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このところ、映画に足を運べてなくて、テレビばっかの日々を送っているのですが、NHK-BSで「怪奇大作戦」の新旧並行放送をしているんですよね。
オリジナルは昭和43年、「ウルトラセブン」の後番組として日曜日の夜7時から2クール放送された、SF特撮ドラマです。超自然現象や科学犯罪を捜査するSRIという組織の活躍を描いたもので、的矢所長(原保美)、三沢(勝呂誉)、牧(岸田森)、野村(松山省二)、さおりちゃん(小橋玲子)の5人のチームに警視庁の町田警部(小林昭二)が絡むというもの。これが、なかなかの曲者でして、最初の4話の冒頭を並べてみると「怪人が壁を通過する」「蛾にたかられた男の体が泡を吹いて溶けてドクロになる」「タバコを吸おうとした男が火を噴いて焼死」「電話を取った男が火を噴いて焼死」と、休日の最後の団欒を飾るにはやりすぎ感ありあり。1話完結で、スリラーあり、SFあり、何だかよくわからない話ありとバラエティに富んだ内容でしたが、ウルトラシリーズほどは視聴率は稼げませんでした。私は放送当時は小学生低学年で、人が溶けたり燃えたりするのにはかなりビビッて観てました。
1980年代以降のビデオブームで再評価されるようになり、実相寺昭雄監督や岸田森がクローズアップされて、カルト的人気を得るに至りました。私も再見する機会があって、LDなんかゲットしたのですが、これが面白い回とそうでもない回の差が大きい、出来栄えにムラのあるシリーズだったことに気付かされました。結末に謎を残したまま完結しない話に面白いものが多く、私の個人的な好みを挙げると、ベストは「青い血の女」「かまいたち」「果てしなき暴走」となります。一般的には、実相寺監督の「京都買います」「死神の子守唄」などの評価が高いようです。ある程度、その時代を直接反映したドラマですので、怪獣モノに比べると色褪せやすい部分もあるのですが、それでも面白いものは面白いのですよ。脚本や監督はウルトラシリーズから連投のメンバーに加え、脚本に石堂淑朗、監督に小林恒夫や長野卓等が参加しています。
これが年号が改まってから、リメイクされてNHK-BSで放送されたのが「怪奇大作戦 セカンドファイル」でして、的矢所長(岸部一徳)、三沢(田中直樹)、牧(西島英俊)、野村(青山草太)、さおりさん(美波)というメンツで、45分枠で、3本作られました。そして、また間を置いて、2013年の10月から同じく45分枠で、「怪奇大作戦 ミステリーファイル」の放送が始まり、的矢所長(原田美枝子)、三沢(原田泰造)、牧(上川隆也)、野村(村井良太)、さおりちゃん(高橋真唯)のメンバーが怪奇な事件に立ち向かうことになります。オリジナル版は、お話によってSRIメンバーの誰かが主人公になったり、ゲスト出演者が主人公になったりしていたのですが、リメイク版は、明確に、牧が主人公というポジションになっています。まあ、オリジナル版でも牧中心のお話の評価が高かったので、それにならったのでしょう。
先日、オリジナル「怪奇大作戦」の「かまいたち」が放映され、前後して「かまいたち」のリメイクという形で「怪奇大作戦 ミステリーファイル」の「深淵を覗く者」がオンエアされました。同じ設定で、同じネタ、30分と45分という尺の違いがあるものの、時代背景の違いなど、なかなか面白いものがありました。
この先は話を比較するために両者のストーリーを一通り紹介しますので、未見でこれからのお楽しみに取ってある方はご注意ください。
オリジナルは、動機なき殺人者が社会の中に潜んでいて、それが突如、かまいたちで開いた傷口のような不気味な姿を現すという物語を寓意的に描いています。その犯人の平凡なたたずまいの怖さ、そして、SRIの牧が、なぜか彼の視線から、彼が犯人だと確信を持つ不条理さと、物語として怖いのですよ。そして、さらに女性の体が一瞬ゆがんだように見えてバラバラに吹き飛ぶという視覚的なショック。何しろ、ちぎれた首が川の中に落ちたところでタイトルが出て、出演者の名前が出てくると、カメラがパンして、川岸の隙間から、ちぎれたらしい手首がのぞいているというインパクトのある映像が続きます。
「怪奇大作戦」「かまいたち」(脚本 上原正三、監督 長野卓)
東京の下町、深夜に家路を急いでいた女性が橋の上にさしかかったとき、ごうっという風の音とともに、女性の体がバラバラにちぎれ、川の中にボチャン。痴情怨恨からの、鋭利な刃物による犯行と警察はにらむのですが、SRIは流しの犯行ではないかと疑います。次の犯行が起きたとき、これは真空状態を作り出すことによる「かまいたち」現象ではないかと、SRIは推理します。犯行現場に集まった野次馬の中に何か視線を感じた牧は、さおりちゃんに周囲の写真を撮るように言い、その写真の一枚に写った若い男に注目します。「この目は笑っている」牧は男を尾行するようになります。工場に勤める男は平凡で虫も殺さないいたちのような目をしています。SRIは彼を罠にはめるべくさおりちゃんを夜中に橋まで歩かせます。そして轟音とともにバラバラにさおりちゃん。野村が逃げる男を取り押さえるとやはり、牧がにらんだ工員でした。さおりちゃんは橋の寸前でリモコン人形と入れ替わって無事でした。バラバラになった人形がイビツに合体してヘコヘコ歩いていくのがまた不気味。牧や警察に「何でこんなことをしたんだ」と詰問される犯人は最後まで無言。その犯人の目にカメラが寄って、エンドクレジット。
どうやって犯人がかまいたち現象を起こす装置を作りえたのか、また、何のためにそんなことをしたのかは最後までわかりません。かまいたちでできた傷のように、突然社会の傷がぱっくりと割れて、狂気が飛び出したとでも言うべき怖い話です。色々と解釈の余地を残しながら、得体の知れない恐怖を秘めて物語は終わります。冒頭の人体バラバラのインパクトがすごいのですが、その先の結末もかなりすごい。ちょっとヒチコックの「サイコ」を思わせるところもあるのですが、あのノーマンのような普通の時の人間の魅力的な部分は一切なく、ひたすら普通というか平凡な男。そんな男を生み出した社会へと視線を投げかけているようなラストではあるのですが、あくまで匂わせる程度で、そういう言及は一切なく、この常識では計り知れない狂気に対する、牧の畏怖の言葉でドラマは終わるのです。
ショッキングなオープニングから、不気味なエンディングまで、長野卓の演出は30分枠の中でテンポよくストーリーをさばいて、後に不気味な余韻を残すことに成功しています。かまいたち発生装置をなぜ犯人が作ることができたのかもわかりませんし、なぜ立て続けに殺人を行ったのかもわからない。そんな動機なき無差別殺人という不条理な世界を、猟奇スリラーとして面白く描いたのはかなりすごいことだと思います。特撮による人間バラバラシーンはインパクトありましたし、こんなのを日曜夜7時にやっていたというのもすごい時代です。少年漫画雑誌も「アシュラ」などのエグい描写のものが増え、映画も血糊の量が多いエログロ系の映画が幅をきかせてきた時代を反映しているとも言えましょう。
さて、一方の「怪奇大作戦 ミステリーファイル」の「深淵を覗く者」も、冒頭は、オリジナルと同じところから始まります。
「怪奇大作戦 ミステリーファイル」(脚本 小林弘利、監督 鶴田法男)
、冒頭で夜道を急ぐ女性が誰かに尾行されているシーンから、橋の上で、風の音がして彼女はバラバラになっちゃいます。そして、手口を替えた第2第3の殺人が発生し、牧はその殺人方法をことごとく暴いていきますが、そこを逆に警察に疑われて逮捕されてしまいます。牧はどうも連続殺人者に近づきすぎたようなのです。そして、犯人の感情とシンクロしてしまったようで、それを的矢所長から「深淵を覗く者は、その闇に飲み込まれる」と忠告されます。オリジナルと同様に現場写真の中から、怪しいトラックを特定して、そのトラックを尾行し始めます。トラックの運転手である男はSRIに追い詰められたと観念すると、自らを高熱発生装置にかけて火柱となって絶命。結局、最後まで犯人の顔はわからないままなのでした。そして、警察がやってくると野次馬が集まってきて、携帯カメラでばしばし撮影しています。牧はその群集の中の一人に駆け寄ります。そして、牧のアップで「おまえなのか」と言うところでおしまい。
牧が自分と犯人がどこが違うのか、犯罪トリックを暴くことでその犯罪を楽しんでいる自分がいるんじゃないかと悩むところがオリジナルとの大きな違いでしょう。そして、犯人の顔を最後まで見せずに、ラストで群集の中にいる観客(視聴者)に向かって、「犯人はお前なのか」というところで、そのテーマの矛先をテレビの外に向けてくるのです。そういうメタ構造とも言えるドラマの趣向は面白くもあるのですが、何だか青くさい印象も受けてしまいました。学生映画のノリだと言うと語弊があるかもしれませんが、そこまで具体的に語らなくても、伝える方法はありそうなものじゃんというのが、オリジナルと比較しての感想でした。また、キーマンとなる牧のキャラクターも、オリジナルは思い込みと理性の両方にユーモアを加えた一人の人間として描かれているのですが、リメイク版の牧は何かやたらと思い悩むキザな文学青年っぽいので、逆に人間としての奥行きに欠けてしまいました。オリジナルの岸田森が演じた牧もかなりキザでお悩み深そうな感じはあったのですが、リメイク版の上川隆也演じる牧の方がその度合いが激しいのです。そういうところにも青臭さを感じてしまったのかも。
描写としては、人間がバラバラになる描写はありませんが、熱線を受けた被害者が一瞬で灰になっちゃうというシーンがあります。でも、オリジナルよりはおとなしい描写となっています。監督がJホラーの第一人者である鶴田法男だけに、ホラータッチの部分は、オリジナルよりも上々なのですが、何かこうセリフが説明的でリアリティがないのが残念。オリジナルにない切り口を持ったストーリーはいい線いってると思うのですが、最近のドラマ・映画によくある説明過多になっちゃっているように思います。これは、観客(視聴者)がバカになったのか、バカになったと思われているのかのどっちかでないかしら。
というわけで、どっちも面白く出来ているのですが、シンプルだけどかなり怖いオリジナル版に対して、テーマを明確にしたら饒舌になりすぎたリメイク版という風に色分けできるのではないかしら。私は、オリジナル版に強烈な印象を持っているので、どうしてもそっちに肩入れしてしまうところはありまして、動機なき無差別殺人の怖さがストレートに伝わってくるオリジナル版の方に軍配を上げてしまいます。リメイク版も、携帯カメラを掲げた野次馬の群れという現代ならではの見せ方をしている点は評価高いのですが、その語り口の饒舌さがどうもノリきれないのですよ。一番、それがよくわかるのが、タイトルの違い、「かまいたち」と「深淵を覗く者」、どっちにセンスを感じるかと言えば、ねえ。
オリジナルの「怪奇大作戦」はまだ、再放送されるようですから、機会があれば一見をオススメしちゃいます。ただ、玉石混交ってところはありまして、1本見てつまんないと思っちゃうのは早計ですよ。
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