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*錬金術(Wikipedia) 錬金術(れんきんじゅつ、Alchemy)とは、最も狭義には、化学的手段を用いて卑金属から貴金属(特に金)を精錬しようとする試みのこと。 広義では、金属に限らず様々な物質や、人間の肉体や魂をも対象として、それらをより完全な存在に錬成する試みを指す。。。 錬金術ってもっと如何わしくてフェイク感を伴う魔術的な要素を持ったイメージがあった。。。その延長にロックンロールを捉えた時に、それが一種の”錬金術”のようだと思ったわけなんだけど。。。 そこに漂う呪術的な匂い、悪魔との契約。。。石ころを黄金に変えてしまう奇跡、人を惹きつけて止まない魔力を持った音楽としてのロックンロールの伝説。。。 ある意味”ロックンロール”という言葉そのものに?かけられた魔法?呪い?履いたら最後、死ぬまで永遠に踊り続ける靴の伝説のように、何かしらの呪文がかけられているという考え方も出来るかもしれない。 ”だから俺の青い蛇皮のシューズには触るなよ、子猫ちゃん!” 「ビューイック・マッケイン」 いずれのイメージもTレックスのヴォーカル、マーク・ボランほどピッタリ相応しい人間はそういないだろう。キンラメのメイク、悪趣味なスパンコールのスーツで着飾った怪しげないかさま魔術師。 オーラを纏った電気の武者。ショウビズやサーカスの舞台裏で化粧を落とす物悲しい仮面ライダー。地下室からミミズクみたいな鋭利な眼光でこちらを見据える地下世界のダンディ。。。 マーク・ボランは天才だ。。。人の心を掌握するカリスマの持ち主でシンプルなリフレインと聴くものを不安にさせるヘンテコなヴィブラートのついた不安定なその歌声で人の心を虜にする。。。 エリック・クラプトンに師事したとも言われるギターは、とにかく格好良く鳴らすことが最大の目的でブルーズを語らせるなんてのは二の次三の次。 そんな姿勢が70年代後半のパンクスから共鳴を受け再評価に繋がったのかもしれない。手垢の付いた退屈なブギーも彼が演奏し歌うと何故か魅力的なリズムを纏って輝き始め、弾みだす。。。 グラム・ロックの二大スターもう一人のデヴィット・ボウイは”マジック(魔法)”よりも”ロジック(論理)”に従い行動し、貪欲に芸術的な成功と商業的な成功に加え大きなセンセーションの獲得と提供に成功した。 一方マーク・ボランはつぶやくような奇妙な呪文を電気仕掛けのアンプリファイアで増幅させて派手なギターとストリングスで着飾って、ボウイをも含む多くの人間を魅了してみせた。 個人的にはボランはボウイよりずっと天賦の才に恵まれた人間だったと思ってる。結果としてボウイはグラムの枠を超えたロック史に残る影響力を持つミュージシャンとなり、ボランはグラムとともに沈みそののちにロックンロールの伝説の森の住人となったのだが。。。 様々な音楽を吸収解体し、挑戦と思索、実験模索を繰り返し重ね誰をも屈服させる怪物になったボウイに比べボランのやってることは才能にあぐらをかいて終始一環変わらなかったようにも思える。 ただ「メタル・グルー」にしろ「テレグラム・サム」にしろ、思うがままに磁場を操るビートとグルーブ、メロディとリズムを生み出す不思議な歌詞はそのシンプルさゆえに天才性を感じさせるに十分だ。 それは「20世紀少年」でも「ゲリロン」でも。。。余計なギミック無しで聞くものを高揚させる才能はチャック・ベリーの正当な後継者に思えたし、特異なものだったと思う。 多分そこはボウイも認めてたんじゃないだろうか?あの天才ボウイが自分の唯一のライバルにマーク・ボランの名を挙げていたのは少し不思議だったのだけど今はよく判る気がする。 アリとキリギリス、あるいはポールとジョンの関係性にも少し似てると言えるのかもしれない。。。 Tレックス流グラム・ロック・スタイルの完成と呼ばれる彼らの代表作『ザ・スライダー』。『グレイテスト・ヒッツ』の賑やかさに比べると少々内省的でダウンでルーズでブルージーだ。 淡い水墨画のような雰囲気と幻想的な浮遊感を漂わせている。彼らの持つ煌びやかでグリッターなイメージとは対照的な落ち着いたトーンで統一された鬱屈した精神世界も有している。 マザーグースの童謡みたいな言葉遊びを交えたとりとめないボランの詞の世界は独特で理解不能だがそれも神秘的な曲のイメージにマッチしている、と同時にチャック・ベリーやリトル・リチャード御用達の他愛の無い言葉遊びや、彼らが生み出した”ジョニーBグッド”や”のっぽのサリー”を思わせるキャラクターを次々生み出した。 そこにほぼ全編に渡りトニー・ビスコンティの豪勢なストリングス・アレンジとフロー&エディの別世界からやってきたような妖しげなコーラスが加わる。。。 スペクター・サウンドへのオマージュとも思えるストリングス、ギター、ベースのユニゾンによるプチ・ウォール・オブ・サウンド。。。 偉大なるヴィスコンティーの助けがなければ今Tレックスに向けられる賞賛の多くは生まれなかったかもしれない。先人が残した”音の壁”に負けない強烈なインパクトを残す偉大な発明だ。 コンガを叩くミッキー・フィン、その横で身を捩じらせてレスポールを弾くボランのイメージはそのパフォーマンスだけで忘れがたい強烈な印象を焼き付けるカリスマに満ち溢れている 「チャリオット・チューグル」 新世界のメタルの導師の賑やかで鮮やかなアンセム「メタル・グルー」多くのロック・ファンにお馴染みのレックスの華麗さ、妖しさ、グルーブ全てが凝縮された濃密な大ヒット・ナンバー。フロー&エディの分厚く妖しいコーラスと粘りつくようなボランのヴォーカルが印象的。 華やかな導入から一転オールディーズ基調のスローでポップなフォーク・バラード「ミスティック・レディー」とスローなブギーのリフをホーンと分厚いコーラスでグラマラスに塗りたくった「ロック・オン」 意外なほどにオーソドックスなオールドスタイルのスローなブギやブルーズが並べられているのだがTレックスが演奏すると誰も聴いたことのないような玩具箱のようなポップ感覚が生み出されるのが不思議だ タイトル・トラックの「ザ・スライダー」もヘヴィで引き摺るようなコシの強い粘りあるビートにブギーのリズムを刻むギターと、鉛色の暗い空を引き裂くような力強いストリングスが曲のイメージを引き上げる。喪失の中を滑り落ちていく男。。。 エルヴィスやカール・パーキンス、ジーン・ヴィンセント。。。ロックンロール、ロカビリーの偉大な先人へのオマージュとして捧げられているかのようなボランのギターリフと歌唱が耳に残るリラックスしたナンバー「ベイビー・ブーメラン」 アコギ1本でじっくり語りかけてくるような自画像を描いた「スペースボール・リコチェット」”レスポールがあればちっちゃな僕だけどゴキゲンなんだ”という一節が印象に残る 野太いシングルノートのギター・リフレインにユニゾンで絡むベースとストリングス。ファンキーでダンサブルな「ビューイック・マッケイン」ガンズ&ローゼズもカヴァーしたアップでレイジーなナンバーでこのアルバムでも特にお気に入りの1曲。独特なグルーブのうねりを受けて拡散してくイメージが収束しないまま唐突に終わってしまうところがボランらしい それに続くのがTレックスの代名詞的なハードなブギーでロック・ファンにはお馴染み「テレグラム・サム」。これも「メタル・グルー」同様Tレックスのスパイスをふんだんに散りばめた濃厚なブギー。 響きの良さだけで並べたような意味の無い言葉の羅列も実に気持ちよい。手垢に染まったような耳にタコの曲なのに何度聴いてもこの魔力の正体に辿り着けない。そんな得体の知れないパワーを持った曲だ。 「ラビット・ファイター」ドラッグの隠喩?3連のロッカバラードで流れるようなストリングスの中でボランが激しくギターソロを弾きまくる。 「ベイビー・ストレンジ」も古いブギースタイルのスローなブルーズでスウィングするビートが気持ちよい。コーラス部分のギターやホーンの入り乱れた混然としたカオティックなムードがいかしてる 「ボール・ルーム・オブ・マーズ」は卒業式のダンス・パーティーの終わりみたいな寂寥感、喪失感漂うバラード。プロコルハルムの「青い影」やダン・ペンの「ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」を思わせる切ないメロディが美しい。これも素晴らしいナンバーだ 「チャリオット・チューグル」は分厚いストリングスの絨毯爆撃、激しくヘヴィーなビート、フロー&エディの狂乱のコーラス、ボランの野生的な雄たけび。。。 裏と表がひっくり返るような変則的なリズムの複合が不思議な感触を残すアルバム中でももっともプリミティブな衝動を爆発させるような勢いのあるハードロックテイストのナンバー ラストは「メイン・マン」君は僕の親友なのかい?と訥々と語りかける独白。シンプルな言葉を紡いで繰り返し美しい音律を作り同時に独自の閉じた世界観を提示して魅せる。。。 マーク・ボランというペルソナを離れ、一人の男として人と向き合いたいという裸の願望が見える。ロックスターとしての苦悩や皮肉な嘲笑が顔を覗かせるジョン・レノンとの類似性なども見て取れる曲。 飾りの無いラストナンバーはエフェクターと素の声の間を行ったり来たりしながら静かにフェイドアウトしていく。。。 未だに彼の演奏するブギーからだけ煌めきが消えないのは何故だろう?一度彼がギターを持ってブギーを奏でればくすんだ古臭いリズムが生き物のようにうねり怪しい輝きを放ちだす。。。まるで魔法のように。 だから当時の若者が彼らの音楽に夢中になったのはよく判る。ハーメルンの笛吹きみたいに人は彼のギターに酔いしれ、後に従がい踊り狂った。まさにメタルの導師だ。 最後の結末で溺れ死んだのは従ったファンではなく本人のみだったわけだけど。。。 ジャン&ディーンが歌った”デッド・マンズ・カーブ”。。。暗闇に青白く浮かぶ不吉なガードレールが彼の頭にはいつもイメージされていたのだろうか? リンゴ・スターが撮ったと言われてる『ザ・スライダー』のジャケット。。。シルクハットを被った粒子の粗い魔術師ボランの写真。。。 大きくプリントされた真っ赤なT.REXの文字。。。どこかこの世のものと思えない静けさと妖しさ、その裏に渦巻く激しい情念。。。彼の危うい未来を暗示するかのようなジャケットだ ”滑り落ちてく俺を見ていてくれ。。。”そう彼は歌った。彼には自分の未来が見えていたのだろうか?だとしたらそれを運命として受け入れたのだろうか? 出来ることなら完全に精錬されたロック職人としての錬金術をまだまだ見せて欲しかったとそう思う。 「テレグラム・サム」T.レックス THE SLIDER /T.REX 01.Metal Guru
02.Mystic Lady 03.Rock On 04.The Slider 05.Baby Boomerang 06.Spaceball Ricochet 07.Buick Mackane 08.Telegram Sam 09.Rabbit Fighter 10.Baby Strange 11.Ballrooms Of Mars 12.Chariot Choogle 13.Main Man /1972年発表 |

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