JELANDEAR

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第八十五話 団欒

 シーナの怪我の処置を終えて病院を出た一行はそのままメインストリートをしばらくぶらつき、軒を連ねる運送会社などのビルの中にみつけた大き目のホテルに入る。ロビーは広く天井は高く、貿易関係の従業員のようなビジネスマンなどがソファで新聞を広げたり、携帯電話を片手になにやら商談でもしているかのようである。要所に置かれた観葉植物が優しい雰囲気をかもし出し、ゆっくりとくつろげる空間となっていた。田舎のモーテルしかしらないサイやアールは若干気後れしているようだが、エリスはてきぱきとフロントに歩み寄りチェックインを済ませた。
 さすがに貿易港のホテルだけあって部屋の種類も色々あり、四人部屋もきちんと設えてあるようで、迷わず四人部屋をとった。部屋のカードキーを受け取ると護衛組みを引きつれて部屋へと向かう。ホテルの高層階の部屋に入るなりたまりかねたアールが奇声をあげた。
「すっげーー!!見ろよこの部屋、広すぎねえか??四人でこれかよ?ありえねーー!」
「本当に綺麗ね!!ほらアール窓の外見て!!たかーーい!港が一望できるわよ!!」
 はしゃぐ姉弟を見てエリスは苦笑したがさすがにシーナは黙っていなかった。
「ほんっと典型的なおのぼりさん発言だな。この調子じゃファルサラ見たらどんな反応するやら」
「仕方ないじゃないのよ!!私もアールも田舎のモーテルしか知らないんだもの!!ねえ先生こんな部屋で大丈夫なの?もしかしてすっごく高いんじゃない?お財布大丈夫??」
「心配しないで、サイさん。二人ずつ別部屋とるよりこの方が断然いいし、お金はアヴァロ大佐から充分すぎるほどもらってるから。せっかくこうしてポートフォーサイスに辿り着いたんだもの。たまには文化的な生活も悪くないわ」
「そ、そうよね!私たちの今までの旅考えたらこれくらいしてもバチは当たらないわよね」
 心の底から満足しているサイやアールの満面の笑顔を見ているうちにエリスも嬉しくなって笑顔がこぼれる。しかしサイの突然の申し出にその笑顔が急に引き攣った。
「先生お風呂入ろう!!こんな綺麗なホテルのバスルームなら期待大だし、なによりもそれが楽しみだったのよ、私!!」
「え!!?お風呂って・・・サイさんと一緒に!???」
「そうよ」
「えーーー!?だってそんな・・・うそ??」
「恥ずかしがる事無いわよ、女同士なんだもん。ほら行こう!!」
 サイに手を引っ張られ半ば無理矢理バスルームに連行されていくエリスは小声でつぶやいた。
「そんなサイさんの裸なんか見たら私またコンプレックスが刺激されて・・・・。」
「わーーーー綺麗!!見て先生!!浴槽が猫足になってる!!可愛いーーー!!」
 エリスのぼやきなど耳に入らないサイは白と金で統一された小奇麗なバスルームに感激しきりである。そんな女性陣の騒ぎをよそにシーナとアールは応接のソファに陣取りくつろいだ。応接のテーブルには茶を入れるセットが置いてありさっそくシーナは片手で器用に茶をいれ一服決め込んだ。やがてバスルームからはシャワーの水音とともに賑やかにはしゃぐエリスとサイの声が聞こえてきた。
「気持ちいい〜〜〜まさに天国!!あ、先生私髪洗ってあげようか?」
「それくらい自分でできるわよ。サイさんこそすっごく長くて大変そう。私洗ってあげる!!」
「先生ってほんと肌白いわよね〜。それにすべすべ!!」
「きゃっ!変なトコ触ったらいやだってば!!」
 子供のようにはしゃぐ女性陣の賑やかな声が響きシーナは呆れて鼻をならした。その時ふと正面に座るアールの様子が目に入る。シューズを脱ごうと紐に手を掛けていたがなかなか解こうとせずただ指でもてあそびながら呆としている。心ここにあらずといった風情にシーナはニヤリと笑って呟いた。
「・・・思春期真っ只中のアール君は女性の入浴シーンを悶々と妄想するのでした、ってトコロか?」
「ばっ・・・!馬鹿!!何言ってんだよ!!んなわけあるか!!」
「焦るな照れるな、お前くらいの歳なら当たり前なんだからよ。それにしてもお前みたいに耳がいいと難儀だよな。風呂の中の音丸聞こえなんだろう?余計妄想に拍車が・・・ん?かえって得なのか?」
 その瞬間アールが脱ぎかけていたシューズがシーナの顔面めがけて飛んできた。
「下世話にも程があるんだよ、エロ馬鹿!!」
「お前怪我人に対してそれなんだよ!!重り入りのシューズ顔めがけて投げるな!!」
「怪我人なら大人しくしてろ!!」
「ったく図星さされて逆上するなんてほんっとガキなんだからよ・・・」
 余計なぼやきをつぶやいたシーナにもう片方のシューズが飛んでくる。
「口も閉じてろ、怪我人!!!」
 そこへすっかり旅のほこりを落としてさっぱりしたエリスとサイがバスルームから出てきた。
「何してんの、あんたたち?」
「いやアールの高感度の耳で風呂場の様子を・・イテッ」
 さらに余計なことを言おうとしたシーナの頭を小突いたアールはエリスのバスローブ姿に胸を高鳴らせながらもその場を誤魔化そうと慌てた。
「な・・なんでもない!!さーーーて、俺もシャワー浴びてさっぱりしてこよう!!」
 その言葉にエリスは小突かれた頭をさするシーナを見て提案する。
「シーナはお風呂入れないわね。アール君、シーナの頭洗ってあげてくれる?」
「なんで俺が?」
「いや?体はあとで拭けばいいんだけど・・じゃあ私やろうか」
「先生が?い、いやいい!!俺やるよ!!ほら来いシーナ!風呂はいるぜ!!」
 首元をつかまれて引き摺られていくシーナは嫌な予感がしたがそれは予感だけでは済まされなかった。案の定アールは先ほどの仕返しとばかりに熱湯のシャワーをシーナの頭に浴びせかけた。
「お前!!さっきの仕返しのつもりかよ!!熱いじゃねえか!!」
「あれー?間違えたか??何せ俺こんなバスルーム使うの初めてだからなーーー」
「今度は冷たすぎるんだよ!!お前絶対わざとやってるだろう!!!」
「心外だよなー」
 男性陣の騒ぎはやはり部屋でくつろぐエリスとサイにも聞こえてきた。
「男って馬鹿よねーー。子供みたい」
「包帯濡らさなきゃいいんだけど・・・」



 風呂から上がったシーナとアールはテーブルの上の豪華な食事に驚いた。エリスは四人でくつろげるようにルームサービスを奮発していたのだ。それにはシーナが部屋で安静にしていたほうがいいという心遣いも含まれている。喜ぶ護衛たちの姿を見るにつけエリスも心の底から喜んだ。
 港のホテルだけあって魚介類の料理は絶品でサイはしきりに味を確かめながらどうやって調理しているのか想像しながら舌鼓を打った。その他肉料理や温野菜のオードブルなど、どれをとっても奥深く味わい深い。ことさら旨いと喜ぶ護衛たちとエリスは久し振りの穏やかな食事に満足した。
 その後特にすることもなくなった一行はゆっくり疲れを癒そうと思い思いにベッドに横になる。まだ夕方を少し回っただけで早い気もしたがエリスは部屋の電気を消した。やがて外の空は夕闇から夜の帳へとゆっくり移行する。外の街灯と海の上に浮ぶ船の明かり、そして遠く水平線の上をちらつくかがり火だけが目に入るようになった。どうやら護衛たちはすっかり寝入ってしまったようで静かな寝息が聞こえてくる。エリスは窓の外の夜景を心ゆくまで堪能し、辛かったここまでの行程に思いを馳せた。
 ここはポートフォーサイス。大陸最西端の港町。とうとう自分はここまでやってきた。目指すジェランディアはあとどのくらいなのだろうか。しかしもう何も心配することはない。ここまで来れた自分たちならきっとすぐに辿り着ける。願いが叶う国、願望国ジェランディアまであともうすぐである──

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