【連載特集】JAL倒産から1年(6)〜ANAは改革を等閑視できない特別取材2011年2月 1日 07:00 各部署の損益がほぼリアルタイムに分かるアメーバ経営の手法を取り入れ、JALは早ければ今春にも各路線別、各便別の損益が分かる経営管理体制に切り替わる。JALは創業60年経っても路線別収支を作成しておらず、どんぶり勘定のままだった。月次決算も翌々月にならないと判明しないため、収支の悪化に対する経営改善策を打つのが常に遅れてきた。そうしたずさん極まりない風土を変えるのが、アメーバ導入の狙いだ。
さて、こうした稲盛改革がJALの社員をどこまで改造できるか、まだ心もとない。 JALの社員は、言葉遣いが丁寧で物腰が柔らかい紳士・淑女が一見多そうに見えるが、表面上の礼儀正しさとは裏腹に、本性は妙な優越意識を持つ輩が少なくない。自民党の政治家や高級官僚、財界人といった地位のある人には慇懃なほど丁寧にかしずく半面、ライバル社の全日空(ANA)や旧日本エアシステム(JAS、現在はJALが吸収)を露骨に蔑視し、社内でも非主流派労組員に対しては差別意識をむき出しにしてきた。 稲盛氏に対して、JALの社員たちは表面的には実に礼儀正しく、忠誠をつくしたようなそぶりを見せている。「うちの連中はそういうのはうまいからな...」というのは、JALの元役員である。経営企画部門は国交省航空局の官僚を、秘書部門が自民党の運輸族の政治家たちを、広報部はマスコミの記者やフリーランスのジャーナリストたちを、酒食をもってもてなし、懇ろになることにつとめてきた。かつて大手都銀は、大蔵省に出入りするMOF担なる大蔵担当の専任職をおき、それが出世の登竜門だったが、JALは社内全体がそうしたMOF担的な「対策屋」カルチャーなのである。 表面的には稲盛氏ら京セラ一派に忠誠を尽くしつつ、裏では「アッカンベー」をしている。おそらく、JALの中堅以上の幹部社員はそんなところだろう。実際JALの企画部門で働く中間管理職は、「航空業界のことを知らない稲盛さんがすべて決められるわけがないじゃないですか。決めているのは我々ですよ」と、JAL生え抜きの社内エリートたちが意思決定にかかわっていると豪語する。JAL関係者からは「倒産して経費節減を努めているのに、稲盛さんの使う費用がバカにならない」という声も上がる。東京滞在のホテル代や交際費のことを指すと思われるが、無報酬でリスクの高い会長職を受けたのに、そんなことで「ケチ」と言われるのは悲しいだろう。妙な自慢と悪口の言い方が実にJALらしいのである。 とはいえ、JAL社内に次第に広がる京セラ流のアメーバ思想に恐怖を感じているのが、ライバルのANAだ。倒産したJALほどの放漫経営ではないとはいえ、ANAも京セラほど収支意識や経営管理がしっかりしているわけではない。銀座に近い汐留の高層ビルに移転してから、「交際費を使った社員の遊び癖が広がった」(元記者クラブ詰め記者)とも言われる。JALの改革をANAは等閑視できないのである。 (了) 【特別取材班】 http://www.data-max.co.jp/2011/02/jalana_1.html |
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【連載特集】JAL倒産から1年(5)〜稲盛アメーバの伝播力特別取材2011年1月31日 08:15 日本航空(JAL)再建の成否を握るのは、京セラ名誉会長の稲盛和夫JAL会長である。自民党運輸族に過度に依存してきたJALは、民主党の主要政治家にパイプがない。民主党政権の後見人として政権の要路に顔が利く稲盛会長は、その点、実に頼もしい限りだ。 78歳と高齢の稲盛氏は、2010年2月に三顧の礼をもってJALに迎え入れられた際に、住まいと京セラ本社のある京都中心の生活を改める意思はなく、週に3日程度しかJALには出社できない、と言っていた。しかし、実際に就任すると、帝国ホテルに暮らし、ほぼ毎日、東京・天王洲のJAL本社に出社している状態だ。朝8時には出社し、退社はたいてい夜9時を過ぎる。昼食は社員食堂で社員と一緒に食べるというのがパターンになっている。スケジュールもびっしりで、JAL生え抜き幹部職員のルーズな働き振りとはずいぶん違う。さすが、裸一貫から売上高1兆円の国際企業に育て上げた立志伝中の事業家ならではある。 「決してお飾りではありませんね。幹部人事や経営体制の刷新など重要なことは稲盛さんが決めています」―事業管財人でJALに3,500億円を出資する官製ファンド、企業再生支援機構の幹部はそう言う。JALはこの1月、昔のマークだった「鶴丸」を復活させることを決めたが、これもかつてのJALに愛着をもつ稲盛氏の意向が強く働いたためという。JALの歴代社長は旧運輸省などの天下り組か、企画や労務、営業など社内の有力部門の代表者が就くことが多く、結果的にJAL社内は縦割り組織の「連邦」体制となり、求心力のある事業家が経営の責任をまっとうした例がなかった。稲盛氏が初の事業家的な経営者なのである。 ただし、すべてのことが稲盛氏のトップダウンというよりも、重要な案件は稲盛氏、瀬戸英雄企業再生支援委員会委員長(弁護士)、中村彰利会長補佐(企業再生支援機構専務)、水留浩一副社長(企業再生支援機構常務)、京セラ出身の森田直行副社長で決める集団指導体制になっている。注目に値するのは、JAL生え抜きの大西賢社長が実質的に重要な経営判断の蚊帳の外におかれている点だ。「大西さんには空港におけるVIPの接遇や経団連やお客さまへのあいさつ回りをお願いしています」(企業再生支援機構幹部)といわれ、お飾りはむしろ彼のほうなのだ。整備部門一筋に歩み、JALを倒産させた西松遥前社長ら旧経営陣に引き立てられてきた大西氏は、稲盛氏や支援機構の幹部からすると、頼りなく見られがちだ。 JALは昨年12月15日、役員体制を一新し、京セラから3人の役員を招聘した。稲盛氏の信任が厚く、稲盛氏の生み出した京セラ特有の経営管理思想「アメーバ」の伝道役を務めてきた森田直行氏(京セラコミュニケーションシステム会長)が副社長に就き、経営管理と調達、関連会社の担当となった。さらに稲盛氏の秘書を長く務めた側近中の側近である大田嘉仁京セラ取締役を専務に起用し、JAL社員の意識改革推進担当に据えた。やはりアメーバに精通した米山誠京セラコミュニケーションシステム取締役は執行役員経営管理本部長に就任。JALの宿患といえる採算意識の欠落を埋めるべく、収支をつかさどる経営管理部門のラインを京セラが握ったのである。 (つづく) 【特別取材班】 http://www.data-max.co.jp/2011/01/jal_13.html |
【連載特集】JAL倒産から1年(4)〜「楽観は許されない」特別取材2011年1月27日 07:00 2012年末までに東証に再上場しようとすれば、東証の上場審査基準では、その前年の決算(2012年3月期)が上場可否の判断材料となる。幸いにしてこの2011年3月期決算は、第3四半期(2010年4月〜12月)までは黒字基調で、営業損益段階では1,600億円超の黒字になった模様である。2010年3月期が1,600億円程度の営業赤字だったから、わずか1年で差し引き3,200億円以上の損益改善が見込められたわけだ。 背景には、減価償却負担が大幅に軽減したり、赤字路線を大幅に削減したりするなど「倒産メリット」が大きかったとはいえ、JAL社内からは「再生は順調にいっています。再上場は夢ではありません」(広報担当者)と強気の声も漏れる。 ただし、上場主幹事を担う野村証券の担当幹部は「楽観は許されない」と言って、こう指摘する。「問題はたった1年間だけの決算を見て再上場を許していいのかという点です。最大の難題は、事業の継続性の可否にあります」。航空会社は、テロや事故、流行病などによって乗客数は大きく増減する。そうしたイベントリスクを考えると、たまたまある会計年度の業績が好調だからといって、一般の人が簡単に株の売買ができる上場を認めていいのか、疑問が残る、というのである。 再上場によって莫大な手数料が転がり込む野村でさえ、安易な再上場に慎重な姿勢であることは見逃せない。JAL社員の根拠なき鼻息の荒さとは対象的に、実はJAL関係者には再上場が果たして可能かどうか、いぶかしむ見方をとる人が少なくないからである。 当の出資者である企業再生支援機構の幹部も、そうである。ある機構幹部は「機構という監視役がいなくなると、JALはすぐ先祖返りする」と打ち明ける。出資者で、役員を送り込む機構の手前、おとなしくしているJALの生え抜き幹部社員たちは、いざ機構というお目付け役がいなくなると、再び放埓な経営に舞い戻りそう、というのである。海外出張、交際費、そして天下り。すでにその兆候はあるという。「最近退任したある役員は露骨に天下りポストを要求してきましたからね。もちろん『何を言っているのですか』と断りましたが、全然あの人たちは懲りていない」。そう機構幹部は打ち明けた。 JALを監督する国土交通省航空局も表向きはJAL再上場という基本方針は崩さないが、国内大手航空会社や海外の航空会社、航空関係に造詣の深い投資家などがスポンサーになる次善の策も考慮に入れている。つまり、支援機構が保有するJAL株式3,500億円を、別の大口投資家に転売するというシナリオである。支援機構の幹部もこう見る。「JAL再生機構のような新組織を設け、そこに転売するというのも1つの方策です」。要するに一種の先送り策である。 こんな声が漏れてくるほど、JAL再上場は容易ではないのである。 都心に潤沢な不動産を持ち、安定した首都圏の私鉄を運営する西武ホールディングスすら一向に再上場できないことから分かるように、JAL再上場は、そう甘くはなさそうだ。 (つづく) 【特別取材班】 http://www.data-max.co.jp/2011/01/jal_12.html |
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