スペイン・ロマネスク美術

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建築造形の妙―ル・コルビジェ


 
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写真: 日経新聞(H.16年10月4日)より 


 ロマネスク時代(1112世紀)のキリスト教聖堂建築は、時代的要請に基づき、祈りと瞑想を重視するために、聖堂内部は「暗さ」(薄暗さというより暗闇)を必要条件にしていたと云えます。

 その為当時は、外光を直接遮断する手法を善しとし、窓の空隙の面積を極端に小さくしました。鍵穴のように丸形の小さい穴にしたり、細く長くしたりしたのです。
 

所変われば品変わるで、拙著『神の美術』(「日本の芸術家たちとロマネスク」の項)でも触れたように、我が国の寺院建築では庇の突出した大きな屋根で覆うようなこともしました。

こうすることで内部空間に間接的に暗さを演出したのです。
 


 次に本題である東京上野の昨年世界遺産に指定された国立西洋美術館の建築家ル・コルビジェの「ロンシャンの礼拝堂」の外観を此処で見ましょう:
 


 私は現物を知らないので、小林康夫東大教授の解説文によると、

«緑の丘の上にぽっかりと浮かぶ白い船のような建物中略…そこではフォルム(形態)ではなく、ヴォリューム(量)すらもが、光とのみごとな戯れと調和の場所と化している。物質と光とが音楽のように共鳴しあっている。それはわたしには、幸福というものの完全な定義のように思われた»

と述べておられます。

 
この礼拝堂には小さな三つの塔が付帯していて、その内部に入ると光の井戸の底にいる感覚に襲われるそうです。

つまり光と影、明と暗をもたらす造形が工夫されているのです。


私から見れば、このキリスト教礼拝堂は信仰というより建築造形の多様な効果を志向した見事さが勝っています。

どちらかと云えばゴシック的で、ロマネスク聖堂のキリスト者の内面をいやがうえにも深化させる祈りと瞑想を誘い神との合一を願うための暗さの造形演出とは、大きな乖離が感じられます。


2017.07.20

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