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久しぶりのサントラ記事です。骨太な復讐劇を描いた「ボーダー・ライン」の音楽を担当したのは、ポストクラシカルのミュージシャンとして、何枚ものリーダーアルバムを出しており、映画音楽でも「プリズナーズ」「悪童日記」「博士と彼女のセオリー」といった実績のあるヨハン・ヨハンソンです。彼のリーダーアルバムでは、抒情的な耳にやさしい音楽が多いのですが、麻薬戦争を扱った映画では、そういう甘さを一切封印した、重くてハードな音を作り出しています。 冒頭の曲は、ヒロインが護送車で誘拐犯のアジトへ向かうシーンで流れる曲で、低音の腹に響くようなパルス音にさらに低音ブラスのような音の咆哮がかぶさるというもので、タンジェリン・ドリームの「ザ・キープ」を低音強調したような音になっていまして、このオープニングが映画全体のカラーを決定していると言っても過言ではありません。 全編、シンセの音かと思っていたのですが、CDのライナーを見ると、編曲者としてヨハンソンとアンソニー・ウィーデンの名前がクレジットされ、さらに指揮者としてウィーデンの名前が挙がっています。オーケストラ部分はハンガリーのブダペストで録音されているようです。この注釈がなかったら全部シンセの音だと思ってしまうくらい、無機質的なドライな音になっています。パフォーマーとして、パーカッションやチェロのソロ、ボーカルといった面々もクレジットされており、シンセのアンビエント音楽の枠ではくくりきれないものがあり、オーケストラとシンセによる現代音楽というのが、正しい位置づけのようです。 第一印象は効果音みたいな音楽だなあって思ったのですが、現代音楽として聞き直してみると、そこに個性の強さが感じられ、シンプルなメロディの反復だけでない、エモーショナルな顔も確認できます。しかし、悲劇的な音を歌い上げていてもそこに抑制の効いた音の絞り込みがされており、基本的には、低音部を全面にだしたアンビエント風な音楽になっているように思います。その個性の強さは、エンニオ・モリコーネの「遊星からの物体X」を思わせるものがあります。モリコーネはストリングスの使い方でその個性を出していましたが、この「ボーダー・ライン」ではパーカッションによる低音の使い方が音楽に一本筋を通しています。 これだけ、重量感のある音楽を流すと映画本編の方がその音に振り回されてしまうことがあるのですが、この映画は本編も重厚で緊迫感あふれる演出で統一されているので、その重低音がさらにドラマを盛り立てるという、いい相互作用を作り出しています。 |

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