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ロックは成熟したのか?60年代、70年代から活動を続けるベテランロッカー達は円熟の境地に立ちロックが思春期の子供じみた一時的な衝動表現では無く継続する音楽表現である事を証明して見せた。
抱きしめたい!という恋心の表現に始まり、性の欲望衝動、説明できない!満足できない!といった苛立ち、社会への不満、逃避、渇望・・・文学的な比喩表現を用いて、生と死、宗教や政治、哲学。。。あらゆるメディアを飲み込んでロックは成長してきた。
ビートルズの登場以来、時代は常にロックを必要としロックも形を変えながら時代に寄り添い成長し続けてきた。(産業ビジネスとしても・・・)
しかし現代、趣味嗜好の多様性、ライフスタイルの様式の変化に伴い音楽そのものの需要や位置づけが変わり神話の時代はもう終わったのでは無いかと思われる。(もしかしたらずっと以前に・・・)
ロックという曖昧な言葉の意味を問われる事さえもう無くなって行くのかもしれない。。。
ロックは成熟したのだろうか?
1990年代ブリット・ポップの一群の一つとしてレイディオヘッドは登場した。「クリープ」は文句ナシのシングルだったがアルバム『パブロ・ハニー』は凡庸なロック・アルバムだった。
2NDアルバム『ザ・ベンズ』では多くの人を驚嘆させる最高のギター・ロック・アルバムを創り上げた。
そして更に多くの人々を驚かせたのがこの『OKコンピュータ』という訳だ。
斜陽に照らされて黄昏て行く、美しくて醜く、そして静かな世界。オレンジの光の中のメランコリックな夕暮れ。。。
そこには絶望さえ無い、なぜなら希望がないから。。。喪失感と虚無感が影を揃えて横たわるその場所で。
たとえそこがロクでもない場所だとしても、無いよりは有った方が良い程度の未来しか残されていなかったとしても。。。
我々はそこで呼吸し続けるしかないのだ。
私がこのアルバムから受けるイメージはそんなイメージだ。
アルバムのオープニング「エアーバッグ」はサウンド的にも前作『ザ・ベンズ』と地続きの世界からこのアルバムへのブリッジのような役割を果たしている。
力強いブレイク・ビートで破滅願望と生まれ変わりへの切望。リセット願望が唄われてる。それを「エアバッグ」に邪魔されたという風に自分は解釈したのだが。。。華やかな再臨が実現せず斜陽のメランコリックな世界に主人公が戻っていく、という物語の始まりのような。。。
2曲目の「パラノイド・アンドロイド」はなんとも郷愁を誘う叙情的なメロディーに乗せて神経症的な漠然とした社会への不安や不満が唄われる。それは叙情的では有っても決して感傷に溺れる事は無いのだ。
突然ヒステリックなギターの轟音が静寂を切り裂くそしてまた静寂。。。ロック的なダイナミズムが素晴らしい曲だ。
続く3曲目「サブタレニアン・ホームシック・エイリアン」ディランの曲からタイトルの一部を拝借した皮肉っぽいナンバー。朝の息吹も夏の風の匂いも無い街に住む現代人を揶揄している。
4曲目の「エグジット・ミュージック」は映画『ロミオとジュリエット』の為に書かれたナンバーでアコースティック・ギターで静かに唄われるなんとも寂寥感に溢れた唄だ。最後に唄われるフレーズ”お前らなんか窒息しちまえ”という捨て台詞が力無くむなしく響く。
この4曲目が終わって5曲目「レット・ダウン」ギターのアルペジオのイントロへの流れが実に素晴らしい。閉塞した暗い地下から一気に光が射し視界が開けるような眩しい高揚がある。唄の内容はまたしても虚無感に満ちた独白な訳だけど(苦笑)それにしても素晴らしい曲だ。
「カルマ・ポリス」この虚無の街の因果応報を統治する警察官の話。この曲に限らないけどメロディーが美しい、そして実にイギリス的だ。
続く「フィッター・ハッピアー」はコンピュータが朗読する宮沢賢治の”雨にも負けず”みたいな”人間としてかくあるべき”みたいな宣言が抑揚の無い声で読みあげられる。最後の一行が檻の中のブタ、抗生物質漬けのブタときてるからトム・ヨークは”こういう人に私はなりたくない”って言いたいんだろう。
そしてこの下らない朗読を引き裂くようなギラギラしたギターがかき鳴らされるナンバー「エレクショネアリング」このアルバム中もっともシンプルなロック・ナンバーでギターの音がひたすら気持ち良い。
リアム・ギャラガーが唄ったら凄くハマリそうなぶっきらぼうなロックンロールだ。
続く「クライミング・アップ・ザ・ウォールズ」はなんとも毒々しいナンバーだ。根底に破壊衝動や破滅願望が流れる凶暴なラブ・ソング。虚無感に満ちたこのアルバムの中で唯一剥きだしのストレートな激しい感情が語られる。それはやはり最もプリミティブな愛という感情に関わる事だからなのかもしれない。
「ノー・サプライゼズ」はルー・リードの優しい小品みたいな趣のバラード。黄昏たこの街で”驚きなんて何もいらないから平凡な穏やかな毎日が欲しい”という切なる願いを優しく唄っている。
疲れ果て、驚きの無い穏やかな世界に充足して行くのはホントに幸せな事なのか?という疑問とささやかな幸せを望む願い。。。二つの感情に歌声は揺れている。
「ラッキー」叙情的、メランコリックと何回使っただろう?(笑)しかしこれぞ極めつけに叙情的なメロディーだ。まるでロイ・オービソンみたいに悲しげな声で朗々と唄われるナンバー。
”今日はラッキーだ、俺にもツキが回ってきた”と言いながらも常に崖っぷちに立っている。常に向こう側に堕ちる危険、恐怖と隣り合わせの現代人の意識を象徴しているのだろうか?これも大好きな曲だ。
最後の「ザ・ツーリスト」はエピローグ。スローダウンしろよ、そんなに急いでどこに行くんだい?と問いかける。どうせ俺達はどこにも行けやしないんだから。。。とでも言いたげな浮遊感の漂うスロー・ナンバー。
黄昏たオレンジ色の世界。。。キリコの絵の中に迷込んだような懐かしい喪失感に溢れた情景の中で、無いよりは有った方が良いであろう未来の為に我々は呼吸するしかないのだ。
ホントに何度聴いても独特の深みと余韻を残す素晴らしいアルバムだ。「ちょっとお奨めの1曲」の書庫のオアシスの記事でも触れたように90年代最高のロック・アルバムだと思う。
成熟しないロックのフォーマットから脱却して新しい世界を手に入れようとしたのだろうか?それともこれはロックの成熟の過程なのか?
トム・ヨークはロックなんてゴミだ!と言い放ち、ここから更なる表現を手に入れようと試行錯誤して行く。
『キッドA』からトム・ヨークのソロ・ワークを通過したレイディオヘッドの鳴らす新しい音は時代にどんな風に響くのだろうか?
彼らはやりかけのままにした仕事を完成させる為に”こちら側”に戻ってくるような気がする。
時代をリアルに写す鏡として、失われたロックを芸術表現として成熟させる為に。。。
なんてね、かなり願望が入ってるけどなんとなく・・・それが出来るのは彼らしかいないような気がするのだ。
OK COMPUTER
/RADIOHEAD
01.Airbag
02.Paranoid Android
03.Subterranean Homesick Alien
04.Exit Music(For A Film)
05.Let Down
06.Karma Police
07.fitter,happier
08.Electioneering
09.Climbing Up The Walls
10.No Surprises
11.Lucky
12.The Tourist
/1997年発表
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あら初めて意見の対立を見ましたね(笑)B’Zについては全面同意します(笑)聴かず嫌いは宜しくありませんが聴いてダメなものはノン・プロブレムです。何かの天啓である日突然良さが判るかもしれませんよ!(笑)とりあえず内緒にしときましょう。
2006/10/20(金) 午前 1:03 [ ekimaejihen ]
確かに90年代最高のアルバムですね。 私はだいぶ後に聴いたんですけど・・・。 エアバッグ、パラノイド・アンドロイドでRADIOHEAD WORLDへ一気に引き込まれます。
2006/11/18(土) 午前 6:44 [ dannabassman ]
dannaさん私も最高のアルバムだと思います。決してリラックスして聴けるような作品ではありませんがこういった自分とじっくり向き合えるような作品は昨今なかなか有りませんから。。。
2006/11/18(土) 午後 9:14 [ ekimaejihen ]
ちょっと気なりきてみました。「OKコンピューター」記事を書いていたんですね。
今度、一人の夜に 聞きなおします。
トム・・・・イアン・カーティスの様にならないで欲しいと、ひたすら願っています。
2007/7/20(金) 午前 9:34 [ SYD ]
SYDさんどうも。『OKコンピューター』いいですよ(^^『ザ・ベンズ』は勿論好きですけどそれ以前は。。。「クリープ」は格好良いですけどね。
トム・ヨークはシニカルなリアリストだからそれは無いと思いますよ。そういう道を選ぶ人はどこかにロマンティシズムを抱えた人だと思いますから。
2007/7/20(金) 午前 11:54 [ ekimaejihen ]
「OKコンピューター」はレディオヘッドのものの中でも、一番感動的なんじゃないですかね。
レディオヘッドは、「KID A」から聴き始め、レンタルでおさらいしてから、すぐライヴに行き、それからオトナ買いで初期のものを集めました。オリジナルが出たら必ず買います。
新作は、ブルーズに接近するという噂もあり、期待大!!!
よく、「ベンズ派」の人が「KID A」や「アムニージアック」を嫌いだと言うようですが、私は「KID A」や「アムニージアック」も好きなんですね。「良い音楽」にしか聴こえません・・。
「パブロ・ハニー」については、最初聴いたとき、14世紀のイタリアのラヴソングとの共通点を感じてしまって、いまだに謎を感じています。14世紀のイタリアの恋歌、好きだったんですよ。「エステル・ラマンディエ」という名前の、女性ソロアーティストの演奏が好きだったんです・・。
2007/7/21(土) 午後 11:50 [ カール(カヲル32) ]
kaoruさんこんばんは。『OKコンピューター』にはある種の情緒を感じます。琴とかが鳴っていても違和感がないようなね。でぇ何度も言ってますが90年代でもっとも優れたロックアルバムだと思ってます。
新作は本当に楽しみです。楽しみだと言うレベルを超えたものを出してくれたら嬉しいですね(^^
『ベンズ』が好きな人が『キッドA』や『アムニージアック』を嫌うのは判りますよ。ロックとしてレイディオヘッドをここで見限った人も大勢いると思います。
ロックというのは感情的な音楽でその振れが大きいほど良いロックだという考え方があるとしたら『キッドA』はロックとは言えないでしょう。ある意味感情表現を放棄した音楽ですから。。。
私はその”表現”がありだと思うのでレイディオヘッドに期待し続けてます。ロック界には期待するに足る表現者はいまやそう多くはいませんから。。。
2007/7/22(日) 午前 1:34 [ ekimaejihen ]
『パブロ・ハニー』は今一度聴いて見る必要があるやもしれません。14世紀のイタリアのラブソングについては全く語る知識を持ちませんが「クリープ」が良すぎて期待した分、退屈なギター・ロック・アルバムという記憶しか残ってませんから。。。
ここで見限らず『ベンズ』を聴いてよかったです(^^;
2007/7/22(日) 午前 1:35 [ ekimaejihen ]