ふくろう医者の診察室

健康や病気のことを縦糸に、診療室でのエピソードを横糸に。訪問ありがとうございます。

花粉の防除 朝一番がカギ  掃除と洗濯で春の変調予防

「花粉飛んでるね」「目がつらいよ」。
そんなあいさつが交わされる季節がやってきた。

――花粉症で悩む人が昔より増えた気がします
春になると原因不明の体調不良を訴える人は以前からいたが、花粉によるものだと広く認知され始めたのは2000年ごろだ。
初めて部屋干し洗剤が発売されたのは01年。
生活上の理由で外干しをしたくない人向けだったが、洗濯物に花粉がつくのを防ぐニーズが年々大きくなって来た。
日本の花粉症の8割は2〜4月に起こるスギ花粉症だが、夏のカモガヤや秋のブタクサなど花粉症を引き起こす植物は他にもある。
大気汚染などで人の粘膜は過敏になっているとも言われ、今や年間を通した問題になっている。

飛散ピーク意識
――花粉は目に見えないので厄介です
マスクで体内への取り込みを抑えても、花粉は服に付着したり、換気で部屋に入ってきたりする。
花粉の動きを想像して家事を工夫してはどうだろう。

――具体的には
掃除や洗濯は朝早い時間をうまく使うと効果的だ。
スギの花粉は約0.03ミリメートルと非常に小さく、人が動いて空気の流れが起きるだけでも舞い上がってしまい、花粉が床に降りてくるまでに約1時間かかる。
帰宅して服を脱いだ直後や、子どもがバタバタと動いている夜は効率的とは言えない。
静かな朝に床のふき掃除から始めるのがおすすめだ。
花粉の飛散量は時間によって変化する。
都市部では午前11時〜午後2時と午後5〜7時がピークとの調査結果がある。
洗濯物の生乾きやにおいを防ぐため外干しをするときは、夜から早朝のうちに干そう。
花粉はぬれた洗濯物に付着しやすいため、飛散のピーク時間にはある程度乾いているのが理想だ。
部屋の換気も同様にピーク時間を外したほうがいい。

トイレ・玄関・・・
――朝は時間が限られていて難しい人もいます
「毎日こまめ掃除」と「週末しっかり掃除」を使い分けよう。
こまめに心がけていた場所は、花粉やほこりがたまりやすい玄関やトイレだ。
特にトイレは一見汚れていなくても服の上げ下げで床に花粉がたまりやすく、盲点だ。
ぞうきんがけが面倒ならばトイレットペーパーを60センチメートルくらいに切り、トイレ用ふき取りクリーナーを数回スプレーしてさっとふき取るのもおすすめだ。
時間に余裕がある時には掃除機のかけ方を意識しよう。
花粉が引っかかりやすいフローリングの溝、畳の目に沿ってゆっくり丁寧に。
カーペットや布製のソファは掃除機ヘッドを密着させることで、繊維にからまった花粉を吸い取ることができる。

――外出時にできることはありますか
外出前に服に花粉を付着しにくくする静電気スプレーをかけると、効果がある。
かばんと服がこすれる部分やベルト回りで静電気が発生しやすいことがわかっている。
最近の建物は気密性も高くて花粉を逃がしにくい構造になっている。
建物に入る前に服についた花粉を手で落とすなどの対策は周囲への気配りにもなる。
ひとりひとりができることを心がけように。

日経新聞・夕刊 2015.2.18

<関連サイト>
家に入り込む花粉 どう防ぐ
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/189

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カフェインとりすぎないで

錠剤やエナジードリンク普及で中毒者増加 酒と同時摂取も注意
カフェインの過剰摂取による急性中毒が増えている。
カフェインは依存性があり、短時間に大量に摂取すると、めまいや過呼吸などの中毒症状が出て死に至る恐れもある。
近年は眠気覚ましや疲労回復のため、若者を中心にカフェインを含む錠剤やエナジードリンクが広まっている。
国は市民向けの勉強会を開くなどして過剰摂取への注意を呼びかけている。

2016年10月、ある大学病院の高度救命救急センターに20代の女性が急性カフェイン中毒で運ばれてきた。
女性は意識不明となり心肺停止の状態に。
救命医らが心臓マッサージや電気ショックなどの処置に当たって一命をとりとめた。
女性はその後、治療のため約2週間入院した。

心臓への刺激作用
女性は自殺目的で数時間のうちにカフェイン錠剤を200錠以上飲んでいた。
摂取量に換算すると23グラムだったという。
担当医は「服用後すぐに家族に発見されて病院に運ばれてきたため助かった。カフェインを大量に摂取した場合は一刻も早く治療することが重要だ」と説明する。
同病院では10年までの5年間に急性カフェイン中毒の患者を受け入れたことはなかったものの、11〜18年には7人が救急搬送されたという。
コーヒーやお茶、医薬品など幅広く含まれているカフェインには中枢神経系を興奮させて眠気を払う作用のほか、疲労軽減の効果もある。
ただ心臓への刺激作用もあり、短時間で1グラム以上摂取すると動悸や過呼吸、不整脈、吐き気などの中毒症状が現れ、5グラム以上が致死量とされている。
厚生労働省などによると、カフェイン濃度は粉から抽出するドリップコーヒーや顆粒を湯で溶くインスタントコーヒーでも100ミリリットル当たり60ミリグラム程度とほとんど変わらない。
紅茶やほうじ茶、ウーロン茶は同20〜30ミリグラムだ。
13年ごろから日本国内で販売が拡大したエナジードリンクや眠気覚まし用飲料では、100ミリリットル当たり300ミリグラム含む製品もある。
カフェインの取り過ぎで吐き気やめまいなど軽い症状であれば治療は薬の服用と点滴で済むが、重症の場合は体内への吸収を抑えるため、多くの物質と結合する吸着剤「活性炭」を投与したり、血液透析をしたりする必要がある。
コーヒーやお茶、エナジードリンクによる中毒例はほとんどないが、会社員や受験生らが眠気覚ましでコーヒーと併せてカフェイン錠剤を飲む人もおり、全国でも救急搬送されるケースが増えている。

若者中心に広がる
日本中毒学会が救急医療機関38施設から回答を得た調査によると、11年度から15年度の間にカフェイン中毒で救急搬送された患者は101人で、このうち3人が死亡していた。
97人が錠剤を服用し、患者の年齢の中央値は25歳だった。
13年度以降の搬送が86人で全体の85%を占めたという。
カフェイン錠剤はドラッグストアやインターネット通販で手軽に買えるため、若者を中心に広がっている。一度に大量に摂取すると死に至る危険性があることが十分に認識されていない。
1日当たりの摂取量については、「日本では個人差が大きい」などとして、明確な基準を設けていないが、中毒患者の増加を受け、国はリスクも知ってもらうため対応を強化している。
内閣府の食品安全委員会はホームページ(HP)でカフェインの影響などを解説する「ファクトシート」を公表。
17年度にはカフェインの安全性をテーマに市民向けの勉強会を東京、大阪、札幌で計4回開き、約180人が参加した。
勉強会ではコーヒーやお茶に含まれるカフェインの量や、海外で示されている適切な摂取量などを説明し、19年度にも全国での開催を計画しているという。
厚労省もHPで、いずれもカフェインを含む医薬品と飲料の併用を避ける必要があるとして、医薬品の使用方法などを記載した「添付文書」をよく読むよう呼びかけている。
このほか、カフェインを多く含む飲料と酒を同時に摂取すると、アルコールによる健康への悪影響を受けやすくなるとする米国疾病予防管理センター(CDC)の指摘も紹介している。

海外で錠剤購入規制 成人「コーヒー3杯分」推奨
海外では一部にカフェインの摂取量の推奨基準があるほか、錠剤の購入量を規制する動きもある。
カナダ保健省やドイツの研究機関は、健康な成人の1日当たりの最大摂取量として400ミリグラム(コーヒー3杯分程度)を推奨している。
子供はカフェインヘの感受性が高いとして、カナダ保健省は大人よりも摂取量を制限する基準を定めている。
 
特に注意が必要になるのは妊婦だ。
 
英国食品基準庁は2008年、カフェインを過剰摂取すると流産や胎児の発育の遅れを招く恐れがあるとして、妊婦の1日の最大摂取量を200ミリグラムにするよう求めた。
世界保健機関(WHO)も胎児への影響は確定していないとしながらも16年に妊婦の1日の摂取目安を300ミリグラムと示している。
 
一度にカフェイン錠剤を大量に飲んで死亡するケースが相次いでいることを受け、欧米の一部の国では一度に購入できる量を制限している。
 
日本では薬剤師の説明がなくても、ドラッグストアやネット通販などでカフェイン錠剤を簡単に購入できる。
医療関係者からは「一度に購入できる量を制限すべきだ」との声も上がっている。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2919.3.18

参考
1 日当たりのカフェイン摂取量の目安
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/183

<関連サイト>
カフェインの健康リスク、世界で関心 摂取量に目安も 各自で適量見極めて
https://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/43832072.html



カフェインの鎮痛効果
https://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/30838175.html

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痛み止め 伝達物質の合成や放出を妨げる

医療機関で処方されたり、ドラッグストアで購入したりして、痛み止めを使っている人も多い。
飲み薬や貼り薬など様々なタイプがある。
そもそも痛みはどのように生じ、伝わるのだろうか。
そして、薬はどうして効くのだろうか。
 
外部の刺激がなぜ痛みを起こし、どのように脳に伝わって認識されるのかが、分子レベルで理解できるようになってきた。

     □     □

例えば、ぎっくり腰の場合、歩くのが難しいほどの強い腰痛が起きる。
その原因は、背骨の関節の炎症などだ。
炎症が起きると、その刺激に対して、「受容器」と呼ばれる器官が反応する。
受容器は、熱や物理的、化学的な刺激などに反応する種類がそれぞれ決まっていて、体中にある。
 
受容器が刺激を受け取っても、すぐにそれが伝達されるわけではない。
刺激が一定以上になったとき、電気エネルギーが発生する。
そこからは、まるで駅伝でたすきをつなぐかのような展開が、体内で繰り広げられる。
 
電気信号は受容器から感覚神経を通って脊髄へ届く。
そこで次の神経へと受け継がれ、脳の中心部にある視床へ伝わる。
そこからさらに大脳の痛みを感じる部分に行き着き、初めて痛みと認識される。
 
代表的な痛み止めのアスピリンは、痛みの伝達が始まる部分の周辺で働く。
炎症が起きると、電気エネルギーの発生頻度を増やす物質が出てくるのだが、その合成を防ぐ。
このタイプの痛み止めは「NSAIDs(エヌセイズ)(非ステロイド性抗炎症薬)」と呼ばれ、ロキソニンもその一つだ。
 
ただ、NSAIDsは、胃腸や腎機能への副作用があることが知られている。
そのため、同様の仕組みで、より胃や腸の副作用が少ないように開発されたのが、「COX2阻害剤」というタイプで、セレコキシブなどの薬がそれに当たる。
 
一方で、人の体には、痛みが伝わる経路とは逆方向に、痛みを感じにくくする神経の経路も備わっている。視床から脊髄に逆戻りする経路で、ここを活性化することで痛みを抑える薬がある。
 
代表的なのがモルヒネだ。
モルヒネは、古代ギリシャやローマの時代から鎮痛剤として使われていたアヘン(オピウム)から取り出された。
現在では類似の作用を持つ合成化合物と合わせて、「オピオイド」と呼ばれている。
合成された薬には、トラマドールなどがある。

     □     □

ここまでは、けがや病気などによる「急性痛」についての話だが、何カ月も痛みが続く「慢性痛」が起きることもある。
神経の異常などが原因と考えられている。
 
その一つは、脊髄で神経伝達物質が異常に放出されることで起きる。
このため、傷や炎症が治っても、痛みが続いてしまうのだ。
プレガバリン(商品名・リリカ)は、この痛みを伝える物質が過剰に放出されるのをブロックすることで作用する。
 
また、神経の異常には、末梢神経が傷ついて過敏になっていることで痛みが続くケースもあり、こうした場合には抗うつ薬が使われることもある。
 
市販薬の痛み止めには様々な成分が含まれ、漫然とのみ続けると副作用が出る。
市販薬でも処方薬でも、副作用には十分注意が必要で、自分の薬がどんな種類か分からないなら、医師や薬剤師に尋ねてみたほうがよい。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.3.16

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肌の老化 8割が太陽光線

雨の日でも日焼け止め / メガネ着用有効
太陽光線を長期間、無防備に浴び続けることで、皮膚にシミやシワ、たるみといった症状が現れることを「光老化」と呼ぶ。
肌の老化は加齢によるものと思われがちだが、原因の8割は光老化といわれている。
つまり、光の浴び方次第で年齢を問わず肌の老化は進む。
 
太陽光線は波長の短い方から紫外線、可視光線、赤外線に大別される。
光老化に影響を及ぼすのは、紫外線のB波(UVB)とA波(UVA)、近赤外線だ。
 
皮膚は外側から角層、表皮、真皮、皮下組織で構成される。
UVBは表皮に届き、肌が赤くなったり、ヒリヒリしたりする「日焼け」を起こすほか、
シミやソバカスの元になるメラニンの生成を促す。
UVBは表皮の細胞の遺伝子を傷つける。
その修復が何らかの原因でうまくいかないと、がん細胞が生じて増殖し、皮膚がんを発症することもある。
 
UVAが届く真皮には、肌のハリや弾力のもととなる膠原繊維(コラーゲン)や弾性繊維(エラスチン)が張り巡らされている。
UVAによるダメージが蓄積すると、その構造が壊れてシワやたるみが生じる。
近赤外線が皮膚の土台である皮下組織を傷付けることで、たるみが起こることも近年分かってきた。
 
紫外線の照射量は、年間のピークは7〜8月だが、増え始めるのは3月から。
時間帯は午前10持から午後2時ごろまでが多い。
 
曇りや雨の日にも太陽光線の影響はある。
波長が長いUVAや近赤外線は通常の窓ガラスを透過するため、室内でも注意が必要だ。
皮膚の老化が気になるなら、光老化対策を日常の習慣にしたい。

太陽光線を物理的に避けるには、帽子や日傘を使う。
紫外線や近赤外線のカット効果がある衣服を着るのも対策になる。
紫外線は目にも影響を及ぼす。
紫外線カット効果があるメガネやサングラスの着用も有効。
大きめのフレームを選べば、目の周りのシミやシワ予防にもなる。

肌が露出する部位には、日焼け止めをまんべんなく塗る。
製品を選ぶ際は、UVBの防御効果を示す「SPF」と、UVAの防御効果の指標「PA」の表示を確認する。
日常生活ではSPF15、PA+で光老化の予防効果が確認されている。
 
ただ、日常的に日焼け止めを使っていれば安心とは限らない。
多くの人は適量の半分程度しか塗れていないからだ。
適量は皮膚1平方センチメートル当たり2ミリグラム。
顔の全面に塗るには500円玉を超えるくらいの量が目安だ。
日焼け止めに不慣れな人は、量が少なめでもカバーできるSPF30、PA++以上を選んだほうがよい。
比較的しっかり塗れて使用感が軽いジェルタイプがお薦めだ。
 
野外で長時間過ごすときはSPF50、PA+++以上を選ぶ。
汗をかいたり、体を拭いたりしたら塗り直す。
シミができやすい頬や顔の外側、耳の周囲、まぶたなどにはしっかり塗りたい。
老けて見られやすい手の甲や首にも忘れずに塗ること。
 
光老化は予防が可能だ。
対策はいつから始めても遅くはない。
年齢を重ねても清潔感のある肌を保ち、皮膚がんの発症を予防するためにも、日常的なケアを心がけたい。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2019.3.16

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健康寿命って何?

健康寿命って何? 支障なく日常を過ごせる期間

日本人の平均寿命が延び続けている。 
1世紀を生きるセンテナリアン(百寿者)は、昨年9月時点で約6万5700人で、46年連続で過去最多を更新している。
長生きすることに加えて、その生活の質も問われている。

人には必ず寿命がある。
 
厚生労働省の7月の発表では2016年、日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が80.98歳となり、過去最高を更新した。
 
そんななか「健康寿命」という、寿命とは違った新たな指標に関心が集まっている。
 
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活に支障がなく暮らせる「健康な期間」をいう。
3年に1回実施される国民生活基礎調査の大規模調査での質問、「現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」への回答「ある」「ない」をもとに、年齢や人口などを考慮し、算出される。
 
厚労省はこれまで2年分の健康寿命を発表している。
それによると、平均寿命と健康寿命の間には10年前後の差がある。
この「不健康な期間」をいかに短縮していくかが重要だ。
 
2010年と13年を比較すると健康寿命は女性が0.59年、男性が0.11年延びた。
同時に「不健康な期間」は女性が0.28年、男性が0.11年短くなっている。

個人が健康でいること、健康寿命を少しでも延ばすことに意識が高まっている。
健康寿命が短いと、治療や介護を要する期間が長くなり、肉体的、精神的、経済的な負担が
大きくなる。
調査方法などに様々な意見もあるが、厚労省は健康寿命の考え方を広め、自治体や企業での推進も促してきた。

総務省によると、昨年9月時点の65歳以上の高齢者は推計で3461万人、総人口に占める割合は
27.3%。
しかし、いま高齢者の定義を見直そうという新たな動きも出ている。
日本老年学会と日本老年医学会は今年1月、これまで一般的に65歳以上としてきた高齢者を「75歳以上」に引き上げる提言をした。
現代の日本の高齢者は、食生活や医療の向上などにより、医学的にも若返っているという理由からだ。
 
長寿の時代。
健康寿命という観点から、改めて健康と生き方を考える必要がありそうだ。


参考
平均寿命と健康寿命の差(2013年)
男性
平均寿命 80.21
健康寿命 71.19
差   9.02

女性
平均寿命 86.61
健康寿命 74.21
差   12.40


Q&A 「健康」とは
持病と付き合い、生活は自立 運動が大事 / 社会と関わって
Q 高齢者にとっての「健康」とは、どのようなことを指すのか。
A 生活習慣病などの慢性疾患があっても、要介護状態にならず、自由に外出でき、自立した生活が送れる状態と考えていい。
若い世代は、健診で何の異常も見つからないことが健康の目安になるが、高齢になると、全く異常がないという人は、きわめてまれだ。
持病や不調とうまく付き合いながら、生活の質を保つことが、高齢者にとっての健康の目安といえる。
 
Q 健康で長生きをする人には、どのような傾向や特微がみられか。
A 身体面、精神面、社会性の三つのカテゴリー別にみることができる。
身体面では歩行速度が、よい指標になる。
米国の研究者らによる3万4千人を対象にした2011年の調査研究では、歩行速度が速ければ速いほど、長生きをする傾向があるという結果が出ている。
また、精神面では、認知機能が落ちていないことや、うつ状態でないことも重要だ。
社会性では、仕事をしている、地域活動をしているなど、なんらかの社会的役割があることも関わってくる。
この三つのカテゴリーは、相互に影響し合っており、その上で「健康」が維持されていることがポイントだ。
 
Q 健康長寿を手に入れるために、自らができることは何だろうか。
A 全身の筋肉が衰えないよう、運動や食事に気をつけることが大切だ。
筋肉が衰えると歩く速度が落ちるし、転倒によるケガや骨折につながったり、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなったりする。
また、疲れやすくなるため、活動範囲や活動量が減り、脳も活性化しにくくなるという悪循環が生まれる。
この悪循環に陥った状態を「フレイル」と呼ぶ。
要介護の前段階を意味する言葉だ。
まずはフレイルにならないことが、健康長寿への第一歩といえるだろう。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2017.8.15

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緑内障 早期発見がかぎ

適切な点眼を 2剤同時にさせる新薬も
緑内障は病気が進むまで気づきにくく、進行を抑えるための治療が一生続く。
早く見つけて根気よく付き合うことが欠かせない。
日本緑内障学会は40歳を過ぎたら検診を受けるよう呼びかけている。

愛媛県に住む女性(35)は、20代の頃に結膜炎で眼科にかかった際に精密検査を勧められ、愛媛大病院(愛媛県東温市)を受診。
そこで緑内障と診断された。
10年近く治療を続けており、今は三つの薬を毎日点眼している。
 
そのうち一つは、2種類の薬が一度にさせる「コソプト配合点眼液」(一般名・ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩)。
配合点眼液は2018年1月に改訂された、日本緑内障学会の診療ガイドラインに盛り込まれた。
他にも大塚製薬の「ミケルナ」などがある。
 
点眼薬は一つをさすと、数分の間を空けて、別のものをさす。
配合点眼液なら2剤を一度にさせる。
女性は「目が見えないと困るので、薬はちゃんとさします。朝の時間がない時に四つの薬が三つで済むのは助かります」と話す。
 
緑内障は、眼球内部の圧力「眼圧」で、目の奥にある視神経が傷つけられ、次第に視野が欠けていく病気だ。
眼球の中の「房水」という液体がうまく排出されず、眼圧が異常に高くなって起きる場合もあるが、眼圧が正常の範囲内で発症することも多い。
 
国内には約465万人の患者がおり、40歳以上の20人に1人とされる。
子どもや若者でも発症する場合もある。日本人の失明原因の4分の1以上を占める。
 
治療は眼圧を下げて、視神経の損傷が進むのを防ぐ。
ただ、一度欠けた視野は戻らない。
病気の進行を遅らせて、視野がさらに欠けるのを防ぐ。
眼圧を下げる薬には、プロスタグランジン関連薬、交感神経β受容体遮断薬など作用によりいくつもの種類がある。
薬で眼圧が下がらないときは、手術して房水を排出しやすくすることもある。
 
患者によっては、複数の点眼薬をさすのが煩わしく、途中でやめてしまう人も少なくない。
4剤以上の目薬を長い間併用することは、現実的には難しいかもしれない。
 
薬を適切に使えるかも重要だ。
ある調査では、緑内障患者は一般の人に比べ、うまく目に点眼薬をさせない人の割合が高かった。
視野が欠けたことなどが原因とみられる。
視野が戻らないため、効果を感じにくいことも、治療の継続を難しくしている。
 
点眼補助具を使うことや家族に点眼してもらうことも一つの解決法だ。
きちんと点眼すれば、多くの場合進行を抑えることができる。
緑内障治療は患者さんにやってもらうことがすべてと言っても過言ではない。

視野欠ける前でも把握可能
緑内障の進行を防ぐのに重要なのが早く見つけることだ。
症状を自覚するのが難しいことから、専門家は40歳を過ぎたら定期的に調べるように勧めている。
 
診察では、眼圧の測定や視野の検査、眼底の観察などで病気の状態を見極める。
中でも近年、「光干渉断層計」(OCT)を活用することで、早期に発見できるようになってきた。
改訂診療ガイドラインにもその意義が解説された。
 
緑内障では視神経の損傷が始まった直後は視野は欠けない。
OCTは視野欠損は起きていないが、神経の損傷は始まっている初期の状態が把握できる。
定期的にOCT検査を受けることで、損傷の進行するスピードをつかみ、治療するか様子を見ても大丈夫かを判断するデータに活用できる。
 
一方で、診療ガイドラインでは、国内にまだ治療を受けていない患者が多数いることが指摘されている。
超高齢社会を前に、緑内障と付き合っていく人は今後ますます増える。
末期になると救うことが難しく、治療を続けることが難しい。
患者さんが早期に検査を受け、治療を続けられるかどうかが最大のかぎになる。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.3.13

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突然の腹痛や下痢どう防ぐ ストレス緩める生活習慣を

緊張感を抱える受験生に限らず、商談や面接など大事な場面に腹痛や下痢を起こす過敏性腸症候群に悩む人は多い。
原因はストレス。
予防法や治療法、とっさの対処法を知っておこう。

ストレスがかかるとおなかが痛くなり、トイレに行きたくなる・・・。
過敏性腸症候群は、内視鏡などで調べても腸に炎症や潰瘍といった異常が見られないのに、腹痛を伴う便通異常を起こす慢性の病気だ。
2008年の調査によると、国内の推定患者数は約1200万人に達する。
症状別に見ると、下痢型が29%、便秘型が24%、両方起こる混合型が47%を占める。
男性は下痢型が、女性は便秘型が多い傾向にあるという。

腹痛が起こるきっかけはストレスだ。
消化管の運動は自律神経でコントロールされている。
ストレスが原因で自律神経が乱れると便通に異常が起こり、下痢や便秘になる。
「緊張すると下痢をしやすい」という程度なら深刻に考える必要はないが、通勤時や仕事中など症状が頻繁で日常生活に支障を来すなら、内科や消化器内科を受診したほうがよい。
下痢型には腸の動きを抑えるラモセトロン(商品名イリボー)など、便秘型にはリナクロチド(同リンゼス)などが処方されることが多い。

ただし、自律神経の乱れが原因なので、単に薬だけで治る病気というわけではない。
日ごろからストレスをためないように注意し、自律神経のバランスを整える生活を心がけることが必要だ。
自律神経を安定させるには、規則正しい生活が基本。
毎日同じ時間に起き、同じ時間に食事を取り、同じ時間にベッドに入るようにしよう。
定期的に体を動かす習慣を持つのも大切だ。
体を動かす機会の少ない現代人にとって、運動は一番のストレス解消法だ。
体温が上がり、汗をかくことで自律神経のバランスが整う。
半身浴やサウナで汗をかくのもおすすめだ。

さらに、食事で食物繊維を積極的にとりたい。
特に、大麦などに含まれる水溶性食物繊維は有効。
腸内で水分を吸収して下痢を防くほか、便を軟らかくするので便秘も改善する。
下痢型の人は牛乳やアルコール、香辛料といった刺激物は控えたほうが無難だ。

過敏性腸症候群に悩む人は、神経質で完全主義な傾向が見られる。
素晴らしい成果を出そうとするあまり、必要以上のストレスを感じやすい。
常に100点を目指すのではなく、75点でいいと考えたほうがよい。
受験や試合、人前での発表など強いストレスがかかる場面は、最も症状が起こりやすくなる。
緊張をやわらげるために、時間的余裕を持って行動しよう。
時間に追われると、ストレスが一層強くなる。
試験会場など緊張が予想される場所には早めに到着し、その場の空気になじんでおく。
いざというときに備えて、トイレの場所もしっかり確認しておこう。

突然の便意が心配な人は、市販されている即効性の下痢止め薬を持ち歩くようにする。
常用すべきではないが、持っているだけでも安心感が得られ、結果的に症状が抑えられる。
電車の中や試験会場で症状が起こったときは、くれぐれも無理をしないこと。
我慢して悪化させるよりも、まずはトイレに行こう。生活リズムや食事に気を配りつつ、重要なイベントがあるときは特に、気持ちと時間にゆとりを持つことが大切だ。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2019.2.9


<関連サイト>
過敏性腸症候群(IBS)ガイドQ&A
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/ibs.html
(日本消化器病学会ガイドライン)
IBSの診断基準(ローマ郡霆燹
最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、
下記の2項目以上の特徴を示す
1)排便によって症状がやわらぐ

2)症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)

3)症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)

過敏性腸症候群 - 日本臨床内科医会
http://www.japha.jp/doc/byoki/012.pdf
(イラスト入りで分かりやすく説明されています)

過敏性腸症候群の診断の流れ
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/179

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母乳 アレルギー予防に効果なし 国、12年ぶり新指針

赤ちゃんの授乳と離乳食に関する国の指針に、母乳によるアレルギー予防効果はないことが盛り込まれることが決まった。
2007年以来、12年ぶりとなる指針改定は、母乳への過度な期待が親たちを悩ませている現状を踏まえ、授乳の支援の見直しを呼びかけている。

8日、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会で、改定案が大筋で了承された。
改定案では、卵アレルギー予防のため、離乳食の初期から卵黄を与えることも盛り込まれた。
19年度から全国の産科施設や保健師らが指導の根拠にするほか、母子手帳にも反映される。
 
現行指針は、母乳が乳幼児期のアレルギー疾患予防に一定の効果があるとの研究結果を紹介していた。
これに対し改定案は、最新の知見をもとに「予防効果はない」と明記。
粉ミルクや液体ミルクを選ぶ親の決定も尊重するべきだとし、「母親に安心感を与える支援が必要」とした。
 
母乳育児は世界保健機関(WHO)が推進し、国も後押ししている。
15年の厚労省調査で、生後3カ月では55%が母乳のみで育てている。
だが、授乳の悩みは絶えず、厚労省研究班は昨年、科学的根拠に基づく再検討を要望。
改定案には、粉ミルクを併用する混合栄養でも肥満リスクが上がらないことも記載された。
 
また、卵アレルギーを予防する離乳食に関する新たな見解も盛り込まれた。
国立成育医療研究センターによる研究などをもとに、これまでより早い離乳食の初期にあたる生後5〜6カ月から、加熱した卵黄を試すことを推奨している。
 
現在の指針では、アレルギーの原因となる食べ物を与えることを避け、遅れる傾向があることも指摘されていた。卵を与える時期も生後7〜8カ月ごろとしていた。
 
さらに、母乳育児の場合、生後半年間まで鉄やビタミンDが不足しやすいとする研究成果があることを指摘。
母親の食事で補給することも促している。
 
母乳にメリットがあるのは間違いないが、過度に期待することはできない。
混合栄養の親にはサポートが足りない現状があり、授乳不安が強く、より適切な支援が必要だ。

「授乳・離乳の支援ガイド」改定案のポイント
・生後半年間の母乳育児によるアレルギー疾患の予防効果はない
・母乳のみと混合栄養(母乳と粉ミルクを併用)では、肥満リスクに差はないため、誤解を与えないように配慮
・粉ミルク育児を選択する親の決定を尊重し、安心感を与える支援を
・母乳育児の場合、生後半年間まで鉄やビタミンDが不足しやすいとの報告もあり、母親の食事で補給が必要
・食物アレルギーの原因食品の摂取を遅らせることで、発症しやすくなる可能性。卵黄なども生後5〜6カ月から与えるよう情報提供

朝日新聞・夕刊 2019.3.8

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「白血病」ってどんな病気 急性と慢性の違いは? 「急性骨髄性白血病」について知ろう

ある女性競泳選手が白血病と診断されたことを公表した。
彼女が発症した白血病について詳細は明らかにされていない。
以下は、日本の成人で最も多い「急性骨髄性白血病」についての解説。

急性骨髄性白血病とは?
白血病は、「血液のがん」といわれている。
骨髄にある血液の工場「造血幹細胞」から、分化・成熟した血液細胞(白血球、赤血球、血小板)が作られる過程で、遺伝子に何らかの異常が起こることで細胞ががん化し、無秩序に増殖する病気だ。
白血病は病気の状態から呼び名が変わる。
未熟な細胞が増殖するのが「急性」、分化した細胞の増殖が抑制できなくなっているのが「慢性」だ。
感染症や生活習慣病のように、急性(急激に症状が始まる)から、慢性(長期間症状が持続する)に移行することはない。

さらに、細胞の種類によって「リンパ性」「骨髄性」に分けることができる。
Bリンパ球やTリンパ球になる細胞ががん化するのが「リンパ性」、リンパ球を除く、赤血球・好中球・好酸球・血小板などになる細胞ががん化するのが「骨髄性」だ。

白血病は患者さんの病気の状態と細胞の種類から、「急性骨髄性白血病」「急性リンパ性白血病」「慢性骨髄性白血病」「慢性リンパ性白血病」の4つに大別される。
日本の成人の場合、急性と慢性では急性のほうが多く、急性の白血病では約70%が骨髄性となっている。

貧血や発熱、出血傾向からの発見が多い
急性骨髄性白血病の発症率は、1万人に1人程度の割合といわれています。40代から発症率が上がり始め、60代〜70代が最も多くなっています。統計では男性のほうがやや多い傾向があります。
原因は明らかになっておらず、人での発症のリスク要因として認められているものもありません。放射線被ばくが白血病のリスクを高めると示唆されることがありますが、急性骨髄性白血病ではそのリスクは確認されていません。人から人への感染や体質の遺伝なども認められず、誰でもなり得る病気といえます。
急性骨髄性白血病では、がん化した異常な細胞(白血病細胞)が無秩序に増殖するため、正常な血液細胞が作られなくなることによる初期症状が現れるのが特徴です。例えば、正常な白血球の減少では感染による発熱、正常な赤血球の減少では貧血による動悸や息切れ、倦怠感、正常な血小板の減少ではあざや赤い点状の出血斑、鼻血、歯茎からの出血といった傾向が見られます。
そのため、のどの痛みを伴う発熱や、抜歯のあとに出血が止まらないといったケースで受診して、血液検査で異常な白血球の増加や血小板の減少、貧血などの所見が見つかり、診断に至るケースが多くなっています。
胃がんや大腸がんといった多くのがんでは、治癒するためには、早期での発見が重要です。一方、急性骨髄性白血病の場合は、診断された時点で全身の血液に白血病細胞がめぐっているため、「早期」という概念がありません。あえていえば、診断がついたときには、ほかのがんでいう「ステージIV」ということになり、直ちに治療を始める必要があります。
しかし、急性骨髄性白血病の多くは、後述する抗がん剤による治療効果が高いため、約80%は寛解(症状や検査で異常が確認できない状態)に入る可能性が期待できます。

急性骨髄性白血病の検査と診断
急性骨髄性白血病の診断で行われる主な検査は、血液検査と骨髄検査だ。
血液検査で血液細胞の異常が認められると、骨髄検査も行う。
骨髄検査では、局所麻酔をしてから腸骨(腰の骨)などに針を刺して、骨の中にある骨髄液を注射器で吸引する。
採取した骨髄液の中に含まれる細胞を、顕微鏡で詳しく調べる。
骨髄検査は診断のほか、治療開始後に治療効果を確認するためにも行われる。

急性骨髄性白血病がんの病期(ステージ)/分類
がんには進行の程度を判定する目安に「病期(ステージ)」があるが、急性骨髄性白血病では、発症時には全身の血液に白血病細胞がめぐっているため、病期分類はない。
治療方針を決定するうえでは「病型分類」があり、白血病化した細胞の系統・形態によって分類する「FAB分類」(1970年代に提唱)、さらに染色体異常や遺伝子変異などの病的因子を重視して分類する「WHO分類」(2000年代に提唱)の2つが国際的に用いられている。

近年ではWHO分類が主流になりつつあるが、詳しく記すのは難しいため、ここでは従来基本となってきたFAB分類によるM0からM7の8つの病型名とりあげる。

急性骨髄性白血病の治療
急性骨髄性白血病では、M3タイプの急性前骨髄球性白血病を除き、治療法が共通する。
第一の治療法は抗がん剤を用いた化学療法で(小児と65歳以上を除く)、「寛解導入療法」を行ったあと、「地固め療法」という2段階で治療を進めます。
遺伝子の異常のタイプなど予後が不良と考えられる要因がある場合は、寛解に入ったあとに地固め療法の一環として、造血幹細胞移植が行われる場合もある。
また、寛解から再発した場合にも、造血幹細胞移植が検討される。

【寛解導入療法】
急性骨髄性白血病と診断された場合、10の12乗個程度の白血病細胞が存在している。
これを10の9乗程度まで減少させなければ、正常な血液細胞は増えて来ない。
10の9乗程度になると、骨髄検査をしても白血病細胞が見つからなくなる「寛解」に入り、造血機能が回復します。
寛解導入療法は、抗がん剤を用いた化学療法(シタラビンとアントラサイクリン系の薬剤の組み合わせが一般的)により、白血病細胞を寛解まで劇的に減少させる治療法だ。
通常、7日間程度かけて、抗がん剤を投与する。
その後は2週間から4週間程度、治療によって減少した白血球や血小板が回復するのを待ってから、骨髄検査で寛解状態かどうかを確認する。

【地固め療法】
寛解導入療法で寛解に入っても、10の9乗個程度の白血病細胞は存在しているため、再発する可能性がある。
そこで、白血病細胞を限りなくゼロに近づけ、治癒を目指す治療法が地固め療法だ。
計算上は、1度の化学療法で10の3乗個程度の白血病細胞が減少するため、寛解(10の9乗個程度)からさらに白血病細胞を減らすためには、最低3回の化学療法を行う。
1回の化学療法のあとは白血球や血小板が回復するまで間隔を空ける必要があるため、すべての治療を終えるまでには半年程度かかる。
地固め療法が終了したあとは、毎月1度など定期的に外来を受診し、血液検査で経過を観察していく。

治療効果は、骨髄中の白血病細胞の数から判定する。
急性骨髄性白血病の治療では、白血病細胞の数が10の9乗を下回った場合を「寛解」と呼びぶ。
ところが、寛解と判断された後でも、再びがん細胞が現れることがあり、これは再発・再燃と呼ばれる。
再発するケースのほとんどは2年以内に見られるため、寛解から5年ほど経てば、治癒したとみなされる。

完全寛解
骨髄の中の白血病細胞がほぼ減少し(10の9乗未満)、造血機能も回復した状態。体内には白血病細胞が残っている可能性がある。

血液学的完全寛解
骨髄の中の白血病細胞が顕微鏡検査で目視できず、血液検査で白血球・赤血球・血小板の数が正常範囲内にある状態。
体内には白血病細胞が残っている可能性がある。

分子学的完全寛解
白血病細胞が持つ染色体異常(遺伝子変異)を目安にして、より精密に検査をしても白血病細胞が見つからない状態。
この状態でもなお、体内には白血病細胞が残っている可能性がある。

【抗がん剤による副作用】
急性骨髄性白血病の化学療法では、強力な抗がん剤で一気に白血病細胞を減少させるため、脱毛、吐き気や嘔吐、口内炎、下痢といった副作用が生じる。
しかし、かつては多くの患者さんが吐き気や嘔吐を訴えていたものの、制吐剤などにより、苦痛を軽減できるようになっている。

【造血幹細胞移植】
造血幹細胞移植は、通常の化学療法よりも大量の抗がん剤治療や放射線治療を行うような場合に検討される。
そのような場合には、白血病細胞を限りなくゼロに近づける一方で、正常な血液細胞も死滅し、血液が作れなくなってしまう。
そこで、正常な造血幹細胞を移植して、造血機能を回復させるのだ。
造血幹細胞移植には骨髄移植、末梢血幹細胞移植、さい帯血移植があり、移植する造血幹細胞の提供者(ドナー)は自分自身、兄弟姉妹などの血縁者、骨髄バンクなどに登録している非血縁者となる。
造血幹細胞移植の適応は、病型や染色体異常、全身状態、ドナーの有無などを考慮して決定される。

急性骨髄性白血病の病後の経過
急性骨髄性白血病は、抗がん剤による治療効果が高く、治癒も期待できる。
全体での寛解率は約80%程度となっている。
寛解導入療法、地固め療法を終えた人の5年無病生存率(5年間病気が確認されない状態で生存している確率)は約20〜40%だ。
また、再発しても、その後の抗がん剤治療や造血幹細胞移植によって治癒が得られる患者さんも少なくない。
2018年末には、再発や難治性の急性骨髄性白血病を対象にしたFLT3阻害薬(FLT3という遺伝子に変異を持つ人に有効な分子標的薬)が登場。
現在もいくつかの分子標的薬の開発が進んでおり、化学療法の選択肢が広がりつつある。
ただ、遺伝子の異常のタイプ、年齢が60歳以上、寛解までの治療回数が2回以上といった予後不良因子によっては、化学療法の治療効果が期待できない場合もあり、寛解率や5年無病生存率も低くなる。

【白血病における慢性・急性の意味】
「急性」未熟な状態の細胞が増えること
「慢性」分化した細胞の増殖が抑えられないこと(ただし、分化していても正常な血球と同等の機能は果たせないことが多い)

【白血病におけるリンパ性・骨髄性の意味】
「リンパ性」Bリンパ球やTリンパ球になる細胞ががん化すること
「骨髄性」リンパ球以外の赤血球・好中球・好酸球・血小板などになる細胞ががん化すること(骨髄を指しているわけではない)



<関連サイト>
急性骨髄性白血病の治療法の選び方
https://aobazuku.wordpress.com/2019/03/06/急性骨髄性白血病の治療法の選び方/

急性骨髄性白血病の病型分類
https://aobazuku.wordpress.com/2019/03/09/144/

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骨髄移植、「白血球型」が左右 多様さゆえに難しく

白血病の治療法のひとつ骨髄移植への社会の関心が高まっている。
競泳女子選手が白血病を公表したことがきっかけだ。
移植する際は白血球の型を合わせる必要があるが、血液型に比べて多様なため、適合する提供者(ドナー)を探すのは難しい。
再生医療に使うiPS細胞の備蓄事業でも、白血球型が重要な意味を持つ。
最近は、心臓病や糖尿病など病気になりやすい体質を調べる手がかりになることもわかってきた。

一般に、血液型と呼ばれるのは「赤血球の型」だ。
表面にある糖鎖と呼ぶ物質で決まり、A、B、O、AB型がある。
日本人なら、ほぼ10人に4人がA型、3人がO型、2人がB型、1人がAB型だ。
輸血する際は血液型を合わせる必要があり、間違うと赤血球が固まって壊れてしまう。

白血球の型は「HLA(ヒト主要組織適合抗原)」と呼ぶたんぱく質の遺伝子で決まる。
遺伝子は主なものだけでA、B、C、DR、DQ、DPの6つあり、遺伝子解析技術の進歩でさらに増えている。それぞれが数十〜数百種類のバリエーションを持つ。
この組み合わせで決まる白血球型は、全部で2万通り以上になるという。

HLAは両親から1組ずつ受け継いだ2セットの遺伝子でできている。
このため、白血球型は親子で違うことが多く、兄弟の間でも4分の1の確率でしか一致しない。
骨髄移植では、A、B、DRの2セット、計6種類が一致する必要がある。
確率は数百分の1〜数万分の1とされ、多くの患者がドナー探しに苦労する。

白血球型が多様なのは、ウイルスや細菌などの病原体から体を守る免疫に関係している。
免疫細胞は味方か敵かを見極めて攻撃する。
その際の目印に使っているのがHLAだ。
種類が多ければ、排除すべきウイルスや細菌などを味方と見誤る危険が小さくなる。
人類が病原体と戦って進化する中で、HLAの種類が増え、白血球型の多様性を得たと考えられている。
HLAは20世紀半ばに発見された当初は白血球だけに存在すると考えられてきたが、その後、赤血球を除くほぼ全ての細胞の表面にあるとわかった。
様々な臓器や組織の移植で、白血球型を一致させることが重要だ。合えば拒絶反応を避けられ、そうでないと免疫抑制剤を使って抑える必要が出てくる。

白血球型はiPS細胞を使う再生医療でもカギを握る。
患者の細胞から作ったiPS細胞は準備期間や費用がかさむ。
再生医療に使うため、あらかじめ他人のiPS細胞を備蓄しておく計画が進んでいる。
移植までの期間は1か月程度に短縮でき、1件あたりの治療コストも10分の1以下にできるという。
A、B、DRについて、両親から全く同じ型を受け継いでいる人がまれにいる。
つまり、HLAが2セットではなく1セットしかない。
こうした人の細胞はA、B、DRが1セットだけ一致する人に移植しても「敵」とみなされず、拒絶反応が起きにくい。

こうした特別な型のiPS細胞を75種類そろえれば、日本人全体の8割をカバーできるという。
だが探すのは大変で、まだ3割ほどしか達成できていない。
白血球型は種類の多様さから、人類の進化や移動の足跡をたどる研究でも使われた。
例えば、日本人の場合、最も遺伝的に近いのは朝鮮半島の韓国人だ。
中国のチベットや中国東北部の人たちとも関連が強い。
ゲノムの解析が主流となり、最近は使われなくなった。
だが病気に対するリスクを比べるためにも、人種間で白血球型の違いを知ることは重要だ。
リウマチや胆管炎、風邪薬の副作用も、特定の白血球型を持つ人が発症しやすい。
昼間に耐えられないほど強い眠気に襲われる「ナルコレプシー」を調べると、日本人では患者のほぼ全員が特定の白血球型を持っている。

康維持や病気のリスクを知る手がかりになるかもしれない。
研究が進めば、健康管理のために白血球型の重要性が高まるとみる。
近い将来、健康管理のために、誰もが白血球型を調べているような時代が来るのかもしれない。

白血病
血液で起こるがんの一種で、血液中の白血球が異常に増え、血液をつくる機能や病原体から身を守る免疫の働きが弱まる。
リンパ球になる細胞ががん化した場合を「リンパ性」、それ以外の血液細胞ががん化した場合を「骨髄性」という。
また、がん細胞の増殖するスピードによって急性と慢性がある。
慢性の方が症状は軽い。
 
白血病は19歳以下で発症するがんの中では最も多い。
骨髄性白血病の場合、急性の患者は10万に2〜3人、慢性は10万人に1人といわれる。
抗がん剤や骨髄移植などの治療法があり、白血病の種類によっては9割以上の患者が治癒する。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2019.3.8

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