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究極の不平等条約の見直しは、民主党のマニフェスト「対等な日米関係」実現の真の焦点。
だが、アメリカは恫喝してでも徹底阻止する構えだ
   
 アメリカでオバマ政権が発足する約一カ月前の二〇〇八年十二月十九日、東京都内のホテルに、アメリカの次期駐日大使に内定していた、ハーバード大学教授ジョセフ・ナイ氏の姿があった。ナイ氏に同行していたのは、クリントン政権時にナイ国防次官補の下で、国防副次官補を務めたカート・キャンベル氏(現国務次官補、東アジア・太平洋担当)といわれている。
 

「反米と受けとめる」
  
 この日、ホテルに呼び出されたのは、民主党の鳩山由紀夫幹事長(当時)や菅直人代表代行(当時)だった。そしてナイ氏が民主党幹部に告げたのは、「日米地位協定や普天間飛行場の移設見直しに動けば、反米と受けとめる」という言葉だった。
 ナイ氏は、知日派のアーミテージ元米国務副長官らと超党派で、対日戦略報告書「アーミテージ・レポート」を二〇〇〇年と〇七年に発表した、アメリカきっての知日派である。また、軍事力を前面に出すハードパワーの外交に対して、軍事力に依存しないソフトパワー外交の提唱者として知られている。
 そしてキャンベル氏は、クリントン政権下で普天間飛行場移設問題等を話し合う、アメリカ側の責任者を務めた人物だった。
 その後、ナイ氏は内定していた駐日大使が突然取りやめとなり、政治や外交経験の全くないジョン・ルース駐日大使が、選任されたのはご存じの通りである。
 現在、普天間飛行場の代替移設をめぐる問題で、日米間でゴタゴタが続いているが、その騒動の始まりは、このナイ氏の言葉から始まったといっても過言ではない。
 〇九年八月の総選挙で、民主党マニフェストの外交項目には、「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」(原文ママ)と掲げた。このマニフェストを読んだ時、筆者は、ナイ氏がホテルで民主党幹部に凄んだ言葉を思い出した。
 

アメリカが真に恐れること
 
 自民党政権は、一九九六年に沖縄県の普天間飛行場返還合意を発表。〇六年にその飛行場移設先を、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸案にすることをアメリカ側と合意した。しかしそれが、〇九年九月に誕生した鳩山政権で見直されることになったのは、それまでの経緯を知れば当然なことだった。
 キャンプ・シュワブ沿岸にV字滑走路(一八〇〇m)を持つという合意案は、辺野古沿岸を埋め立て、海兵隊の強襲揚陸艦が接岸できる軍港の建設計画が加えられた、自民党国防族によって巨大公共工事に変貌していたからだ。
 しかしアメリカ側が恐れるのは、キャンプ・シュワブ沿岸の新基地建設が、鳩山政権でキャンセルされることではない。真に恐れるのは、次の日米交渉で登場する「日米地位協定の改定」にスポットライトが当たることだ。
 日本に駐留する米軍が使用する施設(基地)や区域を提供し、米軍将兵や軍属、その家族に対して、日本の法律を適用しない特権や免除を与えるのが『日米地位協定』である。
 それは一九六〇年に改定された日米安保条約の第六条「基地の提供」を根拠に、日米地位協定・全二十八条によって構成されている。日米地位協定は、いままでにただの一度も改定されたことはない。アメリカ政府は「日米地位協定の改定」に強い拒否反応を持ち、日本の外務省も、米政府に遠慮して改定に消極的であったからだ。いまや日米地位協定は?不平等協定?として、日本の対米追随の象徴になっている。
 いままで半世紀も放置されてきた日米地位協定には、問題が山積みされている。例えば(1)物品購入は無税、(2)公務中の米兵の車の事故は、アメリカ側に裁判権がある、(3)基地外で暴行等の事件を起こした米兵被疑者は、原則アメリカ側に引き渡さねばならず、起訴前に日本側に身柄を引き渡しをすることはアメリカ側の裁量にまかされている……等が問題の一端である。
 さらに最近になって深刻な問題に浮上したのが、地位協定に「環境条項」を盛り込むことである。
 せめてドイツや韓国のように、米軍基地でも日本の環境法に従い、日本側の立ち入り調査を認めて欲しいというのが「環境条項」の盛り込みである。これは米軍基地内で、環境汚染の原因になる物質の廃棄や垂れ流しの疑惑が生じても、国や地方自治体には、基地内に立ち入って調査を行う権限が、認められていないことに由来する。
 また、米軍基地が化学物質や重金属に汚染されていた場合、いまの日米地位協定には日本に返還時、土壌から汚染を取り除き、原状回復する義務がアメリカ側にないことが明記されている。このため、沖縄返還時には、日米の密約として米軍基地の原状回復費用四〇〇万ドルを、核兵器や毒ガスの撤去費用に潜ませて、日本側が負担したことが知られている。
 今後、米軍の再編計画では、現在の前方展開戦略が見直され、海外駐留の米軍部隊がドイツ、韓国、日本からアメリカ本国に撤退することが公表されている。その際、日本に返還される米軍基地の環境汚染の除去を、アメリカ側の責任と負担で行って欲しいという考え方が「環境条項」にある。
 

対等関係になる好機
 
 ちなみに、住居と近接しているので、世界で最も危険な飛行場として話題の普天間飛行場だが、日本に返還された場合、その汚染除去費用は数千億円という試算があると、沖縄県の関係者から聞いたことがある。わずか、一飛行場の返還でこの金額である。アメリカ政府が、日米地位協定の見直しを強く警戒する理由がここにある。
 米兵による殺人、強姦、放火等の凶悪犯罪の犯人引き渡しは、九五年九月に沖縄で起きた米兵による少女暴行事件に、沖縄県民の激しい抗議運動から、?アメリカ側の配慮?で起訴前に行われることに合意した。これは、凶悪犯罪事件が地位協定の見直しに結びつくことを恐れ、日米協議で引き渡しに合意したからだ。「環境条項」の盛り込みは、それほど大きな日米間の問題になり得るのだ。
 日米政府が放置してきた『不平等協定』は、明らかに古過ぎる日米安保条約を源にしたものであり、もともと問題があり過ぎた。この「日米地位協定の改定」を、日米両政府は避けることはできない。強固な日米同盟を築くという意味からも、大きな阻害要因になることは、必至だからだ。
 その時こそ日本は、民主党がマニフェストで掲げた、「アメリカと『対等な日米関係』」を構築し直す好機となる。
リベラルタイム2月号 特集 沖縄経済と米軍基地
 

2010年1月19日 リベラルタイム
 
 
 

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