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カワサキのNinja H2/H2Rのプレス向け試乗会が、カタールのロサイルサーキットで開催されました。

すでにご存知の方もいらっしゃるでしょうが、
とある記者がホームストレートで357km/hの最高速を記録したということで、
モトGPマシンを超える圧倒的なスピードに注目が集まっています。



First ride: Kawasaki Ninja H2 and H2R review | Visordown



First ride: Kawasaki Ninja H2 and H2R review

筆者: ルーク・ボウラー(by Luke Bowler)



カワサキの『Ninja H2』と『Ninja H2R』は、
私がこれまでに見てきたバイクのなかでもとびっきり怖ろしいもののひとつだ。

シャープかつアグレッシブ、H2Rにはカーボンがふんだんに使用され、
いずれのモデルもユニークな銀鏡塗装が施されている。
排気量はどちらも998ccで、なんとスーパーチャージャーを装備している。
トラック専用マシンのH2Rに至っては、これだけでは不十分だといわんばかりに、
エアロダイナミクスを重視したウイングレットを装備しているのだ。

マイル当たりの燃費を気にするような死ぬほど退屈なバイクが世にあふれるなかで、
極端にメンテナンスサイクルが短く、利便性のかけらもない、
6速で240マイル(386km/h)に達するバイクがあるのは素晴らしいことだ。






そのPR活動もバイク以上に力が入ったものだった。
毎週のようにティザー映像が公開され、ダイノマシンを粉砕するようなH2Rのサウンドも時折公開された。

これまでとは異なり、
カワサキは初心者ライダーが興味を抱くようなマフラーサウンドにおよそ興味がないことは明白だった。
プレスカンファレンスではA2リストリクター(*)に類するようなキットに関する説明は一切なく、
代わりに、強烈な加速、強力無比なパワー、他の追随を許さない試乗体験が約束された。

カワサキが我々に注意を喚起しようとするのは極めて正しいといわざるを得ない。

面白いことに、この手のローンチパーティは中年太りの男性たち、
初めてモペッドを手に入れた(盗んだ)16歳の少年のようなジャーナリストに占拠されているものだ。
ウィリーだのストッピーだのを繰り出し、タイヤをスキッドさせたりするのは楽しい。



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しかし、この記者発表会の場はいつもと様子が違った。皆一様に神経質な空気をまとっていた。
あるいはそれは、バイクに対する敬意の表れだったといえるのかもしれない。
間違いなくいえるのは、ロサイルに集まった記者たちの面持ちは極めて真剣だったということだ。

バイクの試乗をなんとか無傷で終えた今となっては、
H2Rがいかにセンセーショナルだったか言葉で説明することは難しいのだが、
カワサキがティザー映像を少しずつ公開していったように、もったいぶりながら解説していこうと思う。

H2に初めて乗ったセッションで、私が最初に気づいたことがなにか分かるだろうか?
それはステンレス製のエキゾーストから吐き出されるサウンドが極めて静かだということだ。
シートは前端が絞り込まれているためにバイクはとてもコンパクトに感じられるし、
美しい銀鏡塗装はカワサキの技術者たちが想像もしなかった点で役に立った。
興奮のあまり、私は革つなぎのジッパーを上げないまま走り出そうとしてしまったのだが、
ピットアウトの直前にそれを教えてくれたのは、燃料タンクに映る自分の姿だったのだ。



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ロサイルは、これといった特徴もなく、どのセクションもアップダウンがなく似たような作りだ。
誤解を恐れずにいえば、ロサイルの難しさは砂漠のど真ん中にあるということに尽きる。
30度を超える気温によって、各コーナーは陽炎が揺らめき、ぼんやりとしか見えない。
初めて走ったということを差し引いても、
私のラップタイムがGPライダーを驚かせるようなものではなかったことは確かだ。
しかし、私のぎくしゃくしたスロットル入力に反してH2はとても扱いやすく、
穏やかなシャシー特性をかえって強調することになった。
新しいドゥカティ1299パニガーレで曖昧なスロットル入力を行おうものなら、
バイクは前後に揺さぶられて思わずシートから尻を浮かせたくなるはずなのだが、
H2はコーナーのどの場面でも素直で許容量の高い挙動を示してくれる。

キャンディグリーンのトレリスフレームとKYBのフルアジャスタブルサスペンションは、
どのスピード域でも快適で、自信を持ってライディングすることができた。

しかし、皆が知りたがっているのは、スーパーチャージャー付きのエンジンだろう。

もし、日本に飛んで、
カワサキの技術者に『H2はZX-10Rにスーパーチャージャーを付けたようなもんでしょ?』などといえば、
平手打ちを喰らうこと請け合いだ。強烈な一撃は保証しよう。

エンジンは完全に一から製作されたもので、
スーパーチャージャーは『ガスタービン・機械カンパニー』と『航空宇宙カンパニー』による内製だ。
H2の専用設計とされたスーパーチャージャーは非常に高効率で、
冷却のために大げさなインタークーラーを必要としない。
つまり、どのスピード域でもこの強大なパワーを引き出せる。

要するに、このバイクはクッソ速い(F***ed quick)ということだ。



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ロサイルの終わりのない1,068mのホームストレートを駆け抜けながら、
なぜカワサキが試乗の舞台にこのトラックを選んだのかを理解した。
最終コーナーを立ち上がり、私は貪るように6速のギアボックスをかき上げていく。
レブリミットの14,000回転付近、
スーパーチャージャーは心地よい咆哮を発しながら音速を超える140,000回転まで回って果てる。
1秒間におよそ200リットルの空気を、H2の4気筒エンジンに送り込んでいる。

それでいて、耳障りな音がするわけでもない。
暴力的なパワーが炸裂するといった感じもなく、あくまでもスムーズに、
H2はリミッターが作動する時速186マイル(299km/h)まであっという間に到達する。

まだ126馬力の余力があるH2Rからはどんな景色が見えるのだろうと考える間もなく、
ストレートエンドで3速に入れてコーナーに進入する。
スーパーチャージャーが奏でる心地よいノイズは病みつきになりそうだ。

ブレンボのモノブロックキャリパーを一度握れば、これ以上の制動力は望むべくもないと分かるだろう。
比較的重い238kgの湿重量を持つH2ではあるが、
33度の気温のなかでハードなブレーキングを繰り返してもフェードする気配はない。

いくつかのセッションをこなしていくうちに、
私にもカワサキがなぜH2を"ハイパフォーマンスマシン"と命名したのか腑に落ちた。
といっても、H2はトラック専用車として開発されたわけではない。
かといってラップタイムを削り、ライバルとなるスーパーバイクを倒すために作られたわけでもない。
オールラウンドな性能を発揮するバイクとして設計されたのだ。

H2のハンドルバーは、ZX-10Rと比較してわずかにワイドで高い位置に取り付けられて快適になっている。
ステップ位置も移動され、リラックスした乗車姿勢を取ることができる。とても快適志向なバイクだ。
だが、それらのせいでバイクが遅いということはない。
わずかながら無骨なスロットルレスポンスによってグリップが立ち上がると、
H2はかなり驚異的なペースでトラックを周回できる。
さすがにサラブレッドのようなスーパーバイクに比べればコーナーで劣るかもしれないが、
200馬力のパワーとトルクを以ってすればストレートで圧倒できる。
ロサイルの第1ヘアピンでは2速に入れていたが、立ち上がりでフロントが浮くほどのパワーを見せた。
2速のまま引っ張り、スロットルを全開にしたままクイックシフターでギアをかき上げていく。
システムはとてもスムーズで、神経質な挙動を見せることもない。
以前、私が乗ったゲフン…B○WのR1200R…ゲフンゲフン…などとは雲泥の差だ。



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もし、H2になにか改良点があるとすればエレクトロニクスに関することだろう。
ローンチコントロール、エンジンブレーキコントロール、
9段階のトラクションコントロールなどで私がハイサイドから救われたことは確かだろうが、
リッタークラスのスーパーバイクのようなリーンアングルセンサーやコーナリングABSは装備していない。
そのトラクションコントロールにしても、他メーカーのそれより優れているとはいいがたい。
新型R1が持つ6軸姿勢センサーは、あなたが今朝なにを食べたかということまで分かってしまう。
H2にはそういった先進性はなく、同世代のバイクからは若干の遅れを感じずにはいられない。

また、クイックシフターのオートブリッピング機能もない。
つまり、シフトダウン時にリヤをロックさせたくなければ、
ライダー自らスロットルを煽って回転数を合わせてやる必要があるわけだ。
やってやれないことはないが、それを機械のように正確に行うことは難しいだろう。

ただ、大多数のライダーはこれらの内容を気にしないだろう。
実際に私はH2がもたらす素晴らしさを存分に堪能した。それらはあふれんばかりのパワー、
片持ちスイングアームから極小のボルトに至る見事なフィニッシュ、
素晴らしい精度の溶接部などに見ることができる。

オーリンズの電子制御ステアリングダンパー、
グリップに優れたシートとステップのように単純なものでさえライディングの楽しさに貢献しているし、
カワサキが生んだ過給エンジンの猛獣をコントロールするのに一役買っている。
H2のテールユニットは3段階に位置調整できるし、左右に備えられたサポートパッドのおかげで、
激しい加速のなかでも身体をしっかり固定することができる。

デジタル表示のダッシュボードは視認性が高く、ギヤポジション、速度、
トラクションコントロールの作動状況を確認することも朝飯前だ。

バイクジャーナリストの間には"ローンチ・フィーバー"という言い回しがあり、
新型が発表されると、いたずらに持ち上げてしまう傾向がある。
美しい景色のなかに広がる完璧な道で試乗するような場合はなおさらだ。
しかし、今回ばかりはそうではない。確かに、ロサイルはバイクに乗るには印象的な場所ではあるが、
H2は世界のどんなところで乗ったとしても素晴らしいバイクであろう。

さて、このあたりでH2の一つ目ヘッドライトに別れを告げ、
そろそろ皆さんお待ちかねのH2Rに関して話そう。



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さあいよいよだ、という感じでH2Rを眺める。
こいつが、これまでに公開された20ものティザー映像で公開されたカワサキの技術力を凝縮した1台であり、
それに今、私は跨っているわけだ。
あなたが賢明であるならば、エンジンに126馬力が上乗せされるのがどういうことか分かるだろう。
付け加えるなら、空力に貢献するウィング、カーボンファイバーのフロントとサイドカウル、
チタンエキゾーストなどがH2との大きな違いだ。

エンジンに火を入れる。

もしあなたが雷鳴に価値を見出すならば、H2Rのこともきっと気に入るだろう。
こいつは、これまでに乗ったバイクのなかで最も凄まじい咆哮を聞かせてくれる。
その音量はモトGPマシン(130db)を遥かに超え、
あなたがバイクのエキゾーストをスリップオンへ換装するとき、
ダウンパイプのみの状態で面白半分にエンジンをかけたときの音量よりも遥かに大きい。
そのサウンドは驚くべきものだ。



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ロサイルのストレートを駆け抜けるH2Rのサウンドをカワサキの映像チームが録音したところ、
なんと170dbもあった。これは25mの至近距離でジェット機が離陸する音より20dbもデカい。
追加費用を払えば、H2Rの音量をトラックの法定値に抑える別体式のサイレンサーを手に入れられる。

走り出せばすぐに気づくことだが、H2とのパワー差は歴然だ。
驚くことに、6,000回転未満であれば、H2のほうがトルクで勝る。
それ以上の領域だとH2には頭打ち感が出てくるのに対し、H2Rのトルクはひたすら上昇していく。

これだけの強大なパワーを持ちながら、Rのエンジンは他と変わるところがほとんどない。
よりリフト量の多いカムシャフト、H2のものとは異なるヘッドガスケット、
強力なクラッチなどが驚愕のパワーを支えている。
エンジンの内部パーツに目を向けると、インテークの構造はH2とH2Rで異なり、
H2Rが2本のカーボンファイバーで構成されるのに対し、H2はプラスチック製のものが一本あるだけだ。
当然ながらECUはカムタイミングの変化に対応する処置を受けており、
それ以外は、2台のバイクはまったく同一のものである。

スロットルレスポンスは自然吸気エンジンと同じぐらい歯切れがいいのだが、
5,000回転以下ではパッとしない。
しかし、一度ストレートでスロットルを捻ると、そんなことはどうでもよくなる。

326馬力の感想だって?
今までにこれほど怖ろしい加速を体験したことはただの一度もない。

1速から3速までの加速は凶暴以外の何物でもない。シフトアップの度にフロントは勝手に浮き上がる。
残りの3速を使って、ジャーナリストのほとんどは、
1コーナーの進入までに時速200マイル(322km/h)に達していた。

カワサキによると、十分な長さの直線があれば、H2Rは時速240マイル(386km/h)まで出るらしい。
これに関しては、まったくその通りだろう。
H2Rは時速200マイル(322km/h)の状態でも、
まるで600ccのスーパースポーツが4速で加速しているような余裕を見せていたのだ。

これはH2Rが、H2よりも22kg軽いということも関係している。
ブレーキの効きも良く、さらによく曲がり、コーナー立ち上がりのパワースライドも凄まじい。
全長距離5.3kmのロサイルで、H2のラップタイムは2分少々、H2Rはそこからさらに11秒も速かった。
熟練したライダーの手にかかれば、その差はもっと大きくなるだろう。



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ベースジャンプやフリークライミング、高高度でのスラックライン(綱渡り)はひとまず忘れて欲しい。
H2Rに乗るということは、まさに究極のスリルを味わうことだった。
326馬力を叩き出すスーパーチャージャーが織りなすキ○ガイのようなパワーを体験した喜びと同時に、
次にこいつに乗れるのはいつだろうと思うと悲しくなる。
Ninja H2Rは、おそらく私がこれまでに経験したバイクのなかで最もセンセーショナルな一台になるだろう。



(了)



*欧州の免許区分では、日本の大型自動二輪免許に相当するA免許の下に、A2免許と呼ばれる排気量無制限、出力を35kW以下に制限する区分けが存在する。欧州ではMT-07にリストリクター(出力を制限するパーツ)を装着することで、A2免許保持者でも同車両に乗ることが可能になる。

Free A2 restrictor kit with Yamaha MT-07 | Visordown



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カワサキの技術力を結集した記念碑的作品: Ninja H2/H2R | 感染帝国

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vyrus さん、先を越されたー というか、ありがとうございます。

記事冒頭の文章で、すぐにピンと来ました。このネタ元が Visordown であることが。

Visordown の記事を読み筆者の興奮が伝わり、こりゃ記事にしなきゃ、と思ったのですが、上手く翻訳できるかどうか、それにかなり時間が掛かりそうだたなーと少々悩んでました。

と、そこに vyrus さんのこの記事。ほっとしました。
やっぱり vyrus さんに翻訳してもらった方が絶対に筆者の気持ちが伝わります。
読者も多いですし。

2015/3/18(水) 午後 9:25 [ talkriver ]

ありがとうございます。そうおっしゃっていただけると翻訳した甲斐がありました。
これだけの量だと翻訳に数日かかったりするんですが、
まだ日本語のレビューが出ていないということもあって僕自身も興味がありました。
しかし、170dbってどんな音量なんでしょうね…想像もつきません。

今まで知らなかったんですが、
Visordownってすべての記事が読めるのは最初の数日間みたいですね。
翻訳が終わった途端、記事後半が見られなくなっていたので間一髪というところです。

この手の記事って傾向がありまして、コメントはほとんどもらえないんですよね。
でも、ツイッターやFacebookではかなり反応があって、数字で見えると嬉しいものです。

今後ともご期待に沿えればいいんですが…お互いに更新頑張りましょう。

2015/3/19(木) 午後 10:26 vyrus_empire


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