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シーナの怪我の処置を終えて病院を出た一行はそのままメインストリートをしばらくぶらつき、軒を連ねる運送会社などのビルの中にみつけた大き目のホテルに入る。ロビーは広く天井は高く、貿易関係の従業員のようなビジネスマンなどがソファで新聞を広げたり、携帯電話を片手になにやら商談でもしているかのようである。要所に置かれた観葉植物が優しい雰囲気をかもし出し、ゆっくりとくつろげる空間となっていた。田舎のモーテルしかしらないサイやアールは若干気後れしているようだが、エリスはてきぱきとフロントに歩み寄りチェックインを済ませた。 さすがに貿易港のホテルだけあって部屋の種類も色々あり、四人部屋もきちんと設えてあるようで、迷わず四人部屋をとった。部屋のカードキーを受け取ると護衛組みを引きつれて部屋へと向かう。ホテルの高層階の部屋に入るなりたまりかねたアールが奇声をあげた。 「すっげーー!!見ろよこの部屋、広すぎねえか??四人でこれかよ?ありえねーー!」 「本当に綺麗ね!!ほらアール窓の外見て!!たかーーい!港が一望できるわよ!!」 はしゃぐ姉弟を見てエリスは苦笑したがさすがにシーナは黙っていなかった。 「ほんっと典型的なおのぼりさん発言だな。この調子じゃファルサラ見たらどんな反応するやら」 「仕方ないじゃないのよ!!私もアールも田舎のモーテルしか知らないんだもの!!ねえ先生こんな部屋で大丈夫なの?もしかしてすっごく高いんじゃない?お財布大丈夫??」 「心配しないで、サイさん。二人ずつ別部屋とるよりこの方が断然いいし、お金はアヴァロ大佐から充分すぎるほどもらってるから。せっかくこうしてポートフォーサイスに辿り着いたんだもの。たまには文化的な生活も悪くないわ」 「そ、そうよね!私たちの今までの旅考えたらこれくらいしてもバチは当たらないわよね」 心の底から満足しているサイやアールの満面の笑顔を見ているうちにエリスも嬉しくなって笑顔がこぼれる。しかしサイの突然の申し出にその笑顔が急に引き攣った。 「先生お風呂入ろう!!こんな綺麗なホテルのバスルームなら期待大だし、なによりもそれが楽しみだったのよ、私!!」 「え!!?お風呂って・・・サイさんと一緒に!???」 「そうよ」 「えーーー!?だってそんな・・・うそ??」 「恥ずかしがる事無いわよ、女同士なんだもん。ほら行こう!!」 サイに手を引っ張られ半ば無理矢理バスルームに連行されていくエリスは小声でつぶやいた。 「そんなサイさんの裸なんか見たら私またコンプレックスが刺激されて・・・・。」 「わーーーー綺麗!!見て先生!!浴槽が猫足になってる!!可愛いーーー!!」 エリスのぼやきなど耳に入らないサイは白と金で統一された小奇麗なバスルームに感激しきりである。そんな女性陣の騒ぎをよそにシーナとアールは応接のソファに陣取りくつろいだ。応接のテーブルには茶を入れるセットが置いてありさっそくシーナは片手で器用に茶をいれ一服決め込んだ。やがてバスルームからはシャワーの水音とともに賑やかにはしゃぐエリスとサイの声が聞こえてきた。 「気持ちいい〜〜〜まさに天国!!あ、先生私髪洗ってあげようか?」 「それくらい自分でできるわよ。サイさんこそすっごく長くて大変そう。私洗ってあげる!!」 「先生ってほんと肌白いわよね〜。それにすべすべ!!」 「きゃっ!変なトコ触ったらいやだってば!!」 子供のようにはしゃぐ女性陣の賑やかな声が響きシーナは呆れて鼻をならした。その時ふと正面に座るアールの様子が目に入る。シューズを脱ごうと紐に手を掛けていたがなかなか解こうとせずただ指でもてあそびながら呆としている。心ここにあらずといった風情にシーナはニヤリと笑って呟いた。 「・・・思春期真っ只中のアール君は女性の入浴シーンを悶々と妄想するのでした、ってトコロか?」 「ばっ・・・!馬鹿!!何言ってんだよ!!んなわけあるか!!」 「焦るな照れるな、お前くらいの歳なら当たり前なんだからよ。それにしてもお前みたいに耳がいいと難儀だよな。風呂の中の音丸聞こえなんだろう?余計妄想に拍車が・・・ん?かえって得なのか?」 その瞬間アールが脱ぎかけていたシューズがシーナの顔面めがけて飛んできた。 「下世話にも程があるんだよ、エロ馬鹿!!」 「お前怪我人に対してそれなんだよ!!重り入りのシューズ顔めがけて投げるな!!」 「怪我人なら大人しくしてろ!!」 「ったく図星さされて逆上するなんてほんっとガキなんだからよ・・・」 余計なぼやきをつぶやいたシーナにもう片方のシューズが飛んでくる。 「口も閉じてろ、怪我人!!!」 そこへすっかり旅のほこりを落としてさっぱりしたエリスとサイがバスルームから出てきた。 「何してんの、あんたたち?」 「いやアールの高感度の耳で風呂場の様子を・・イテッ」 さらに余計なことを言おうとしたシーナの頭を小突いたアールはエリスのバスローブ姿に胸を高鳴らせながらもその場を誤魔化そうと慌てた。 「な・・なんでもない!!さーーーて、俺もシャワー浴びてさっぱりしてこよう!!」 その言葉にエリスは小突かれた頭をさするシーナを見て提案する。 「シーナはお風呂入れないわね。アール君、シーナの頭洗ってあげてくれる?」 「なんで俺が?」 「いや?体はあとで拭けばいいんだけど・・じゃあ私やろうか」 「先生が?い、いやいい!!俺やるよ!!ほら来いシーナ!風呂はいるぜ!!」 首元をつかまれて引き摺られていくシーナは嫌な予感がしたがそれは予感だけでは済まされなかった。案の定アールは先ほどの仕返しとばかりに熱湯のシャワーをシーナの頭に浴びせかけた。 「お前!!さっきの仕返しのつもりかよ!!熱いじゃねえか!!」 「あれー?間違えたか??何せ俺こんなバスルーム使うの初めてだからなーーー」 「今度は冷たすぎるんだよ!!お前絶対わざとやってるだろう!!!」 「心外だよなー」 男性陣の騒ぎはやはり部屋でくつろぐエリスとサイにも聞こえてきた。 「男って馬鹿よねーー。子供みたい」 「包帯濡らさなきゃいいんだけど・・・」 風呂から上がったシーナとアールはテーブルの上の豪華な食事に驚いた。エリスは四人でくつろげるようにルームサービスを奮発していたのだ。それにはシーナが部屋で安静にしていたほうがいいという心遣いも含まれている。喜ぶ護衛たちの姿を見るにつけエリスも心の底から喜んだ。
港のホテルだけあって魚介類の料理は絶品でサイはしきりに味を確かめながらどうやって調理しているのか想像しながら舌鼓を打った。その他肉料理や温野菜のオードブルなど、どれをとっても奥深く味わい深い。ことさら旨いと喜ぶ護衛たちとエリスは久し振りの穏やかな食事に満足した。 その後特にすることもなくなった一行はゆっくり疲れを癒そうと思い思いにベッドに横になる。まだ夕方を少し回っただけで早い気もしたがエリスは部屋の電気を消した。やがて外の空は夕闇から夜の帳へとゆっくり移行する。外の街灯と海の上に浮ぶ船の明かり、そして遠く水平線の上をちらつくかがり火だけが目に入るようになった。どうやら護衛たちはすっかり寝入ってしまったようで静かな寝息が聞こえてくる。エリスは窓の外の夜景を心ゆくまで堪能し、辛かったここまでの行程に思いを馳せた。 ここはポートフォーサイス。大陸最西端の港町。とうとう自分はここまでやってきた。目指すジェランディアはあとどのくらいなのだろうか。しかしもう何も心配することはない。ここまで来れた自分たちならきっとすぐに辿り着ける。願いが叶う国、願望国ジェランディアまであともうすぐである── |
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ストーリーとかは特にないんですが。 シチュエーションを言いますと・・・。 私は男女数人の友人たちと団地群の中の公園にいました。 すると給水塔が轟音を立てて二つに分かれていきました。 その中から出てきたのは武者姿の超巨大ロボット!! 無機質な光沢とまったく人の意思が感じられない二つの目。 その巨大ロボットが現われた時、幾人かの人々が公園に逃げてきました。 その人たちはある宗教団体に囚われていたとのこと。 彼らを探し出すために教団はロボットを発進させたとか。 団地群の中を地響きをたてて、ズシーン、ズシーンと進むロボット。 あの目に見つかったら光線で焼き殺されてしまうそう。 私たちは逃げてきた人たちと一緒に公園の遊具の影に隠れていました。 透きとおった青空の中、団地群の谷間に見え隠れするロボット。 いつあの目がこちらを向くか、心臓の音が高鳴ります。 ズシーン、ズシーン、ズシーン。 すぐ近くを通るロボットの進む振動が地面を揺らします。 見つかったら殺される。 見つかったら殺される・・・! 色がハッキリし過ぎていて、今でも思い浮かべるのは簡単です。 うなされてたかも知れないです。 私、追い詰められてる??
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皆さんは夢の中に「死者」が出てくることはありますか? 私は特に最近見る夢に頻繁に出てきます。 私の祖父母はすでに他界してます。 その祖父母がしきりと夢に登場するんですよね。 私にとって祖父母とは母方の祖父母を指していいます。 父方の祖父母については、祖父は私が乳飲み子だったころ他界したので記憶になく、 祖母はとにかく情のない悪辣な人だったので私自身は血縁者とは考えたくもありません。 その反動なのか(いや違うな)母方の祖父母は大好きでしたし、今でも好きです。 先に亡くなったのは祖父の方で胃がんでした。 大学病院に入院していて、日に日に弱って痩せていく姿は今もよく覚えてます。 私たち親族は祖父にがん告知をしていませんでしたので、きっと祖父は知らず終いだったかと。 でもきっと苦痛でしたでしょうし、無念だったと思います。 末期の頃にはすでに意識も無く、祖父が私の名前を呼んだ最後の声は今も耳に残ってます。 一方祖母の方は腎不全でした。 もともと血圧も高く、腎臓が悪化していたので人工透析をしていましたが、 入院してからはアルツハイマーがどんどん進行して行き、どんなに新鮮な血液を輸血しても笊状態でした。 しかも祖母の血液型はRH−AB型だったので、貴重な輸血用血液をこれ以上輸血してもらうのが申し訳なく、 また祖母自身もその性格から考えてもうこれ以上の延命治療は望んでいないだろうという母たち三姉妹の決断で、最後は眠るように息を引き取りました。 祖父の方は残念ながら最後を看取ることは出来ませんでしたが、祖母の方は臨終に立ち会うことが出来ました。 私の記憶に祖父母の闘病生活は鮮烈に残っているようで、それが夢にあらわれるのだと思います。 夢の中で祖父母は元気にしていますが、夢の中の私は祖父母がもうすぐ死んでしまう事を知っています。 そして祖父母と一緒にいるときの夢は独特の“におい”が付きまといます。 それは的確に表現するといわゆる闘病中に身体から出る老廃物のにおいなのですが、もっと他の言い方をすればそれは“死臭”と呼ばれるものだと思います。 一族総出で祖父母の看護をしている時散々嗅いだにおいなので祖父母=死臭になってしまったようです。 そして夢の中で祖父母の顔は見えません。 すでに死んでしまった人だからなのでしょうか。 どんなに見ようとしても何故か顔は見えないのです。 話してるし笑ってるし、車の運転までしてる祖父の顔や、辛辣なジョークが面白かった祖母の顔も見えません。 すぐ隣にいるのに。 そして鼻につく“死臭” なぜか最近こんな夢を頻繁に見ます。 私はどちらかと言うとお化けとか心霊現象とか怪奇現象などは信じません。 霊感なども信じてませんし、いわゆる「霊」というものは脳が感じさせるまやかしだと思ってます。 (ただし非科学的なものが嫌いというわけではありません) でもこんなことが続くといくら私でも「おや?」と思います。 おじいちゃん、おばあちゃん、何か私に言いたいことがあるのかな? それとも私がおじいちゃん、おばあちゃんに会いたがってるだけなのか? でも。 せっかく夢で会えてるんだからもう少し楽しい夢で会いたいものです。 ─追記─ 表現が少々不味い箇所があるかと思いますが、率直に記述しただけなので悪しからず。
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最近は眠りが浅いのかとめどなく夢を見てます。 気に入った内容や使えるネタなどは即刻「お絵かき道場」の方にてご報告・設定してます。 ですが他にもたくさん夢は見ます。 残念ながらネタにはならないものですが印象だけはやたらと強いものもあります。 今回はそんな夢をご紹介します。 読む前にこれだけはイメージしていただきたい。 それは昭和50年〜昭和60年あたりの日活映画ですね。 車の形状がまだ角々した感じでフェンダーミラーの頃。 そして男性のネクタイはやたらと太く、女性の髪は赤茶でカールが大きい。 レイバンのサングラスやサントリーのV・S・O・Pとか日産スカイライン。そんな感じの時代です。 今回は配役も決まっているので先にそれを書き出しておきましょう。 暴力団組長・・・・・・・石原裕次郎(西部警察の頃ね) 捜査二課の刑事・・・・・寺尾聡(同じく西部警察の頃) 組長の妻・・・・・・・・黒木瞳(今現在の姿でもいいかな) カストリ雑誌記者・・・・火野正平(あのまんま。軽薄そうな感じ) 組の若いチンピラ・・・・松村雄基(“不良少女と呼ばれて”の頃かな) 組長夫婦の娘・・・・・・これだけは決まってないです。6歳くらいの女の子 以下に書き出す夢物語内では以上の配役の俳優の名前をそのまま引用させていただきます。 また、整合性の無い部分もままありますが夢を忠実に再現した結果と言う事をご了承下さい。 ============================================== 以前から捜査を進めていた石原組にとうとう家宅捜査令状が出された。 捜査二課の面々は気を吐いて石原組組長邸へと車を走らせる。 一方石原組の方もいよいよ警察が動き出したことによって緊張が走る。 各々手に武器を持ち、警察の手入れを待っていた。 そこへ赤色灯を光らせけたたましくサイレンを鳴らすパトカーが大挙して押し寄せた。 石原邸の大きな屋敷の前にある車停のスペースへと乗り入れた。 と同時に屋敷内から火炎瓶や催涙弾が投げ出される。 警察と石原組の深夜の攻防がいよいよ始まった。 警察の機動隊が大きな盾を構えて突入する。その後から捜査二課の刑事たちが駆け込んだ。 屋敷内では手に拳銃やドスを振り回す石原組構成員が待ち構える。 そして二課の刑事たちと構成員の戦いが始まる。 下手に武器の使用を許されていない警察側が押される形となる。 その中で一際目を引く男がいた。二課の刑事・寺尾である。 寺尾は武器をかざして向かってくる構成員をものともせず、巧みな体術で構成員を投げ飛ばす。 その武勇を目の当たりにした石原組組長は寺尾に興味を抱く。彼と一対一で話がしてみたかった。 構成員を下がらせた石原は寺尾を離れの自室へと招く。妻の瞳もそこに呼んだ。 膝を突き合わせ対峙する石原と寺尾。そこへ瞳が茶を持って入室してきた。 運命の一瞬である。 瞳と寺尾は視線を交わしたその瞬間、恋に堕ちた。 話をすればするほど石原は寺尾を気に入った。彼の強さ。胆の座り具合、男気にほれ込んだ。 しかし石原は裏切られる。 寺尾は瞳を攫って逃亡した。 寺尾はずたずたになった警察の車の中から逃走に使えそうな車を捜す。 すると寺尾を呼ぶ声が聴こえた。 カストリ雑誌記者の火野の声である。火野は今夜の手入れの情報を事前に察知し、石原邸にいたのだ。 火野に無事な車へと呼ばれた寺尾は、娘を連れて寺尾の後を付いてきた瞳の腕を引く。 寺尾、瞳、娘の3人は火野が運転する車へと乗り込みそのまま逃走した。 怒り心頭の石原はたまたますぐ傍にいた構成員の松村を連れて追跡を開始する。 海老名、相模大野、御殿場と車を走らせる寺尾。その後をひたすら追跡する石原。 途中のパーキングエリアでは追いつかれダイナマイトまで投げつけ寺尾と瞳の乗る車を止めようとした。 しかし日野の機転と運が勝った。間一髪その場を逃れまたしても逃走と追跡が始まる。 付き合いきれないと悟った火野は途中腹ごしらえをする間に寺尾と別れた。 その時、店から出た火野が何者かに刺されて絶命する。石原の部下、松村だった。 松村は血をみて逆上し、無茶苦茶に寺尾へと斬りかかった。 簡単にあしらわれ、持っていたナイフで逆に松村の方が斬られて絶命する。 そこへ踏み込んできた石原は拳銃で寺尾を狙う。 しかし寺尾を庇った瞳が胸に銃弾を受けてその場に倒れた。娘の泣き叫ぶ声が木霊する。 怒り心頭に発した寺尾はナイフで石原に斬りかかる。絶望の淵に追いやられながらも石原が反撃する。 そして、寺尾のナイフは石原の肺を突き、石原の銃弾は寺尾の心臓を撃ち抜き2人は絶命した。 残された娘は凄惨な現場となった飲食店の経営者夫婦が保護し、その後施設へと送られる。 しかし、娘はただ石原と瞳、そして優しかった寺尾の名を呼びながら泣くだけであった。 ============================================== 以上です。 なんか昔の日活っぽい感じしませんでした?? 因みにこの夢には続きがありました。 一旦起きた後もう一度寝たとき見たんですよ。 15年後、独りぼっちになった娘は健やかに成長し、とある男性と幸せな結婚をします。 しかし運命の歯車はまたしても狂い、途中は思い出せませんが結果的にスプラッタな終わり方しました。 なんか・・・人同士が人肉を喰らいあう、気持ち悪く怖い結末だったです。 起きた時息切れしました。疲れたのと興奮していたのと恐怖で。 こんな夢は創作のネタにはなりません。 でも印象は強く、昼になった今でもありありと思い出せます。 夢ってなんでしょうね?
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雨のそぼ降る夕刻。あたりはすでに薄暗く帰宅途中の人々が足早に去ってゆく。 私はといえば勤務先の店の前で空を見上げて、黒い雲が風に流されてゆくのを見ていた。 「そろそろ始めないとね」 副店長の上田さんが私を仕事に戻るように軽く促したので、言われるまま店内へと戻った。 そうだ。 今は仕事中なのだから余計な感傷に耽っている場合ではない。 「今度の報告書のテーマに沿って成功事例を挙げなきゃいけないんでしたっけ?」 私の問いに面倒そうに頷いた上田さんは机の上に開いていたPCを覗き込んだ。 「パートミーティングの取組状況なんてテーマにしちゃったからなぁ。“上”が納得する報告にしなきゃいけないし。頼むよ」 上田さんの報告書のデータ作成の為に私はなんとしても成功事例を挙げなくてはならない。 いささか納得できる内容の物ではないが、こうした事を頼まれたり聞いたりするのは慣れていた。 私が奉職する店ではまず「結果ありき」でそれに付随して取り組みを行うのが半ば通例化していた。 今さらぼやいても仕方ない。 「じゃあまず・・・。ありきたりだけど売り場のディスプレイでも考えましょうか」 私が発注を担当するカテゴリーは“米飯”である。 米飯ケースをいかに客の目を引くディスプレイで飾り立てようか私は思案にくれた。 その時、ふと先ほどの夕方の空の風景を思い出した。 見上げた空の風景の中には、満開をとうに過ぎていくばくかの遅咲きだけが残る桜の木もあったのだ。 「上田さん、本物の桜を飾ったらどうでしょうね?」 一瞬きょとんと目を丸くした上田さんだったが、即座に賛成の意を表してくれた。 となれば早速実行である。私はバックルームから脚立を取り出し、手には鋏を持って外へ出た。 既に雨は止んでいる。 露が滴り街頭の明かりを受けてきらきらと輝く桜の枝に向けて、私は脚立に登って鋏を差し出した。 ところが下から見上げるよりも若干高い位置にある桜の枝にはわずかながら届かない。 何度か向きを変えて試したもののやはり無理である。私は店内にいる上田さんを呼んだ。 上田さんは決して背が高い人ではないが少なくとも私よりは大きい人だ。きっと彼なら届くだろう。 思ったとおり、彼は難なく数本の桜の枝を切り下で待ち構える私へと投げて寄越した。 しかも気の利いたことに、彼は木に残ったわずかばかりの花をつけた枝を選んでいた。 私の手の中には春が到来した事を確かに報せる遅咲きの桜が、冷たい雨の雫を滴らせて咲いている。 脚立から降りてきた上田さんはその桜を見ながらこう言った。 「それだけじゃなんとなく寂しいからもう少し飾れそうな花を探そうよ」 そうは言っても木の上に残った桜はもう私達の手には届かない遥か上のほうにいくつか残っているだけである。 「何も桜だけにしなくてもいいじゃない。咲いてる花なら他にまだあるよ」 すっかりその気になった上田さんは鋏を手に歩道を歩いてゆく。店の並びには垣根のある家や寺などもある。確かに彼の言うとおり探せば他に花はいくらでもありそうだ。私はすぐに彼の後を追った。 沿道には名前も知らぬ花が見事に花をつけている。可憐なもの、豪華なもの、色とりどりで美しい。 目につく花を手当たり次第に摘んでゆく上田さんは次々と私に寄越した。あっという間も無く私の両手は花で一杯になった。さらに上田さんは鋏を私に差し出して、私にも好きなものを摘めと言ってきた。 店から歩いて順々に摘んできた私達は寺の前にいる。石畳の参道の横には植え込みがあり花も咲いていた。 手に一杯の花をなんとか片手で持ち、もう一方の手だけで鋏を花の茎にあてがい切ってみた。 意外にも茎はしっかりしており、片手では容易に切れそうも無い。握力の全てをつぎ込んで思い切り鋏み切ると、茎は数本の繊維を切れ残しぐんにゃりと折れ曲がった。 仕方がないので私は鋏をポケットにしまい、折れ曲がった茎を力一杯ねじ切った。花の美しさとは対照的に醜く切れ残った繊維を垂れ提げた茎を見て私はなんとも言えない罪悪感に苛まれた── 最近やけに疲れ気味の私ですが、昨晩は微熱を発して早々に寝床に潜り込みました。 この夢はそんな状態で見た夢なのでなんだか夢とも現実ともいえない微妙な内容ですね。 でも今改めてこうして夢の内容を振り返ってみると心当たりがあったり、簡単に自己分析が可能です。 公開できる範囲で以下に自己分析を含めたこの夢の註釈をしてみたいと思います。 「副店長の上田さん」 誰だよ?(笑)今私がいる店の副店長は違う名前ですし、夢の中での見た目も違いました。ただし、夢の中で彼が言っている「報告書のための成功事例」とは本当の話です。言い出しっぺは店長で、どうして成功事例を出さなければいけないのかなどの理由もほぼ現実と合ってます。私、よっぽどイヤなんですねぇ(笑) 「桜の木」 この桜は本当にあります。店の前の車道は延々と沿道に桜が植わっています。もちろん今は葉桜です。 いやぁ、今の店に移動してきて(異動に非ず)夢に今の店を見るのは初めてかもです。遅い(笑) 「寺の植え込みの花」 実際には店のそばにお寺はありませんが、夢の中で見たお寺は今の家に引っ越す前の家の隣だったお寺でした。季節感が違うので本文中には敢えて花の名前を出しませんでしたが、夢の中で私が手折ろうとしていたのはあじさいです。この寺の花のくだりは今夢を振り返る段階で一番脳裏に残っているシーンです。 剪定用の鋏で必死に茎を切ろうとする行為は今私が現実に置かれてる状況をはっきり暗示しているようです。 「切りたいのに切れない」というもどかしさと切れた後の罪悪感。そしてこの夢の一連の作業に対する後ろめたさ。良かれと思ってしている事でも、心のどこかで「いいんだろうか?」という罪の意識。 詳しくは申せませんが今まさに現実の私が感じている事でもあります。 夢に見るほど深刻に悩んでいたとは思いたくありませんが、体と脳は正直なようです(苦笑) 最後に。 この記事のタイトル「花盗人」は「はなぬすびと」では無く「はなぬすっと」読んで下さい。夢の中で私がしていた行為は明らかに窃盗です。「はなぬすびと」なんて情緒あふれる風雅な行為では決してありませんので(笑)私はただの「ぬすっと」ですよ。 |





