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2017年は、中盤に体調を壊してあまり映画館へ足を運べず、観た映画全部を記事にできなかったりもしたのですが、それでも、1年の総決算ということで無理やりベストテンを作ってみました。選択基準は「映画を観て発見のあったもの」でして、発見のある映画が上位にランクされています。
第1位 「エル ELLE」
映画の冒頭で、自宅でレイプされたヒロインがどう出るのかというお話なんですが、一筋縄ではいかないヒロインの行動から、意外なハッピーエンド風まで、とにかく面白かったから1位です。ポール・ヴァーホーベン監督と主演のイザベル・ユペールが、ものすごいヒロインを作り出しています。エロくて面白くて痛快な映画、こんな映画、めったにお目にかかれるものではありません。
第2位 「パターソン」
パターソンの町のバス運転手パターソンの1週間を淡々とつづったドラマです。ジム・ジャームッシュ監督は、普通の人の日々の暮らしを淡々とコミカルに描いているのですが、それが娯楽映画として成立しているのが見事だったので、2位にランクインです。1位も2位も「こんな話でエンタテイメント」という共通点がありまして、そっかー、こういう題材で娯楽映画が作れるんだという発見がありました。また、この映画のほのぼのまではいかないけど、ちょっといい感じというのが、うまいなあって感心しちゃったのですよ。
第3位 「アイヒマンの後継者」
ミルグラム博士の行った実験は、権威と指示が与えられると、誰でも人間的に非道なことができちゃうというのを証明してしまいます。誰でもアイヒマンになる可能性があるという、誰にとっても不愉快な事実を突きつけてくる話なのですが、この映画は、ミルグラム博士の半生を描くという体裁を取りながら、アイヒマン実験を丁寧に絵解きして、この事実を思い出してというメッセージ映画になっています。キナ臭くなってきたご時世の中で、人は誰でも自分の望まない残虐行為を行える、自分自身も危ういという事実は、肝に銘じておく必要があります。戦争責任とか自己責任といったものに一石を投じる映画であり、多くの人の目に触れて欲しい映画でした。
第4位 「メッセージ」
宇宙からきた巨大な宇宙船にいる宇宙人とコンタクトを取ろうというお話を、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が大ハッタリの重厚演出で見せた一編で、その見せ方には若干の抵抗を感じたものの、お話がちゃんとしたSFで、そして時間の観念が変わったらどうなるかというのをかなり真面目に絵解きしている点が高い評価になりました。「そうか、時間の観念が変わるとそうなるのか」という発見があったので、4位にランクインです。また、その変化を受け入れるヒロインがなかなか感動的で、そういう意味でも見応えがある映画でした。
第5位 「彷徨える河」
コロンビアのアマゾン川上流に聖なる植物ヤクルナを求めて現地人ガイドと一緒にジャングルを進む男。二つの時間の二人の男が同じガイドと一緒にジャングルを行く物語を、並行して描くことで見えてくる現地人の生活と、それを否定し破壊していく白人の文化と宗教。映画は、神秘的な映像の中で、白人の文化がもたらすものを歴史的な視点で描いていきます。かつてはマジョリティであった被征服者から見た白人の文化という視点に発見があり、見応えのある映画でした。
第6位 「わたしはダニエル・ブレイク」
イギリスの福祉の状況をストレートに批判した映画。怪我をして雇用支援手当を受けようとしたダニエルが、お役所の困った人をさらに困らせる仕事っぷりに腹を立てるというお話。食べることにも不自由しているシングルマザーが人としてのプライドをズタズタにされちゃうところなど、観ていて辛くなるシーンもありますが、人間はみな平等に幸せになる権利があるというのに、お上は困ってる人への気遣いすら否定してくる。自己責任という言葉で、貧乏人同士をいがみあわせている日本のお上のやり方に、もっと気づくべきだと思わせる映画でした。今の言論統制された(自粛の押し付け合いという意味で)日本では作れない映画ということで、ベストテン入りです。
第7位 「否定と肯定」
「ホロコーストはなかったろう」論者が、ホロコースト研究者を名誉棄損で訴えたという実話に基づくお話です。裁判はホロコーストの有無を問う方向へは進まなかったのですが、下手をすれば、法廷でホロコーストの有無が争われたというかなり怖いお話。そんな時、自分がホロコーストがあったことを何をもって確信しているのかと考えると「意外と曖昧じゃね?」ということに気づいたという怖い発見がありました。ベストテンには入りませんでしたが、「沈黙 サイレンス」にもつながる自明のことが危うくなるという視点は、ちょっと目を背けたいけど、耳に痛いものがありました。
第8位 「婚約者の友人」
戦死した婚約者の友人として現れた男を喜んで迎え入れるヒロインと婚約者の両親、その友人には秘密があったというお話をリメイクするにあたり、フランソワ・オゾンは後日談を付け加えて、ヒロインをさらに振り回すのでした。後半の展開に、そう来るかと思わせる作者の悪意を感じつつ、戦争のもたらす悲劇としてきちんと仕上げた物語の面白さで、ベストテン入りとなりました。意地の悪い映画だけど、そのうまさは認めちゃうという感じ。
第9位 「女神の見えざる手」
凄腕のロビイストであるヒロインがいつもの金儲け関係なく、銃規制キャンペーンに手を染めたら、聴聞会に呼ばれて大変なことになるというお話。フランスとアメリカの資本で、イギリス人の脚本・監督が、アメリカを舞台にしたドラマを、面白い視点で作りました。ロビイストのお仕事ですとか、銃規制キャンペーンを張ることのアメリカでの位置づけが伺えて、発見のある映画でしたし、お話の面白さ、脇に至るまでの演技陣のよさもあって、面白くて見応えがありました。
第10位 「ザ・ウォール」
イラク戦争の真っただ中、偵察中の米軍狙撃兵二人が、謎の狙撃手に命を狙われるスリラー。政治的な視点や主張を入れずに作っているところが新鮮で、イラク戦争を題材に、娯楽エンタテイメントを作れるようになったんだという発見がありましたし、心理サスペンスとしても面白くて、最後まで楽しめました。登場人物2人に、通信機の向こうに声が一人でドラマが作れるので、舞台劇にもできそう。
この他、日本人だからこその視点で興味深かった 「沈黙 サイレンス」、オフビートなコメディとして笑えた 「マギーズ・プラン」、重厚な人間ドラマとして見応えのあった 「セールスマン」、映像詩ともいうべき 「とうもろこしの島」などがベストテンからこぼれてしまったので、結構充実した映画鑑賞の1年だったのかも。特に「沈黙 サイレンス」は、「彷徨える河」と表裏一体を成す映画として記憶に残る映画でした。
後、例年の、ベストテンには入らないけど、局所的に気になったピンポイントベスト5を挙げます。
第1位 子供にも見せられる映画としての 「僕のワンダフルライフ」と 「少女ファニーと運命の旅」
最近の洋画って、アメコミとアニメとか、若い人をターゲットにしてるのが多くて、子供に見せられて大人も楽しめる映画が少ないように思います。そんな中で、この2本は大人が安心して子供と一緒に観ることができる映画でした。こういう映画がもっと公開されて、子供の映画ファンが増えるといいなあって思います。最近、若者ターゲット映画以外で、映画館で若い人を見かけることが少なくなってきているように思います。映画鑑賞が、今や、盆栽や詩吟みたいな年寄り向けの趣味になってきているのかなあ。
第2位 「幸福なひとりぼっち」に見る高齢化社会への不安と希望
この映画の主人公オーヴェは、ご近所の人間をバカだと見下して、何だかんだとイチャモンつけてる困ったじじい。それでも近所の人は何かあれば声をかけてくれてすごく親切。なぜなのかと思っていると、後半、彼の亡くなった奥さんがものすごくいい人だったからというのがわかるのですが、奥さんによる底上げがなかったら、ホントにただの嫌われ者のじじいでしかないじゃんと思うと、ジジイに両足突っ込みかけている自分としては、年を取ることが本当に不安。オーヴェを反面教師にして、こんなじじいにならないようにしなければ思わせたところにこの映画の意義があったように思います。
第4位 「スキップ・トレース」の観光映画の味わいがちょっと懐かしいような
記事にはできなかったのですが、ジャッキー・チェン主演のアクションものは、主人公が悪者に追われて、結構のんびり逃げ回るというお話です。そんな途中で、中国の田舎の観光紹介のような展開になるのですが、その昔、テレビでよく放送されていた日本映画に日本各地を旅してその地方を紹介していくような構成のものをよく見かけたのを思い出しました。「××旅行」とか「××温泉」とかもろにご当地もののような映画もありましたし、普通のドラマでも地方ロケをしながら移動していくようなものもありました。中国みたいな広い国なら、まだ観光目線のカメラが入っていない地域がいっぱいありそうで、この映画のようなアクション映画の中で、地方の風習やお祭りとかを紹介していくパターンがこれから出てきそうな予感があります。
第5位 川崎チネチッタのLIVE ZOUND音響設備
川崎のシネコン、チネチッタにはそれまで低音を増強したライブサウンドというシステムが装備された劇場がありました。そして、今年は、さらに音響を強化して、16台のスピーカーと4台のサブウーファーを追加したシステムLIVE ZOUNDをスクリーン8に設置しました。迫力ある音響と腹に響く重低音の両方を実現しています。このシステムのいいところは、ライブサウンドと同じく、追加料金なしというところ。ドルビーアトモスの追加料金とは差別化して、一方で爆音上映に近い効果を出しているのがすごい。他の劇場でも、こういうアドオンのサービスを追加料金なしでやってほしいなあって期待しています。この仕掛けで観た映画では「ダンケルク」と「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」が重低音の迫力と、臨場感がすごかったです。
というわけで本年もよろしくお願いいたします。
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