今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

やっと書き込み再開します。本年もよろしくお願いいたします。

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ブログの師匠pu-koさんの記事で「突破口」を拝見して、そういえばこれ録画したきりになってたなあってことで、テレビで鑑賞しました。1973年の映画というと、46年前の映画なんですね。でも、このころの映画って、テレビの映画劇場で色々観ているのですが、その中ではなぜか未見のままでした。

飛行機の曲乗り芸人だったチャーリー(ウォルター・マッソー)は、転職した農薬散布の仕事でも食い詰めて、女房のナディーン(ジャクリーン・スコット)も含めた4人で田舎の銀行を襲う、少額強盗をすることにします。田舎町の銀行の前に車を停めて、強盗に及び、現金と証券をせしめることに成功しますが、警官に車が盗難車であることを知られた結果、一人は警備員に撃たれて死亡、ナディーンも流れ弾を受けて亡き人となります。生き残ったチャーリーとハーマン(アンドリュー・ロビンソン)は、金を山分けしようと数えてみれば、75万ドルもありました。田舎の銀行にこんなに現金があるのはおかしいと、チャーリーはこれはマフィアの金だと気づきます。銀行重役のボイル(ジョン・バーノン)は、事態を収拾するために汚れ仕事の専門家モリー(ジョー・ドン・ベーカー)に金の回収を依頼します。警察は残った死体から犯人の身元を洗おうとしますが、思うようには進みません。一方、モリーは裏の調査密告網を駆使して、国外逃亡のための偽パスポートを作ろうとしたチャーリーを特定し、ハーマンのいるチャーリーの家にやってきます。チャーリーの方も自分のヤバイ状況を理解していて、何とか追手をまこうとするのですが....。

ジョン・リースの小説を、テレビ映画で実績のあるハワード・ロッドマンと「ダーティ・ハリー」のディーン・リスナーが脚本化し、「ダーティ・ハリー」「テレフォン」のドン・シーゲルがメガホンを取った犯罪アクションの一編です。オープニングは静かな田舎町の風景が映り、そこにタイトルとクレジットが被さります。そして、銀行の前に車を停めた老人とその娘が、パトカーの警官に車を駐車場へ移動させるように言われるところか始まります。一度は現場を離れたパトカーが車のナンバーを照会して戻ってくるのと並行して銀行強盗がカットバックされるところから、シーゲルの演出は快調で、舞台はずっと田舎町なんですが、カーチェイスも迫力あるし、その後の展開もうまい。最近の映画はライド感を狙って、とにかく細かくカットを割ることが標準になっちゃってますが、この映画の頃は、まだカット割りも見せ方もゆったりしていて、どこか余裕があるのが個人的には好きです。

ウォルター・マッソーという渋めのスターで、犯罪ものを作れた時代なんだなあってのがまず驚きというか感心。さらにマッソー演じるチャーリーが、男気はあるけど、それなりのワルになっているのが面白く、ひょんなことからマフィアに追われるようになった中年男をユーモアと凄みを交えて演じているのがうまい。冒頭で、撃たれて虫の息の女運転手を見捨ててしまうのですが、その後、彼女がチャーリーの妻とわかるあたりは、ハードボイルド感たっぷりの意外性がありました。一方、マフィアの金を横取りした自分たちがヤバい状況にあるのに、ムダにつっぱる若造ハーマンに見切りをつけるあたりの非情さもなかなかすごい。一方、チャーリーを追うモリーという男も、裏世界にものすごく顔が広いらしく、その有能な仕事ぶりに、周囲の人間も敬意と恐怖を示します。どうやら、犯罪者としてのプロである、チャーリーと、彼を追うモリーの対決ものの様相を呈してきます。でも、それだけではなく、他の登場人物にも、キャラと見せ場が与えられていて、最近のジェットコースタームービーとは一線を画す、きっちりとした小説を読む味わいのある映画になっています。

登場人物がそれぞれに印象に残る演出がされているので、田舎町の保安官とか、モリーが仕事の宿に紹介された売春宿の女の子、モリーに車を奪われる黒人とか、細かいところできちんとキャラが立っているのですよ。そうそう昔の映画は、テンポは今ほど早くないけど、脇のキャラが印象に残る演出がされてたよなあっていうのを思い出しました。だからこそ、60〜70年代の映画をもとに「傍役グラフィティ」なんていう名著もあったんだよなあ。(これは、当時の洋画の傍役を出演した映画とともに列挙した本で、私はこの本のおかげで色々な俳優の名前を知り、脇役に興味を持つようになりました。)そういう小さな役の俳優の演技を束ねて物語を引っ張る作りが、当時の映画の定番でした。派手なアクションや爆破がなくても、役者のうまさと物語の展開で楽しめる映画があったんだよなあ。この映画は、いわゆるB級映画と呼ぶにはスタッフ、キャストは一級なのですが、田舎町の強盗の後始末という説明をすると、今の人はB,C級映画だと思っちゃうかも。でも、これはB級映画と呼ぶには丁寧でちゃんと作られているのですよ。テレビで観ても退屈するところのない2時間弱ですから、機会があればオススメしちゃいます。ちなみに、私も名前を知ってる面々では、シェリー・ノース、ノーマン・フェル、ウィリアム・シャラート、アルバート・ポップウェルといった名前が懐かしかったです。また、「ダーティ・ハリー」でシーゲル監督とコンビを組んでいるラロ・シフリンの音楽が、パーカッションを駆使してアクションシーンやサスペンスを盛り上げているのも聴きものです。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



チャーリーは75万ドルを隠し、ハーマンに家から出ないように言って、偽造パスポートの手配をしますが、パスポート情報を裏稼業の男がたれこんだことで、チャーリーの正体が割れてしまいます。その連絡を受けたモリーはチャーリーの住むトレーラーハウスへ向かいますが、そこにはハーマンしかいませんでした。ハーマンを脅して、金のありかを吐かせようとしたモリーですが、彼が何も知らないとわかるとあっけなく殺してしまいます。その一部始終を、チャーリーはトレーラーハウスの外に隠れて見ていました。チャーリーは、ボイルの秘書シビル(フェリシア・ファー)に接近し、ボイルに連絡して、75万ドル渡すから身の安全を保証しろと持ち掛けます。飛行場で、チャーリーを待つボイル。それを遠くからうかがっているモリー。チャーリーは複葉機でやってきます。そして、ボイルに抱きつき、不自然に親しげにするチャーリー。それを遠くから監視していたモリーは、ボイルとチャーリーがグルだったと信じ込み、車でボイルを轢き殺してしまいます。さらに、滑走する複葉機とのチェイスの末、複葉機は反転してチャーリーは動けなくなります。モリーに金のありかだと言って車のキーを渡すチャーリー。モリーがその車のトランクのカギを開けるとそこにはハーマンの死体と爆薬があってドッカーン。そして、車に乗って去っていくチャーリー。おしまい。

ボイルの秘書の家に押し入ったチャーリーは、ボイルに取引を持ち掛けた後、秘書とベッドでねんごろになってしまいます。当時は男と女がすぐベッドインしても、ありの時代だったのかな。そして、クライマックスは自動車と複葉機の地上チェイスというどこかのんびりした見せ場の後、チャーリーが最後の仕掛けでモリーを仕留めます。このピリっとした結末が何かかっこいいのですよ。恨みとか因縁といったものがないビジネスライクな殺し合いが、さくっと決まるあたりが小気味よい後味を残します。オッサンが殺しあう、殺伐としたお話なのに、どこかのんびりした味わいもあり、さらに面白くてかっこよくて、後味がいいってのはなかなかないですから、最近の見せ場のぎっしり詰まった映画にお疲れの方にオススメしちゃいます。

また、本筋と関係ないところに印象にのこるものを配してあるのも楽しい趣向になっていまして、ご覧になってないと何のことかわからないかもしれませんが、「強盗の車を目撃した少年」「牧場の前での会話」「ブランコの少女」「トレーラーハウスの大家のオバちゃん」「パスポート屋の女(シェリー・ノース)とモリーのやりとり」など、妙に心に残るシーンの多い映画になっています。最近は、こういう寄り道をしつつ、映画を面白く仕上げる監督がいないのかもしれません。或いは、観客がそういう寄り道を楽しむ余裕をなくしてきてるということなのかも。

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流石einhornさん!
何がどう面白かったかをきっちり表現してくれているので、そうだった、そうだったと、この映画の魅力を再認識し、二度楽しめた気分です。
仰るように、どこかのんびりなのにハラハラもあったり、細かい脇役のキャラが立ってて、面白い映画でしたね。
「傍役グラフィティ」なんて本があるのですね。欲しい〜。
amazon調べたら中古のみ出てました。悩むところです。

2019/2/18(月) 午後 11:37 pu-ko 返信する

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pu-koさん、コメントありがとうございます。師匠の記事のおかげで埋もれていた映画を発掘できました。シンプルだけど色々あって面白い映画でした。「傍役グラフィティ」は60〜70年代の映画の記憶がある方なら楽しめますし、映画の楽しみ方が増えるお得な本だと思います。潔癖症でなければ、古本でもお試しください。

2019/2/19(火) 午後 6:43 [ einhorn2233 ] 返信する

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