氏本農園・祝島だより

万葉集に詠われ歴史豊かな自然あふれる、万葉浪漫の瀬戸内海「祝島」での暮らしを氏本農園からお伝えします

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『エシカル消費』

 最近マスコミで「エシカル消費」という表現をときどき見かけるようになった。
エシカル(ethical)とは倫理的という意味なので、エシカル消費とは倫理的な消費行動とでも言えばよいのだろうか。
 幼児労働などによる低労賃で不当に低価格な輸入生産物などを買わない消費行動などに用いられている。これまで「フェアトレード」とか表現されていた消費行動に重なるところが多いように思う。

 本来が消費者には選ぶ権利、買わない権利があるので、その際の判断基準に「倫理にかなっているか」という視点を強調しているにすぎない。
 あえてエシカル消費と訴えざるを得ないところに現在の消費者の判断基準が価格偏重なことによる問題が社会的に深刻化しているのではないか。

 ここ数年来上関原発問題の現地学習や原発建設反対運動の応援で都市部からの来島者が増えている。それに伴って氏本農園の見学やこいわい食堂の利用も少なくない。
 その方たちと交流するなかで、多くの方が異口同音に「都会に帰ってからも祝島の原発建設反対運動に私たちが協力できることがありますか?」と問ってくる。 うれしい半面で少し残念な思いがしないではない。
 そんな質問を発する方にとって原発反対運動は非日常的で特別な運動として映っているのだろうが、そうではなく日々どの商品を買うかの選択が原発依存を続けるか脱原発に向かうかの分岐点という意味で典型的なエシカル消費なのだ。
 敢えてもう一歩踏み込むならば、どれを買うかの前に「どれも買わないで済ます」という選択肢も「エシカル」として常に持っていたいものだ。
 例えば電気を購入する際に、原発で発電した電気は購入したくないが日本の現状では発電源別に電気が選択できないというのであれば、できるだけ電気の使用自体を抑えるというのがエシカル消費なのではないだろうか。

 先週末にはドイツ人のフォトジャーナリストが取材のために来島していた。
彼は「日本では福島の原発事故が継続中なのにどうして原発を再稼働させたり新規建設を目指す政権を選択するのか?」と単刀直入に質問してきた。
 日本人の行動は福島の原発事故を契機に脱原発の道を選択したドイツ人からみれば理解し難いのだろう。(この記事を書いている時点で、ドイツのメルケル首相が現地でのインタビューで「福島の現状を考えると、ドイツで原発全廃という私の政策決定は間違っていない」と述べている。)

 京大原子炉研の小出裕章さんが最近の生協広報誌インタビューで、ドイツでは「原発から生じる核のごみは無毒化する手段がなく、子々孫々にそれを押し付ける以外にない。それは倫理的に正しくない」と考えているからで、日本では「電気が欲しいから原子力も仕方がないという意見を受け入れて裏書きしているのは私たち自身だから、私たちが変わらなければならない。」と述べて、「倫理」というカネ以外の価値基準で暮らしを律する必要に言及している。
 
 話は少しそれるが、私から見てエシカルという視点で「いかがなものか?」が多いのが、我が国の首都・東京だ。
 2020年オリンピック誘致に躍起になっているが、福島原発事故の現状から都民だけでなく国民の関心をそらそうとしているとしか思えない。
 国会も深刻な福島の汚染水漏れ対策の審議を、開催都市を決めるオリンピック委員会総会以降に先送りして、東京へのマイナスイメージを抑えようとしている。
 都の郊外部小平市ではオリンピック誘致に呼応して大切な緑地をつぶして大きな道路建設も強行されようとしていたが、その是非を問うための住民投票が投票率が低すぎて成立しなかった。

 12月から都バスが都心部の繁華街と駅を結ぶ一部路線で終夜運行を始めるという新聞記事があった(8月31日付日経新聞)。「TOKYOに人・カネを呼ぶ」との見出しがついていて、繁華街の活性化効果があり外食業界などから経済効果を期待する声が大きいという。
 これまで以上に電気エネルギーに依存する方向に暮らしを誘導して、その先に猪瀬知事はどんな暮らしの豊かさを描くのか? 東京都民の電力生産を担って今回の原発事故に至っった福島の、流浪を余儀なくされている多くの福島県民にどう説明するのか?
 残念ながら私は東京に国の首都としての品格が感じられない。 都市として大きくなりすぎてしまった東京にもはやそんなことを求めること自体が無理なことなのだろうか。 巨大都市のイメージが絶滅恐竜に重なる。
 都市も企業も、いろんな組織もほどほどのサイズで良しとして、肥大化すべきではないということなのだろう。

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