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高村薫著『太陽を曳く馬』読了しました。難解だ難解だと言われる『晴子情歌』以降の三部作の最終作をフライングして読んでしまいました。これだけ合田雄一郎警部が出ていると仄聞したのでね。仏教論もテンコ盛りだと聞いてましたし。
昨年、発売直後に購入してツン読していたのですが、出会うべくしてこのタイミングで読み始めたな、自分の無意識が心の準備ができるのを待っていたのだな。と感じました。結論から言うと面白かった。
常々高村薫は、登場人物達の心の中に次々と浮かんでは消える泡のような思考を微少な細部まで構築して描写する作風ですが、それがもう本作は秒単位でさえなくてナノセカンド単位なんですわ。そんな風に絵画を前にした人間の視神経の理解の過程まで描き尽くそうとする前半はちょっと冗長に感じましたが、
後半の仏僧達がオウム真理教について議論している場面を合田に回想している場面は食らいつくようにして読みました。まるで仏教哲学の宝石箱に首を突っ込んだかのような、目も眩むような煌めき。
さあ、ではそれを自分が理解したかと言えば全く心許ないのですが、常々仏教に対して抱いていた言葉にできない疑問を、メガネをかけさせられてはっきりと見せつけられたような切り込み方と、それに対する果たして専門家でもここまで広汎な仏教の思想を語れるだろうかと思わせる弁舌を、現代の宗教のあり方を含め元オウム真理教の僧侶について議論する禅家たちの口から語らせているのです。どんだけアタマいいんだこの人、感嘆するばかりです。
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