愛川今生の演劇・映画世界

演劇って、ほんとうに楽しいですね。

栗原小巻論

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一九七七年、フランク・ヴェデキント『ルル』(岩淵達治訳)に出演。Luluというのは、「地霊」(Erdgeist, 1897) と「パンドラの箱」(Die Büchse der Pandora,1904) の二部作の通称。奔放な女ルルが男たちを次々と破滅させていくさまを描く。千田是也が演出、俳優座百三十三回公演。栗原小巻、永井智雄、中寛三らが出演し、全国を巡演した。小巻が出演した演劇のなかで私がもっとも気にかかるのがこの劇である。もう観ることもできないので、作品を読んでみた。原作の出版年からすると近代劇に属してよいが、きわめて社会的背景の少ない現実感の希薄な劇である。すなわち、ルルの素性はまったくわからない。それは、劇作家自身が巷の現実をそのまま描こうとする「自然主義」に反対していたからだろう。もし、本気で性道徳への挑戦を通じて秩序や制度の虚偽をあばき社会の変革をくわだてようとするのなら、ルルはもっと現実味のある社会的背景をもった人間でなければならないと私は思う。このため、この劇を不条理演劇の先駆けだと称する人もいる。しかし、私のなかでは、不条理演劇は人を次から次へと破滅に追いやるほど生や性に対する執着心はない。

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