おおさかはなし

ぬく〜ぅい大阪 ゆる〜ぅい大阪

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

織田作之助「木の都」より


下駄屋の隣に薬屋があつた。薬屋の隣に風呂屋があつた。風呂屋の隣に床屋があつた。床屋の隣に仏壇屋があつた。仏壇屋の隣に桶屋があつた。桶屋の隣に標札屋があつた。標札屋の隣に……(と見て行つて、私はおやと思つた。)本屋はもうなかつたのである。


善書堂といふ本屋であつた。「少年倶楽部」や「蟻の塔」を愛読し、熱心なその投書家であつた私は、それらの雑誌の発売日が近づくと、私の応募した笑話が活字になつてゐるかどうかをたしかめるために、日に二度も三度もその本屋へ足を運んだものである。善書堂は古本や貸本も扱つてゐて、立川文庫もあつた。尋常六年生の私が国木田独歩の「正直者」や森田草平の「煤煙」や有島武郎の「カインの末裔」などを読み耽つて、危く中学校へ入り損ねたのも、ここの書棚を漁つたせゐであつた。


その善書堂が今はもうなくなつてゐるのである。主人は鼻の大きな人であつた。古本を売る時の私は、その鼻の大きさが随分気になつたものだと想ひ出しながら、今は「矢野名曲堂」といふ看板の掛つてゐるかつての善書堂の軒先に佇んでゐると、隣の標札屋の老人が、三十年一日の如く標札を書いてゐた手をやめて、じろりとこちらを見た。そのイボの多い顔に見覚えがある。私は挨拶しようと思つて近寄つて行つたが、その老人は私に気づかず、そして何思つたか眼鏡を外すと、すつと奥へひつこんでしまつた。私はすかされた想ひをもて余し、ふと矢野名曲堂へはいつて見ようと思つた。区役所へ出頭する時刻には、まだ少し間があつた。


(つづく)

4月12日(火)、大阪なんば千日前のワッハ上方レッスンルームでの「第26回桂吉弥のお仕事です。」 のこと、最終回です。


笑福亭銀瓶さんが「牛ほめ」で会場を大きく沸かせたあと、吉弥さん再登場。「第26回桂吉弥のお仕事です。」 (その1)に書きましたが、「たちぎれ線香」でのトチリを大きな笑いに変えて、「花筏」に入られました。

このネタも吉弥さんらしいテンポの良さでどんどん噺を展開していきます。

提灯屋の徳さんはひょんなことで大阪相撲の大関花筏の身代わりとなって、高砂への相撲興行を請け負うことから事件は始まります。

病気のため土俵入りだけやって、あとは飲んで食って、調子に乗って夜這いまでした提灯屋の徳さんの花筏が、千秋楽に全戦全勝の素人相撲取り 千鳥ヶ浜大五郎と一戦を交えることになってしまう。そのときの偽花筏の徳さんの苦悶と、素人千鳥ヶ浜の苦悶がうまく描かれていました。


この花筏という落語の設定は江戸時代ですが、いろいろ調べていると、大関花筏というのは実在の人物だったようですね。ただし大阪でなく、江戸で活躍したお相撲さんだったようです。


帰りエレベーターホールでお見送りしていただいた吉弥さんに、「それでも今日のたちぎれ線香、よかったよ」と声をかけたら、「もっとお稽古して、また良いところを聴いてもらいます」と言っておられました。

この落語会、本当にじっくり落語を聞ける良い会です。
次回「第27回桂吉弥のお仕事です。」は、6月14日(火)です。
(了)

全1ページ

[1]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事