですが、音楽を効果的に鳴らすために、この壁面スピーカーを使うのは珍しいのではないかしら。主人公が女性肖像画に囲まれるのを、音で表現していまして、女性ボーカルがあちこちから聞こえてくるのですよ。こういうのもっとやってくれないかなあ、最近の映画って音楽の出番が昔より少ないのが不満なので、こういう音楽の丁寧な扱いがうれしくなって、特筆しちゃいました。 第4位 「スマイル・アゲイン」のジェシカ・ビール 2013年の女優陣では、「シャドー・ダンサー」のアンドレア・ライズブロー、「ファインド・アウト」のアマンダ・セイフライド、「箱入り息子の恋」の夏帆、「セイフ・ヘイブン」のジュリアン・ハフ、「ted テッド」のミラ・クニス、「エンド・オブ・ウォッチ」のアナ・ケンドリック、「故郷よ」のオルガ・キュリレンコといった面々が印象に残りました。その中では「スマイル・アゲイン」のジェシカ・ビールの誠実なキャリアウーマンぶりが大変好印象でした。映画としての出来栄えは今一つの「スマイル・アゲイン」でしたけど、彼女はどんどんいい女優さんになってきていて、この先も期待大。 第5位「ムービー43」の関係者の黒歴史になるだろう度数100% 映画スターが、コメディにカメオ出演したり、テレビのセサミ・ストリートとかバラエティに出たりするのって、それなりにスターの箔になったり、いいイメージを追加することになるのですが、この映画はその例外になりそう。一応オムニバスコメディなんですが、とにかくひたすら下品。下品ネタで始めても、オチをスマートに決めれば、コメディとしては上々という評価になるのですが、この映画は徹頭徹尾下品。結構なメンツが出ているのですが、フィルモグラフィから外したい人もいるのではないかなあ。「ムービー43」のヒュー・ジャックマンってのは、蔑称になるのではないかしら。 というわけで、また、細々と更新していきますが、本年もよろしくお願いいたします。
|

- >
- エンターテインメント
- >
- 映画
- >
- その他映画




『ゼログラ』と『パシリム』しか見てない(>_<)
ミニシアター系はちゃんとDVDでフォロ〜していかないとです!
こちらもTBさせてくださいね。
2014/1/1(水) 午後 9:10
おめでとうございます。今年も懲りずによろしくお願いします(^^♪
いちおうミーハー・ベストテンをつくってみました。
「きっとうまくいく」よさそうですねぇ、未見の作品が多いのが まこと悔しい限りです。
2014/1/2(木) 午前 10:06
もくれんさん、コメント&TBありがとうございます。ベストテンのうち、シネコンで観たのが半分の5本でした。これが多いのか少ないのかはわかりませんけど、以前よりミニシアター系と呼ばれた映画がシネコンで公開されるようになったように思います。今年はヘビーな映画がたくさん並んでしまって、なるほど、こういうのって、その年の自分の気分を反映するんだなあって後で気付きました。
2014/1/2(木) 午後 5:57 [ einhorn2233 ]
たんたんさん、コメント&TBありがとうございます。本年もよろしくお願いします。「きっとうまくいく」は、どっかで見たことあるドラマを、3時間の長さで、大盛りで見せてくれています。こういうネタで3時間の映画作っても、ちゃんとお金が取れるんだってところは、ちょっとした発見でした。機会があればお試しのほどを。
2014/1/2(木) 午後 6:02 [ einhorn2233 ]
さすがに丁寧な振り返り!
このまま映画雑誌の2013年総集編コーナーに掲載していただきたいです。素晴らしい。
トップ10のうち『故郷よ』以外の未見の4本を順次観て行きます。
並べただけの記事でお恥ずかしいですが、TBさせてくださいね。
2014/1/3(金) 午前 3:20
pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。師匠にお褒めの言葉をいただき、不肖の弟子は感謝感激です。ベストの中で未見のものをご覧になっていただけるとこのこと。その時はまた感想を教えてください。特に「ある海辺の詩人」と「熱波」の感想を楽しみにしています。
2014/1/3(金) 午後 7:03 [ einhorn2233 ]
いろんな方のを見るとやっぱりゼロ・グラビティは強いですね〜!!
映画史に名を刻んだ作品だと思いますし、あの技術は衝撃でした。
偽りなき者は僕の一番の作品となりました☆
TBお願いします!
2014/3/26(水) 午前 7:00
かずさん、コメント&TBありがとうございます。「ゼロ・グラビティ」は映像そのものに驚かされて、さらにシンプルで面白いストーリーがついてきたということで点数が上がっちゃいますよね。「偽りなき者」は真犯人とかラストの人影とか、観客に判断を委ねる部分が映画に奥行きを与えていたように思いました。
2014/3/27(木) 午前 4:45 [ einhorn2233 ]