全体表示

[ リスト ]

 
 
「僕のせいでごめん」
 
 
 
イメージ 1
 
 
木曜日の診察の待合はいつもいっぱいです。
知らない人ばかりの時もあれば、同じ病の友だちがいたりします。
 
その日は、20数年前からの友だちがいました。
若い頃、長い長い入院生活をともにした友だちです。
その友だちは、いつの頃からか疎遠になっていました。
待合に彼の姿を見て、声をかけるべきか迷いました。なんとなく避けられているような気がしていたからです。でも、その日は不思議でした。彼の隣に座り、元気にしてる?と話しかけることができました。
 
彼は20数年前と同じように、今の体調や仕事のことを話してくれました。そして、ぽつりと言いました。
 
 
 
 
 
「僕のせいでごめん」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
イメージ 2
 
 
 
 
 
 
 
何のことかよくわからずに聞き返してみると、20年ほど前、私が腹膜炎をおこして緊急手術になったのは、自分がそそのかしたからだと言うのです。
 
当時の私の病状はとても悪く、腸管が米粒も通らない細さになり、腫れ上がっていることがわかっていました。医師からは「手術をするか、それが嫌なら、短くて1年、長くて5年、絶食で過ごせば治るかもしれない」と言われていました。その決断を迫られているときに、私は一切れのサンドイッチを食べてしまったのです。まさか腸管が破裂するなんて夢にも思っていません。その一切れのサンドイッチは起爆剤のようなもの。きっと水を飲んでも破裂するくらい、腸管の状態は悪かったのでしょう。食べて間もなく、私は手術室へ向かいました。
 
 
 
 
 
彼はずっと見ていたのでしょう。
 
痛みに喚く私を
手術室に連れて行かれる私を
集中治療室から帰ってこない私を
手術後も部屋から出ることのできない私を
 
 
 
 
 
彼は、その時のことを自分のせいだと言うのです。
「それくらい(食べても)大丈夫や」と言ってしまったと。
 
 
 
 
 
 
彼が話してくれなければ、私はこれから先も知らないままでした。
サンドイッチのことは自業自得。
誰のせいでもなく、私のせい。
 
 
 
 
 
イメージ 3
 
 
 
・・・
 
私の方こそごめんなさい
20年もそんな気持ちに気づかなくって、ごめんなさい
20年もそんな気持ちでいさせてしまって、ごめんなさい
 
・・・
 
 
 
 
 
 
20年間、止まっていた小さな歯車がひとつ、動き出しました。
木曜日の診察の待合には、まだ止まっている歯車があります。
それは、いつか動き出すのでしょうか。
それは、私次第なのかもしれません。
 
 
 
 
動き出した時間(とき)その1
エスペランサ 奥田良子

.
RK
RK
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
検索 検索

過去の記事一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事