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その歌声は例えようが無いほど強く魂を揺さぶる。静かに胸を打つ。彼はただ思ったようにギターを弾き、ただ思いのままに唄うだけ。。。その奇跡のような才能に。。。ハレルヤ。。。
60年代から70年代前半の音楽の熱を蘇らせようと試みるミュージシャンはいまだ少なくない。それはやはり特別な時代だったんだ。。。
それを自分の中に取り込んで解釈を加え、苦心の末に”自分の音楽”を立派に表現するミュージシャンもいる。
愛情と尊敬を持って真摯な姿勢でその熱の再生に腐心するミュージシャンもいる。
勿論ただの懐古主義に囚われてただの模倣を繰り返すミュージシャンも後を絶たない。。。
上にあげたどの例にも当てはまる事無く、強烈にその時代の”質感”を感じさせるミュージシャンが90年代のアメリカに一人いた。彼の名はジェフ・バックリィ。。。
28歳にしてドラッグによりロックン・ロールの死亡カタログに名を連ねた伝説的なフォーク・シンガー”ティム・バックリィ”これは彼の息子ジェフ・バックリィが27歳の時にリリースしたデビュー・アルバムだ。(もっとも親子が一緒に過ごした時間は人生でたったの9時間だそうだ。。。)
墓場を掘り起してジム・モリソン、ジミ・ヘンドリクス、ジャニス・ジョップリン・・・らの魂を宿らせたかのような歌唱と演奏。。。そこには余計な作為やあざとさが一切感じられなかった(少なくとも私には)
まるで間違ってこの時代に紛れ込んだかのような強烈で艶やかなソウル・ヴォイス(この場合は魂の方ね)狂気、情念、確信に満ちた声・・・それは他の誰かに似ているようで、結局誰にも似ていなかった。
時にロバート・プラントを思わせ、時にジャニスやジム・モリソンを思わせながらもやはりその唄はジェフ・バックリィ以外の何者でもない。。。
「モジョ・ピン」「グレース」と続くアルバムの冒頭から深遠な世界に気持ちが静かに呑み込まれてく。。。
静かなギターのアルペジオと深い森の奥から聴こえてくるような彼のヴォーカルのフェイドインにすぐ引き込まれる。7オクターブとも言われた彼の歌声は必ずしも力強いものとは言えないかもしれない。
が低く囁くような呻きから、高音のファルセット、凄絶と言っても良いほどの繊細で豊潤なヴォーカリゼーションで聴くものをどんどん自分の世界へ引き込ずりこむ。。。そしてその様々な感情が渦巻く唄はバンドの緊張感に満ちた演奏と共に曲に複雑な陰影を与えていく。。。
ドアーズやZEPの影響は感じられるがそれは彼の血であり肉なんだと思う。
3曲目の「ラスト・グッバイ」では静かさと激しさ、憂いに満ちた前2曲とはまた違ったミドル・テンポの力強いビートが印象的。アコースティック・ギターのストロークに乗せて柔らかな表情を見せてくれる。しかし粘りつくような彼のヴォーカルは独特で曲に新しい解釈をどんどん加えていく。
「ライラック・ワイン」はギターとストリングスをバックに唄われるジャズ・バラード風の曲。
出だしの中性的なファルセットは少しチェット・ベイカー、ニール・ヤングなんかを思わせるし、張った声は少しスティングに似てたり・・・なんとも言えない複雑な声をしてる。。。
「ソー・リアル」はプログレ風だが90年代のオルタナ・バンドのアプローチに近い気がする。バンドの緊張感に溢れた演奏が秀逸だ。
そして「ハレルヤ」。。。レナード・コーエンのカバー曲。多分ジェフ自身が軽くショート・ディレイをかけたフルアコあたりで弾き語りをしてると思うんだけど。。。
これが素晴らしい!本当に信じられないぐらい素晴らしい!!!これがあまりに素晴らしすぎて7曲目からがおまけに思えるほど(笑)それは言いすぎかもしれないけどこの歌1曲の為だけにアルバムを買っても良いぐらいだと私は言いたい!
このブログでアルバム・レビューをもう何本もやってる訳だが好きなアルバムばかりやってると、最高!素晴らしい!の連発で自分でもこの語彙の少なさ(言葉数は多いけど笑)何とかならないかな?とは思うんだけど、これはもう掛け値なしに素晴らしい!!!としか言い様が無い。。。
原曲の素晴らしさは勿論だが、なんといっても”歌唱”につきるでしょう!抑揚、強弱、といった表情のつけ方から発声の色合いまで・・・ありのままの情念を爆発させる彼の崇高な”魂の詩”が聴けます。その圧倒的な存在感は鳥肌もの。。。
ヴァン・モリソンを彷彿とさせるフォーク・バラッド「恋人よ今すぐ彼のもとへ」女性のようなファルセットで歌われる賛美歌のような「コーバス・クラスティ・キャロル」曲によって見事に表情を変えて見せる彼の懐の深さには驚かされる。
そしてアルバムはグランジ以降を感じさせるハードな「エターナル・ライフ」を経てラスト「ドリーム・ブラザー」へと続く。
面白いのは前時代的なミュージシャンと思いきや、ラスト・ナンバーも含め、U2やR.E.M、レッチリやレイディオヘッドといった同時代で活躍する優れたバンドとの共通性も感じさせる所だ。ちなみに彼はソロ名義でアルバムを発売しているがバンド・サウンドには相当な拘りが有ったようでそれはこのアルバムからも十分に見て取れるだろう。
この稀代の名歌手はオリジナル・アルバムとしてはこのアルバム1枚だけを残し父親と同じように30歳という若さでミシシッピーの河にその命を沈め帰らぬ人となった。
もしそのまま活動を続けていたら間違いなく、更に素晴らしい作品を創っただろうと私は思う。
彼を伝説化する向きもあるようで実際映画製作の話があったり一部では神格化されてるようだがまだまだその音楽、唄の鮮烈さに見合った評価がされてないように感じる。
機会があったら是非触れて欲しい。彼の叫びが胸の奥まできっと届くに違いない。。。
そして私達は墓を掘り起こし、幻影に縛られながら再び奇跡に出会える瞬間を待ち続ける。。。
GRACE
/JEFF BUCKLEY
01.Mojo Pin
02.Grace
03.Last Goodbye
04.Lilac Wine
05.So Real
06.Hallelujah
07.Lover,You Should’ve Come Over
08.Corpus Christi Carol(For Roy)
09.Eternal Life
10.Dream Brother
/1994年発表
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ジェフ・バックリィ・・・すみません、初めて知りました。もっと勉強しなくては・・・(^^;
2006/11/11(土) 午後 3:50
SGTさん彼の存在はホントに”突然変異”のようなものでした。特別新しいものを提示するような存在では無かったし、60〜70年代的な郷愁を与えるような存在でもなかった。私は最初の2曲で圧倒されハレルヤで完全に心奪われました・・・文字通り心に響いたんですね。。。殆ど私と同年代だったんですよ。。。流れ星みたいな人でした。
2006/11/11(土) 午後 10:44 [ ekimaejihen ]
私も・・・すみません。なんとなく聞いたことある名前でしたが、ティムとジェフの区別すらついておりませんでした。
2006/11/12(日) 午前 1:49
コシさん賭けても良いですけどこれコシさん絶対気に入ると思いますよ!まぁ賭けに負けても責任は取りませんけど(笑)私もこの間レナード・コーエンの記事を上げた後久々に聴いたんですがそれからずっとまた聴いてます。。。
2006/11/12(日) 午前 2:15 [ ekimaejihen ]
「ハレルヤ」は、私にとっては、今年出会った名曲ベストテンのグランプリかも知れません・・。大みそかに「大賞」の授与になるかも・・・(^^;;;。しかし、駅前さんは、私のツボになりそうなものをよく御存知ですねーー。感心します・・・。レナード・コーエンだけじゃなくて、これも聴かなきゃみたいな気がしますね!!なんてったって、「ハレルヤ」だもん!!
2006/11/13(月) 午前 0:09 [ カール(カヲル32) ]
kaoruさん早速コメント有難うございます。ジェフ・バックリィの「ハレルヤ」を聴いたのはコーエンのオリジナルを聴くよりずっと前で私にとっての「ハレルヤ」は長い事ジェフ・バックリィのものだったんです。とはいえ最近彼のアルバムを取り出す事もめっきり少なくなってました。コーエンの記事を書いた後、kaoruさんの「ハレルヤ」に対するコメントを見て久しぶりに取り出して聴いた訳ですがそれからずっと時々取り出しては聴いてるんです(笑)なんだか面白いですね。。。
2006/11/13(月) 午前 0:45 [ ekimaejihen ]
「ハレルヤ」に限らず凄くスピリチュアルなアルバムです。そして凄いヴォーカリストだと再認識しました。もし機会が有ったら是非聴いて見て欲しいです。kaoruさんもきっと気に入ると思いますよ、責任は持てないですけど(こればっかりですね笑)
2006/11/13(月) 午前 0:50 [ ekimaejihen ]
ご訪問ありがとうございました。ジェフ・バックリィ、唯一の来日公演のチケットを買っていたのですが、直前に震災が発生。ライブどころではなくなって行けませんでした。このエピソードは、ボクの一生の中の後悔ベスト10に入っています…。
2006/11/14(火) 午前 0:22 [ kollektable ]
kollektableさん震災ですか。。。それは残念でしたね。。。でもそれは仕方無いですね、みなさんご無事だったんでしょうか?ジェフ・バックリィのライブが見れなかった事を悔いる気持ちも良く判りますけどね。。。
2006/11/14(火) 午前 0:39 [ ekimaejihen ]
この記事読んでいなかったと思ったら、私がブログデビューする前でした^^
今日とりあえずハローグッバイという4曲入りのアルバムを手に入れました。
七色の声を持つ男ですね^^
すばらしい声です。
もしかしたら、また嵌められたかな?(笑)
2007/6/23(土) 午後 1:37
GROOVEさんどうも。彼について書きたい事はこの記事にだいたい書きました。
後は聴いていただいて気に入っていただけたなら幸いです(^^
はまっちゃって下さい(^^;はまる価値のある歌手です。自信を持ってお奨めできます♪
2007/6/23(土) 午後 9:21 [ ekimaejihen ]
今日、帰ってきてから2回通して聴きました。これは純正本当印の本物のようですね。ささやきからシャウトまで、音程が正確とか感情表現が上手とかいうことを超越した、完璧な唄。そんな感じでしょうか?聴けば聴くほど心にしみて行きます。
1,800円程度の14曲入りベスト。恐ろしく安い買い物でした。感謝です。
2007/6/29(金) 午前 0:02
rainsongさん本当に嬉しいですね。彼の素晴らしさを知ってくれる人がまた一人増えて♪
巧い下手を超越した作り物じゃない才能なんですよね。。。凄くいろんな要素を呑みこんでるのに出てくる表現はシンプルで・・・それでいて複雑な色をしてる。
意図的には決して作り出せない世界観が素晴らしいと思います。こちらこそジェフに替わって感謝です(っておまえは代理人か。笑)
2007/6/29(金) 午前 0:33 [ ekimaejihen ]
だっちさんTBありがとうございます。
2008/6/23(月) 午後 5:09 [ ekimaejihen ]
こんなところにジェフ・バックリーあったんですね^^;
彼を知ったのは実はここ1〜2年で、確かRyuさんのところで見て知ってこのアルバムを借りました。
「Hallelujah」がレナード・コーエンの曲だと知ったのも実はJon BonJoviがカヴァーしたからですが、確かにジェフ・バックリーの方が何倍も素晴らしいと思います^^;彼のギターがまた哀愁を誘いますよねえ(^^)久しぶりに聴きました(笑)
2008/6/25(水) 午後 8:18
MAYさんこんばんは。古い記事に触れてもらえるのは嬉しいですね。ジェフの「ハレルヤ」はコーエンのオリジナルより好きかもしれないですね。う〜ん。。。こういう表現は安易に使いたくないんですが”なにかが降りてる”そんな歌ですね。
久しぶりに聴いてもらえてよかったです(^^
2008/6/25(水) 午後 11:37 [ ekimaejihen ]
ジェフはライブのMCで「60、70年代の音楽はクソだ80年代はスミスだけ」と発言していますよ笑
プレイを見ても和声のボイシングやチューニングなどジョニーマーの影響がもっとも大きいのでは??
2012/12/24(月) 午前 1:31 [ jastin ]