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(つづき) 1.川崎市水道局いじめ自殺事件 <第一審 横浜地裁川崎支判H14・6・27判時1805・105> ※訴訟関係者は仮名。 (認定事実及び推認過程) 「以上の事実関係(被告乙川及び戊谷課長においては、一郎に対する安全配慮義務を怠ったこと)」 に加えて 「精神疾患に罹患した者が自殺することはままあることであり」 しかも、 「心因反応の場合には、自殺念慮の出現する可能性が高いこと」 をも併せ考えると 「一郎に対するいじめを認識していた被告乙川及びいじめを受けた旨の一郎の訴えを聞いた戊谷課長においては、適正な措置を執らなければ、一郎が欠勤にとどまらず、精神疾患(心因反応)に罹患しており、場合によっては自殺のような重大な行動を起こすおそれがあることを予見することができたというべきである」 したがって、 「上記の措置を講じていれば、一郎が職場復帰することができ、精神疾患も回復し、自殺に至らなかったであろうと推認することができる」 (結論) 「被告乙川及び戊谷課長の安全配慮義務違反と一郎の自殺との間には相当因果関係があると認めるのが相当である」 (検討) 結論として安全配慮義務違反と自殺の間の相当因果関係を肯定した。 民法709条は因果関係を要件としており、これには事実的因果関係(条件関係)のほか、相当因果関係も含まれていると解するのが判例(富貴丸事件)および大方の学説である。理論上は民法416条の類推適用として説明される。 この民法416条は、第1に損害賠償の範囲を原則として「通常生ずべき損害」に限定し、第2に例外として「当事者が予見し又は予見しえた特別の事情によって生じた損害」に範囲を拡張する。 すなわち、ここで相当因果関係が要求されているということは、「自殺」という損害は「通常生ずべき損害」ではなく、「特別の事情によって生じた損害」であり、それを「当事者が予見し又は予見しえた」ことが要求されることを意味している。 (1)被告乙川及び戊谷課長においては、一郎に対する安全配慮義務を怠ったことに加えて、(2)「精神疾患に罹患した者が自殺することはままあることであり」、(3)「心因反応の場合には、自殺念慮の出現する可能性が高いこと」をも併せ考えて、 (A)適正な措置を執らなければ、一郎が欠勤にとどまらず、精神疾患(心因反応)に罹患しており、場合によっては自殺のような重大な行動を起こすおそれがあることを予見することができたこと を認定している。 (1)は客観的な安全配慮義務違反の事実であり、(2)と(3)は前に見たように経験則であると考えられるから、客観的な安全配慮義務違反の事実が認定されると、反対の事情がない限り、自殺についての予見可能性が認められるということになる。
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