おおさかはなし

ぬく〜ぅい大阪 ゆる〜ぅい大阪

全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全7ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]

[ 前のページ | 次のページ ]

 雨降りや雨上りの時は、蹄がすべる。いきなり、四つ肢をばたばたさせる。おむつをきらう赤ん坊のようだ。仲仕が鞭でしばく。起きあがろうとする馬のもがきはいたましい。毛並に疲労の色が濃い。そんな光景を立ち去らずにあくまで見て胸を痛めているのは、彼には近頃自虐めいた習慣になっていた。惻隠の情もじかに胸に落ちこむのだ。以前はちらと見て、通り過ぎていた。

 ある日、そんな風にやっとの努力で渡って行った轍の音をききながら、ほっとして欄干をはなれようとすると、一人の男が寄ってきた。貧乏たらしく薄汚い。哀れな声で、針中野まで行くにはどう行けばよいのかと、紀州訛できいた。渡辺橋から市電で阿倍野まで行き、そこから大鉄電車で――と説明しかけると、いや、歩いて行くつもりだと言う。そら、君、無茶だよ。だって、ここから針中野まで何里……あるかもわからぬ遠さにあきれていると、実は、私は和歌山の者ですが、知人を頼って西宮まで訪ねて行きましたところ、針中野というところへ移転したとかで、西宮までの電車賃はありましたが、あと一文もなく、朝から何も食べず、空腹をかかえて西宮からやっとここまで歩いてやって来ました、あと何里ぐらいありますか。半分泣き声だった。

 思わず、君、失礼だけれどこれを電車賃にしたまえと、よれよれの五十銭銭《ぜに》を男の手に握らせた。けっしてそれはあり余る金ではなかったが、惻隠の情はまだ温く尾をひいていたのだ。男はぺこぺこ頭を下げ、立ち去った。すりきれた草履の足音もない哀れな後姿だった。

 それから三日経った夕方、れいのように欄干に凭れて、汚い川水をながめていると、うしろから声をかけられた。もし、もし、ちょっとお伺いしますがのし、針中野ちうたらここから……振り向いて、あっ、君はこの間の――男は足音高く逃げて行った。その方向から荷馬車が来た。馬がいなないた。彼はもうその男のことを忘れ、びっくりしたような苦痛の表情を馬の顔に見ていた。
(昭和十六年十二月)

世の中から消え去ろうとしている小説をちょっとご紹介。
拾い読みシリーズ。どこまで続くかな。


「馬地獄」/織田作之助

東より順に大江橋、渡辺橋、田簑橋、そして船玉江橋まで来ると、橋の感じがにわかに見すぼらしい。橋のたもとに、ずり落ちたような感じに薄汚い大衆喫茶店兼飯屋がある。その地下室はもとどこかの事務所らしかったが、久しく人の姿を見うけない。それが妙に陰気くさいのだ。また、大学病院の建物も橋のたもとの附属建築物だけは、置き忘れられたようにうら淋しい。薄汚れている。入口の階段に患者が灰色にうずくまったりしている。そんなことが一層この橋の感じをしょんぼりさせているのだろう。川口界隈の煤煙にくすんだ空の色が、重くこの橋の上に垂れている。川の水も濁っている。

 ともかく、陰気だ。ひとつには、この橋を年中日に何度となく渡らねばならぬことが、さように感じさせるのだろう。橋の近くにある倉庫会社に勤めていて、朝夕の出退時間はむろん、仕事が外交ゆえ、何度も会社と訪問先の間を往復する。その都度せかせかとこの橋を渡らねばならなかった。近頃は、弓形になった橋の傾斜が苦痛でならない。疲れているのだ。一つ会社に十何年間かこつこつと勤め、しかも地位があがらず、依然として平社員のままでいる人にあり勝ちな疲労がしばしばだった。橋の上を通る男女や荷馬車を、浮かぬ顔して見ているのだ。

 近くに倉庫の多いせいか、実によく荷馬車が通る。たいていは馬の肢が折れるかと思うくらい、重い荷を積んでいるのだが、傾斜があるゆえ、馬にはこの橋が鬼門なのだ。鞭でたたかれながら弾みをつけて渡り切ろうとしても、中程に来ると、轍が空まわりする。馬はずるずる後退しそうになる。石畳の上に爪立てた蹄のうらがきらりと光って、口の泡が白い。痩せた肩に湯気が立つ。ピシ、ピシと敲かれ、悲鳴をあげ、空を噛みながら、やっと渡ることができる。それまでの苦労は実に大変だ。彼は見ていて胸が痛む。轍の音がしばらく耳を離れないのだ。

(つづく)

桂文枝師匠の追悼番組

今日は陽気に誘われて、近所の公園でしたが、梅を見に行きました。梅に鶯でなく、けたたましく啼くひよどりしかいませんでしたが、ゆ〜っくりひなたぼっこして帰ってきました。

帰宅後、NHKで桂文枝師匠の追悼番組を見ました。文枝師匠の人柄がよくでた、のんびりした番組でした。ところで、在阪各局、何をしてるんやろ。追悼番組が全然出えへんやん。

なにより、過去の名演をじっくりみさせてもらいたいもんです。「天神山」「三十石夢の通い路」「天王寺詣り」から、「稽古屋」「蛸芝居」に「船弁慶」、「たちきれ線香」それから「熊野詣」まで、いろいろ見たいなあ。

在阪局もたくさん放送財産を持ってるんやから、蔵にしまっておかんと、どんどん放送したり、DVDにしたりと一生懸命やってもらいたいもんです。市販が難しいなら有料でダウンロードさせたりとか、いろいろやりようはあるし、ニーズもあると思うんですが。

メディアとネットの融合なんてホリエモンに言われる前に、やれることはまだまだあると思います。

在阪局、しっかりやんなはれ!!

東京の「お仕事です。」に続き、大阪の定例の「お仕事です。」は、次回4月12日(火)に開かれます。

繰り返しになりますが、偶数月に根気よく続けられている落語会ですが、会場のワッハ上方7階・レッスンルームはいつも80〜90人くらいか、イスがきっちりうまり、あまり人気してしまうと私も入れんようになるのではと危惧するのですが、楽しい落語会です。

毎回、終演後、吉弥さんがエレベーターホールのところまで出てきて、お客さん一人一人に丁寧に挨拶され、サインや写真に応じたりされています。私もちょっと声をかけたりすると、「あ、いつもありがとうございます。」と爽やかに応対してくれはります。

さて、今回のゲストは、先にも紹介した笑福亭銀瓶さんです。さて、なにを聞かせてくれるんでしょうか。

今回も大入り間違いなし。早く予約しなきゃ。(平日は仕事がちゃんと終われるか、これが一番心配・・・)

「第26回桂吉弥のお仕事です。」
平成17年4月12日(火)19:00〜 大阪なんば ワッハ上方7階・レッスンルーム
木戸銭 前売1300円・当日1500円
桂吉弥「花筏」「(お楽しみ)」、笑福亭銀瓶「(お楽しみ)」、佐ん吉「商売根問」。
問い合わせ:米朝事務所

イメージ 1

昨年のNHK大河ドラマ「新選組」で一躍全国区になった桂吉弥さんの東京での落語会が明日3月22日(火)三軒茶屋で行われます。

「桂吉弥のお仕事です」は、大阪で偶数月に開かれる吉弥さん主催の勉強会ですが、毎回、吉弥さんの巧いところがしっかり楽しめるアットホームな落語会です。吉弥さんは、積極的に東京にも活動の場を広げられ、上方落語の将来を担っていく、とても頼もしい存在です。

落語は明るく華やかでテンポがいい。また、吉弥さんが神戸大学卒ということを知らなくても、見た印象、ぱっと人の気を引くところがあり、実に聡明な印象を受けます。そんな吉弥さんの大阪での落語会は、いつも20代の女性が多く、会場も本当に華やかです。

明日は、「崇徳院」と「ふぐ鍋」。これは見たいなあ。。。
助演はこれまた男前系の桂雀喜さん。
前回は、会場に三谷幸喜さんも来られていて、ひとしきりお客さんから拍手を受けていたそうですが、明日も来られるのかな?

平成17年3月22日(火)19:00 〜 三件茶屋Studio Theater Spark-1
木戸銭:2000円
桂吉弥「崇徳院」「ふぐ鍋」 桂雀喜「(お楽しみ)」

全7ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]

[ 前のページ | 次のページ ]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事