ロゴスの庭園

見る人の 心ごころに任せおきて 高嶺に澄める 秋の夜の月

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李白

■遊泰山 六首其一 李白 唐代(盛唐)の詩人

四月上泰山  四月泰山(しがつたいざん)に上る
石平御道開  石平(いしたいら)かにして御道開(ぎょどうひら)く
六龍過万壑  六龍万壑(ろくりょうばんがく)を過ぎ
澗谷随蕋廻  澗谷(かんこく)随って蕋(えい)廻(かい)す
馬跡繞碧峰  馬跡碧峰(ばせきへっぽう)を繞(めぐ)り
于今満青苔  今に于(お)いて青苔(せいたい)に満ち
飛流灑絶劭  飛流絶(ひりゅうぜっ)劭(けん)に灑(そそ)ぎ
水急松声哀  水急にして松声(しょうせい)哀し

玉女四五人  玉女四五人(ぎょくじょしごにん)
飄甞下九垓  飄(ひょう)甞(よう)として九垓(きゅうがい)より下る
含笑引素手  笑(えみ)を含んで素手(そしゅ)を引(の)べ
遺我流霞盃  我に流霞(りゅうか)の盃を遺(おく)る
稽首再拝之  稽首(けいしゅ)して之を再拝(さいはい)し
自愧非仙才  自ら仙才(せんさい)に非(あらざ)るを愧(は)ず
曠然小宇宙  曠然(こうぜん)として宇宙を小とし
棄世何悠哉  世を棄(す)つる何ぞ悠(ゆう)なる哉(かな)

四月泰山に登ったが
かつて天子の登山の為に開かれた参道の敷石は平である
天子の乗る御車は多くの谷を過ぎ
谷川もそれに従って巡り巡ったであろう
馬の蹄の跡は碧の峰を巡って
今でも苔の間に残っている
瀧は高い峰から流れ落ち
水の勢いは激しく松風の音も哀しげである

玉のように美しい天女が四五人
ひらひらと天から舞い降り
笑いながら白い手を差し伸べて
私に流霞の盃を送ってくれた
頭を地面につけ再拝して頂いたが
我ながら仙人の才能が無いのを恥じずにはいられない
しかし心を広くしてみると宇宙も小さい
俗世間を捨ててみるとのんびりとした境地が開けてくる


■山中与幽人対酌 李白

両人対酌山花開  両人対酌(りょうじんたいしゃく)して山花開(さんかひら)く
一杯一杯復一杯  一杯一杯復一杯(いっぱいいっぱいまたいっぱい)
我酔欲眠卿且去  我酔いて眠らんと欲す卿且去(きみしばらくさ)る
明朝有意抱琴来  明朝意有り琴を抱いて来れ

二人合い向いて酒を飲む 傍らには山の花が咲いている
一杯、一杯、また一杯
俺は酔って眠くなった、君はひとまず帰ってくれ
明日の朝、気が向いたら琴を抱えてまた来てくれないか


■山中問答 李白

問余何意棲碧山  余に問う何の意ありてか碧山(へきざん)に棲(す)む
笑而不答心自閑  笑而(わら)って答え不(ず) 心自ら閑(かん)なり
桃花流水們然去  桃花流水(とうかりゅうすい)們(よう)然として去る
別有天地非人間  別に天地の人間(じんかん)に非ざる有り

人は尋ねる、どんなつもりで人里離れた山の中に住むのかと
私は笑って答えない 心は何処までも長閑だ
桃の花びらを浮かべて水は遠く流れてゆく
ここには俗世間とは違う世界があるのだから


■清平調詞 三首 其一

雲想衣裳花想容  雲には衣裳を想い、花には容(よう)を想う
春風払檻露華濃  春風檻(おばしま)を払って露華濃(ろかこまや)かなり
若非群玉山頭見  若(も)し群玉山頭(ぐんぎょくさんとう)を見るに非(あらず)んば
会向瑶台月下逢  会向(かならず)瑶台(ようだい)月下において逢わん

雲には楊貴妃の衣を連想し、花を見てはその姿を連想する
春風が楊貴妃のもたれる欄干に吹き、花に宿る露が艶やかに光って揺れる
美しい天女が住むという群玉山か、月の世界のうてなでなければ、
このような美しい人には逢えないだろう

※牡丹を愛でる玄宗皇帝と楊貴妃を前にして作った即興詩。

■静夜思
     
牀前看月光  牀前(しょうぜん)に月光を看る
疑是地上霜  疑うらくは是れ地上の霜か
挙頭望山月  頭(こうべ)を挙げて山月を望み
低頭思故郷  頭(こうべ)を低(た)れて故郷を思う

静かな秋の夜 寝台の下に月の光が射し込むのを見て
地上に降りた霜かと疑った
光を辿って頭(こうべ)を挙げ、山の端に懸かった月を眺めているうち
故郷の事が思い起こされ知らず知らず頭を垂れてしまう


■春夜洛城聞笛

誰家玉笛暗飛声  誰(た)が家の玉笛(ぎょくてき)か暗(あん)に声を飛ばす
散入春風満洛城  散(さん)じて春風に入りて洛城(らくじょう)に満つ
此夜曲中聞折柳  此夜曲中折柳(このよきょくちゅうせきりゅう)を聞く
何人不起故園情  何人か故園(こえん)の情を不起(おこさざる)や

何処で吹く笛だろうか 夜の闇に美しい調べを奏でているのは
それは春の夜風に吹き流されて洛陽の街の隅々にまで響き渡る
その笛の音の中に、別離を歌う折楊柳の曲を耳にした
其れを聞いて望郷の思いに駆られないものがいるだろうか


■月下独酌 宮廷詩人の頃

花間一壺酒  花間一壺(かかんいっこ)の酒
独酌無相親  独り酌(く)んで相(あ)い親しむ無し
挙杯邀明月  杯(さかずき)を挙げ明月を邀(むか)え
対影成三人  影(かげ)に対(たい)して三人と成る
月既不解飲  月既に飲(いん)を解(かい)せ不(ず)
影徒随我身  影徒(いたづら)に我が身に随(したご)う
暫伴月将影  暫く月将(と)影を伴(ともな)いて
行楽須及春  行楽須(すべから)く春に及ぶ
我歌月徘徊  我れ歌えば月徘徊(はいかい)し
我舞影凌乱  我れ舞えば影凌乱(りょうらん)す
醒時同交歓  醒時は同(とも)に交歓し
酔後各分散  酔後は各(おのおの)分散す
永結無情遊  永(なが)く無情の遊(ゆう)を結び
相期遥雲漢  相い期して雲漢(うんかん)遥(はるか)なり

花の咲く木陰に酒壺ひとつ
独り手酌で相手がいない
そこで杯をあげて昇ってくる月を招き
私の影も出てきて三人となった
月はもともと飲めないし
影はひたすら私の真似をするだけ
まあ、この月と影とを友として
心ゆくまでこの春を楽しむとしよう
私が歌えば月は舞い
私が踊れば影は乱れ動く
酒が回りきらないうちは三人で楽しみあい
酔ってしまえばそれぞれに分かれていく
いつまでもこのようなしがらみのない交友を続け
この次はあの遥かな銀河で再開するとしよう

グレイト!

■魯郡東石門送杜二甫

酔別復幾日  酔別復(すいべつま)た幾日(いくにち)ぞ
登臨○池台  登臨池台(とうりんちだい)に(あまね)し
何言石門路  何(なん)ぞ言わん石門(せきもん)の路
重有金樽開  重ねて金樽(きんそん)を開く有らんとす
秋波落泗水  秋波泗水(しゅうはしすい)に落ち
海色明徂徠  海色徂徠(かいしょくそらい)に明らかなり
飛蓬各自遠  飛蓬各自遠(ひほうかくじとお)し
且尽林中盃  且(しばら)く林中(りんちゅう)の盃(はい)を尽さん


別れを惜しんで酒に酔うことを、もう何度繰り返したことか
二人して山に登り池に臨み、各地を巡り歩いたが
今別れてしまえば再び石門で杯を交わす日はおそらくもう無いだろう
あてどなく飛ぶ蓬のようにお互い離れ離れになって仕舞うのだから
束の間でも、この林の中でおおいに飲もうではないか

李白が杜甫との別れを惜しんで送った詩。

■子夜呉歌

長安一片月  長安(ちょうあん)一片の月
万戸擣衣声  万戸(ばんこ)衣を擣(う)つの声
秋風吹不尽  秋風(しゅうふう)吹いて不尽(つきず)
総是玉関情  総(すべ)て是れ玉関(ぎょくかん)の情
何日平胡虜  何れ日にか胡虜(こりょ)を平げて
良人罷遠征  良人(りょうじん)遠征を罷(や)む


都、長安の街に光を注ぐ月一つ
都中の家々から衣を打つ音が聞こえる
秋風はやむことなく吹きつけ
其の何もかもが、玉門関に居る夫を偲ぶ妻たちの心を掻き立てる
何時になったらえびすどもを討伐して
夫は遠い戦地から帰ってくるのだろうかと


■贈汪倫

李白乗舟将欲行  李白舟に乗って将(まさ》に行かんと欲《ほっ》す
忽聞岸上踏歌声  忽(たちま》ち聞く岸上踏歌《がんじょうとうか》の声
桃花潭水深千尺  桃花潭水(とうかたんすい》深さ千尺《せんじゃく》
不及汪倫送我情  及ば不(ず》汪倫我を送るの情に

我輩李白は舟に乗って今まさに出発しようとしている
するとそのとき、岸辺で汪倫達が私を見送り足を踏み鳴らして歌う声が聞こえた
この桃花潭は千尺の深さだというが
汪倫たちの情の深さにはとても及ぶまい

※汪倫は李白が放浪中お世話になった人物。地方の豪族だそうだ。
五十代半ばの作品。

■独坐敬亭山

衆鳥高飛尽  衆鳥(しゅうちょう》高く飛んで尽き
孤雲独去閑  孤雲(こうん》独り去って閑《かん》なり
相看両不厭  相看(あいみ》て両《ふた》つながら不厭《いとわざる》は
只有敬亭山  只敬亭山(ただけいていざん》有るのみ


沢山群れていた鳥も空高く飛んで去っていき
空に浮かんでいたひとひらの離れ雲も何時しか流れ去り、あたりはひっそりと静かになった
私と見つめ合ってお互いに飽くことのないのは
ただ敬亭山だけだ

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李白ですか、いいですね。(猶興)

2007/4/3(火) 午前 9:36 kan*u*uuk*u 返信する

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コメントをありがとうございます。李白は川面に写る月を取ろうとして落っこちてしまったらしいですね。

2007/4/3(火) 午後 2:59 [ pteron ] 返信する

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わたしは 李白 に憧れています。
杜甫も立派だと思います。

漢詩道
http://members.jcom.home.ne.jp/wa-ga-ya/kansi/

2008/2/16(土) 午後 8:10 梅足 返信する

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どうも、こんばんは。コメントをありがとうございます。語るほど漢詩に詳しいわけではないのですが、私も李白は好きです。「月下独酌」には参りました。スゲエ!と。

2008/2/19(火) 午後 6:27 [ pteron ] 返信する

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月下独酌の詩グレートですね。私も大好きです。TBさせていただきます。

2008/11/25(火) 午後 6:36 [ mog*m*13 ] 返信する

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こんばんは、はじめまして。コメントとTBをありがとうございます。いい詩ですよね。後ほどこちらからもそちらへお伺いしたいと思います。

2008/11/26(水) 午前 0:00 [ pteron ] 返信する

はじめまして
投稿後、「こんな記事も…」で 訪問させて頂きました。

たくさんの漢詩 一気にすごいですね!

特に「春夜洛城聞笛」が
私が語りたかった部分を補強してくれます。

まことに勝手ではございますが、トラバさせて頂きました。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

2009/3/21(土) 午前 1:46 ことりん 返信する

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ことりんさん、ご来訪ありがとうございます。いやあ、コピペも多いですよ。訳はNHKの漢詩紀行のものそのものです。聞きながら写しました。こちらこそよろしくお願いします。

2009/3/21(土) 午後 6:46 [ pteron ] 返信する

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やはり李白に見せられていますね。李白や杜甫はさすがですね。小生もたくさんの漢詩にふれていきたいと思っています。

2009/9/10(木) 午後 11:10 [ seizan ] 返信する

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こんばんは、seizanさん、コメントをありがとうございます。漢詩はHNKの漢詩紀行でちょっと知っている程度ですが、私も数ある詩人のように風流に生きてみたいなあ、と思います。

2009/9/11(金) 午前 0:50 [ pteron ] 返信する

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