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魚と活字

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山の夜を見よ

 
夜の帳が下りる頃、山の空気は一変し、密度を一気に高めます。
人の野生は五感を高め、太陽の光の下では出会うことのない不思議な「何か」の存在を感じることがあります。



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『山の夜を見よ』 菅原正志ほか(朔風社)



八百万の神々が住まう深山幽谷。切り立ったゴルジュ。
鱒を追い求め山岳渓流を遡行した先で出会うのは、神であり、自然の躍動であり、人間の根源的な部分かもしれません。
そして月光のスポットライトの中、切り取ったその瞬間は人生を一変させるほど濃密な感動と恐怖に溢れている。

無機質な都会に疲れたとき、呆れるほどダブルでロックな刺激を心に刻むのも必要な経験です。
 
 

パブロフの鱒

 
「私が深く信じていること。
魚たちが我々を必要としていないとしても、我々は魚たちを必要としている。
魚が走り、ジャンプし、エラ洗いし、水草に潜り込み、沈んだ丸太にラインを巻きつけ、頭を下げて真剣勝負を挑んできたとしたら、それだけで少なくとも、この私と同じくらい自由を求めている生き物と出会ったことがわかる。
だからこそ釣りは神聖なアートであるべきなのであろう。
絶対に軽く見られるべきではないもうひとつの生き物との交歓なのだから。」

『パブロフの鱒』ポール・クイネット著・森田義信訳(角川書店)



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心理学の博士であり、自らが釣り人である著者が書いた釣りの心理学エッセイ。


心理学と言っても、学術的過ぎたり、逆に眉唾物ということは決してありません。
冒頭の文章にあるように、哲学書や聖書の類とでもいうような、神妙且つ軽妙な文体です。

そして日本の釣り文学が自然に対する畏れや人間社会からの断絶を物語の根底に持つのとは違い、いかにも欧米らしいユーモアやウィットに富んだ表現・考え方も随所に用いられ、読み手を飽きさせません。
 

 
「キャストするたびに魚がかかると思い込むのは、釣りをしない人から見れば、これは我々アングラーがかかっている病の兆候でしかない。

我々は好ましい記憶だけを保存し、心を希望で満たしながら釣り糸を垂れる。
そんなずるがしこいことができるのは、ポジティブな幻想や創造的自己欺瞞や自己啓発のおかげだ。
それらに関する心理学的リサーチはすべて、フィッシャーマンが正常でまともな人々であるだけでなく、平均的市民より精神的に健康であることを示している。

フィッシャーマンは、9日間1匹も釣れなかったとしても、10日目の朝になるとまた水辺への進撃を開始する。
これこそ、希望が経験に対して偉大なる勝利を収めたことの証でなくてなんだろう。
そしてこれこそが、人間の魂の最良の部分ではないだろうか。

そんな素晴らしいフィッシャーマンになりたいのなら、何より大切なのは、まずシートベルトをきちんと締めることだ。
頭でダッシュボードをへこませたり、フロントガラスを叩き壊したりした患者を何人も見てきた私が言うのだから間違いない。
この世で最も繊細かつデリケートな頭脳という、千数百グラムの神経のかたまり。
脊髄のてっぺんにあるこの神経線維と、そこで起きているかそけき化学反応こそが、人間に与えられた最高のフィッシングタックルだ。」



アメリカンジョークな展開が好きな方も是非(^o^;
 
 
 
ヒロ内藤さん曰く、「ルアー1つ持って世界中で釣りをするなら、僕は絶対ミノーを選ぶね。」

魚種を問わず、またフィールドを問わず、様々なフィッシュイーターを相手にするなら、確かにミノーは万能でしょう。
例えば大小の岩で複雑に流れが絡む渓流で、ウィードもオーバーハングも豊富なカバーレイクで、流れの重い大河川で、見渡す限りのサーフで、陸を遥か彼方に望むオフショアで、狡猾なターゲットと対峙するならやっぱりミノーは強い。


でも、ことバス釣りに限ってなら、僕はクランクを選びます。

バスプラグの代名詞的なクランクベイト。
初めてブラックバスを釣ったのは、ワゴンセールで購入した無名のクランクベイトでした。



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『秘密のクランクベイト』 雨貝健太郎 (つり人社)


既読の方も多いかもしれません。
熱しやすく冷めやすい日本バス業界に一時期、クランクベイトブームを巻き起こした良著、いやその意味では問題作(笑)

この本、初版が発行されてもう7年以上経ったんですね。Basser誌連載開始時からだと10年ほどですか。
単行本としては何年か前に中古釣具店で入手しました。



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この本はクランクベイトの元祖と言われる「Big−O」の紹介から始まり、クランクベイトの歴史、地域性、特徴(ボディシェイプ・リップシェイプ・カラー・ラトルetc)、展開・発展(フラットサイド・リップレス)、タックルセッティング等々がアマケン氏の緻密かつ熱っぽい文章で語られています。

さらには、Basser誌でB.A.S.S.やFLWのトーナメントレポートを寄稿されてるアマケン氏ならではの視点として、アメリカのバスプロ達のクランクベイトへの並々ならぬ拘りっぷりが伝わってきます。
その面で、アメリカと日本のバス釣りの比較も感じられ、感心しきりです。


「なぜ日本製のクランクベイトはどれも皆終わってるんだ?トップウォーターとかジャークベイトにはいいものがあるのに、クランクベイトに関してはジャンク(=ゴミ)ばかりだぜ。」
このツアープロの発言なんて、フィールド構成や魚の絶対数など、シャローカバーの釣りを外せないアメリカならではです(汗)

ただ、ジャパニーズクランクが全てダメなんてそのプロの見識が浅いだけだろうし、作中ではアマケン氏が紹介するプラグに対し過剰評価や偏見も散見されますので、そのあたりは1アングラーの参考意見程度に。


まぁとにかく、こういう時間と場所を超えるマニアックな(でも本来はスタンダードと扱われるべき)ムック本?エッセイ?レポート?って日本の釣り業界にはなかなかありません。(一部メーカーに偏った最新バスタックル紹介本なんかは腐るほどありますけどね。)

ある人の読後コメントに「アメリカのバス釣りの楽しさ、凄さにトリップしてるかの様な錯覚に陥る事が出来る」とありましたが、まさに読んでいる最中はそんな感じ。


単行本にしては結構いいお値段しますが、未読の方は是非。
 
 

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