スペイン・ロマネスク美術

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不均斉の美

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サン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ教会 (ローマ)
柱廊、13世紀初
(講談社世界美術7『ロマネスク・ゴシック』より)
 
 85歳なりたての正月確かにめでたくもあり、めでたくもなしと云った感慨です。
 過ぎ去った年月は何だったのかと改めて反省する醒めた年の初めです。
 

さて、201611月に刊行された東北大学教授・佐藤透著『美と実在−日本的美意識の解明に向けて』にざっと目を通しました。

この著作は、日本的美意識の価値を正当に評価し、西洋的美意識を共に美一般の考察を為された力作です。

二部に分かれていて、第一部は一般論で東西の「美と芸術」の問題を取り上げ、第二部として「日本的美意識」、つまり侘び、寂び及び幽玄の美意識を解明し、最後に美と実在の問題に触れています。
       
                                                                 
全体の問題をここに取り上げるわけにはいきませんので、ごく一部の、“不均斉の美”と云う概念に限定し、西欧中世のロマネスク美術に敷衍していきましょう。

同書によれば、岡倉天心によって西洋社会に日本の茶道を紹介する目的で、1906年に英文で書かれた『茶の本』の中で、彼は茶道を道教および禅仏教の影響を受ける一種の審美的宗教と規定したうえで、その本質が「不完全なものの崇拝」にあるとしています。

また茶室では単調さを破るために反復が厭われ、生け花があれば花の絵を掛けることは許されず、円形の釜を用いれば水差しは角張っていなければならず、花瓶や香炉を床の間に置くときには空間を二等分しないよう、ちょうど真ん中に置かないように注意される旨が述べられ、こうした在り方が物を均等に配置する西洋の室内装飾と全く異なることが指摘されています。


つまり茶室に招かれた客はめいめい自分に関して全効果を想像の中で完成すべく任されているのです。

言わば不完全を完成へと自らの思念の中で構成していく過程に、客は茶の一つの重要な「侘び」の意味を求めているのでしょう。
 

一方大正・昭和期の美術評論家であり、民芸運動創始者の柳宗悦は、人の美意識を簡潔に「奇数の美」と表現しています。

「奇」は「偶」対するもので、整わざる様に形を不均斉、不整備のままに置くことだとされています。

「不完全の美」というよりむしろ「完全の否定」というべきものの意です。

そしてまた西欧のデフォルメが作為性を感じさせるのに対し、日本の茶の湯の美はそれが自然に為されてしまうとも云っておられる(上記書)
 

これに反して、ロマネスク美術における非対称性、デフォルメ(いびつ)、醜という概念はややその持つ意味が異なります。

鑑賞者(上記の場合の客)の思惑は関係なく、ロマネスク固有の「美」である真、善、対称性、均衡性、仮象、神的世界などの美の概念は、対象に内在する本質的で固有の美であり、醜は非美ではなく弁証法的に云えば、自ら止揚される醜美なのです。
 
2019.01.05

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