|
ティーン・ポーン・ターン・コーン・・・・・・
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、皆はだらだらと帰る支度を始めた。
僕たちは「早くみんないなくなれ!!」と心の中で念じていた。
こんな時は担任が不動でよかったと心から思う。
不動は授業終了のチャイムと同時に教室を出て職員室に戻るからだ。
教室の鍵を閉めたり、カーテンを閉めたりは一切しない。
そういう仕事はいつも秋宗が自主的にしていた。
というよりも毎日秋宗が偽善的にそれを行っていたために暗黙の了解で秋宗の仕事となっていた。
しばらくして教室に残っているのは僕ら五人だけになった。
オシャレ加藤がそわそわとした様子で秋宗に尋ねた。
「結局今日の話はなんだったん??」
少し間を開けて秋宗は応え始めた。
「今日の話は殺人免許を取得した後の具体的な話だったな。」
「どんな感じ??」
「まず殺人免許を持ってる人は殺人を犯しても逮捕されないってこと。
でも免許を持ってる殺しのプロは元から警察に見つかるようなヘマはしないから特に意味はないらしい。
殺人免許の存在が世間に出回らないのもそのせいやねんて。」
「そうなんやぁ〜〜。俺もなんでニュースとかで殺人免許の話が出ないのかなぁって思ってたんよ。」
「あと、免許の保持者は実際に殺しをする時に胸のところに黒いプレートを付けないとあかんらしい。」
「それは何のために??」
この話に対する加藤の食いつきには僕らも少し戸惑っていた。
それは秋宗も同じだったようで一旦深呼吸をした後、また応え始めた。
「なんでも殺した人間の数だけプレートに傷をつけていくらしいよ。」
「傷・・・?適当にか・・・??」
「いゃ、そこまではわからないけど・・・。とにかく傷をつけていくって言ってた。」
「でもそんなことしてたらプレートが傷だらけになるんと違うか??」
たしかに正しい質問である。
プレートの大きさはわからないがそんなことをしていたら何枚あっても足りないのではないだろうか。
「いゃ、それは俺も気になったから聞いたんやけど・・・・・・。
なんか事件とか殺しとかが一区切りつく度にプレートは入れ替えるらしい。
一回の事件で5人ぐらい殺す場合は5人殺した段階で入れ替え・・・みたいな感じかな??」
「ふ〜〜〜ん。 ところでさぁ、なんで樹田はそんなに詳しいの??やっぱり免許持ってるの??」
僕はいまさらこの議論が始まることに呆れ返った。
どう考えても気付くのが遅すぎる。
万が一『殺人免許』が存在していたとしても、樹田のようなやつがそれを保持しているわけがないのだ。
そうなると詳しすぎる説明も逆に樹田の嘘を証明する証拠なのだ。
樹田は嘘をついている。
殺人免許なんて存在しない。
何故みんなはその解答に至らないのか。
僕には全く理解できなかった。
しかし樹田が嘘をついているという結論には至らずうやむやとなったまま、その日は解散となった。
僕はその時からみんなが樹田の催眠術にでもかかっているのではないかと疑いだした。
キーン・ポーン・キン・ポー〜〜〜〜〜〜
次の日、僕は始業のチャイムが鳴った15分後に教室に入った。
やはりそこにベアーと西田の姿はなかった。
しかしそれに加えて竹村の姿もなかったのは予想外だった。
竹村は元々病弱なやつではあるが、このタイミングでの欠席はまずい。
少なくとも僕にはまずい。
また樹田に注目が集まってしまう。
しかし僕は樹田のミスにも気付いた。
そこが樹田らしさというか、詰めの甘さといったところか・・・。
あまりにも毎日消えすぎだ。
殺しのプロがいたとしてもこのペースは早過ぎる。
こんなんじゃ信じていた人間でさえ疑い始めるかもしれない。
おそらく樹田は焦ったのだろう。
今までになくみんなが信じてくれるから。
人に信用されたことのない樹田は焦ったのだ。
今の内にゴールまで持って行かなければならないと・・・・・・。
そこで僕は思った。
樹田にとって今回のこの嘘のゴールはどこなのだろうか。
今までの嘘ならばれておしまいで済んでいた。
しかし今回ばかりはそんな単純に済みそうにない。
みんなが信じすぎてしまっている。
嘘でした許してくださいと言ってもただではすまないだろう。
しかしこんな嘘がいつまでも続くはずはない。
ベアーやバードだっていつまでも学校を休み続けることはできないのだから。
それなら樹田はどこに向かっているのか・・・。
そしてこの考えが一巡した時、僕は気がついた。
樹田は学校を去るのだ。
理由はわからないがそれほど遠くない将来転校するに違いない。
だから最後の嘘として今回の手の込んだ嘘を始めたのだ。
樹田という存在をみんなの心の中に刻み込むために・・・。
どうせ転校したあとに嘘はばれるだろうが、樹田にとってそんなことはどうでも良いのだ。
クラスの人間が減っていき最後に樹田も消える。
そしてたとえ少しの間でも樹田が謎の存在としてみんなの心に残るのだ。
今まで嘘つき呼ばわりされてきた人間としては綺麗な消え方だろう。
僕の考えには確信があった。
しかしここで僕の中に迷いが生じ始めた。
樹田の意図がわかった今、僕はどうするべきだろうか・・・。
一つは樹田の嘘をクラスのみんなにばらすこと。
たしかにみんなが樹田の話を信じ切っている今、樹田をただの嘘つき戻すのは簡単なことではない。
しかし休んでいるベアーかバードを学校に連れてくればこの話を信じる者も少しは減るだろう。
味方さえ増えれば後はどうにでもなる。
二つ目はこのまま樹田の嘘にのってやることだ。
正直樹田のことは好きではないが嫌いというわけでもない。
普段の僕なら嘘つきの樹田を許すようなことは決してしない。
しかしこれで最後だとわかってしまうと同情のようなものが湧いてしまった。
どうしたものか・・・・・・。
僕が迷っていると、学級委員長の田中が僕に近づいてきた。
そして興奮気味にこう言った。
「大変なことに気付いたよ。今回の事件に関する重大なことに!!」
僕は慌てて田中の口を塞ぎ教室を出た。
「ちょっと離せよ!!」
田中はかなり不機嫌そうに僕の手を外した。
「いきなりなんなんだよ、この行動は!!」
興奮している田中をなだめるように僕は言った。
「だって今教室でこの話はまずいだろ。」
「そうか??俺は別に良いと思うけど・・・。」
実際まずいと感じているのは僕だけだった。
これ以上煽りたくない。
もう樹田の嘘に関してばらす気はなかったが、だからといって広めたくもなかった。
教室内で樹田の話が出るのが嫌だった。
「とりあえず気付いたことに関して聞いてよ。」
「あぁ、わかったよ。聞くから話してみてよ。」
「実は・・・。今回殺された人間の共通点がわかったんだ。」
この言葉を聞いて僕は心の底からがっかりした。
頭の良い田中ならあわよくば樹田の嘘に気付いたのではないかと期待していたからだ。
田中の頭の良さは水のない水車のようにカラカラと空回りしていた。
その雰囲気は僕の身体から確かに放たれていたらしい。
田中は少し不満そうに話した。
「かなり大事な話だからしっかりと聞いてくれよ!!」
僕はすぐさま頭を切り替え、真面目な顔をした。
「今回の殺された奴らの共通点。それは樹田に恨まれているってことだ。」
僕にとって自分でも驚くほどどうでも良い話だった。
だいたいみんなは樹田が本当にベアー達を殺したと思っているのだ。
それならば恨みを持っているなんてあまりにも当然の考えなのである。
「まぁ、恨みを持ってなかったら殺したりしないよね・・・。」
「違うんだって。その恨みの原因となった出来事を思い出したんだって!!」
「原因となる出来事・・・??」
僕は全く見当がつかなかった。
樹田はたくさんのやつから嫌われていたし、逆にたくさんのやつを嫌ってもいた。
そんな樹田に恨まれるのは誰もがたやすいことだった。
田中はぼけっとした僕の顔を見ながら続けた。
「中学1年の夏にあった『幽霊屋敷の拳銃事件』の時の話さ。」
「あぁ〜〜、なんとなく覚えてるなぁ。」
そう、それは樹田が嘘つきと呼ばれる原因となった事件だった。
つづく・・・・・・
|
ティーン・ポーン・ターン・ポーン
ウケる〜ww!文字的にコーンポタージュ思い出した^^
2009/7/29(水) 午前 8:02 [ PINO ]
しずくさん
コーンポタージュ!!
まぁ確かにちょっとわかる気が・・・。
2009/7/29(水) 午後 9:32 [ 楽を尊ぶ鼻でか魔人 ]
『幽霊屋敷の拳銃事件』に潜む謎は・・(@_@;)ドキドキ
2009/7/30(木) 午前 2:24
絵里奈さん
さて屋敷ではどんなことがあったんでしょうか??
2009/8/1(土) 午後 6:20 [ 楽を尊ぶ鼻でか魔人 ]