環境問題補完計画

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武田氏のブログに「ふたたび、森林はCO2を吸収するか?」と題した記事がある。間違いだらけなので、どこから見ていけばよいか、正直迷う…と以前書いた。あまりにも書くことが多いし、地道に検証していきたいので、数編に分けて記事にしていきたい。


今回は武田氏の挙げたIPCC第二次評価報告書(SAR)の値の検証あたりまでを進めたい。


科学とは
 科学は科学として考え、その結果とそれまでの自分の考えとを比較するという2段階が必要だ。
 常に、事実→解析→意見→感情 でなければならず…(後略

武田氏の挙げる「事実→解析→意見→感情」の概念自体は非常に重要である。

しかしながら、ウソの事実や、中途半端・断片的な情報、いい加減な引用、時代遅れな情報を元にして、「解析→意見→感情」と進んでも、根幹が成り立っていないのだから、もたらされるものは間違いでしかない。

そういう「主張」は、いくら科学を装っていても、科学モドキにすぎないことに留意してほしい。

良い機会なので、武田氏の記述が「科学であるかどうか」を見極めて欲しい。

森林は吸収すると言いたくないのだろうか?
 もともと原理的には森林はCO2を吸収しない。それは、樹木の体は、成長するときに空気中のCO2からの炭素(C)で作り、それと同じ分だけの酸素が空気中に放出する。
 樹木が死ぬ時には、体(C)と空気中の酸素(O)が結合して元のCO2に戻るからだ。基本的にはこの原理原則は正しい。
 でも、実際には森林が育ってから、枯れて土の中に埋まり、微生物によって分解されない樹木がある。だから、少し収支はずれる。

これまで、武田氏は、森は二酸化炭素を吸収しない、と主張してきた。
確かに、「ミッシングシンク」の時代、つまり、古い情報では、そうだった。

 IPCCのSARでも、不確実な故に吸収はゼロだろうと述べている論文(Melillo et al. 1988)に触れている……もちろん、過去の話としてだ。なんと、20年前の話です。こんな昔話で現在の科学を語られても困るのですよ。

 その吸収しないという主張への固執する感情の交じった記述が「少し収支はずれる」との表現ではないか?

 科学的に、と言うならば、「少し」という修飾語はいらないだろうし……


時代遅れの資料
 IPCCが第二次報告(1995)で示した世界全体の収支は、ネットでCO2は炭素換算(以下同)で次のようになっているとしている。

 そもそも、どうして、今さら13年前の資料であるIPCC SARで語るのだろうか?

 IPCC報告書を採り上げるなら、今や2007年に出されたIPCC AR4がある。
 研究界の情報は、10年もたてば遙か昔であるのだが……。
 自然を扱う科学が進歩しないと思われてしまうのなら、その一端にいるものとしては、やるせない。

IPCC 第2次評価報告書の本来の記述はどうか
南方の森林  17億トンの放出
北方の森林   7億トンの吸収
差し引き    9億トンの放出
 つまり、南の森林は伐採されたり、微生物の活動が盛んなので、収支は赤字で17億トンものCO2を「放出」しているが、北方の森林は伐採も少なく、寒いので微生物の活動も不活発だから、7億トンのCO2を「吸収」していると言う。
(注:武田氏の言う「億トン」は、億tC/yrのことだろう。「/年」は入れて欲しいなぁ。ちなみに、10億トン=1GtC/yrとなります)

 武田氏の挙げた「SARの値」とこの前後の記述は、正直、出所不明である。
 SARの値をつまみ食いしているとしか言いようがない。

 それと、基本的に、低緯度(温度の高い場所)では、微生物の分解量も増えるが、光合成による固定量も当然増える。この辺りでも、武田氏の記述に騙されないように注意して欲しい。(後ほど詳述したい)

「南方の森林」の実際 SAR WG1 p.451
 武田氏の「南方」とは、tropicsのことかと思われる。
 さて、Tropicsのネット収支として、1.7GtC/yr(±30%の不確実性)と記述のあるすぐ上に、1.6±1.0GtC/yrの熱帯の土地利用変化による放出があると書いている。

 武田氏の記述では、この内訳を、「南の森林は伐採されたり、微生物の活動が盛んなので」と曖昧にしているが、SARの段階ですら、1.7 GtC/yrのうち、1.6 GtC/yrが土地利用変化による放出である。
この「1.6 GtC/yr」という人為放出の量を、読者に見せるか見せないかで、「1.7 GtC/yr」の値への印象は大きく変わるだろう。なぜ、「1.6 GtC/yr」の値を出さないのか。勉強不足なのか、もしくは、不都合なデータの隠蔽ではないか……それほどまでして、放出量を多く見せかけたいのだろうか。

イメージ 1

(上掲の資料は、IPCC SAR WG1のp.451の一部をスキャンしたもの。1.6±1.0GtC/yrの熱帯の土地利用変化による放出、との記述を確認頂きたい。)

「北方の森林」の実際というか、引き算は正しいのか?
次に、「北方」の記述を見てみよう。

すると…どれだろうと迷ってしまう。それらしい記述がない。

 北半球中緯度の1980年代の森林の成長量として、挙げられている0.7〜0.8GtC/yrが一番近いような気もするが……tropics以外の全てが、「北半球中緯度」に入るわけではない。
 つまり、武田氏の17-7 = 9という「引き算」は、決して、全球レベルでの収支を示していない。

大きな排出量(しかも大半が伐採による値)と、小さな吸収量(北半球中緯度の吸収量)を、あたかも全球の(自然の)収支のように見せかけて計算しているが、これは全く意味をなさない。

 例えるなら、国家予算の歳出と、貴方の給料収入を引き算して、世界の金銭収支です、と言っているようなもの。


結論(?)

とりあえずSARの表を下に載せてみました。結論と言いますか、IPCC SARの記述のまとめ代わりとしてご覧ください。
武田氏の言うような「9億トンの放出」ではなく、吸収になっています。もちろん、Tropical net fluxは、deforestationとCO2 fertilisationを含むとなっています。
イメージ 2



ひとまずここまで

……学部生のいい加減なレポートを添削している気分。

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閉じる コメント(5)

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「学部生のいい加減なレポートを添削している気分」、、、(笑)
そもそも、木がCO2を吸収してO2を排出しているってのは事実なんですよねぇ(実際は、CO2とO2の吸収量、排出量の差?)。
その木の集合体である森林がCO2を吸収しないとなったら、、、いろんな研究、全部やり直しですよねぇ。
ってか、文部省、教科書全部書き直しだし。
今までの研究の地球46億年の歴史も訂正だし。
じゃぁ、そもそも、動物の排出する、CO2の行き場は???
人間以前の地球のCO2・O2のバランスをどう説明してくれるんでしょうかねぇ?
言いっぱなしですかねぇ?それ、、、どんな研究なんやろ(;一_一)

2008/10/5(日) 午前 8:49 かじら 返信する

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>そもそも、木がCO2を吸収してO2を排出しているってのは事実なんですよねぇ(実際は、CO2とO2の吸収量、排出量の差?)。

そうです。排出量の差。
最近の吸収量が多くなった原因や、火事の事にもIPCCは触れています。

今も、現在進行形で、収支に関する研究が進んでいます。
それを、収支ゼロだろ、という20年前の話(Melillo et al. 1988)に固執して話されると、「迷惑」としか言いようがありません。

2008/10/5(日) 午前 11:26 [ 綾波シンジ ] 返信する

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私の記憶ではSARの時代でもそんなでたらめじゃなかったと思います。missing sinkと言われていても、そのsinkは森林と推定されていたと思いますけど。

2008/10/9(木) 午後 10:57 [ kah*wa*ura ] 返信する

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>佐藤様

SARでは、missing sinkの表現は消えていたはずです。

AR4では、Residual terrestrial sinkの説明で、それがかつてはmissing sinkだった、と明記されています。

2008/10/10(金) 午前 0:03 [ 綾波シンジ ] 返信する

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(追記)
本文中の、

IPCCのSARでも、不確実な故に吸収はゼロだろうと述べている論文(Melillo et al. 1988)に触れている……もちろん、過去の話としてだ。

というのが、SARでのmissing sinkの扱いですね。

2008/10/10(金) 午前 3:35 [ 綾波シンジ ] 返信する

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