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19日の憤懣がまだ腹に残っている21日(日)、教育ファーム事業でお付き合いのあるNPO「光けんじのがっこう」が主催する西山正啓監督のドキュメンタリー映画「貧者の一灯」上映会&トークセションにゲストとして招かれ参加しました。
米軍基地の拡張について、金銭の力で住民を屈服させて実現しようとする誘致派勢力に立ち向かう岩国市民と井原市長(当時)を追った映画です。
既に決まっていた合併に伴う岩国市役所新庁舎の建設補助金が、その後に施行された法律を根拠に、米軍基地拡張に協力しないとの理由で止められたという国の理不尽に憤慨した市民グループは新庁舎建設への市民カンパを募ります。
しかしこの間に米軍基地を拡張してまでも多額の基地関連財源が欲しい受入派議員や経済界の力で、今春の市長選挙は僅差で井原さんが敗れ、基地受入派の自民党前衆議が市長になってしまいました。
映画の中で、若い母親が「自分たちが戦闘機の騒音被害にあっていなくても、騒音に苦しむ基地周辺の市民のため米軍滑走路の沖合い移設に伴う埋め立てに必要だからと、大好きな鎮守の森の愛宕山を削ることを同意したのに、結局は米軍滑走路が増え、削った愛宕山跡に米軍住宅を建てるなど、完全に岩国市民に対する国の詐欺行為だ!」と怒りをあらわにします。
新庁舎建設への市民カンパに立ち上がった元教員の農民は「貧者といえども金で心を売らない生き方をしないと子や孫に顔向けできない。貧者でも一灯くらいはともせる。貧者の一灯が集まれば社会全体を明るく照らすことができる。」と穏やかななかに毅然としたまなざしで言います。
母親と農民には、目の前にいるわけではない騒音に苦しむ市民や、この地域の次代を担うまだ見ぬ未来の市民に思いを至らせることのできる優しさと想像力、「今の自分さえよければ」という無責任さを否定する勇気と責任感が共通しています。
それはそのまま、その裏返しとして、一部の市民を犠牲にしてでも大規模工事により仕事を確保したい地元業界とその代弁者たる議員や首長、その弱みに付け込む国の、多数決に頼り対話を否定する非情さと知性の低さ、想像力の欠如、無責任などが露呈し、完全に「米軍基地」と「原発」が同義的問題だということが解ります。
上映会の後の西山監督と井原前岩国市長、それに氏本を加えてのトークセションでは、西山さんからの、彼にとってスタートとなる水俣病から始まる社会問題へのジャーナリストとしての鋭い問題定義がありました。 一農民から「貧者の一灯」の言葉を引き出し、権力に屈しない市民の気概を表現する感性には脱帽します。
井原さんは基地問題も原発問題も全国各地どこにでも起こり得る問題であり、最後にそれを防ぐのは市民の自治意識で、首長はそのリーダーであるべきと訴えます。 井原さんの地方自治に対する発言は、平易な言葉の組み合わせなのに力強い説得力、表現力の豊かさと品格が感じられます。 それは説明責任能力でもあり、地方自治の指導者としてのリーダーシップが自然に伝わってきます。
同時に、国からの派遣社員のような天下り知事や上関町長、原発推進派議員の言葉の貧困さ、表現の貧弱さ、非情さ、乱暴さが自然とあぶり出されます。
先の岩国市長選挙で、相手陣営の甘いばら撒き選挙公約に惑わされ、魔が差して井原さんを落選させたことを後悔している岩国市民が多いということも納得します。(それに関して井原さんは、それだけ市民は権力と初めて真剣に対峙することに不安だったのであり、相手陣営の不安を煽る戦術に勝てなかった自分の力不足だと謙虚に言います。)
私は農業生産者の立場で、食についての「安心」を求めるなら先ず「関心」を持つことから始めよう、都会の消費者も離れて見えない産地に関心を持とう、生産者も目の前にいない消費者に関心を持とう、関心を持つことは目を向けることであり、目を向けることの必要性は食の分野に限らず暮らし全般に言えることだと話しました。
子供の教育しかり、高齢者福祉しかり、そして地方自治しかりです。 消費者と生産者がお互いに関心を持ち、目を向け合っていれば産地偽装や残留農薬などの問題は相当程度未然に防げて安心感が増すように、電力の最大需要者である大都市住民が僻地の原発建設に関心をもち、建設予定地住民の立場を想像できれば上関原発の行方は大きく変わります。 それは、戦闘機の騒音に関係ない地域の市民が基地周辺の市民の立場に立てれば基地問題も大きく変わってくるのと同じではなかろうかと話しました。
小規模だから関心が行き届き、そのことを高品質や安心感につなげることのできる離島の暮らしや農業の優位性、可能性についても触れました。
市民と誠実に向き合わず対話を拒み、自分と反対の意見や少数意見は安易に金銭で解決しようとする乱暴で品性のない地方政治の手法は、民主主義や住民自治を否定するもので絶対に妥協できないと改めて思う機会を与えられた会となり、主催者に心からの感謝です。
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