環境問題補完計画

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さて、武田氏のブログの「ふたたび、森林はCO2を吸収するか?」に関して、前回の記事「IPCC SARとの記述対比」において、武田氏の記事に引用されているIPCC SARの話を取り扱い、程度の低いご都合引用がなされていることを示した。


今回は、それに続いて「引用(もどき)」されている福田氏論文に関係する記述を、無料添削サービス。


福田氏の論文とは?
 この数値に疑問をもったアラスカ大学の福田先生が具体的にシベリアの森林でCO2吸収の実験を行っている(その詳細は「エネルギー・資源」という雑誌の26巻(2004)に掲載されている)。

 これ、見あたらなくて探した。「26巻」が正しいとすれば、2004ではなく、2005だ。2004では検索にかからない。適当だなぁ……

当該論文は、
福田正己(2005)「温暖化ガスに関わる永久凍土攪乱の制御技術」エネルギー・資源.26:p.40-44
だろう。

引用のいい加減さと言えば……Pitotの引用も、孫引きで載せていたようだが、引用するなら真面目にやって欲しい。「環ウソ3」では、ちゃっかりPitot et al.(1987)の元の図が、今まで間違えていました、とは一言もなく載せられている。しかもちゃっかりと、Pitot論文から和田攻「ダイオキシンと産業保健」と引用の出典が載せられている。…おいおい、和田(1999)論文には、その図は載せられていませんって。これを書くなら、それこそ、Pitot et al. (1987)でいい。ところで、この和田(1999)もどうやら、同じように引用のおかしなところがあったりするようなので、信頼性には疑問符が付く。武田氏が「○○の権威」と権威付け記述をするときは怪しんだ方が良い。

間違いだらけの引用記述の数々に時間を取られてももったいないので、先に進もう。


IPCCの孫引き疑惑
さて、福田(2005)に目を通すと、「1.はじめに」において
IPCC(1995)によると、北方森林は地球上の重要な二酸化炭素吸収源であり、年間約7億トンの二酸化炭素を吸収しているとされている.
との一文がある。

 前回、出所不明の「7億トン」という記述があると検証していたが、これの孫引きではないか。


またまた出所不明の数値が……
 まず、微生物の活動の不活発な北方の森林は、
森林が育つときの吸収  259g/m2
分解などででるCO2 173g/m2
差し引き 86g/m2
となっている。つまり、北方の森林は微生物の活動が不活発なので、約3分の1のCO2は固定されると言う結果である。
 この数値は、福田(2005)には掲載されていない。
 似たような数値は、表1として掲載されている。
 表1と同様の値が、福田正己先生の報告書に掲載されているので、そちらを載せてみた(下表)。
イメージ 1

 これによると、観測サイトの年間収支として、2000年の非伐採箇所(コントロールサイト)で-184gC/m2、伐採箇所で+184gC/m2とあり、また、次年度の観測では、非伐採箇所(コントロールサイト)で-263gC/m2の吸収量であることがわかる。
 武田氏の値とは近いけど、どの数値も適合しない。

ましてや、
非伐採の森林面積×面積あたり吸収量となる値(武田氏の「森林が育つときの吸収」相当)
と、
伐採の森林面積×面積あたり放出量という値(武田氏の「分解などででるCO2」相当)
の差し引きで計算するならまだ分かる(これは福田(2005)で行われている)。

しかし、武田氏の計算は、
面積あたり吸収量−面積あたり放出量
と、単位を無視した引き算をしている。

これは、ロシアの人口密度と、シンガポールの人口密度を「差し引き」して、シンガポールの方が人口が多い、と言っているようなもの。まともな差し引きではない。

 まともな意味での自然状態での、「差し引き」を見るのであれば、2000年なら-184gC/m2、2001年なら-263gC/m2の値がそのまま相当する。適当な2つの数値の引き算はやめて欲しいものだ。


(数値のビミョーな違いは、転載された場合の、転載元が分かるように、ワザと数値や表現に誤りを入れておいた……という可能性もなくはない…とフォローしておこう。)


余談:政治的な森林吸収の取り決め
 ここで、少し脱線するが、日本の林野庁も農水省の一組織だけあって、誠意のない「森林吸収量」…(中略)…でも、森林はもともと吸収した分を放出し、北方の微生物の活動が少ない地帯ですら、3分の1しか固定しないことは全く触れていない。南方ならもっと少ない。

 これは、余談だけど、科学的な吸収の観測値を扱おうというときに、政治的な問題、すなわち、お役所批判を入れ、感情を煽るのはアジ演説の常套手段。農水省批判の時流に乗りたいのだろうか。
 ただね、実際問題、このマラケシュ合意辺りは、私も書いてきたように、正直、政治的取り決めだと思う。こちらに関しては調べてから、後日記事にしてみたい。
 ここで、気になるのは、武田氏が「国産の割り箸を使って、森を間伐しよう」と述べていたこと。この「間伐推進」は、まさに政治的取り決めのために林野庁が頑張っていることである。だから、林野庁を応援している人なのだと思っていたけどね……
 さて、くれぐれも、政治的取り決めと、その元になる科学的な吸収量評価を混同しないように注意して欲しい。

 さらに、前回記事でも述べたように「南方」は、分解量も多ければ固定量も多いこと、また、今後温暖化が進んだときに分解量が優先する(正のフィードバック)ことが危惧されていることにも注意して、次へ進もう。


大いなる誤解のオンパレード

25年で全ての森が燃えてしまうのか?
 前の数字は「森林に何も起こらなければ」ということだが、実際には森林には、火災、洪水、害虫などの天変地異が次々と起こる。それでは現実の森林はどのようなものだろうか?
IPCC SARやAR4での、森林のnetの吸収の値は、それらが起きた上での収支を表している。つまり、武田氏の言う「何もかも生じたときの収支」である。騙されないようにご注意。

 シベリアでは火災で消失する森林は一年で1000万ha程度だが、この森林火災の分のCO2を補うためには、10億ha程度の健全な森林がなければならないが、実際にシベリアの森林面積は2億5000万haしかないから、到底、火災によって増えるCO2を回復することはできない。

この記述を、「へぇ、なるほど」と思った人は、よほど自分の注意力が乏しく、騙されやすい人であることに、注意して欲しい。武田氏の記述の、シベリアの森林面積が2億5000万ha。森林の消失面積が一年で1000万ha……怪しいと思いませんか?

単純にわり算すれば、25年で森が全て消失・更新を繰り返すほどの量になります。どんな酷い火災なんだ(苦笑)

では、実際どれくらいの森林面積が消失しているのだろう?との疑問をもって、次に進みましょう……

福田(2005)における記載事実と記載内容考察
さてさて、引用元の福田(2005)の記載事実を見てみましょう(順番は相前後し、表現も整理しています)。
◇シベリアタイガの総面積は約8億ha
◇放出:タイガが燃焼すると放出されるCO2は、50-20tC/ha。
  異常火災(ピーク)のあった2003年は2000万haの火災(10〜4億tCの放出となる)
  ※ブログ主注:このペースだと、40年で更新されるペース
◇吸収:成熟したタイガが吸収するCO2は、0.5tC/ha/yr
  シベリアタイガが全て成熟林と仮定すれば、全体で4億tC/yrの吸収が行われている
◇その他:土壌から放出のメタンガスをあわせると明らかに放出量が吸収量を上回っている
     なお、火災の原因の70%は人為
…とのこと。武田氏の値はどこから出てきたのでしょうか…

 また、福田先生の組み立ても気になります。
 異常火災(異常に多い)であった2003年の火災による放出量
と、
成熟した(つまり吸収が鈍った)森林だけと仮定した吸収量
を比べるのは、妥当な考察なのだろうか?

また、福田先生が述べているように、人為火災70%をどう見るのだろうか?自然の収支とカウントして良いのだろうか?(netでみても、吸収になっているのは述べたとおり。)

 念のため、早坂・福田・串田(2007)最近の北方林での大規模森林火災と気候変動. 日本火災学会論文集 57(3),45-51も見てみました。
 Table.1をみると、アラスカのサハ自治州で、1955〜2005年において、森林面積1.43億haで、焼失面積が年平均で17.97万ha/yrとなっています(800年で全部焼ける計算)。
また、森林火災が多い年の焼失面積は233万ha(2002年)であり、平均の17.97万haと比べると、13倍程度の差があることも、福田(2005)の値を見るとき注意したい点です。


次回予告

 武田氏の記述の根拠が曖昧で、こちらが代わりに確認し、添削しながら話を進めなければならないのが、難しいところです。
 それはさておき、読者の方は、武田氏が「森林は吸収しない」と言いたいために、根拠不明な数値のつまみ食いをしていたことを、分かって頂けたことと思います。

以下の武田氏の結論
 つまり、もともと森林がCO2を吸収するのは北方の森林だけだが、さらに「火災を防止する技術」が進まないと、世界のどこの森林も「CO2を吸収できない」と言わなければならない。
も、「火災を防止する技術」という話の重要性はともかく、世界のどこの森林も「CO2を吸収できない」と言わなければならない。という科学的(?)結論に、妥当性が全くないことが分かると思います。


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グローバル・カーボン・プロジェクトという国際的な研究で年次のレポートを出しています。
http://www.globalcarbonproject.org/global/ppt/GCP_CarbonBudget_2007.ppt
一年単位でみれば、世界の森林が燃えることも含めて、1年当たりの
陸上生態系の吸収量がゼロになるような年もあります。(上のパワーポイントのP20あたり)
そのある年の数字だけを元に議論していると、ちょっとミスリーディングになると思います。

2008/10/7(火) 午後 2:15 [ tog**a04 ] 返信する

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福田教授は北方森林(亜寒帯林)が専門ですのでそこに注目がいっているということと、米国の第二次大戦後、農地への植林という再転換(正のLand Use Change)の規模がでかいことについてよく知らないため、中高緯度の(温帯林)生態系のことを北方林で代表させてしまって異論となっているのでしょう。

Land Use(LU,森林なり農地なりの継続利用)の際の吸収/排出と、プラスマイナスの双方向のLUCは規模が違います。

2008/10/7(火) 午後 2:39 [ tog**a04 ] 返信する

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>tog**a04 さま

書き込み&情報、ありがとうございます。

GCPのパワポわかりやすいですね……略称とか、理解しづらいのもありますが。
(普通の人のパソコンにはパワポはなさそうなので、適宜JPGなどに変換してみようかな……)

>米国の植林の規模
これ、私も存じ上げませんでした。中国の植林云々はFAOの資料から伺えますが……。

緯度(環境)毎に異なる植生の違いを踏まえないまま、一カ所の話をあまりにも全体に広げようとしている、という事ですね。
福田先生の結果は、ボトムアップアプローチの一つとして有用だと感じますが、2003年の異常火災時の焼失量で全体の話をするのは、話を拡げすぎですね。(森林防災との意味合いでは重要か…)

2008/10/7(火) 午後 5:51 [ 綾波シンジ ] 返信する

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佐藤秀です。TBありがとうございました。Yahooブログはコメントするのに登録必要なのでややこしいですけど。
他に関係しそうなエントリーTBしましたが、届きませんでしたので、url貼らせていただきます。
http://blog.livedoor.jp/y0780121/archives/50195769.html

2008/10/9(木) 午前 11:46 [ kah*wa*ura ] 返信する

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