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今回は新作の「ブルー・ジャスミン」を109シネマズ川崎5で観てきました。ここはスクリーンが右に寄っているので、席も右よりに取らないとスクリーンが正面になりません。TOHOシネマズだけじゃなく109シネマズもずっとシネスコサイズのままの放置上映になってました。スクリーンサイズ変える手間を惜しむのは、なんかねえ。それが当たり前になるのはやだなあ。 大学在学中に金持ち投資ディーラーであるハル(アレック・ボールドウィン)と結婚したジャスミン(ケイト・ブランシェット)は、ニューヨークでそれはそれはセレブな暮らしをしていたのですが、ハルが金を集めては詐欺行為を繰り返すとんでもない男でした。悪事が露見して、ハルが逮捕され、全てを失ったジャスミンは、サンフランシスコに住む妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)のアパートへ引っ越してきます。お金ないのにファーストクラスでやってくるあたりまだセレブ感が抜けていないようです。妹と元ダンナのオーギー(アンドリュー・ダイス・グレイ)の会社の元手20万ドルをジャスミンはハルの会社に投資するように勧め、全部すってしまったという過去がありました。二人の子供を育てるジンジャーは修理工の恋人チリ(ボビー・カナヴェイル)と一緒に暮らすつもりだったのですが、ジャスミンが転がり込んできて、同棲は延期になっちゃっていました。ジャスミンは人生再出発させる生活力はなく、パソコンを習ってインテリア・デザイナーの講座を受けるなんて言ってます。それまでの生活費を稼ぐためチリのつてで、歯科医の受付をすることになります。ところが、そこの歯科医に言い寄られて、仕事を棒に振ってしまいます。パソコンスクールで知り合った女性にパーティに誘われ、出会いを求めてジンジャーと一緒にそのパーティに出向きます。そこで、知り合った外交官ドワイト(ピーター・サースガード)といい関係になります。うまく行けばセレブに返り咲けるかもしれないと、多少の経歴詐称も織り交ぜて、婚約指輪を買ってもらうところまでこぎつけるのですが.....。 ウッディ・アレンが脚本、監督した新作は、主演のケイト・ブランシェットがアカデミー賞をはじめ、ゴールデン・グローブ賞以下数々の主演女優賞を総なめにしたというのが話題になりました。セレブだった女性が、一気に一文無しになったのですが、その事実と直面できずにだんだんおかしくなっていくというのをコミカルな味わいの悲劇として描いています。ジャスミンは精神安定剤を常用しており、気がつくと独り言を言っているというメンタルがかなりやばそうな女性です。妹のジンジャーはそんな姉でも、大切に思っていて、以前、大金を溶かしちゃった過去があっても、何くれとなく気を遣ってくれます。ジャスミンは、貧乏暮らしの妹を見下しているところがあって、労働者層というだけで、妹の彼氏もダメ男扱いしちゃいます。まあ、それまでセレブ生活の贅沢三昧してきたことからすれば、仕方ないよなあって気もしてきます。この「仕方ないよなあ」ってのが、この映画のベースに流れているのが面白いと思いました。 この映画の中で、いやいや始めた歯科医の受付の仕事で、歯科医に惚れられちゃうというエピソードが登場します。言い寄られたジャスミンはガンと拒絶して職を失っちゃうのですが、彼女は普通にしていても女性として魅力的なんですよね。だからこそ、金持ちハルの目に止まったってこともあるのでして、とんでもない大物詐欺師と結婚して贅沢三昧しちゃったのは、彼女が愚かだからではなくて、持って生まれた男の気を惹く魅力があるから、その男に翻弄されちゃうのですよ。そこで、男を思うように操ろうなんて小賢しいことはしないで、素直に男から愛を得ようとする、だから、ハルがヤバい事業をやってるとかあちこちで浮気しているとか、何となくわかっているのだけれど、最後まで追求できないで、現実を掘り出す根性はない。これを、愚かな女だと言うのは、酷な気がします。自分に男の気を惹く能力だけが長けているとしたら、その男についていくしかないですもの。ジャスミンはたまたま地雷を踏んでしまっただけではないのかしら。ジャスミンみたいな一点突破型の女性が、悪い男に騙されること、その男の色に染まっちゃうのも「仕方ないよなあ」って気がするのですよ。その結果、変な人になっちゃったわけですが、その悲劇は決して笑えるものではありません。 ジャスミンと対照的に描かれるのが、妹のジンジャーでして、ウエイトレスやスーパーのレジをやる苦労人で、付き合うのも労働者層。ジャスミンのような知性や華はないけれど、それでも女性として魅力的に見えるのを、サリー・ホーキンスが軽やかに演じていて、これがまたうまい。ジャスミンと一緒に出かけたパーティで、オーディオ・エンジニアのおっさんと知り合って舞い上がっちゃって、チリと破局になりかかるのですが、おっさんが結婚してたのがわかり、またチリとヨリを戻すことになります。ジャスミンの方にシンパシーを感じさせるアレンの演出なのですが、その一方で、ジンジャーを見る目はかなり辛らつで、結局、妹にはこの程度の男がお似合いだぜという見せ方は、アレン自身のセレブ目線が感じられてしまいました。やっぱり、アレンって、セレブの悲劇にはシンパシーを感じる見せ方をする一方で、労働者層はばっさり切り捨てるなあってところが面白かったです。 今回の映画はシネスコサイズで、カラーも現代風のくっきりとした色使いになっています。その横長画面でケイト・ブランシェットのアップを多用して、彼女の演技をたっぷりと見せてくれます。この名演技をたっぷり見なはれという撮り方が、数々の主演女優賞につながっているのかも。また、対照的なキャラとして登場する妹を演じたサリー・ホーキンスがうまいのですよ。絶対にジャスミンのようなセレブにはなれない普通の女性をリアルに熱演しています。男性陣では、難しい役どころをアレック・ボールドウィンが飄々と演じているのが印象的でした。 この先は結末に触れますのでご注意ください。 結婚期間中、ジャスミンにとって気がかりだったのは、夫の浮気でした。手当たり次第に浮気しているという噂が入ってきても、最後には自分に帰ってくるというのが彼女のプライドを支えていました。ところが若い留学生との浮気をハルに問い詰めたところ、今度のは浮気じゃなくて本気だと開き直られちゃいます。それまでの浮気とは違う、ジャスミンとは別れようと言い出すに及んで、ジャスミンパニック状態。逆上した彼女は、FBIに電話して夫の不正を通報しちゃうのです。その結果、ハルは逮捕され、収監された刑務所で、首を吊ってしまうのでした。ハルには元の妻との間に息子がいたのですが、この逮捕をきっかけに父親とジャスミンに絶望し、大学を中退して、今はオーディオ機材屋のオーナーを細々とやっているのでした。一方、ジャスミンはドワイトにプロポーズされるのですが、彼には、外科医の夫とは死別してインテリアデザイナーやってると嘘をついていました。二人で、婚約指輪を買いに出かけると、宝石店の前で、不運にも妹の元ダンナに遭遇してしまい、彼女の過去を洗いざらい暴露されてしまいます。そして、ドワイトとはあっけなく破局。家に帰ってみれば、ヨリを戻したジンジャーとチリから、セレブとの婚約を祝福され、ブチきれてしまうジャスミン。もうわけわかんなくなって、「自分はここを出て行く」と啖呵を切って、部屋を出て行くと、公園のベンチに座って、過去の回想を口に出してブツブツつぶやいています。そして、そんな彼女のアップから暗転、エンドクレジット。 過去を詐称してドワイトと付き合っていて、いい雰囲気になっていたのが、土壇場で妹の元ダンナに出会っちゃうことで全てがパーになっちゃうジャスミンは、ホント運に見放されています。ちょっと頭の働きが鈍いところはあってもバカじゃないし、それなりのセンスもあるし、容姿も魅力的。だからこそ、ドワイトも彼女と結婚しようと思ったわけです。決してクズでも最悪でもないんだけど、最初の男運の悪さで全てが狂っちゃって、ラストは人生お先真っ暗の状態になっちゃいます。それを乗り越える気力やパワーを持っているわけではないジャスミンは、運命に翻弄されるヒロインなのですが、誰でもそうなっちゃう可能性があるという見せ方になっているのはうまいと思いました。ジャスミンは確かに変わっているところはあるけれど、そのふり幅は意外と小さいのですよ。若くして大金持ちのセレブになっちゃえば、貧乏人を見下すようになっちゃうし、ダンナの浮気性に悩まされ続けたらパニック障害にもなりましょうし、一瞬で財産を失ってダンナが獄死しちゃったら、メンタルがガタガタになるよなあ。ジャスミンを見た目ほどには特別な女性ではないと見せた、アレンの演出とブランシェットの演技は見事だったように思います。ですから、ラストは笑えないし、普遍的な不幸のドラマとしての結末ということになります。 これは、オヤジ目線だから、そう思うのかもしれません。女性目線では、特別痛い女性に映るのかも。ともあれ、アレンの緻密なドラマの組み立ては、映画としての満足度が高かったです。監督のセレブ目線を映画の趣向として楽しめればかなり面白い映画ではないかしら。痛いヒロインのお話のようで、実は痛々しい女性の不幸話だというところに、この映画の見識を感じました。
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ブランシェット演じるジャスミンには価値観において痛さを感じます。
でもそこにいたる過程は十分理解できるし、本当に悲しくて最後は切なくて泣けてしまいました。
ジンジャーに対する監督のセレブからの目線には気づきませんでしたが、二人ともうまかったですね。
TBさせてくださいね。
2014/5/19(月) 午前 2:06
自分にしか関心が無い人(誰でも持ち合わせていますが)を、 ケイトは「チョット変」から「かなりおかしい」まで微妙に演じ上手かったです。
年若い留学生と出来てしまうという元・夫、まるでアレン自身の様で、こんなことも客観視できるからこそずっと感得を続けて来られたのだな、と変に納得してしまいました。
自身もクラリネットを吹くというアレンならではの音楽も良かったです。
TBさせてくださいね。
2014/5/19(月) 午後 0:42
pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。ジャスミンは自業自得というには気の毒でしたよね。コメディのテイストでマジ悲劇になっているところが面白いと思いました。
2014/5/20(火) 午後 5:02 [ einhorn2233 ]
アンダンテさん、コメント&TBありがとうございます。ケイト・ブランシェットはどんな映画でもうまい女優さんですが、この映画では、職人的なうまさで、アレン演出にこたえていたように思います。他の監督さんなら、もっと辛らつに突き放すところを、シンパシーを寄せているのがアレンらしいという感じでしょうか。
2014/5/20(火) 午後 5:09 [ einhorn2233 ]
「仕方ないよなあ」って言うの、良くわかります。
クリント・イーストウッド監督は常に視点が意地悪なんですけど、ウディ・アレン監督は淡々と事実を積み重ねていて、むしろちょっとジャスミン寄りなのが面白いなと思ったし、この映画が好きな理由です。
しかし最期のネタばらしには驚いたなあ。
2016/4/8(金) 午前 10:11 [ サイモン ]
サイモンさん、コメントありがとうございます。アレンの演出は最後までジャスミンを見捨てていないですよね。彼女に対するシンパシーが何処からくるのかなあって思ってしまったのですが、アレンも結構メンタル弱いのかもしれないですね。
2016/4/9(土) 午後 11:36 [ einhorn2233 ]