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高い薬、公的負担いくらまで? 費用対効果、悩ましい線引き

医療にコストパフォーマンスを求める・・・。
その議論は、費用対効果の低い薬の値下げだけでなく、保険の対象から外そうという方向にもつながる。

費用対効果悩ましい線引き 月400万円「自己負担困る」
妻と5歳の息子がいる千葉県の男性(40)は5年前に肺がんが見つかり、昨年末に髄膜に転移した。
余命半年ともされていたが、がん治療薬のオプジーボを月2回投薬すると、がんは急速に小さくなった。
 
オプジーボは当初、月約400万円かかったが、医療費の自己負担には制度上の上限がある。
男性が加入する健康保険からの付加給付もあり、実際に支払ったのは月2万5千円だった。
男性は「新薬に命を助けられた」と語る一方、高額な費用に複雑な思いだ。
  
「このままでは医療保険財政がもたないかもしれないが、高い薬が自己負担となるのも困る」
 
新薬の値段は開発費や製造費を考慮し、国が公定価格として決める。
2014〜15年にはオプジーボのほか乳がん治療薬のカドサイラやC型肝炎治療薬のソバルディなど開発費の高い薬が相次いで発売された。
 
発売後に患者の対象が広がったオプジーボは高すぎると批判を受け、今年2月に緊急で半額になった。
ただ、値下げは企業の開発意欲をそぐ懸念もある。
 
14年度の薬剤費は約9兆円で、医療費全体(約41兆円)の約2割。
15年度には高齢化による影響を除く医療費が前年度比で2.7%伸び、その半分の1.4%分は薬剤費が押し上げた。
 
首相官邸で5月に聞かれた政府の経済財政諮問会議。
経済人や学者らによる民間議員が、「国民皆保険の持続性を確保するため、医薬品をより効率的・効果的に使用していく必要がある」と指摘し、「日本版NICE(国立医療技術評価機構)」の新設を求めた。
私的コメント
「経済人や学者らによる民間議員」?
 
英国のNICEは、費用対効果の低い薬を公的医療の対象外とする。
当時の塩崎恭久厚生労働相は「ぜひ考えたい」と応じ、6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」には「本年中に結論を得る」と明記された。
 
制度づくりは、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会の専門部会で進む。
まず費用対効果に基づき薬を値下げする仕組みを設けるため、近く国民3千人以上を対象に意識調査を実施。
「完全な健康状態で1年間生存することを可能とする医薬品・医療機器等の費用」をどこまで公的保険で賄うべきか聞き、設定する基準に反映させる。
 
7月の専門部会では「国民の多くは、公的保険財政の厳しさも薬剤費の自己負担割合も十分に理解していない。そんな中で答えた結果で基準をつくっていいのか」との異論が出た。
医療にコストパフォーマンスを考慮するのは初めてのことで、模索が続く。

延命1年700万円英国の基準 126件で公費使用認めず
本家・英国のNICEは7月19日付で、カドサイラを引き続き公的医療として使えると認めた。
転移性の乳がんを患う英ロンドン在住のFさん(49)は「多くの乳がん患者が救われます」と安堵した。

英国の医療費は、ほぼ税金で賄われる。
治療代は原則無料で、処方された薬の自己負担は1種類あたり1千円程度まで。
代わりに公費で使える薬には制約があり、NICEが費用対効果などをもとに判断する。
 
カドサイラは既存の薬より平均6ヵ月ほど延命効果があるが、標準的な治療で9万ポンド(約1300万円)ほどになる。
終末期患者向けの薬なら1年の延命に約5万ポンド(約700万円)まで認められるが、その基準すら大きく上回るコストがかかる。
 
NICEは昨年12月、公的医療としての使用継続を認めない仮決定を出した。
公的医療の対象外となれば、患者が使うのは難しくなる。
Rさんらが所属する患者団体は使用継続を求める署名活動を行い、11万5898人分を提出。
製薬会社も値下げに踏み切り、NICEは使用の継続を認めた。
 
設立された1999年から今年5月までにNICEは680件を評価し、2割近い126件について公費での使用を認めなかった。
使用を制限された中には、日本でも保険適用が認められている抗がん剤のアバスチンやアービタックスも含まれる。
NICE最高責任者のA氏は「透明で一貫性があり、証拠に基づく判断をしている」。
 
抗がん剤は終末期の患者の命を少しずつ延ばす薬も多く、費用対効果は低くなりがちだ。
英国政府は、通常予算と別枠で使用を認める「キヤンサー・ドラッグ・ファンド(CDF)」という枠組みも設けた。
しかし利用者が増え、昨年から適用できる期間を2年に限定。
値下げしたうえで、より高い効果を証明するなどしなければ、薬の使用継続は認められない。
 
CDFのP会長は言う。
「ケーキの大きさ(使える医療費の総額)は決まっている。抗がん剤にもっとお金を使うなら、他に使うお金を減らさないといけない」
 
英国では、14年の国内総生産(GDP)に対する保健医療支出は9.9%だった。
米国の16.6%や日本の11.4%より低い水準を維持している。

東京大のI特任准教授(医薬政策学)は「日本では『人命は地球より重い』『医療にお金の話を持ち込むべきでない』といった意見が強かったが、薬もお金と効き目のバランスを考えないといけない時代になった」と指摘する。

朝日新聞・朝 2017.8.25

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オーダーメード検診

オーダーメード検診の成果は

昨年10月、東京都八王子市が、大腸がん検診の医療費削減効果を指標にして「成果報酬型官民連携モデル」を導入した。

八王子市の取組みは、前年度に市の大腸がん検診を受診しなかった住民の受診率を向上させることを目的にしている。
市と契約した民間のシンクタンクが人工知能(AI)を活用して1200人を抽出し、受診勧奨通知を送付する。通常、自治体が送るリーフレットやハガキなどの勧奨通知の内容は、さまざまな工夫が盛り込まれているとしても、対象者を問わずすべて同じだ。
 
しかし、今回の送付対象は、受診意欲が低いと思われる「手強い」相手だ。
そこで、対象者が過去に受診した健康診断の問診項目を分析し、喫煙、飲酒、運動不足、肥満といった大腸がんの発血リスクを洗い出した。
一人一人のリスクを伝えながら検診の受診を勧める「オーダーメード型受診勧奨」を実施した。
 
その結果、約3200人が受診し、10%増が目標だった受診率は18%増を達成した。
自分のリスクをズバリと指摘されると、人は行動を変えることがわかった。
 
八王子市の大腸がん検診で、がんが発見される確率は受診者全体の約0.3%ということから、今回の取組みでは約10人からがんが見つかる計算になる。

市の分析によると、大腸がん検診を受診し、早期で見つかった人の医療費は、約65万円、検診を受けずに大腸がんと診断された人の医療費は約250万円。
この10人が旱期がんであると仮定すると、八王子市では、約1800万円の医療費削減効果があったことになる。
 
今回の成果指標は、受診率の10%増を目標上限値として、約240万円が最大支払額となっていた。
八王子市ではその全額を支払ったが、それをはるかに上回る医療費削減効果があったことになる。
 
八王子市では、さらに大腸がんの疑いがあると判定された人に、きちんと精密検査を受けてもらう取組みにもこの成果報酬型官民連携モデルを導入している。   

執筆
東京大学病院・中川 恵一准教授

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2019.6.19

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胃がん手術、負担少なく 小さな傷で短時間、ロボも活用

年間約13万人が発症する胃がんは、大腸がんに次いで患者数が多い。
早期であれば内視鏡で治療でき、5年生存率は100%に近い水準にある。
傷口が小さく回復も早い腹腔鏡手術とともに、2018年に保険適用された手術支援ロボットを積極的に活用するなど治療の選択肢が広がっている。

胃がんは胃壁の内側にある粘膜の細胞ががん細胞となり、徐々に壁の外側へと進行する。
早期がんの治療は内祝鏡で患部の粘膜を切り取る方法が普及。
粘膜層にがん細胞がとどまり、リンパ節転移する可能性が極めて低い患者が対象で、開腹せずに胃を残せるため、体への負担が少ない。
 
手法は現在主流となっている電気メスで粘膜下層から腫瘍を剥離する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)のほか、腫瘍の下に生理食塩水を注入し、ワイヤを引っかけて高周波電流で焼き切る内視鏡的粘膜切除術(EMR)がある。
 
ESDは診断範囲を確実に切除でき、取り残しが少ない。
早い場合で1時間以内で済み、一般的に患者負担も開腹手術の半額以下が相場だ。
 
学会のガイドラインはESDを主に2センチ以下のがんが対象と位置づけていたが18年1月の改訂では適応が拡大。
浅い粘膜で、分化型のがんと判断すれば5センチ程度でも実施する病院もある。
進行度合いは大きさより深さが示すためだ。
適応拡大には、習熟度の高い医師が多くなったことが影響している。
 
転移する可能性がある場合は胃の切除手術が必要になる。
胃の切除範囲を最小限にとどめるため、がんの広がりを手術中に把握する「センチネルリンパ節生検」という検査法の臨床応用が期待されている。

現在の標準治療は開腹手術のみだが、早期がん治療で普及するのが、腹部から細長い器具を挿入する腹腔鏡手術だ。
切除範囲は開腹と変わらないが腹部の傷は少なく、出血量も50ccと4分の1以下。
術後の痛みが少なく、回復が早いのも利点だ。
 
例えば、がん研有明病院では17年の腹腔鏡手術が348例で、開腹手術の2倍。
喫緊の課題として高齢化があり、体への負担が少ない腹腔鏡手術が広がっている。
18年改訂のガイドラインも早期胃がんには「日常診療の選択肢となりうる」としている。
 
腹腔鏡手術では手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使うケースも増えている。
4本のロボットアームがついた本体を、少し離れた位置にある機器から医師が操作する。手ぶれ補正や高機能カメラなどの機能で、ミリ単位で繊細に動く。
 
18年4月には保険適用が拡大し、胃がんなども対象となった。
県立静岡がんセンターは、180例の胃がんの腹腔鏡手術のうち50例でダヴィンチを使用。手術費用の患者負担は通常の腹腔鏡手術と変わらない。
 
ただ、自分の手足のように扱えるまで100例ほどの実績が必要となる。
当然のことだが、医師によって技量に差がある。
メーカーによると全国で約350台導入、扱える医師も増えつつある。
 
完治が難しい患者の苦痛の軽減や、がんの進行を抑えるためには、抗がん剤による化学療法が用いられる。
主人の抗がん剤「S-1」や点滴で投与する「シスプラチン」などを状態によって組み合わせる。
 
効率的な投与方法についての研究も進んでおり、最近では、抗がん剤治療でがんを縮小させた後に手術を実施する「コンバージョン手術」が注目されている。

最も進行したステージ4でも、抗がん剤治療後に手術が可能となり、根治した患者さんも複数いる。

*外科・内科合同オペ「LECS」 将来の応用・普及に期待
今後に向け、新たな胃がん手術の選択肢として期待されるのが、外科医と内科医が協力して行う「腹腔鏡・内視鏡合同手術」だ。
局所的な患部の切除が可能な同手術は、英単語の頭文字をつなげてLECS(レックス)と呼ばれる。
 
現在は、主に胃の粘膜の下にできる消化管間質腫瘍(ジスト)に対して実施されている。
 
外科医と内科医が協力する同手術は2006年、がん研有明病院の医師だった比企直樹氏(現北里大教授)が考案。
がん研有明病院などで、内視鏡での治療が難しい胃がん患者に実施された例もあるが、現在は標準治療ではなく、数えるほどしか実施していない。あくまで例外だ。
 
同手術は最初に内視鏡を胃の中に入れて内側から患部を確認し、切除範囲を特定する。
そのうえで腹部から入れた腹腔鏡で、胃の中と外側を同時に観察しながら切除することで、必要最低限の範囲で済む。
 
現状、患部と周りのリンパ節を少し取り徐きたい場合で、開腹と腹腔鏡の中間のような手術法がない。
将来的な胃がんの応用に向け、議論が進んでいる。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2019.6.24

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抗がん剤から心臓守る

抗がん剤から心臓守る 生存率向上も・・・副作用目立つ 欧米で対策先行、日本も急務

抗がん剤の副作用で重い心臓病に陥る患者が目立ち始め、早期発見や治療法を目指す研究が増えている。
がん治療の進展で生存率が高まり、浮上してきた新しい問題だ。
欧米では心臓病のリスクを抑えたがん治療のガイドラインを作るなど手を打っている。

日本も対策が必要という声が出ている。
抗がん剤には種類によって心臓に対する毒性のある成分を含んでいる。
投与の直後や1年以上たってからと時期はまちまちだが心臓病を起こす。
いったん傷んだ心臓は回復しにくく、他の組織への副作用に比べて患者の命に関わる恐れが強い。
早期の発見や治療法の開発が緊急の課題になっている。

徳島大学の楠瀬賢也助教と佐田政隆教授らは、超音波による心臓の撮影像などを使って心不全の兆候を早期に見つける手法を開発した。
心臓の特定部分の拍動を詳細に観察し、動きが悪くなると心不全のリスクが6倍以上に高まることを見つけた。
早い場合なら症状が本格化する2年前の時点で発見できるという。
これまでは重い心臓病である心不全の発症後に超音波による検査で診断を下していた。
対応が後手に回り、がんを治療できた患者が心不全で亡くなる事態がみられるようになった。
早期に見つけられれば投薬量を減らしたり副作用が少ない薬に切り替えたりする措置がとれる。
楠瀬助教は「生活の質を改善できるし寿命も延ばせる」と話す。

動物実験でも早期発見や治療につながりそうな成果が出ている。

神戸大学の入野康宏特命助教と杜隆嗣特命准教授は、抗がん剤を投与するとマウスの血液中で増えるアミノ酸を発見した。
心臓を守るために体内で作られたとみられ「心臓病の兆候を早期にとらえる目印になる」(入野特命助教)という。
人でも同じ現象が起きるのか、患者の協力を得て調べる計画だ。
このアミノ酸が心臓病を防ぐ作用を示すかどうかも確かめる。

また香川大学の南野哲男教授と国立循環器病研究センターの富海英研究員らは、抗がん剤の影響で血液を送り出す心臓の働きが低下するのを食い止める化合物を見つけた。
強いストレスを受けると合成されるたんぱく質がこの症状を起こすことを突き止め、化合物でこのたんぱく質を作れないようにした。
ラットに投与する実験で心臓の機能低下を防いだ。
3〜5年後に人で効果を調べる考えだ。

がんだけを攻撃する分子標的薬の普及などでがんの治療は進展し、5〜10年と生存する患者が増えてきた。新潟県立がんセンターの推計では、心臓や血管の病気を持つがん患者は2015年に国内で25万人いた。
がん患者の8%にあたる。

35〜39年には同9%にあたる31万人に増えると予想されている。
乳がんなど一部のがんでは、治療開始から10年後に心臓病などの副作用で亡くなる人数ががんで亡くなる人数を上回るとの調査もある。
対策では欧米が先行した。

米国では00年ころから心臓病の副作用を防ぎつつがんを治療する動きが出た。
その後欧米では、抗がん剤の副作用で心臓病が発症する割合などが調べられ、関連学会が副作用を防ぐがん治療の手引書を作成するなどの取り組みが続いている。

日本では18年11月にがんと心臓病の専門医が集まる日本腫瘍循環器学会が初めて開催され、連携する重要性が唱えられた。
抗がん剤によっては日本人特有の症状なども考えられる。
専門医らは患者の増加に備え現場の治療指針などを整備する必要があると考えている。

抗がん剤の副作用 
抗がん剤はがんだけでなく正常な臓器や組織も攻撃するため様々な副作用が生じる。
脱毛や下痢、口内炎は一般的で、血液中の白血球の減少で免疫力が低下したり血小板が減って出血が止まりにくくなったりする。
抗がん剤を中止するか他の種類の薬に切り替えれば症状は緩やかになる。
 
心臓病の発症は最も深刻な副作用だ。
抗がん剤の影響で心臓の筋肉の細胞内にある小器官、ミトコンドリアの働きが鈍るのが一因だ。
細胞が生きるのに必要なエネルギーを作れなくなり心筋細胞が死んでしまい、血液を送り出す心臓の働きが低下する。

参考・引用 一部改変
日経新聞・朝刊 2019.6.24

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「統計的に有意」誤解の温床で有害 ネイチャー論文波紋

薬の効果を確かめる論文や世論調査などで表れる「統計的に有意」という考え方は有害で、やめるべきだ・・・。
そんな論文が英科学誌ネイチャーに投稿され、波紋を広げている。統計的に有意かどうかはもともと、ある結果が偶然かどうかを判断する指標に過ぎないのに、それが独り歩きして判断を誤る原因になっているからだ。世界の800人以上の研究者がやめることに賛同した一方、科学的な判断や意思決定にも影響しかねないと反論も出ている。
 
副作用否定できない薬
論文は、疫学や統計学などが専門のスイスと米国の研究者3人が執筆した。抗炎症薬の副作用について、実際にあった不思議な「矛盾」を紹介している。同じ薬の副作用を調べたのに、ある試験は薬と副作用に「関係がある」とし、2年後の別の試験は「関係なし」と結論づけた。
 
なぜこのようなことが起きるのか。論文は「統計的に有意」の解釈が誤っていたからだと書く。
 
「統計的に有意」とは、ある結果が偶然とは思えないということを数学的に表現したものだ。
さいころを振って同じ目が10回連続で出た場合、偶然ではなく、さいころに仕掛けがあると考えるべきだ。
 
後者の試験は「副作用が出た人が有意に増えなかった」という結果で「薬と副作用に関係があるとは言えない」との解釈が正しい。
しかし、「副作用と関係はなかった」と誤解され、副作用が否定で
きない薬が流通し続けることになった。
 
大阪市立大の新谷歩授(医療統計学)によると、1980年代には、効果が証明されていない薬が多数流通していたという。
 
後発薬の効果に「先行薬との差があるか」を調べた試験で、「有意な差はなかった」という結果が出た。
意図的なのか誤りなのかわからないが、後発薬は先行薬と「同等
の効果がある」と解釈され、効果が証明されないまま出回ることになった。
  
「統計的に有意」な場合は解釈の間違いは起きにくいが、「有意」でない場合が鬼門だ。
参加者の少ない試験では有意な差が出ない結果が出やすいが、そうした試験の立て付けの問題なのか、実際に薬の効果に差がないのかなどはわからない。
にもかかわらず、有意でないことだけを根拠に「白か黒か」を言い切る例が多い、と論文は警告する。
3人の調べでは、生物学・医学の論文791本の51%が「有意」でない場合の解釈を誤っていたという。
 
3人は「統計的に有意という考え方をやめるべき時だ」として世界の研究者に署名を呼びかけ、50カ国以上の約800人から賛同を得た。
 
この種の誤解は長年、続いていた。
米統計学会は2016年、今回の論文と同じ趣旨の声明を発表している。

「意思決定に影響」反論も
ただ「統計的に有意」の考え方は科学の世界に深く根を下ろしている。
科学的知見を元にした意思決定ができなかったり、遅れたりする可能性もある。
 
ネイチャー誌も「意味のある議論」と題した社説で「現時点では、投稿された論文の評価で統計解析に対する考え方は変えない。
しかし3人の考えを共有することを勧める」とした。
英紙フィナンシャル・タイムズは「『統計的に有意』をやめると医療や交通規制などで誤った結論が導かれるだろう」とする投書を掲載した。
 
国立がん研究センターの後藤温・代謝疫学研究室長は、論文に署名した800人のうちの一人だ。
「統計的に有意かどうかは、ヒトの全遺伝情報を網羅的に調べて病気との関連を調べるような、何百万個もの変異から候補を絞り込む物差しとして必要」としながらも『医療の分野では、それだけで価値判断することは危険をはらむ」と指摘する。
 
大阪市立大の新谷教授は「統計的に有意かどうかで白黒をつけることは確かに便利だが、他の情報にも目を配り、総合的に判断するべきだ」と話す。

朝日新聞・朝刊 2019.6.20

関連サイト
実際あった「統計的に有意」の落とし穴
hhttps://aobazuku.wordpress.com/2019/06/21/実際あった「統計的に有意」の落とし穴/

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