今昔映画館(静岡・神奈川・東京)

やっと書き込み再開します。本年もよろしくお願いいたします。

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今回は、横浜のTOHOシネマズ上大岡4で新作の「ギルティー」を観てきました。ここは劇場の広さの割にはスクリーンの大きさが今イチなんですが、どっかでこういう映画館あったよなあって思いだしたのが、銀座シネパトスでした。あそこほど小っちゃい劇場ではないんですが、客席とスクリーンのバランスがそんな感じで。

警察の緊急通報司令室のアスガー(ヤコブ・セーダーグレン)は、市民からの緊急電話を受け付けるオペレーター。明日に何か控えていて、それが彼の気懸りみたい。そんな彼が受け付けた通報は若い女性からのもので、どうやら誰かに誘拐されているみたい。自分の子供に電話すると偽って警察に電話してきたみたいなんです。電話番号から、彼女の名前がイーベンであること、電話の基地局から、どうやら市の北部の高速上にいるらしいことがわかります。アスガーは警察本部に連絡して、パトカーが向かうのですが、イーベンが乗っている車を特定することができません。アスガーは思い切って、イーベンの家に電話すると、マチルドという6歳の女の子が出ました。マチルドが言うには、母親のイーベンを、別居中の父親ミケルが連れだしたというのです。アスガーはマチルドに弟のそばに行って、警察を待つように告げ、警察本部にイーベンの家へ警官を向かわせるように依頼します。イーベンには暴行の前科があり、ナイフを持っているということで、イーベンが危険な状況にあることがわかってきます。アスガーは相棒で非番の警官ラシードにミケルの家へ行くように頼みます。夜勤のオペレータと交代の時間が来たのですが、アスガーはそこに残り、事態を何とか収拾させようとします。マチルドからアスガーに電話があり、会話していると、電話の向こうで警官がやってきたことがわかります。しかし、アスガーはその警官の口から驚くべき言葉を聞くことになります。果たしてイーベンを無事保護することができるでしょうか。

デンマークのグスタフ・モーラーが脚本を書き、自ら初メガホンを取りました。カメラは緊急通報司令室を出ることなく、事件は、主人公の電話の向こうで展開します。アスガーが受けた緊急通信から、事件が始まります。設定としては、同様に緊急通報司令室のオペレータが誘拐された女性からの電話を受ける「ザ・コール」という滅法面白い映画と同じなんですが、こちらは、最後までカメラが緊急通報司令室を出ることなく展開するので、舞台限定ということでは、「リミット」「search/サーチ」に近い見せ方になるのですが、単なるサスペンス以上の重めの人間ドラマを設定していて、なかなかの見応えがあります。ただ宣伝文句の「犯人は音の中に潜んでいる」というのは、真に受けない方がいいです。電話の向こうの音から犯人がわかるというミステリーの要素はないですから。それでも、電話の向こうから聞こえる声と音だけで事件は描写されますので、想像力を働かせての映画鑑賞は、なかなかにスリリングです。ラストで、「ああ、そういう話だったのか。」という面白さもあり、劇場での鑑賞をオススメします。

その先の展開については、あまり語れないのですが、この映画のポイントは、主人公のアスガーがどんどん事件にのめり込んでいくこと。もともと、彼は緊急電話を受けるオペレータなので、警察本部へ事件を報告したら、後は向こうの仕事であり、アスガーは事件を捜査したり、犯人を捜す権限はないのです。にもかかわらず、彼は自分からイーベンの家へ電話して、マチルドと話をしたり、挙句の果てには犯人と思しきミケルにも直接電話をかけちゃったりして、かなりやりたい放題。彼の態度の中に、現場の警官よりも自分の方がこの事件をよくわかってると思っている節があるんですよ。だから、警察本部側のオペレータと言い合いになったり、かつての上司に何様な口を聞いて怒られちゃったりします。こいつ、警察組織の中でも浮いてる存在らしいということがわかってくると、電話の向こうだけでなく、アスガー自身も単なるミステリの探偵の立場ではなく、サスペンスの要素として、ドラマをかき回してきます。

モーラーの演出は舞台を緊急通報司令室に限定しても、ミステリーとしての展開の面白さと、ハラハラドキドキのサスペンスを両立させることに成功しています。また、ジャスパー・スパニングの撮影が、シネスコ画面で意外と落ち着いた絵作りをしていたのが印象的でした。特に舞台が限定されていると、画面が単調になるので、やたらアップを増やしたり、カットを細かくしたりして、観客を引っ張ろうとしがちなんですが、この映画では、引きの絵などオーソドックスな絵で役者の演技をしっかりと見せているのが見事でした。ほとんど一人舞台のヤコブ・セーダーグレンの演技でドラマが展開していくのですが、それでもサスペンスが切れないのは、彼の演技もさることながら、演出のうまさが光りました。この内容なら一幕ものの舞台劇にしても、面白いかも。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



イーベンの家に着いた警官は、血まみれのマチルドと、その弟の惨殺死体を発見します。それを知ったアスガーは、イーベンの身が危ないと、電話してきた彼女に、サイドブレーキを引いて車から逃げろと指示しますが、イーベンは逃げるのに失敗。ミケルによって荷台に閉じ込められてしまいます。それでも、アスガーは彼女の電話に、車が停まったらレンガでミケルを殴って逃げろと伝えます。しかし、その会話の中で「息子の中にヘビがいて、苦しんでいたから取り出した」と言い出します。どうやら、イーベンは精神に異常を来していて、息子を殺してしまい、それを知った元ダンナのミケルが彼女を精神病院へ送る途中だったのです。ミケルは弟の惨殺死体をマチルドに見せないために、弟の部屋へ行くなと指示してあったのですが、アスガーがマチルドに弟のところで警察を待てと言ったせいで、マチルドは弟の返り血で血まみれになっていたのです。イーベンは、アスガーの指示とおりにしてミケルの車から逃げ出します。よかれと思って暴走したアスガーの行動は全部裏目に出てしまい、頭を抱えるアスガー。実は、彼は容疑者の若者を射殺していたのですが、それを相棒ラシッドを巻き込んで正当防衛だと偽証していたのです。その裁判が明日に控えていた彼ですが、もう彼には嘘をつき続けることができなくなっていました。イーベンから電話がかかってきました。自分は息子を殺したのかと問う彼女は、自分の罪を認識していて、橋の上から身を投げようとしていました。何とかしてそれを思いとどまらせようとするアスガーは、息子を殺したのは事故だと説得します。そして、自分は人生がいやになって殺さなくてもいい若者を殺して、正当防衛だと嘘をついたと告白します。説得の途中で、アスガーの一報で手配されたパトカーがやってきて、間一髪のところでイーベンは保護されるのでした。事態の収拾を確認したアスガーは司令室を出て、誰かに電話をかけるのでした。その電話をかける彼のロングショットから暗転エンドクレジット。

アスガーのやったことは、ほとんど裏目に出て、事態を悪い方へと進めてしまいます。そのことを知って後悔するのですが、それまで警察本部への連絡もしないまま、自分の電話で事件を解決しようとしているあたりは、彼はかなりの問題警官です。でも、それ以上に若者を殺したことで、裁判にかけられるのが問題で、彼は嘘をついて殺人の罪を逃れようとしていたのです。それでも、彼は最後にはイーベンの自殺を止めることに成功したことで、自分の生きる意味をぎりぎりのところで見出したようで、人生やり直しをするのかな?というところで映画は終わります。一言で言ってしまえば、精神を病んだ母親が息子を殺し、それを知った元夫が彼女を精神病院へ連れていこうとしていたお話なのですが、アスガーがかき回してしまった結果、事態は悪化してしまいます。でも、最後の最後で、彼はイーベンの自殺を食い止めることに成功します。そういう意味ではハッピーエンドではあるのですが、彼は人生に絶望した結果、死ななくていい人間を殺していたのです。それでも、映画の後味が悪くならないのは、未来への希望が描けているからでしょう。アスガーの隠された秘密のミステリーと、誘拐事件のサスペンスを過不足なく描いていて、ドラマとしても見応えのあるものになりました。

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これはみたいと思ってます。舞台劇みたいというのは映画情報でわかってましたが、ミステリーな展開とハラハラドキドキの両立は面白そう。ネタバレはまたあとで読ませていただきます〜

2019/2/25(月) 午前 2:16 LAGUNA 返信する

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らぐなさん、コメントありがとうございます。これ、かなり面白いですからネタばれが出回る前に劇場でご覧になることをオススメします。一か所だけを舞台にして、ずっとサスペンスのテンションを落とさないところが見事でして、見応えあります。

2019/2/26(火) 午後 8:05 [ einhorn2233 ] 返信する

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正直、個人的には後味は良くなかったのです。まだ、記事にしていないのですが、アスガーの思い込みと人を頼らない独善的なスタイルにイラッとしたのだと思います

2019/3/3(日) 午後 7:24 アンダンテ 返信する

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アンダンテさん、コメントありがとうございます。確かにアスガーのキャラが暴走しちゃうので、何だかなあって展開なんですが、最後に彼が事実を告白するというところで、これは、彼が自分の罪に向き合うまでの物語だったのかとわかるあたりに、痛みと救いが感じられる結末になっていて、ドラマとしてよくできてるって感心しました。

2019/3/4(月) 午後 7:40 [ einhorn2233 ] 返信する

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