今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

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今回は新作の「ダラス・バイヤーズ・クラブ」をヒューマントラストシネマ有楽町で観てきました。最近はここでかかる映画はチェック要が多くてすっかり常宿状態です。

1985年のアメリカ、電気技師でカウボーイでもあるロン(マシュー・マコノヒー)は、女とクスリやり放題の日々だったのですが、仕事中に倒れて病院に運ばれ、そこで血液検査を受けたら、HIVの陽性だと診断されてしまいます。いわゆるエイズで後30日の命だと宣告されてしまうのです。最初は本気にしていなかったロンですが、図書館でエイズについて調べていくうちに自分がヤバい状態にあることを知り、新薬についても勉強して病院に試験中のAZTを使わせろと言って、医師のイブ(ジェニファー・ガーナー)に断られてしまいます。そこで、病院の清掃係を買収してAZTを不正入手して命をつなぐのですが、持ち出しも限界と言われ、紹介されたメキシコの病院へ行ってみると、そこでアメリカで認可されていない薬がいっぱいあって、アメリカで製薬会社やFDA(米国食品医薬品局)がすすめるAZTは深刻な副作用があることを知ります。そこで、ロンは、アメリカで未認可の薬を密輸して、エイズに苦しむ人に売るという商売を始めます。薬を売ると法に触れるので、会員制のクラブにして会費を払った会員に無料で薬を配布することにしたのです。そして、ダラス・バイヤーズ・クラブを立ち上げ、多くの会員を集めるのですが、当然、当局に睨まれることになってしまいます。それでも、彼は病院で宣告された30日を過ぎても生き続けて、多くの人に薬を提供し続けるのでした。

アカデミー賞の主演男優賞(マシュー・マコノヒー)、助演男優賞(ジャレット・レト)、メイクアップ賞(ロビン・マシューズ)を受賞した作品です。実在したロン・ウッドルーブの半生をもとに、クレイグ・ボーデンとメリッサ・ウォーラックが脚本を書き、「ヴィクトリア女王 世紀の愛」のジャン・マルク・ヴァレが監督しました。時はエイズが世界でクローズアップされてた1980年代後半。主人公のロンは、ゲイなんか大嫌いな女遊びにクスリ大好きなおっさんでした。それが、どういうわけかエイズに感染してしまい、後30日の命と宣告されてしまうのです。最初は最新の薬を使わせろと病院にねじこみ、それがダメとわかると清掃員を買収してかすめとりと、生への執着を見せつけるのですが、メキシコの病院で無免許ドクター(これがお久しぶりグリフィン・ダン)から、抵抗力にはビタミン大事とか色々レクチャーされ、その薦められた薬がアメリカで認可されていないと知って、自力で運び込んで、エイズで苦しむ人に売り始めるですよ。これがFDAというお役所と軋轢を起こしてしまうことになります。大手製薬会社のAZTが認可されるのに、他のもっと安全な薬が認可されない状況に個人のレベルで反旗を翻すのですよ。当人が余命宣告されたエイズ患者で、その余命をとっくに過ぎたのに、自力で薬を集めて生き延び、さらに同じ病気を持つ人に薬を供給するというドラマチックな構図のお話になっています。

主演のマシュー・マコノヒーは体重を最大21キロ落として撮影に臨んだということで、そのガリガリの体にびっくり。何もそこまでしなくても、モーション・キャプチャーで何とかなるとも思うのですが、多分、俳優が減量した方が安くつくんだろうなあ、つまるところは。でも、マコノヒーは生への執着と商売っ気、さらに商売っ気を超えた男気を見せる主人公を熱演しています。彼の病友というべきレイヨンをジャレット・レトが全編女装で好演していまして、この二人がアカデミー男優賞を持っていっちゃったのはなかなかすごいことだと思います。とはいえ、個々のシーンのテンションは大変高いのですが、エピソードが細切れなので、大きな感情のうねりまでには至らなかったのは残念でした。実録ものの限界なのかもしれませんが、ある時点時点のエピソードをつないでいく構成なので、あるシーンと次のシーンが有機的につながってこないのですよ。シーンが積み上がっていくという感触に乏しいと感じたのは、ひょっとしたら私の感性が鈍っているのかもしれません。でも、ジャン・マルク・ヴァレの演出は、前のシーンがあるから、このシーンの情感が盛り上がるという見せ方をしてないように思います。それまでずっと女装していたレイヨンが、男の格好をして父親に金の無心に行くシーンなどは、見せ方次第では大変感動的なシーンになったと思うのですが、ドラマとしての盛り上がりが今一つに感じられたのは、演出がエピソードをたどることに徹してしまったからではないかと思いました。

そうは、言っても、この映画は、ロンとレイヨンの友情がドラマの軸になっています。ゲイが大嫌いだったロンがレイヨンと知り合うようになって、その偏見がなくなっていく様子、なかなかクスリをやめられないレイヨンをいさめるロン、そして、弱っていくレイヨンに見せるロンの想いなどが、個々のエピソードの中で丁寧に語られていきます。結構泣かせる要素も入っているので、その相互のエピソードによりつながりが感じられたら、もっとよかったのになあって印象でした。

もう一人、ロンの心の友というべき、女医のイブを演じたジェニファー・ガーナーが不思議な存在感を見せました。女版フォレスト・ウイテカーかって思う困り顔キャラなんですが、医師としての倫理感を持ちながら、その倫理を逸脱するロンに共感もしてしまうイブという女性が、ドラマの中でロンと対等な関係になっているのですよ。好意を持ちつつ距離感を保っている感じが、ある意味、リアリティがないようにも見えて、面白いキャラクターになっています。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



メンバーもどんどん増えていくダラス・バイヤーズ・クラブですが、FDAによって摘発されてしまいます。国とFDAを逆に告訴してみたりもするのですがあえなく敗訴。意地でもクラブを続けようとするロンは赤字も辞さないで薬の供給を続けるのです。そして、最終的にFDAは法廷でクラブを押さえ込むことに成功します。法廷から肩を落として帰ったロンをクラブのメンバーは拍手で迎えるのでした。その後、FDAは彼の使っていた薬に認可を出すようになります。彼は死亡宣告を受けてから、7年間生きて、1992年に息を引き取ったのでした。しかし、今もエイズと闘う人々がいて薬の開発も進められているのです。おしまい。

この他にも、ロンが薬の調達に行ってる間にレイヨンの容体が悪化して病院で還らぬ人となるエピソードも入り、かなりのドラマが盛り込まれた内容になっています。その中で、病院の医師を徹底して悪役にしているのは意外な感じもありました。FDAの薦めるAZTを使うことで、免疫の弱った患者はさらに状態が悪くなるのに、処方し続けるからだということになるのですが、病院と製薬会社、そしてFDAの3者の関係がどうなっているのかは、もう少し説明して欲しいと思いました。ホントにそんな単純な悪役なのかなって気がしてしまって。

映画としては、力作であると思うのですが、では面白いかというと、個々のエピソードの羅列から、流れる物語が見えて来なかったので、娯楽映画としては微妙なところだと思います。それでも、ロンのようなエネルギッシュな人間が、お役所と製薬会社を敵に回して闘いを挑み、多くの命を長らえることに成功したという事実は記憶にとどめておくべきだと思いました。大きなモノに巻かれる前に、何かできることがあるかもしれないという希望を、垣間見せてくれる映画と言ったら、ほめ過ぎかしら。

閉じる コメント(6)

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確かにいいなぁと思う部分が単発的で、感動のうねりとはならない作品ですね。
こういう作品は事実に忠実でなければならないでしょうし、それゆえに映画として魅せるものにするのは難しいところかもしれませんね。
それでも薬を買い付けに行く変装シーンが楽しかったり、ユーモラスに描かれているとこもあったのはよかった。
エイズ治療薬に関して本当の悪役は国だったんだと思います。
エイズ=同性愛者→死んで当然 という暗黙の政策(汗)
宗教や差別意識が政治にも影響する時代だったんですね。
今も変わらないのかもだけど・・
TBさせてくださいね。

2014/3/20(木) 午前 5:45 pu-ko

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pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。エイズ治療薬の認可が遅れたのにゲイ差別があったというのは、ホントかなあって気もしちゃいましたけど、創造科学が州法で認めらちゃうくらい、宗教団体が強いお国柄だと、そういうこともありそうですね。映画としては、山場がわからない淡々とした構成は好き嫌いが出ますよね。

2014/3/21(金) 午前 0:07 [ einhorn2233 ]

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実話だとなかなか脚色にも気を遣うと思うので、この作品はエンタメ度は低くなっても仕方なかったかもしれませんね。
私は結構惹きこまれて観てしまいましたが、エイズに関してはこの20年で劇的に治療薬も変わったようで、一つの時代を感じました。
キャストの熱演が印象に残りますね。
TBさせてくださいね。

2014/3/29(土) 午後 10:00 choro

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Choroさん、コメント&TBありがとうございます。エイズに関する知識や認識は1980年代とは大きく変わってきているのですが、患者さんの苦悩について、どの程度、改善されているのかは、なかなか情報が出て来なくなって、私なんぞはエイズの知識は20世紀で止まったままです。ここでこういう実録ドラマを見せて、再度、エイズへの関心を呼び覚ますという効果もある映画のように思いました。

2014/3/30(日) 午後 4:23 [ einhorn2233 ]

映画を 解説するのは 難しいですね

2017/8/25(金) 午前 6:36 [ sg2***** ]

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sg2*****さん、初めまして。確かに映画を解説するのは難しいですね。だから、映画の解説本が結構いい値段で売られているのだと思います。ブログでは、感想を書くのがせいぜいですが、まあ、只なんだからご容赦というところです。

2017/8/28(月) 午後 8:45 [ einhorn2233 ]

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