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 山崎豊子の作品には御意見ある方も多いと思うが、僕は時間つぶしに司馬遼太郎とともに愛読している。中でも『白い巨塔』、『大地の子』そして、松本幸四郎主演でNHK大河ドラマ『山河燃ゆ』の原作となった『二つの祖国』を繰り返し読んでいる。山崎はどうして、ここまで主人公に苛酷な運命を背負わせるのだろうと思っている(財前五郎に、陸一心などなそ)。
 『二つの祖国』の主人公である天羽賢治は日系アメリカ人としてロサンゼルスに生まれ、両親の故郷である鹿児島県加治木町で教育を受けて、大東大学に進学するも恋人の父親に「移民の小倅風情が」と結婚を拒否される。
 賢治はアメリカへ帰国、邦字新聞『加州新報』記者となる。「ジャップが卑怯な騙し討ち(真珠湾攻撃)」を行ったことを主な理由として日系人収容所に移住。
 しかし、日本軍の機密文書解読のための語学兵として対日戦に参戦。戦場で日本軍に召集されていた弟と出会い、誤って拳銃で撃ってしまう。
 戦後、東京裁判のモニター(通訳言語調整官)となるが、アメリカ及び日本と祖国と信じてきた「二つの国」に忠誠度を疑われていることを悟り、東京裁判所の建物の中で自殺する。
 後書きに、山崎は記している。
 この小説は冒頭でもお断りしたように歴史的事実を再構築したフィクションであるが、主人公の原点ともいうべき人物を教えて下さったのは、元陸軍大佐町田敬二氏である。

【引用】山崎豊子『二つの祖国』新潮文庫,1986年,592ページから引用 
 当然のことながら、このモデルとなった人物のことを知りたくなる。
 様々な人に尋ねたところ、デイブ伊丹明(1911-1950)という方だということである。小説では我が侭なお嬢様育ちの妻と違って、現実の伊丹の妻は立派な方とのことである(邦字新聞は『羅府新報』という名だそうである)。
 賢治が日本の故郷・鹿児島県加治木の恩人もあるドイツ駐在の外交官の日本への暗号通信の解読も事実に近い出来ごとがあったようである。
 山崎豊子の作品がなければ、伊丹の存在は完全に忘れられることになったであろう。
 伊丹については、数件の文献と母校である鹿児島県立加治木高等学校、大東文化大学(伊丹が在校時は、前身の大東文化学院)のサイトで僅かながら知ることができる。
 なお、実際に日系アメリカ人の中にはオカダさんなど兄弟で日米両軍に分かれて戦った方たちもいたそうである。
 【文中敬称略】
 今日の独り言 自宅近くに出身大学があるのは便利だわ!
参考文献
*島村喬『実録・山河燃ゆ―日系通訳官・伊丹明の生涯』ゆまにて出版,1983年
*木梨幸三『デイブ・伊丹明の生涯―極東国際軍事裁判秘史』ぱる出版,1985年
参考サイト
大東文化大学
鹿児島県立加治木高等学校
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