こいわい食堂に太陽光を集めて太陽熱として利用するソーラー・クッカーが登場した。
シンプルな構造で扱いも簡便だし、環境を守ることにとりわけ熱心な小女将(こかみ)太佳ちゃんは、たちまち気に入ったようだ。 我が家に太陽光発電設備の設置工事をしてくれたエコテックという会社が紹介してくれたものだ。
枇杷茶をソーラークッカーで沸かし、ご飯は果樹を剪定した枯木などを燃して歯釜で炊き、冷蔵庫の電源は太陽光発電、掃除などの生活中水は井戸水、便所は汲み取り不要な無水コンポスト方式と、着々と「お天道さまの恵み食堂」として、小女将の狙いどおり自然エネルギーの自給度を高めている。
数年前から肉牛プロジェクトのお手伝いで中国内陸部の黄土高原地帯の農村部に足をはこんでいるが、かなりの農家が土壁でかこまれた内庭にこのソーラークッカーを置いていてお湯を沸かしている。
それでなくてもはげ山のような山肌の潅木がマキとして伐採されるのを防ぐ州政府の対策でもあるらしいが、雨が少なく晴天の多いこの地域ではすごく合理的だと感心し、つねづね祝島でも見習って導入したいと思っていたところだった。
他にも、村ぐるみで各農家の牛舎床下に糞尿からメタンガスを発生させる発酵槽を設置し台所用燃料にしようと取り組んでいる地域もある。 公共事業大国である中国の農業公共工事だろうとうがった見方もないわけではないが、地方の自治政府レベルでは環境保全に真剣に取り組んでいることも事実だ。
農村部を貫く高速道路を走っていると頻繁に大型トレーラの車列に出会う。 荷台に積まれているのは発電用大型風車のタワー(柱)やブレード(羽根)だ。 発電用風車の設置台数が世界で最も増加しているのが中国だと何かの資料で読んだ。
しかし一方で今後建設が計画される原子力発電所数が最も多いのも中国だという。 とにかく国全体で電気エネルギーの需要が急増しているのだ。
そのことは、くだんの農村地帯を訪問するたびに人々の生活が変化していることからも実感する。
農村部でも携帯電話やテレビはいわずもがな冷蔵庫や洗濯機などの電化製品やファストフード系のカップ麺などの普及が著しい。
反面、生活排水の処理や使用済みレジ袋や発泡資材の処理などのインフラ整備や人々の意識が追いつけていないので、そのひずみが環境に大きな負荷をかけるようになってきた。
訪問先の農家でソーラークッカーがお役ご免になって庭の片隅に裏返しにされ、それまで出してくれていた熱い中国茶がペットボトルの中国茶に変わって、ほろ苦い複雑な気持ちを味わうことが増えてきた。
日本人がそうであったように、電化製品に囲まれた便利な生活に憧れ、そんな生活を求める中国農村部の人たちを少なくとも私は責めることはできない。
ただ、かつての日本で昭和の時代に、冷蔵庫の普及が各地の優れた伝統保存食やその作り方を衰退させ、結果として食文化の多様性や食への理解度を低下させたのも否めない事実だ。
そしてその延長線上で日本はさまざまな食を巡る深刻な問題を抱え込んで、社会の大きな不安要因や社会コストを発生させてしまった。 そのようなことを中国が繰り返さないよう願うばかりだ。
|