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黒い春――。
いつかそんな言葉を何処かで使ったことがある。
確かに、それは本当に黒い春だったのだ。
漆黒の桜の花びらがひらひらと揺れていた。
新入生の影が妙に長かった。
胃の中に黒い液体が入っているような気がした。
世界は、その時確かに黒かった。
今、僕はそういった世界を思い出している。
なぜだろう。
やはり僕には日の光が当たる世界は似合わないのだろうか。
笑顔を見せようとしてもぎこちない。
人に安心を与えることのできない笑顔なんて何の役にも立たない。
最近、過去のことを思い出そうと試みる自分がいる。
でも、よく思い出せないのだ。
少しずつ自分を見失っている気がする。
いや、見失っているのではない、失っているのだ。
僕は言いたい。
一年前、僕が初めてここに来た時に綴ったものこそが本当の僕だと。
どこか暗くて、いつも影に支配されそうな弱い人間こそが僕なのだ。
開き直っているのではない、確かにそうなのだ。
そして、今僕はそれを失いつつある。
ぎこちない笑顔によって、あるいは単調に過ぎ行く時間によって。
外は雨降りだ。
そして、僕が本当の想いを書くのも、いつも雨降りだ。
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