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当時、樹田の家の近くの坂の上には、大きな広場と誰も住んでいない大きくて汚い屋敷があった。

この屋敷を僕らは幽霊屋敷と呼び、広場に遊びにいった時でも誰も近づこうとはしなかった。

しかしある日の夕方、みんなで広場で野球をしていた時、バードの打った打球が広場のフェンスを越えて幽霊屋敷の方に飛んでってしまった。

僕らはみんなで屋敷の周りを探したのだがボールは見つからず、おそらく屋敷の中に入ったのだろうということになった。

この時にボールを諦めておけばよかったのだが、じゃんけんで負けた一人が取りに入ることになった。

その時のメンバーは、樹田・ベアー・竹村・バード・加藤・僕の六人。

しかしここで樹田と加藤を除いた僕ら四人はズルをした。

多い者じゃんけんを提案しておいて、四人で結託したのだ。

そしてその不正じゃんけんの結果、たまたま僕らと同じ手を出していた加藤は助かり、樹田が屋敷に入ることになった。

僕らは早く入れと樹田を急かしながらも少し離れた場所で樹田の様子を見ていた。

しかし元々臆病だった樹田はなかなか入ることが出来なかった。

そして30分程経った後、ようやく屋敷の扉を開けた。

屋敷の中は遠くからでは全く何も見えないほど暗く、まだ夕方だとは思えないほどだった。

ギシギシと軋む木の床を樹田はゆっくりと歩いていった。

僕たちは誰一人として声を出すことはなく、ただじっと樹田の方を見ていた。

そしてその時にはすでに僕らの頭にはボールのことなどなかった。

ゆっくりゆっくりと歩を進めていく。

すると樹田の正面に外からでも見える程の大きな階段が現れた。

樹田はこっちを振り返り今にも泣き出しそうな顔をしている。

しかし僕らは誰も終わらせようとはせず、階段を上るよう指示をだした。

樹田は階段の方に顔を向けた。

しかし全く動かない。

やはり一階と二階では全く違う世界なのか。

樹田は上ることを完全に拒否していた。

しばらくしてまたも樹田は僕らの方にあの顔を向けた。

しかし僕らの応えは変わっていなかった。

とりあえず早く上ってこいとみんなの目が語っていた。

樹田は決心したのか階段の方を向き、ようやくその重い足を上げた。

ぎしっ

ぎしっ

一段一段ゆっくりと上っていく。

そして鳴き続ける階段の音がよりいっそう僕たちの緊張を高めた。

ぎしっ

ぎしっ

しかしもう少しで階段を上り終えるというところで事件は起きた。

「うわぁ〜〜〜!!」

樹田が突然悲鳴をあげ、階段を落ちるように下りてきたのだ。

僕たちも何が何だかわからないままにその場から逃げ出し、広場に戻った。

最後に広場に戻ってきた樹田に対してみんなは問い詰めた。

「なんでいきなり戻ってきたんだ。しかもあんな悲鳴まであげてさ。」

「違うんや!!拳銃を持ったかなり大きい化け物が立ってたんや!!」

「拳銃持った化け物・・・??」

みんなは信じていなかった、というより信じることを拒否していた。

「絶対に嘘やな。どうせ中を見て回るのが怖かったから言い訳して逃げてきたんやろ。」

「そんなんじゃないよ。本当に掴まれたんよ。」

「いや、嘘だね。お前は嘘つきだね。」

「そこまで言うんやったら屋敷の中に誰かおらんかみんなで探しに行こうよ。」

「・・・・・・・・・。」

みんなが一斉に口を閉じた。

誰かがいるかも知れない幽霊屋敷に入るなんて絶対に御免である。

確認なんてする気は全くなかった。

その時僕とバードの目が合い、お互いの考えていることが手にとるようにはっきりとわかった。

「確認しに行く必要なんてないわ。絶対お前の嘘なんやから。」

「お前のことを今日から嘘つきキモ野郎って呼ぶことにするわ。」

「てかもう家に帰ろうぜ。嘘つきと一緒にいたくないわ。」

「俺も同感やわ。確認したいんやったらお前らで勝手にやってくれ。じゃあなぁ〜〜〜。」

こうして僕らは無理やり家に帰ったのだった。



「まぁ確かにあれは悪いことをしたかもな。
 勘違いとかもあるんやし樹田が嘘をついたとは言い切れんからなぁ。
 しかも本当におったってことも有り得るし・・・。」

僕は少し反省気味に話した。

すると田中は、この言葉を待っていたと言わんばかりの勢いで叫んだ。

「それが実は樹田の話は嘘じゃなかってん!!」

「どういうこと??」

「実は昨日のニュースでやってたんやけどな、三年前に銀行強盗をした二人組の男が逃げまどった揚句にあの幽霊屋敷に住んでたんや。捕まった昨日までの三年間やで!!」

「つまり二年前のあの日、あの屋敷には二人組の銀行強盗がおったってことか??」

「まさにその通り!!そりゃ相手は逃げてる途中の犯罪者やから警戒ぐらいしても当たり前やろ??」

僕は納得していた。

確かに樹田は犯人を見たのかもしれない。

おそらく強盗側としても誰もいないはずの屋敷にいきなり子供が入ってきて驚いたのだろう。

樹田は嘘をついていなかった。

しかしこの出来事で樹田はついてもいないのに嘘つきのレッテルを貼られた。

確かに恨む理由としては十分だ。

田中が勘違いするのも無理はない。

「だから次に殺されるのは絶対にお前か加藤やって!!」

「たしかにそうかもな・・・。」

僕は適当に相槌をうった。

田中の高すぎるテンションがうっとうしかった。

「しかもあの時の加藤は樹田と同じはめられた側やし、その後も樹田に対して嘘つきとかいう悪口も言ってないよ。だから多分・・・・・・。」

「もう良いよ。」

僕は田中の話を切り、一人で教室に戻った。

教室に戻っても聞こえてくるのは殺人免許関連の話ばかりだった。

僕は教室にいるのが嫌になり、荷物をまとめて教室を出た。

出る時にちょうど不動がやってきたので僕は「早退します」と伝えた。

すると「お前の早退はわしの人生には何も影響を及ぼさない!!」と言われた。



学校から家までの間、僕はずっと考えていた。

今回の嘘には関係してなくとも僕の言ったことが原因で樹田が傷ついてきたのは間違いない事実だろう。

あの事件以降、ことあるごとに樹田は嘘つき呼ばわりされてきた。

池でザリガニを餌にブラックバスを釣った話や、石の水切りが10回以上跳ねた話。

今思えば嘘とは言い切れないものばかりだった。

なのに僕らは何一つとして樹田の話を信用しなかった。

その度に樹田は僕を恨んでいたかもしれない。

そして今回の嘘には最後まで付き合ってやろうと僕は決心した。



家に着き、僕は黙って自分の部屋に入った。

僕には妹がいるがそれぞれに部屋が与えられていた。

僕は部屋のベッドに寝転がり目をゆっくりと閉じた。

布団はまだ温かく今すぐにでも眠れそうだった。

そして真っ白な頭のまま僕は眠りについた。

夢のなかで僕は樹田に謝っていた。

何度も何度も謝っていた。

「信じてあげなくてごめん。」と・・・・・・。

僕が目を覚ました時、時計の針は夕方の6時を指していた。

僕は涙を拭き、ベッドから跳ね起きた。

そして僕は、樹田に会いに行くことを決めた。



つづく

閉じる コメント(7)

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最終的にオチもなくて一番可哀相になるキャラは加藤で決定ですね…(´`)
続きを期待します

2009/7/29(水) 午後 7:36 [ おじぃ ]

なんだかリアルにこわくなってきました。
続きが楽しみです。

2009/7/29(水) 午後 8:27 dai**n_hoso**

おじゴロシは分かりますが、加藤君は多分新世界の神になる男ではないでしょうか

2009/7/29(水) 午後 8:35 [ anklebreaker ]

おじぃさん
さてさて加藤君はこのままなんともないキャラなんですかね??
それとも・・・。

2009/8/1(土) 午後 6:27 [ 楽を尊ぶ鼻でか魔人 ]

dai**n_hoso**さん
リアルに怖くなってきましたか??
それは嬉しいですねぇ。
もっとリアルな話も書いてみようかな。

2009/8/1(土) 午後 6:30 [ 楽を尊ぶ鼻でか魔人 ]

anklebreakerさん
さて加藤君はどんな風になるのでしょう。
目立つのかそれともこのままか・・・

2009/8/1(土) 午後 6:32 [ 楽を尊ぶ鼻でか魔人 ]

内緒さん
樹田の立場に立ってますねぇ。
樹田はこの話の準主役ですからねぇ〜〜〜。

2009/8/1(土) 午後 6:36 [ 楽を尊ぶ鼻でか魔人 ]

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