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市川猿三郎 二輪草紙
歌舞伎役者 市川延夫改め二代目市川猿三郎。 公演などのご案内、過去現在にわたっての様々なことを思いつくまま書き綴ってまいります。

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土 蜘

12月歌舞伎座公演の第1部 『実盛物語』の次に『土蜘』がございます。
新古演劇十種の内で、これは音羽屋さんのお家芸となります。

ですから、猿翁旦那は音羽屋のお家に遠慮されて 直接的にこれを
上演されたことは、私の関わった記憶内ではなかったかと思います。


ですが、『土蜘』に似通った作品。
例えば『四天王楓江戸粧』の大詰めですとか 『御贔屓繋馬』の大詰めの舞踊、
また『蜘蛛拍子舞』と云うような作品に『土蜘』の後ジテを用いておられました。


源頼光の時代 一人武者である平井保昌 おなじみの四天王、
渡辺綱 坂田公時 卜部季武 碓井貞光たち。

この人たちと土蜘の精との戦いは 舞踊としても大変優れておりますね。


土蜘蛛とは本来、妖怪なのですが 大和朝廷から平安にかけて
朝廷や天皇に恭順しない地方の豪族を 「土蜘蛛」と蔑した呼び方で
呼んで居たので この作品の奥にはそう云った意味合いが
隠されているのかも知れませんね。


前ジテの僧の名前が智籌(ちちゅう)と云い 大変意味深です(笑)

智籌の不審な様子に 源頼光が名刀で斬りつけると本性を現し
数珠を使い、畜生口(口にあてて 口が裂けた様子を表す)
と云う見得を切ります。

これらも僧の持つ仏教の数珠を 蜘蛛の本性を現す道具にするなど、
歌舞伎舞踊の演出の優れたところです。



後ジテである土蜘の精が投げる蜘蛛の糸は、音羽屋さんの特許でして
特殊な作り方で かなり技術を要します。

気の遠くなるような作業 長年にわたり音羽屋のお弟子さんが
作成しております。

すべてお手製ですので、1発作るだけで気の遠くなるような作業。

これを1日の公演で何10発も使い 1ケ月の公演では・・・。 

ですから何月に『土蜘』が出るとなるとその1年位前から
使う蜘蛛の糸つくりの作業を始めるとか・・・。

聞くところによると1発作るのに人件費はものすごいとか(笑)


猿翁旦那の時は1回の公演で音羽屋さんの2.3倍ほど多くの蜘蛛の糸が
投げられました。

これらも実際は 音羽屋のお弟子さんにお願いして 作って頂いていたものなのです。
今でもこの作業ができる方は もうお一人しか居られません

最近は機械で作ったものもございますが、やはり使い勝手がどうも違うそうです。


これからご覧になられる方は『土蜘』で、何発の糸が投げられるか?
数えてみるのも面白いでしょうか?(笑)

『実盛物語』の上演中に次の演目の『土蜘』の蜘蛛の塚が廊下に
用意されております。

イメージ 1


この塚の蜘蛛の糸はやはり和紙でテープのように貼られておりますが
これも毎日 お弟子さんが始まる前に作成しているのです。

イメージ 2



貼り方も決まっており、これもお弟子さんの中で 何人も受け継がれており
技術を伝えられております。


おもだかやでも、おもだかやの家の芸やその技術は やはりお弟子さんたちに
受け継がれて行っております。

ここに伝統歌舞伎ならではの証がある訳ですね。

この記事に

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    猿三郎様

    久し振りにコメントさせて頂きました。

    素敵な裏話、ありがとうございました。役者さんの芸が若手に受け継がれていくのと同じように、このような技術も受け継がれていくことを願うばかりです。
    蜘蛛の糸がパーっと広がる(語彙力無くてお恥ずかしい限りです)様子、迫力がありこれからもずっと見続けたいです。

    若手の俳優さんのご活躍で活気のある歌舞伎の世界が、今の勢いのまま私がお婆さんになるまで続くと嬉しいです。 削除

    [ TANUKI ]

    2017/12/16(土) 午後 9:42

    返信する
  • ありがとうございます、勉強になりました。蜘蛛の糸が高価とは聞いておりましたが、まさか人件費とは!昨日のブログもありがとうございました。

    [ hem*ama*i*i ]

    2017/12/16(土) 午後 10:01

    返信する
  • 猿三郎様こんばんは😃
    一瞬の為に気の遠くなる作業、これが歌舞伎の切符がお高い事情なのですね。
    しかし御一方しかいらっしゃらないって大変な事ですよね。蜘蛛の糸と共に演目そのものも消えてしまいますもの。
    継承される方が無事現れるよう祈ります。

    [ bra**fiel* ]

    2017/12/16(土) 午後 10:03

    返信する
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    お家芸を勝手に演じてはいけないのですね。。。

    暗黙の了解、、というものでしょうか。。。

    大事にしているお家芸なのですね。

    蜘蛛の糸
    きれいに宙に広がって散っていきましたが
    またそれを
    上手にどんどん集めて丸めて回収される黒子?の方の動きにもついつい目が行ってしまいました。
    無粋とは思いつつ、、、

    お弟子さんたちの中で引き継がれていく
    技術があるのですね。。。
    つくづく奥が深いですね。
    和紙の蜘蛛の巣、お見事です。

    [ 薔薇と紫陽花のにわ ]

    2017/12/16(土) 午後 10:42

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    蜘蛛の糸は、記念にいつも持ち帰ってブロマイドと一緒に保管しています。大切にしてますよ〜!
    昔、発案した人達も凄いけど、それが受け継がれていくという事が素敵ですね♪かっこいいな〜♡と思います。
    蜘蛛の糸を見ると、芯を入れてなくて中心部からかなりびっしり巻かれているのですね。あの細かいグルグルが放射線状に放物線を描きながら、ふわ〜っと広がっていく様は実に美しいですね〜!お弟子さんの時間を掛けて作った糸だから役者さんもより美しくと思うのかな・・・。
    何気なく見てしまいがちですが、舞台が出来上がるまでをあれこれ想像してみると深いな〜と(笑)。
    現代は合理的すぎるからこう言うブログ等での舞台裏話の紹介はとても意味のある事だと思います。
    サンキュー!猿三郎!!(笑)

    [ まんまる ]

    2017/12/17(日) 午前 0:04

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    お家お家において、受け継がれるものもそれぞれなのですね。

    そして、まだまだ勉強不足なので『前ジテ』『後ジテ』がよく分かりません(泣)専門用語なのでしょうね。

    代々受け継がれるお家芸を、それぞれのお家で大事にしていることを、みなさんで守り続けているのも歌舞伎ならではなんでしょうね。 削除

    [ y-coco ]

    2017/12/17(日) 午前 4:21

    返信する
  • 猿三郎丈、おはようございます!

    「土蜘蛛」のお話を拝読し、俄然『四天王楓江戸化粧』を観劇したくなりました。澤瀉屋ご一門の皆様の舞台の3Sは、やみつきになりますね!

    「若旦那の投げる蜘蛛の糸」の放物線の美しさと滞空時間は、圧巻です。後見の段之丈、段一郎丈、澤路丈はじめお弟子さん方との息もピッタリ!

    1年もまえというかなり前から気の遠くなるような作業を丹念に続け、舞台公演にグワッ!!が現れるのですね。これもまた、「ひとつなぎの大秘宝」ですね! だからこそ、舞台公演からエネルギーを戴けるのですね!皆様に感謝!

    昨日とはうってかわっての寒気。青雉クザンに負けぬよう、今日もやるべきことにしっかり取り組み、当月のラストチャンスの観劇を楽しみたいと思います。
    今日も、素敵な一日を!

    [ まどんな ]

    2017/12/17(日) 午前 8:28

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    TANUKIさん
    蜘蛛の糸が投げられると 外人さんの反応は素直ですね(笑)

    [ 猿三郎 ]

    2017/12/17(日) 午前 8:31

    返信する
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    hem*ama*i*iさん
    大量生産できない分、やはり高価になりますよね(笑)

    [ 猿三郎 ]

    2017/12/17(日) 午前 8:32

    返信する
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    bra**fiel*さん
    継承して行くと云うのは 色んな意味で難しくなって来ております。

    [ 猿三郎 ]

    2017/12/17(日) 午前 8:33

    返信する
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    薔薇と紫陽花のにわさん
    云え云え 蜘蛛の糸を回収していく後見も技術のいるものです。(笑)

    [ 猿三郎 ]

    2017/12/17(日) 午前 8:35

    返信する
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    おはようございます。
    蜘蛛の糸、10月に猿之助さんが
    『LIFE』に出演された時に
    『僕のは特別に作ってもらってるんです』と説明されていましたね。アレはソレかしら・・・。
    名前も表に出ない方が、素晴らしい技術で作っている。
    そのような伝統が歌舞伎にはたくさんあるんですね。 削除

    [ メロメロビーム甘風 ]

    2017/12/17(日) 午前 8:36

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    まんまるさん
    久しぶりに、まんまるさんに褒められました(笑)

    [ 猿三郎 ]

    2017/12/17(日) 午前 8:37

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    y-cocoさん
    この言葉はお能から来ておりまして、『土蜘』の場合
    前ジテは智籌 後ジテが蜘蛛の精となります。
    どちらも松緑さんが勤めておられます。
    他の演目でも変化物は必ず二役 同じ役者さんが勤めるので こう呼ばれております。

    [ 猿三郎 ]

    2017/12/17(日) 午前 8:39

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    まどんなさん
    ひとつの公演は、何年も前から準備がされて それでひと月を公演する訳ですから、確かにエネルギーは要りますね(笑)

    [ 猿三郎 ]

    2017/12/17(日) 午前 8:41

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    メロメロビーム甘風さん
    その通りです(笑)

    [ 猿三郎 ]

    2017/12/18(月) 午前 8:11

    返信する

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