今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

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今回は新作の「タリーと私の秘密の時間」をTOHOシネマズシャンテ1で観てきました。金曜日、初日の最終回ということなんですが、結構、お客さん入っていてちょっとびっくり。テレビとか紹介されたのかしら。キャッチーな要素はない映画なんですが。私は、シャーリーズ・セロンが好きで映画館に足を運んだのですが、彼女のファンがそれほどいるとも思えないし。

アラフォー女性のマーロ(シャーリーズ・セロン)は、3人目の子供が臨月で、産休に入ったのですが、息子のジョナが情緒不安定(多動症なのかな)で学校で問題を起こして、ちょくちょく校長に呼ばれてます。娘のサラは手がかからない子で、ダンナのドリュー(ロン・リヴィングストン)はよき夫ではあるのですが、育児については腰が引けてるところがあるみたい。そして3人目のミアが生まれてからがもう大変。夜中の5回起こされる一方で、ジョナが何かと手がかかってもうグロッキー。お金持ちの兄クレイグ(マーク・デュプラス)は、自分も使ったナイトシッターに頼んだらどうかと勧めてきます。夜中、授乳以外の赤ちゃんの面倒を全てみてくれるサービスで、もうギブアップ状態のマーロはナイトシッターを雇うことになります。やってきたのは、意外や若い女の子タリー(マッケンジー・デイヴィス)で、ちょっと不思議ちゃんなところもあるけれど、仕事は有能、さらに初日の夜中に家の中を掃除してくれるという、大当たりのシッターさんでした。タリーのおかげで、マーロは夜ゆっくり眠れるようになり、元気を取り戻した彼女は家事や育児にも積極的になり、家の中が明るくなっていきます。ある晩、ちょっと遅れてやってきたタリーは、マーロにマーロがかつて住んでいたニューヨークへ飲みに行こうと誘います。え? 赤ちゃんのミアを放っておいて? どうやらタリーには何か隠し事があるみたいなのでした。

「JUNO/ジュノ」「ヤング・アダルト」のディアブロ・コディが脚本を書き、それらの監督をしたジェイソン・ライトマンがメガホンを取りました。シャーリーズ・セロンは「ヤング・アダルト」で主演してますから、「ヤング・アダルト」のトリオが再結成ということになります。個人的に、「ヤング・アダルト」のシニカルな笑いに大ハマリだったので、この映画にも若干期待するところありました。「ヤング・アダルト」は、アラフォーでもビッチやってますという痛いヒロインが主人公でしたが、今回のヒロインはまっとうに結婚して仕事も持ってて、ダンナと子供にも恵まれてるという、前作とは真逆のポジション。彼女の3人目の子供の産休中に、育児にグロッキーになるヒロインを救うナイトシッターのお話です。

「ヤング・アダルト」のヒロインは、アラフォービッチでもスリムできれいでしたが、今回のヒロイン、マーロは美人さんではあるのですが、いわゆる中年体型で、デブじゃないけど脂がぼってり乗ってます。セロンはこの役のために18キロ増量したそうで、なるほど美人で魅力的だけど、若さの勢いの衰えたヒロインをリアルに体現しています。「アトミック・ブロンド」のアクションヒロインからの、子連れ主婦だもの。すごい女優さんだと改めて感心。この作品でプロデューサーも兼任しているところから見ても、企画を選ぶ審美眼がすごいのでしょうね。息子が落ち着きがなくて、学校で結構迷惑な子供になっています。昔なら、育ちの悪い問題児で片づけられるところですが、今はそういう状態を表現する言葉が増えたこともあって、何か他と違う子とか精神的な病状として扱われることが多くなりました。この映画では、私立の学校に通わせていたけど、あまりに手がかかるので、専属の教師を自費で雇ってつけてくれって言われちゃいます。まあ、その子にだけ先生の時間が取られちゃうのは他の子にとっては迷惑な話であって、学校の言いぐさももっともなのですが、それほど裕福ではないマーロにはできる話ではありません。後は障害のある子どものあるクラスに入れることになっちゃうのですが、それも潔しとできないマーロとしては余計目にストレスがたまっちゃうのでした。さらにサラが生まれたことで、夜中に5度起きなきゃならない生活が始まっちゃいます。ダンナは「何とかしてあげたいけど、自分は何の役にも立たないから」って、手伝ってくれるわけではない。客観的に見ると、結構ひどいダンナだと思うのだけど、マーロはそんなダンナには不満はないみたいで、むしろ自分の力の至らなさを責めてるようにも見えます。ダンナのドリューってのは、見た目も言動も紳士で、マーロに接する態度もやさしいので、そんなダメ夫に見えないのが面白いところです。ただ、くたびれて寝室に帰ってくる嫁の横で、ゾンビシューティングゲームに夢中というのが、無神経さを感じさせまして、そのリアルなダンナぶりを演じたロン・リヴィングストンの演技が見事でした。

そして、夜だけやってくるナイトシッターというのを雇うということになります。私は未婚シングルなので、なるほど大変だよなあ、息子の問題で昼間神経すり減らして、夜中は赤ん坊の世話では、いつか壊れちゃう。ナイトシッターという選択肢があってよかったね、と思うのですが。これ、実際に何人も子供を育てた実績のあるお母さんが観たらどう思うのだろうというのが、ちょいと気になりました。「ナイトシッターなんて甘え、母親になるってのはそういうことなんだし、誰もが通ってきた道なんだから。」なんて言われちゃうと、この映画の基本設定がチャラになっちゃうのですよ。この映画の発端に、世の母親の皆さんは果たして共感していただけるのかしら。「自分は何とか乗り切れたけど、この映画のヒロインみたいに追い詰められたら、ナイトシッターのお世話になるのもありかも。」くらいに寛容に思っていただけたらいいなあ。

さて、夜になってシッターがやってきます。タニーという女の子で、どう見てもマーロより若い20代のスリムな女性。ちょっと変わったところもあるんですが、娘はすぐなつくし、授乳時には、マーロのベッドまで来てくれる。朝になってみれば、散らかっていた家の中がきれいになってるし、このタニーというシッター、只者ではありません。久しぶりによく眠れて気分も上々のマーロ。若いタニーに若干の不安もあったのですが、是非彼女に続けてもらいたいと思うようになります。タニーが来てくれるようになって、それまで冷凍食品メインだったのが、自分で料理するようになるし、気分屋の息子へのイライラも収まってきて、家族中の空気が変わっていきます。タニーのおかげで、全てがいい方向へ進んでいくのは出来過ぎの展開にも思えるのですが、タニーが来る前の荒れた一家の空気を丁寧に見せているので、マーロが元気になっていくのがうれしい展開になっています。この出来過ぎというところがミソでして、ちょっとファンタジーの雰囲気もあるのが、後半への布石になっています。

子供を育てるのは、メンタルに大変だなあってのは、未婚の私にも理解できます。また、生まれたばかりの赤ん坊の面倒をみるころが体力的に大変だというのも、実感はないけど想像はできます。普通の家庭よりも、ちょっと大変な状況にあるマーロが壊れそうになるのには共感しちゃいました。ダンナがやさしいだけで、役に立ってないってところも気の毒感がありました。ちょっと面白いと思ったのは、事業に成功して金持ちになった兄夫婦の存在でして、この兄がナイトシッターを勧めるのですよ。成金っぽい登場の仕方をするので、紳士的なダンナに比べて、いやな奴なのかなと思っていたら、この成金兄貴の方が、妻のことを真剣に考えてるらしいってのが伝わってくるのが、ドラマの面白いアクセントになっています。この映画の中で、ダンナのドリューは決して悪役に描かれているわけではないのですが、ラストのラストで、それがドラマをミスリードする仕掛けになっていたと気づかされると、結構、ヘビーで苦い後味が残る結末になっています。未見の方には何のこっちゃなお話ですし、この結末の受け止め方は人それぞれでかなり異なるものになると思いますから、あくまで個人の感想と思ってください。とにかく、シッターさんのおかげで明るくなった一家がどうなるのかというところは、劇場でご確認いただきたいと思います。

コディの脚本はミステリータッチのものだったのかもしれませんが、ライトマンはそのミステリー部分を見えにくくして、でも伏線は張っておくといううまい演出で、この映画をヒロインを巡る一つの寓話のような描き方をしています。でも、その船底一枚下は地獄だというサブプロットもきちんと伝わってきますので、その地獄の切実度の感じ方の個人差によって、かなり後味に差が出てくる映画だと言えそうです。決して、悲劇的結末を迎える映画ではありませんし、一家のこの先に、充分な希望を感じさせる映画ですから、あまり身構えてスクリーンに臨む映画ではありませんし、音楽の印象的な使い方や、笑えるツボもあり、素直に楽しめる部分も多い映画です。その一方で、人は最終的に誰に頼ればいいの?という視点に立つと、若干の切なさも残る映画と言えるのではないかしら。色々な人がご覧になって、感想を語り合うのにふさわしい映画でして、映画鑑賞サークルの鑑賞会に向いていそうな感じです。うーん、結末を語らないと、何を言っても隔靴掻痒になっちゃうところがもどかしいですが、未見の方にはご覧になることをオススメしちゃいます。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



タリーに誘われて、結局マーロも娘を置いて、ニューヨークへ出かけちゃいます。二人で酒を飲んでいると、タリーはもうナイトシッターは続けられないと言い出します。せっかく家の中がうまく行くようになってきたのに急にいなくなられても困るというマーロですが、タリーはもう来られないというばかり。なんとなく気まずい気分になった二人、タリーが運転しての帰り道、酔いのせいもあってついつい眠り込んでしまったタリーは、運転を誤って川の中へ突っ込んでしまいます。川に沈んだ車の中に一人のマーロを、人魚のタリーが助けにやってくるのでした。病院に担ぎ込まれたマーロですが、尋常でない疲労と睡眠不足が重なっていました。そのことを医師に知らされて驚くドリュー。タリーというのはマーロの旧姓で、実はタリーという女性は実在していなかったのです。精神的に追い詰められたマーロは、実在しないナイトシッターを心の中で作り上げ、そのタリーが完璧に振舞ったというのは、実はマーロが裏でそうしていたのです。病室のマーロの前に、別れを告げにくるタリー。ドリューは、マーロにこれまで自分が家庭に向き合ってこなかったことを詫びるのでした。また、マーロの新しい一日が始まるのでした。おしまい。

ハッピーエンドのような雰囲気で終わる映画ではあるのですが、結局、誰にも頼れなくなったヒロインが、もう一人の自分に完璧を託して、事態を乗り切るという、見様によっては、ヒロインの地獄の日々を描いたお話でもあります。もう一人の自分の頑張りで、メンタルの元気は取り戻したものの、ヒロインの体が物理的限界に達して、タリーがもう存在できなくなり、そこまで行って、やっとダンナがヒロインの苦悩に気づくというのは、ヒロインかなりかわいそう。特に、家じゅうが散らかり放題で、食事の冷凍ピザやファストフードばっかという状況下であっても、マーロが完璧な自分を実現しようと葛藤していたのかと思うと、痛々しいものがあります。

追い詰めらた人間がもう一人の人格を作りだすというのは、サイコスリラーでは使い古されたルーチンではあるのですが、そのルーチンをホームドラマに持ち込んで、ハッピーエンドへ持っていくというのはかなり新鮮な印象でした。でも、ウソを楽しむサイコスリラーでなく、リアルな人間の葛藤としての二重人格を描いた結果、その追い詰められた痛さが前面に出てきたという感じなんです。映画はホームコメディの体裁をとって、その痛さをかなりわかりにくくして、実在の有無にかかわらず、タリーによってマーロが救われたという見せ方をしています。そういう見せ方に嘘はないのですが、タリーが現れる時、その裏でマーロが身を削っていたと思うと、やっぱり痛い映画だよなあ。ダンナが悔い改めることで、未来への希望がつながるのですが、カミさんがそこまでしないと、気がつかないのかよっていう突っ込みは入ってしまいました。まあ、それは、赤ん坊を育てたことのないシングルの男目線だからそうなるのかもしれません。女性だったら、他のところへ突っ込み入るかもしれませんし、前述のように、乳児の相手をするのに他人に頼むなんてという突っ込みが入った方がいらっしゃるかもしれません。ただ、色々な視点からの、この映画へのツッコミを語り合うことで、育児についての相互理解が深まる映画なのかもという気がしちゃうのでした。だから、映画鑑賞サークルみたいな色々な世代の人がいる場所での、鑑賞会の題材として、いいのかなって。

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閉じる コメント(4)

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本作は近々 観に行く予定なので読まずにおきますね。また、お邪魔します

2018/8/20(月) 午前 6:57 アンダンテ

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アンダンテさん、コメントありがとうございます。是非、ご覧になって感想をアップしてください。女性目線だと、この映画がどう見えるのかが気になっています。

2018/8/21(火) 午後 10:07 [ einhorn2233 ]

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二児の母です。他人の手を借りたいのは山々なんだけど、シッター文化が定着していない日本では、なかなかハードルが高い。どんな人がやってるのか分からないし、殺人事件もありましたから。他人に家をウロウロされるのが嫌な人もいますし。あと、旦那が良く思わない、両親や義両親が良く思わないなども有ると思います。男の無駄に高いプライド、昔の価値観ってやつです。劇中のマーロの夫も、お金持ちの義兄を嫌っていました。あと専業主婦は楽してるって思ってるからでしょうけど。家事育児に終わりはないし、狭い世界で誰に相談することもなくいたら確実におかしくなります。マーロは本当に良いお母さんですよ。叫ぶだけで、子供に八つ当たりしたりしませんから。訴訟の国だから、あっという間に虐待で連れて行かれちゃうからでしょうかね。兎に角、この映画にグサリきましたし、泣けました。

2019/6/14(金) 午前 2:50 [ Okawari ]

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Okawariさん、訪問ありがとうございます。この映画、日本のお母さんにも響くところがあったのですね。この映画、もっと話題になっていいと思っていたのですが、あまりヒットもしてないのが不思議でした。この映画、観た時はすごい問題提起をするなあって感心したのですが、映画のつくりがファンタジーっぽかったので、ヒロインの痛みが伝わりにくかったのかなあ。それとも、あまりに核心をつきすぎて、拒否反応が出たのかも。育児を一任されてるお母さんには他人事じゃない映画ですよね。

2019/6/25(火) 午後 7:27 [ einhorn2233 ]


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