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2009年1月9日のイスラエル軍によるガザ侵攻の際、17歳のアフマッド・アスフールさんは、自宅の外で無人飛行機に爆撃により、金属片が全身に刺さる重傷を負った。父親のサミール・アスフールさんによると、アフマッドさんは、8ヶ月エジプトで入院治療を受けた後、医師によりエルサレムで更なる内科手術を含む治療を勧められたという。糖尿病で車椅子生活を送っていた彼は、膵臓、腸などの臓器の一部を失っていた。
イスラエルに戻る途中のエレツ国境で、アフマッドさんは逮捕され、薬とインシュリンを没収された上、父親からも引き離された。サミールさんの得た情報によると、イスラエル当局は彼に何日もの間拷問を加えた結果、虚偽の自白を強要した。そして、アフマッドさんは、人権団体や医師による支援グループからの要請にも関わらず、現在まで投獄されたままだという。「息子は何もしていない。病気で苦しんでいて、自分1人では、着替えも身の回りのことも出来ません。どうやって、牢獄で生き延びられるでしょうか?」アフマッドさんは、現在危篤状態にあると考えられており、緊急に援助を必要としている。
有志の方は、下記人権のためのイスラエル医師団(PHR)に連絡して、アフマッドさん釈放のための指示を仰いで頂ければ幸いです。
Physicians for Human Rights-Israel, 9 Dror St., Jaffa-Tel Aviv 68135, Israel
http://www.phr.org.il
Email: mail@phr.org.il.
以上は、The Palestine Chroniclesからの、緊急援助要請の抄訳(原文は、http://palestinechronicle.com/view_article_details.php?id=16704を参照のこと)。別記事(http://ipsnews.net/news.asp?idnews=51030)
には更に詳しい情報が書かれている。もう余りと言えば余りにも酷い話なので、長くなるが、上記の補足として紹介したい。まず、ガザ空爆の際、傍にいた4人の従兄弟達と一緒にアフマッドさんが負った傷は、左目の失明、顎の骨折と歯の折損、両手と右大腿部の裂傷、性器、腸、膵臓の損傷だったとか。アフマッドさんの負傷当時、父親のサミールさんは8日前に負傷した息子の1人に付き添ってエジプト滞在中だった。
2007年ハマースによる政権掌握以来現在まで継続しているガザ封鎖。そのため、住民がガザで受けられる治療は非常に限られている。イスラエルによる建築資材禁輸措置のため、ガザ空爆によって破壊された27の病院の中15、110あった診療所の中43までが、未だに修理不可能な状態に置かれているという。遺憾ながら、エジプトの医療水準は低く、治療中にC型肝炎に感染するリスクが大きい。しかし、だからと言って、イスラエルで治療を受けようとしても、ガザ住民に対し入国許可が下りる確立は非常に低い。国連報告によると、2009年12月の時点で、イスラエルでの治療許可を申請している1103名の患者の中、4分の1が申請を却下されるか、回答待ちだそうである。待機期間中に、既に27名の患者が手遅れとなって、亡くなってしまった。
負傷したアフマッドさんと従兄弟達は、長兄によってガザの病院に担ぎ込まれ、その後直ちにエジプトの病院まで移送された。その後8ヶ月の入院生活を送ったが、エジプトでもほとんど有効な治療は受けられなかった。それどころか、膵臓の怪我に適切な措置がなされなかったことで、糖尿病まで併発してしまった。医師団はドイツでの治療を勧めたが、ドイツに行くためのヴィザが発給されるには、まずテル・アヴィヴまで行くことが必要なため、ガザ出身のアフマッドさんには不可能な話。最終的にエルサレムでのセント・ジョゼフ病院での治療許可を得るために、サミールさんは車椅子のアフマッドさんを連れて、11月23日エレツ国境に向かったが、その日は追い返されてしまい、2日後にまた出直して来るように言われた。2日後国境に戻って来た父子を待ち構えていたのは、怖ろしい悪夢の様な待遇だった。
「私達は強制的に丸裸にされてボディー・チェックを受けました。その後息子は私から引き離されてしまった。2時間毎にインシュリン注射をしなければいけないのに、それも許されませんでした。気が付いた時には、息子は手錠をかけられていました。当局はアフマッドのために私が持っていた薬と、寄付金で集まった全ての現金(2700ドル相当)を没収し、息子はそのまま連行されてしまいました」
人権団体の支援によって、サミールさんが息子の行方を知ったのはその20日後。どうやらアフマッドさんが拘束されたのは、2人が国境に来る前に尋問を受けた青年達によって、ガザの武装勢力のための銃と爆発物を所持しているという偽りの証言をされたためらしい。エレツ国境の4時間に渡る尋問で一貫して無実を主張し続けたアフマッドさんは、イスラエル領内アシュケロンの監獄に移され、5日間に渡る拷問の後「自白」した。弁護士及び赤十字から得た情報によれば、拷問に加えて、父親も同時に拘束されているのだからシン・べト(イスラエル情報機関)に協力しろと脅迫を受けたそうである。前述した人権のためのイスラエル医師団も、アフマッドさんがインシュリン以外の投薬を拒絶されているのを知って、彼のために動き出した。このままでは、アフマッドさんは、両腕の切断が必要になりそうなのだ。
アフマッドさんは、現在ベールシェバの監獄に収容されている。「自白」させられた内容は、「テロ組織のメンバーであり、情報提供等の利敵行為及びテロ組織への支援と銃器の所持」。この容疑を認める代わりに、33ヶ月間の拘束または起訴内容の軽減という内容の司法取引を持ちかけられたが、アフマッドさんは拒否した。裁判所は6月に新たな公聴会を予定しており、その際には「証人」として、アフマッドさんを尋問した警察が喚問されることになっている。
アル・メーザン人権センター、人権のためのイスラエル医師団、そしてADALAセンター(イスラエルにおけるパレスティナ人アラブの人権擁護団体)は、イスラエル当局が治療を必要としているガザのパレスティナ人患者を脅迫して、イスラエル情報機関への協力を強制しているとして、共同告発を行った。「イスラエルは、治療が必要なパレスティナ人の患者に、ガザを出る許可を与える代わりに、密告者として情報提供を強制するのです」
人権のためのイスラエル医師団によれば、当局は治療を求めて入国しようとするガザ住民に、親戚、友人知己の情報を提供するよう、まず情報部員による尋問を行う。尋問に協力しなければ、入国は許可されない。既にガザの32人の患者達から、あくまで協力を拒否したためにガザを出ることを許されなかったとの報告を受けているという。
サミールさんは、息子の弁護のためにイスラエルの弁護士を雇ったが、彼女の報酬を払う余裕がない。それでも、必要ならば、自分の家を売ってでも、金を工面すると語る。「息子は無実です。もしアフマッドが武装組織のメンバーなら、どうしてわざわざエレツ国境を通ろうなんて思いますか!あの子は治療を必要としているに過ぎないのに、奴らのゲームの駒として利用されているのです」
最後に、『パラダイス・ナウ』の終盤で、サイードが語った台詞を引用したい。「占領の犯した罪は数知れない。でも、中でも一番重い罪は、人間の弱さを利用して、内通者に仕立て上げることだ。そうやって、連中は抵抗運動を根絶やしにするだけじゃない。家族を崩壊させ、人間の尊厳を破壊し、延いては民族全体を滅ぼしていく」「イスラエルは理解しなくてはいけない。連中が内通者をこしらえあげるなら、彼らもまたその代償を払わなければいけないと」
今の私に言えることは、唯1つ。サイード、あなたは正しかった。そして、バクリー監督、あなたが仰った通り、確かに連中は"unleashed dogs"である。
写真(上)は、http://palestinechronicle.com/から拝借。アフマッド・アスフールさん。
写真(下)は、farm5.static.flickr.com から拝借。アフマッドさんの写真を手に、支援を訴える父親のサミール・アスフールさん。
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