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この仕事を始めて2年ほど経った頃だったか。 大阪府の北部中部方面を中心に、主に大型スーパーやデパートで、貪欲に試食巡りをしている男の存在に気がついた。 男は決まってバイクのヘルメットを乗せた買い物カートを引いており、サングラスをかけている(なので年齢はよくわからない)。 ある時など、菓子パンを担当していた私のデモ場所にあまりに何度もやってくるため、男の姿がこちらに近付いてくるや、故意に菓子パンを盛った皿を試食台の下に隠した。 また、ちゃんこ鍋を担当していた時には、試食台上のトレイに置いていた冷めかけの(!)試食品をわざと差し出した。 ぶっちゃけ、明らかな嫌がらせなのだけれど、まあ、こちらもボランティアで仕事をしているわけではないからね。 もっとも、あちらさんは、こんな仕打ちには慣れているのだろう。 常に試食を求めて、しつこくしつこく店内を徘徊している。 「ん? 彼はいったい、、、?」 男に対する興味がさらに湧いた。 「身なりはみすぼらしくても、ヘルメットを持っているからにはバイクに乗っているのだろう。とすれば、ホームレスではない。なのに、どうして試食巡りを?」 某店のパートさんが教えてくれた。 「あの人、毎日バイクでここいら一帯のスーパーやデパートに出かけては試食をしてまわってんねんて。どうもそれが仕事になっているらしい。一種のココロの病気やな」。 ある年かさのデモンストレーターが、男が試食に現れたついでに、こう尋ねたことがあるそうな。 「あんた、トシ、幾つや?」 「42」 男は食べながらモゾモゾと答える。 「42? まだ若いがな」 彼女は即座に返した。 「そのトシならなんぼでも働ける。こんなこと(試食巡り)せんと、ちゃんと仕事をし!」 彼女の説教に、男は何も語らなかったと言う。 業界内では知る人ぞ知る存在だった男が、ある時期を境にプツリと見えなくなったのは、彼の身上に何かおこったのか? 「死んだんかな?」 数年前、仲間うちでの話の弾みから、ふと男のことが取りざたされた。 「かもなあ、、、。入店禁止処分を受けたとしても、地域の店がいっせいに、ということは出来へんさかいになあ、、、」。 私は、男は亡くなったのだと思う。 プラス、いま振り返るに、やはり何かの精神疾患を患っていたのだろうなあとも思う。 写真は、男がよく出没するしていた大阪府内の大型店近くの公園にいた野良猫。 |

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